はじめまして。私は普段、プログラミングとは無縁の仕事をしている、ただの素人です。
この度、長年の妄想であった「ローカルSMBネットワークから動画をゼロバッファで再生し、漫画の圧縮ファイル(CBZ/CBR)を事前ダウンロードなしで直接読めるメディアプレイヤー」を、Android、iOS、Fire TV向けにリリースしました。(Nas Player Proという有料アプリです)
この記事は、技術的な解説ではありません。
コードの書き方も、Gitの正しい使い方も知らない素人が、ただAI(LLM)というツールだけを頼りに商用アプリを完成させるまでの泥臭い記録と、そこで感じた「プロのエンジニアの皆様への深い敬意」、そして「これから訪れるかもしれない少し不思議な未来」についてのポエムです。
魔法の杖ではなく、果てしない「サイレントリファクタリング」との戦い
世間では「AIを使えば、誰でも一瞬でアプリが作れる」と言われています。私も最初はそう思っていました。しかし、現実は全くの別物でした。
AIが吐き出すコードは、一見それらしく動きますが、複雑な状態管理やUIの連携が絡むと、途端に破綻します。
最も恐ろしかったのは、私が勝手に「サイレントリファクタリング」と呼んでいる現象です。Aのバグを修正するようAIに頼むと、AIはAを直すついでに、全く無関係なBの必須機能(例えばテレビのリモコン操作ロジック)を勝手に、そして音もなく削り落とすのです。
翌日実機でテストして初めて昨日動いていた機能が消滅していることに気づき、数千行のコードの中から原因を探す。素人にとっては絶望的な作業でした。AIは息をするように嘘をつき、もっともらしい謝罪を繰り返します。
この泥沼の「AIとの喧嘩」を何百回と繰り返す中で、私はプロのエンジニアの皆様が日々どれほど高度な思考回路で、複雑なシステムを破綻させずに構築・維持しているのかを知り、ただただ圧倒されました。皆様が当たり前のようにやっている「エンジニアリング」は、本当に尊く、美しい技術です。
私がエンジニアの世界に近づいたのではなく
血を吐くような思いで、なんとか「Nas Player Pro」をリリースできたとき、私は「少しだけ、プロのエンジニアの世界に近づけたのかな」という高揚感を感じました。
しかし、冷静になってみると、どうやら少し違うようだと気づきました。
私が皆様の高尚な世界へ登っていったのではなく、「AIという混沌とした泥沼」を通じて、世界の方から皆様の足元へ近づいてきているのではないか、と。
現在、海外の開発者界隈では、プログラミングの基礎を持たない人間がAIとの対話(Vibe)だけでコードを組み上げる「Vibe Coding(バイブコーディング)」という手法が急増しています。私自身がまさにそれです。
出来上がるコードは、皆様から見れば「美しくないクソコードの山」かもしれません。しかし、素人の私でも、長年の夢だったクロスプラットフォームの複雑なアプリを現実にデプロイし、その強烈な熱狂を味わうことができたという「事実」があります。
泥沼の先にある、エンジニアリングの刷新
今はまだ、AIは平気でハルシネーションを起こし、「サイレントリファクタリング」という名の破壊行為を繰り返す、暴れ馬のような未熟な道具です。
しかし、この数ヶ月間、AIと取っ組み合いをしてその進化の異常なスピードを肌で感じた今、一つだけ確信していることがあります。
そう遠くない未来、AIはこれらの致命的な欠陥を完全に克服するでしょう。
そしてその時、これまでの「人間がコードを記述する」というエンジニアリングの手法は、根底から完全に刷新されます。ハルシネーションの泥沼での戦いが終わった時、「バイブコーディング」はもはや素人のためのイレギュラーな手法ではなく、ソフトウェア開発のメインストリーム(主流)になるはずです。
基礎知識のない素人でさえ、これほどの熱狂と高揚感を持ってクロスプラットフォームのアプリを形にできる時代が来ました。
ならば、これまで正しいアーキテクチャの構築や、複雑なシステムの維持に心血を注いできた「つよつよエンジニア」の皆様が、その圧倒的な知見と論理的思考力を持ったまま、この完全に成熟した「バイブコーディング」の概念を本格的に使いこなした時、一体どれほどとんでもない世界が創り出されるのか。
プログラミングの基礎すら持たない私が言うのもおこがましいですが、AIとの泥沼の最前線で、私はその凄まじい未来が、もうすぐそこまで来ていることを確かに感じました。皆様のような本物の技術者たちが、この新しい手法でどんな景色を見せてくれるのか、一人のユーザーとして心から楽しみにしています。そしてそれは、想定よりもずっと早いかもしれません。
美しいコードを書けない私が言うのもおこがましいですが、この混沌としたAIとの泥沼の取っ組み合いは、信じられないほど疲弊しますが、同時に信じられないほどエキサイティングでした。何日も徹夜して取っ組み合いました。この年でこんな熱量を持った取っ組み合いは新鮮で、懐かしくもあり、とても意義のある日々だと思います。
いつか皆様のような本物の技術者たちが、この新しい手法を本格的に使いこなし、どのようなとんでもない未来を見せてくれるのか。一人のユーザーとして、心から楽しみにしています。