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Cisco Catalyst Center 10年の軌跡:APIC-EM から始まった運用自動化・アシュアランス・AIの進化

Last updated at Posted at 2025-12-05

はじめに

この記事はシスコの有志による Cisco Systems Japan Advent Calendar 2025 (一枚目) の 六日目として投稿しています。

2017年版: https://qiita.com/advent-calendar/2017/cisco
2018年版: https://qiita.com/advent-calendar/2018/cisco
2019年版: https://qiita.com/advent-calendar/2019/cisco
2020年版: https://qiita.com/advent-calendar/2020/cisco
2020年版(2枚目): https://qiita.com/advent-calendar/2020/cisco2
2021年版: https://qiita.com/advent-calendar/2021/cisco
2021年版(2枚目): https://qiita.com/advent-calendar/2021/cisco2
2022年版(1,2): https://qiita.com/advent-calendar/2022/cisco
2023年版: https://qiita.com/advent-calendar/2023/cisco
2024年版: https://qiita.com/advent-calendar/2024/cisco
2025年版: https://qiita.com/advent-calendar/2025/cisco <--ここ

【10年の進化史】APIC-EM → DNA Center → Catalyst Center

Ciscoエンジニアが振り返るネットワーク運用革命の10年

2025年、Catalyst Center(旧 Cisco DNA Center、旧 APIC-EM)はちょうどリリースから 10周年 を迎えます。私はこの製品の開発期・立ち上げ期から関わってきたエンジニアとして、この10年間を間近で見てきました。ちょうど良い機会なので、記憶があるうちに(!)記録しておこうと思います。

Intent-Based Networking の誕生、SD-Access の普及、Assurance・AI・クラウド連携の強化、そして Catalyst ブランドへの統合。この10年は、ネットワーク運用が「構築と保守」から「意図・自動化・知能・最適化」へと進化した大きな転換期でした。

この記事では、APIC-EM から Catalyst Center 3.x までの進化と、背景にある技術思想をエンジニアの視点で振り返ります。

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  • DNA ... Digital Network Architecture
  • APIC-EM ... Application Policy Infrastructure Controller - Enterpriese Module

余談ですが、2013年当初の開発初期、ENC(Enterprise Network Controller)と社内ではよばれていました。

発表からGAまで時間がかかった悪い例(発表はするものの、製品がない期間が長い)

難産だったからこそ、思い入れがあるとも言えます😃

  • 2014.1 CiscoLive MilanにてAPIC-EMを発表(Rob Lloyd

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なんと、発表から二年ほど経って、ようやく入手できるようになりました。平和ですね。

1. 開発初期から受け継がれた思想:マイクロサービス × アジャイル

APIC-EM の開発が始まった 2013 年当時、ネットワーク領域でマイクロサービスやアジャイルを全面採用する例はごく少数、特に大規模な自前ネットワーク基盤やクラウドサービスを除き、オンプレミスネットワークでの製品に実装した例はほとんど無かったと記憶しています。私たちは、次の2つをプロダクト思想の柱としました。

✔ ① マイクロサービスアーキテクチャ

ネットワーク機能を疎結合のサービスとして構成し、独立して改良・更新できるようにする。これは後の VM → LXC → Kubernetes の変遷を可能にした基盤的発想です。

✔ ② アジャイルチームによるスクラム開発

各サービスごとにチームを固定し、スプリント単位で改善を積み重ねる。当時のCiscoでは革新的な開発体制で、現在の DevOps/SRE に通じる文化の源流となりました。エンジニアリング組織のメンバーは皆スクラムのトレーニングを受講し、スクラムチームを作って開発プロセスの変革を愚直に実践していました。(スタンダップ会議、二週間スプリント、デモFirstなど)

当時どこかの開発ビルの壁に貼ってあったポスター(たしかBuilding24かな)
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2. アーキテクチャの変遷:VM→LXC→Kubernetes→AI基盤へ

