MotherComputer株式会社 代表の藤原です。
AIの急激な進化に対して、エンジニアがどう向き合えばよいかを整理したくて本記事を書きました。
この記事が、これから学ぶ方の「一歩目」や「方向性の確認」に役立てば幸いです。
AIを恐れるのではなく、武器として使いこなす仲間が増えていくことを願っています。
➀ はじめに
AIを学ぶ前に、まず⼀つだけ共通認識を持ってほしい。
AIは「便利なツール」では終わらない。
これは脅しでも煽りでもなく、私たちがこれから向き合う未来の入り口にすぎません。
イーロン・マスク氏はAIとロボットについて、
『労働はオプションになり、通貨(money)は意味を失う』
と語っています。
引用:Business Insider
(https://www.businessinsider.com/elon-musk-robotics-money-irrelevant-currency-universal-basic-income-2025-11)
この発言は極端に聞こえるかもしれません。
しかし私は、極論こそ本質を照らす光だと思っています。
■ 本質はいつも極端の中にある
私はいつも、まず極論を見るようにしています。
なぜなら、本質はいつも極端なポイントに近いところに存在するからです。
本質が完全な姿で現れることはまれで、
現実には グラデーションのように滲んで現れる。
だからこそ、私たちは本質を見失いやすい。
『AIの本質は資本主義の代替』
私はそう捉えています。
しかしこの極論を手がかりに現在地点へ視点を戻すと、見えてくるものがあります。
労働生産性が上がり
人や時間が今までほど必要なくなり
コストが下がり
価値の源泉そのものが変わっていく
そんな未来が確実に近づいてきています。
AIの進化は、その入り口にすぎません。
■ AIの進化は、IT企業の真価を問う
これまでエンジニアと非IT人材を隔てていた壁。
それは『言語(コード)の壁』でした。
しかし、その壁は破られました。
■ Vibe Coding(なんとなくのコーディング)という現実
NYTの記者ケヴィン・ルース氏はこう語ります。
「私はPythonもJavaScriptもC++も一行も書けない。
それでもAIを使って複数のアプリを自作した。」
参考:PRESIDENT Online
(https://president.jp/articles/-/94326)
非IT人材がAIを使ってアプリを作る時代。
IT企業の価値そのものが変わり始めているのです。
➁ 2025年AI躍進による世界の変化
■ ブルーカラービリオネア現象
アメリカではこんな現象が起きています。
●弁護士・アナリストなど“高単価ホワイトカラー”の価値がAIで低下
●逆にAIが代替しづらいブルーカラー職が高収入化
●例:エレベーター・エスカレーター技術者:年収1600万円
●生涯賃金は8億円以上
引用:Yahoo!ニュース
(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0bf8270e3beddf77c5711d548f6e190242bcbfc3)
「知識労働者は安定」という常識が崩れ始めています。
■ 2025年はAI氷河期
2025年はAI元年といわれている一方で、AI氷河期とも呼ばれています。
さらにアメリカではこんなデータも出始めています。
●コンピュータ工学専攻の新卒者失業率:7.5%(人類学・物理学に次ぎワースト3位)
●単純作業はAIが急速に代替
●企業は採用数を削減
引用:Bloomberg
(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-06-09/SXLCF6DWLU6800)
■ プログラマーは27.5%消えた
ワシントン・ポストはこう報じています。
「過去2年間でプログラマー雇用は27.5%消失した」
基礎的なコーディング業務はAIによって急速に代替されています。
引用:PRESIDENT Online
(https://president.jp/articles/-/94326?page=1)
■ 「10人で1年の開発」が「1人で数週間」になる世界
想像してください。
これまで 10人×1年 を前提としていた開発プロジェクトが、
LLMやエージェントによって 1人×数週間 で完了できるようになる。
必要な人数構成が大きく変わるという構造変化は、
特にSIerや大手コンサルファームのような
大量アサインを前提としたビジネスモデルに強い影響を与えます。
