「この方針で問題ないでしょうか?」
「はい、問題ありません。」
「ほかにご意見ありますか?」
「特にありません。」
「では、この内容で進めます。」
プロジェクトの会議では、こうしたやり取りがよくあります。
全員が納得しているように見える。反対意見もない。会議も予定どおり終わる。
ところが、数日後になると「実は少し懸念があります」「この仕様だと難しいかもしれません」といった話が出てくる。
そして、決まったはずの方針が再び議論になり、プロジェクトが少しずつ遅れていく。
PMOとしてプロジェクトに関わる中で、私は「会議で反対意見が出ないこと」と「本当に合意できていること」は別だと感じるようになりました。
今回は、私自身が経験した「会議では誰も反対しなかったのに、後から問題が出てきたケース」をもとに、会議で本当に確認すべきことについて考えてみます。
会議では誰も反対しなかった
あるプロジェクトで、開発方針について重要な意思決定をする会議がありました。
関係者を集めて、複数の選択肢を比較します。
メリットとデメリットを整理し、最終的には一つの案を採用することになりました。
会議中に反対する人はいませんでした。
「この方針で進める」ということで合意し、議事録にもその内容を記載しました。
PMOとしても、「意思決定ができた」と考えていました。
ところが、数日後に開発担当者から相談がありました。
「この仕様、本当にこのまま進めるんですか?」
話を聞くと、実装上の懸念がいくつかあるとのことでした。
なぜ会議で言わなかったのか
そこで、「なぜ会議では言わなかったのか」を聞いてみました。
すると、いくつかの理由がありました。
- まだ自分の考えがまとまっていなかった
- その場で反対すると話が長くなりそうだった
- 決定権がある人が賛成していたので、言いにくかった
- 技術的な話なので、会議で説明しても伝わらないと思った
- 自分の担当範囲だけの問題だと思っていた
どれも、特別珍しい話ではありません。
つまり、会議で「反対意見がなかった」のではなく、反対意見が表に出なかったのです。
「異論なし」と「納得」は違う
ここで重要なのが、「異論なし」と「納得」を分けて考えることです。
「異論はありません」という言葉には、少なくともいくつかの意味があります。
- 本当に問題がない
- 判断できるほど情報がない
- 自分には関係ない
- 反対したいが言い出せない
- その場では判断せず、後で確認したい
- 反対しても覆らないと思っている
同じ「問題ありません」という言葉でも、その背景はまったく違います。
PMOとして重要なのは、発言の有無だけではなく、その発言の背景まで確認することでした。
「何か意見ありますか?」では足りなかった
振り返ると、会議での私の問いかけにも問題がありました。
「何か意見ありますか?」
この質問に対して「ありません」と答えるのは、それほど難しくありません。
そこで、質問の仕方を変えるようにしました。
例えば、
- この案で実装上困りそうなところはありますか?
- この決定によって影響を受けるチームはありますか?
- 今の段階では問題ないけれど、後から問題になりそうな点はありますか?
- この方針に反対するとしたら、どこが気になりますか?
- 持ち帰って確認したいことはありますか?
こうした聞き方をすると、単純な「賛成・反対」では出てこなかった情報が出てくることがあります。
反対意見を出すことが目的ではない
もちろん、会議のたびに無理やり反対意見を出してもらえばいいわけではありません。
重要なのは、反対意見や懸念を出しても不利益にならない状態を作ることです。
「そんなことも分からないの?」
「今さら言うの?」
「もう決めたことだから。」
こうした反応が一度でも続くと、メンバーは次第に発言しなくなります。
すると、会議は非常にスムーズになります。
しかし、それはプロジェクトが健全になったのではなく、問題が見えなくなっただけかもしれません。
会議がスムーズすぎるときこそ確認する
会議がスムーズに進むこと自体は悪いことではありません。
ただし、重要な意思決定なのに誰からも質問が出ない場合には、一度立ち止まるようになりました。
「皆さん問題ないですか?」だけではなく、
「実装側から見て気になるところはありませんか?」
「運用側ではどうでしょうか?」
「この決定によって困る人はいませんか?」
と、立場を変えて質問してみる。
そうすると、それまで黙っていた人から意見が出てくることがあります。
本当の合意は「会議が終わった後」にも表れる
もう一つ大切だと感じたのが、会議終了後のフォローです。
重要な意思決定をした場合、議事録を共有して終わりにするのではなく、「認識に相違がないか」「実行にあたって懸念がないか」を確認する。
特に、実装担当者や運用担当者など、会議中に発言しにくい立場の人には、必要に応じて個別に確認することも有効です。
会議では発言しなかった人から、後になって重要な情報が出てくることがあります。
それは、その人が会議を軽視していたのではなく、会議という場では伝えにくかっただけなのかもしれません。
PMOに必要なのは「発言を増やすこと」ではない
PMOとして、会議で発言する人を増やすことだけを目標にする必要はありません。
大切なのは、プロジェクトに必要な情報が意思決定の前に出ていることです。
そのためには、
- 反対意見
- 懸念事項
- 未確認事項
- 他チームへの影響
- 実装上の制約
などを確認する必要があります。
会議で誰も反対しなかったとしても、それだけで「全員が納得した」と判断しない。
ここを意識するだけでも、後から方針がひっくり返るケースを減らせます。
まとめ
会議で誰も反対しない。
これは、一見すると理想的な状態に見えます。
しかし、実際には「全員が納得している」のではなく、「誰も言い出せなかった」というケースもあります。
会議を早く終わらせることだけを考えると、こうした小さな懸念を拾い損ねることがあります。
PMOとして大切なのは、議論を長引かせることではありません。
必要な情報が、意思決定される前にテーブルに乗っている状態を作ることです。
「何か問題ありますか?」と聞いて終わるのではなく、「実装する側から見て気になるところはありますか?」と一歩踏み込んで聞いてみる。
その一言が、会議では見えなかったリスクを発見するきっかけになるかもしれません。
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