Catalyst Center の10年は、アーキテクチャの進化の歴史でもあります。

🟦 APIC-EM(2015–2017):VMWareベースの初期マイクロサービス

  • 各サービスが独立VMとして構成
  • vCenter がオーケストレーションを担当
  • Plug-and-Play、Path Trace、EasyQoS、REST API が話題に

この時点で「ネットワーク運用をソフトウェア化する」という挑戦が始まりました。

この頃、アシュアランス製品がAPIC-EMとは別ラインで開発されていました。検討の結果、APIC-EM(オートメーション)とアシュアランスは一つの製品として統合されることになり、Cisco DNA Center 1.0が誕生します。


🟩 DNA Center 1.x(2017–2020):LXC による本格マイクロサービス化

The Network. Intuitive. というよく分からない(!)キャッチコピーで、DNACをはじめ、製品群をリリース。私は大々的な発表イベントで、初期SD-Accessとアシュアランスを、震えながらライブデモをしました。おそらく寿命が5年ほど縮みました。

このときに、「5年先を見据えたアーキテクチャ」というキーワードを使いました。その時から数えると、8年経ちました。答え合わせができることって重要だと思いませんか。無責任に適当なことをいうベンダーや営業を信用してはいけません。
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  • VMware 上から LXC コンテナへ移行
  • SD-Access の誕生
  • Assurance の実装と拡張
  • Intent-Based Networking の核となる時期

この移行により、機能追加のスピードが一気に向上しました。

製品の安定性やバグに苦労した時期です。しかしそれを乗り越えて、または回避しながら、先行事例になっていただいたお客様が多くいらっしゃいます。

DNAC1.0 SWIM
YouTube動画

DNAC1.1 SD-Access
YouTube動画

DNAC1.2 - ISE - APIC連携(ドメイン間ポリシー連携)
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🟧 DNA Center 2.x(2020–2025):Kubernetes への全面移行と安定基盤の確立

DNA Center 2.x は内部的に最も大きな変革期でした。

  • LXC → Kubernetes (K8s) への全面移行
  • サービスのスケール、セルフヒーリング、ローリングアップデートが実現
  • AI Endpoint Analytics、AI RRM、MRE の強化
  • ThousandEyes、MS TeamsやWebex Control Hub などとの連携
  • クラウドネイティブ管理の基盤が整い、DNAC on AWS も登場

汎用的に使えるようになってきた時期

活用事例が増えてきた時期です。DNAC1.Xではサポートしなかった地味に役立つNMS機能を多く追加で追加開発することで、様々なデモが可能になる一方で、ThousandEyes、Talos、Webexなど連携が進みました。

Catalyst 9300へのThonsandEyes Enterprise Agentのデプロイ
YouTube動画

DNAC Endpoint AnalyticsにTalosのレピュテーション情報を連携する設定デモ(今は更新されてもっと使いやすくなっています)
YouTube動画


⭐ Catalyst Center 3.x(2025–):AI × クラウド時代の運用基盤へ

  • Kubernetes の刷新
  • AI 推論基盤の強化
  • Agentic Operations(AI Native Networking)を前提にした設計

Catalyst Center は「ネットワーク管理ツール」からAI時代のネットワーク制御基盤 へ進化しました。同時に、以下のような機能強化が続いています。

CCGM
SS 2025-12-02 18.17.14.png

クラウドダッシュボードでのMeraki Organizationと Catalyst Organizationの統合ビュー
SS 2025-12-02 18.23.42.png


3. 10年を象徴する五つの革新概念

DNA Center / Catalyst Center の進化を語る上で欠かせないのが、次の五点です。

① ヘルススコア —— “壊れる前に改善する”運用へ

従来の監視は、

  • 死活監視
  • 閾値監視
  • 障害発生後の対応

という Reactive(反応的)運用 が中心でした。

DNA Center が導入したヘルススコアは、ネットワーク全体の健康状態を数値化し、故障の予兆を分析する という革新的アプローチです。

さらに、

  • 発生要因の推定
  • 推奨アクション(Recommended Actions)
  • 自動修復ワークフロー

など、属人性を排除し、運用品質の標準化 に大きく寄与しました。

② Intent API —— 「手順」ではなく「目的」を伝える

DNA Center は REST API を公開するだけでなく、Intent(意図)を伝えて、構成生成・展開まで自動化する API を提供しました。

たとえば:

