はじめに
この記事では、Kubernetesでイベント駆動型スケーリングを実現する KEDAについて、基礎から応用(導入)までを解説します。
「KEDAとは何か?」 という基本的な疑問から始め、KEDAのアーキテクチャやベストプラクティス、さらに実際の導入方法までを3部構成で整理し、KEDAの仕組みと運用を理解できるように構成しています。
【前編】では、「KEDAの基礎」について取り上げ、KEDAの概要、そして導入のモチベーションについて詳しく説明します。
対象読者
- Kubernetesを学習・導入している方
- KEDAって聞いたことがあるけど、「何をどうスケールしてくれるのかわからない」という方
- 「KEDAの導入に興味はあるけど、どこから手をつければいいかわからない」と悩んでいる方
KEDAとは
KEDAは、Kubernetesにおけるイベント駆動型のオートスケーラーです。通常のHPA
(Horizontal Pod Autoscaler)の仕組みを活用しつつ、独自の拡張機能を提供することで、以下のような柔軟なスケーリングを実現します。
主な特徴
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ゼロスケールの対応
HPAではPod数を1以上に保つ必要がありますが、KEDAでは 0→1 や 1→0 のスケーリングが可能です。 -
柔軟なスケーリング条件
CPUやメモリだけでなく、外部メトリクス(例: メッセージキューの長さ、APIリクエスト数)をトリガーにスケール条件を設定できます。 -
カスタムリソースを活用
ScaledObject
というカスタムリソースを使用して、スケールの設定やトリガーの条件を簡単に記述できます。
KEDAは、登録されたトリガーを定期的に監視し、条件に合致すると、ターゲットとなるPodを起動または停止します。また、必要に応じてHPAを自動的に作成します。この仕組みにより、リソースを効率的に管理し、コスト削減を実現します。
KEDAを導入する理由(モチベーション)
KEDAは、非稼働時間帯にPodを停止(ゼロスケール)することで、リソース利用を最小化できます。例えば、開発環境やステージング環境で、深夜や休日にPodを停止することで、GKEのリソースコストを削減できます。
さらに、Datadogなどの監視ツールとの連携で、監視対象リソースを減らし、モニタリングコストを削減することも可能です。
柔軟なスケーリング条件の対応
KEDAでは、以下のようなスケーリング条件を設定できます。
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Cronベースのスケーリング
特定の時間帯や期間中のみスケールを維持する必要がある場合に便利です。 -
複数トリガーの組み合わせ
例: CPU使用率とメッセージキューの長さを条件にした複雑なスケール条件を設定可能です。
KEDA導入時の注意点
便利なKEDAですが、導入にあたっていくつかの注意点を考慮する必要があります。
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スケールアップ時のタイムラグ
Pod数が0から起動する場合、数秒のタイムラグが発生します。このタイムラグは、即時性が求められる処理では課題となる可能性があるため、必要に応じて事前に手動でスケールアップする対応が必要です。 -
HPAとの互換性
KEDAを導入すると独自で設定しているHPAと競合します。必要最低限のPod数を確保する準備を整えた上でKEDAへ移行する必要があります。 -
外形監視の調整
ゼロスケール時には、監視ツールがPodの停止をアラートとして検知する可能性があります。これを回避するためには、ダウンタイム設定を行うなどの監視設定の見直しが必要です。
まとめ
KEDAを導入することで、Kubernetes環境のリソース管理が大幅に効率化され、コスト削減に大きな効果をもたらします。ぜひ活用してみてください。
次回予告
次回の【中編】では、KEDAのアーキテクチャに焦点を当て、その内部構造や動作の仕組みを詳しく解説します。
【後編】では、KEDAの導入手順を実践的に紹介し、ScaledObjectの設定方法などについて解説します。
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