  • このネットワークを安全にしたい
  • このポリシーを全拠点に適用したい
  • このVLAN/Fabricを自動展開したい

といった「目的」を伝えると、必要な具体的ステップ(CLI等)はシステムが自動で実行します。

これは Declarative API / GitOps に通じる現代的発想で、当時としては非常に先進的でした。

③ NetSecOps —— ネットワーク × セキュリティ運用の融合

Catalyst Center は、ネットワーク運用とセキュリティを一体化し、ネットワーク基盤そのものの安全性と健全性を継続的に維持する仕組み を提供します。大きく分けて 「基盤の安全性の確保」 と 「ゼロトラスト運用」 の2つが中核です。

これは “監視”から“運用そのものの品質保証”へ という大きな思想変化でした。

A. 基盤の安全性を継続的にチェックする仕組み

Catalyst Center はネットワーク機器の状態を自動で解析し、運用上のリスクや不整合を早期に検出します。

  • PSIRT(脆弱性)情報との照合
  • 推奨ソフトウェアバージョンの提示
  • バグ影響の自動判定
  • 設定の乖離チェック(Golden Config との差分)
  • デバイスプロファイルによる適正化

問題が起こる前に気づくための仕組みとして進化した点が重要。

B. SD-Access Zero-Trust による動的なセキュリティ

SD-Access と統合することで、端末の可視化から脅威封じ込めまでゼロトラストを自動化します。

1. Endpoint Visibility(端末の完全把握)

  • 自動検出、役割推定、グルーピング
    ➡ 「誰が」「どこに」「どう接続しているか」を正確に把握。

2. Zero-Trust Segmentation(横移動を防ぐ)

  • L2/L3 Virtual Network
  • Micro-Segmentation
    ➡ 侵害の拡大を防ぐネットワーク構造を実現。

3. Threat Discovery & Containment(脅威の迅速な発見と隔離)

  • Talos 情報と連携した異常検知
  • 怪しい端末の自動隔離(Adaptive Network Control)

“検知して終わり”ではなく、封じ込めまでネットワークが支援。

④ AIOps —— 観測・洞察・最適化を一体化した“自律運用”への進化

Catalyst Center の10年を語るうえで欠かせないのが、AIOps(AI for IT Operations) への本格的な進化です。AIOps は単なるAI搭載ではなく、ットワークを観測し、理解し、改善へ導く」 という統合運用モデルを実装した点に革新があります。

Catalyst Center における AIOps は、「ネットワークを観測し、理解し、改善へ導く」 という統合運用モデルとして実装されています。

AIOps は次の 4つのレイヤ で構成されています。

A. End-to-End Visibility(全体の見える化)

ネットワーク全体の体験を一気通貫で把握し、問題箇所を迷わず特定できる基盤。

  • Health Dashboard:ネットワークの健康状態をAIがスコア化
  • 360 Views:クライアント・デバイス・RFなど多視点分析
  • Wireless Maps:RF環境や干渉を地図で可視化

➡ 従来監視では分からなかった「全体像」を直感的に把握可能。

B. Observability(相関分析と深い可視化)

アプリ・ネットワーク・端末まで、AIによる“文脈付きの可視化”を提供。

  • Application Experience:アプリ体験の品質分析
  • AI Network Analytics:トレンド・異常・相関の自動検出
  • ThousandEyes Integration:インターネット経路まで可視化

➡ 推測ではなく“根拠を持った判断”が可能になる。

C. Insights & Action(改善提案と自動化)

可視化だけでなく、改善の方向性まで踏み込むのがCatalyst Center流。

  • Issue Dashboard:AIによる根因解析と推奨アクション
  • Intelligent Capture:必要なログ・PCAPをAIが自動取得
  • AI Enhanced RRM:無線環境をAIが継続最適化

➡ 運用者が判断するのではなく、AI が「次にすべきこと」を提示。

D. Autonomous Operations(自動化の最終段階)

環境理解をもとに、ネットワークが“自律的に整う”未来に向けた仕組み。

  • Location Service:体験と位置情報の相関分析
  • POE Analytics:電力異常をAIが検知

➡ ネットワークが人手を介さず問題を予防・最適化する段階に近づいた。

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⑤ ネットワークの抽象化 — How から What へ、管理者の役割を“目的中心”へ転換

Catalyst Center の誕生における大きな柱のひとつが、Cisco が長年取り組んできた**“ネットワークの抽象化(Network Abstraction)”** の思想です。

ネットワークを CLI や個別設定という How(手段) ではなく、「何を実現したいか」という What(目的) で扱えるようにすること。 これはネットワーク管理者の仕事を、構築作業から 意図の定義と最適化 へシフトさせる取り組みでした。

この抽象化の思想については、Cisco が過去から積み上げてきた技術背景を、2014 年に以下のブログでも整理しています:

Catalyst Center は、

  • 自動化(Automation)
  • アシュアランス(Assurance)
  • ポリシー(Policy / SD-Access)
  • API(とくに Intent API)

といった主要機能すべてに「抽象化」を軸として設計されています。すなわち、 “目的(Intent)を伝えるだけで、必要な構成や実装はコントローラー側が最適化する” というモデルを具現化した最初の本格的なプラットフォームです。

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一方で、実運用では抽象化だけでは扱えない物理的・環境依存の要素も多く、 Catalyst Center はこれらを補完する具体的な可視化・自動化機能を段階的に追加しながら進化してきました。

抽象化を中核に据えつつ、“現場で本当に必要な機能”を両立したコントローラへと成熟してきた点が、Catalyst Center の大きな特徴です。

4. 安定性への挑戦と、10年間の歩み

DNA Center 1.x〜2.x初期は、今振り返っても多くの技術的チャレンジがありました。 パートナー様やお客様にご不便をおかけする場面もありました。

しかしその経験が、

  • アーキテクチャの改善
  • Kubernetes化
  • QAの抜本強化
  • 開発チームの組織変革

につながり、現在の高い安定性を実現しています。

今では世界中の重要なネットワーク基盤で採用されるまでに成熟しました。エンジニアとしてその成長過程に関われたことは、個人的にも大きな経験でした。

5. まとめ:次の10年のインフラ運用は、AgenticAIを活用した「ネットワーク+ セキュリティ + 自動化 + AI + データ」

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Catalyst Center の10年は、ネットワーク運用が “構築と監視” → “意図と最適化” → “予兆と自律” へ進化する歴史でもありました。

そして次の10年は、AIが運用を代行し、ネットワークが自律的に最適化する Agentic Operations(AIを全面的に採用した全領域にわたるネットワーク運用・維持管理) の時代に入ります。Catalyst Center 3.x はその未来への「新たな基盤」の一つになります。

今後も技術者として、この変化を現場から見届けながら発信していきたいと思います。

そういえば、Cisco DNA Center Cloud について触れてないよ、っていうツッコミが聞こえた気がしました。きっと気のせいですね..

  • 引退するまでに、Cisco Prime Infrastructureの誕生前夜からサポート終了まで、というのも書いてみたい
  • 製品の開発・リリース・立ち上げ・成熟・終了と移行までの過程を経験できるのは幸せなことで、身に染みて良い経験になります
  • キラキラした時期や良いところだけを渡り歩く、ジョブホッパーみたいな方もたまにいらっしゃいますが
  • 本当に辛い時期こそ、SEの人間性が問われ、価値を発揮し、乗り越えて信頼を得られる気がします
  • 誰でも手放しで拡がって、安定稼働する製品があれば、SEは不要ですからね
  • さて、次の10年はAI hogehoge.. ウッ…

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