つまり、AIの進化は単なる「効率化」ではなく、
IT産業の構造的前提を再定義するフェーズに入るということです。
これは「人が不要になる」という話ではありません。
むしろ、AIと協調しながら生産性を高められるエンジニアの価値は
これまでより確実に上がります。
■ 黒字リストラが始まっている
AmazonもMicrosoftも、業績絶好調のままAI導入による“黒字リストラ”を開始。
象徴的なのはアマゾンだ。同社は、3万人の“管理部門”の人員削減を進めているという。その一環で、同社は1万4000人のリストラに踏み切った。同社のアンディ・ジャシーCEOは、AIで業務は効率化され、今後数年間で総従業員数は減少すると述べた。手始めに同社は財務、人事、ITといった管理部門で人員を削減する。
引用:Yahoo!ニュース
(https://news.yahoo.co.jp/articles/e9de4a26906f311cdf3f0850d3988e0aab1b874f)
AI時代のリストラは、景気とは無関係です。
■ iPhone登場時と同じ現象が再び起きようとしている
思い出してください。
iPhoneが登場した当時、
「使い方を教えるだけで稼げる」 時代がありました。
家電量販店でも、個人講座でも、
「スマホの操作レッスン」が立派なビジネスだった。
でも今、その職業はほぼ消えました。
なぜなら、全員が当たり前に使えるようになったから。
コンピュータが普及したときも、まったく同じ現象が起きた。
そして今、
AIは、その歴史を100倍の速度で繰り返そうとしている。
その一方で日本企業の多くは、
●定義が曖昧
●セキュリティ不安
●使い方がわからない
という理由で様子見を続けている。
このギャップの中で「AIの使い方」だけでも稼げているビジネスが成立する。
でもこれは一時的です。
AIもいずれ、使えて当然になる。
そしてその瞬間に勝負が決まる。
➂ 今のLLM(大規模言語モデル)はどこまで進化したのか?
▶ 現在のLLM(GPT-4〜5/Claude/Geminiなど)の実力
・単純作業の爆速化
・コード生成・リファクタ・バグ修正
・テストケースの自動生成
・デザイン案・資料作成
・文献検索・要約
・既存コードの解析
・APIを指定したアプリ生成
確かにまだ“完璧”ではありませんが、「できることの広さ」と「改善速度」が歴史上例を見ないレベルです。
▶ なぜこんな速度で進化しているのか?
・MoE(Mixture of Experts)構造への移行
・コンテキスト長(100k〜200k)の爆増
・エージェント機能の高速化
・画像/音声/デバイスとの統合が加速
・ファインチューニング(SFT / DPO)の低コスト化
▶ では実際、何ができるようになったのか?
・「こういうアプリが欲しい」という曖昧な要求
・「このUIがいい」という画像
・「このAPIを使って」という指示
これだけで動くアプリを生成し、修正まで完結できます。
▶ 技術的に何が起きているか?
・LLMが抽象要求 → 仕様 → コード → 修正まで自己完結
・“設計〜実装〜テスト” の境界が曖昧に
・エンジニアリングプロセスが直感ベースに寄っていく
コードを書ける/書けないの壁は確実に薄くなりつつあります。
➃ エンジニアが今すぐやるべきアクション
1. LLMの “できる/できない” を体系的に把握する
LLMの弱点は以下の通り:
・長文推論はまだ苦手
・計画性が不完全
・仕様が曖昧だと破綻しやすい
・既存コードを誤解することがある
「万能」ではなく「強いところと弱いところがある」ことを理解するだけで使い方が劇的に変わります。
2. AIをコントロールするスキルを磨く
(Prompt → Workflow → Agent の流れ)
・仕様生成プロンプト
・コードレビュー指示
・テスト自動化
・GPTs / OpenAI API活用
・Claude Projects の活用
“AIをどう動かすか” はこれからのエンジニアの必須スキルです。
3. 小規模アプリをAIだけで作る練習
例:
・ToDoアプリ
・チャットアプリ
・CRUDアプリ
・簡易ダッシュボード
エンジニアは 実装ではなく、設計・品質判断・調整 に集中する練習ができます。
4. 自社の業務をAIで棚卸しする
例:
・テンプレ作成
・バグ再現
・ログ解析
・ドキュメント生成
・新規提案資料の素案
・営業メールの自動生成
“AIで外注できる仕事” を棚卸すだけでも圧倒的な生産性向上が可能です。
※あくまでも「ここがスタート地点」であり、これからも、AIは圧倒的な速度で進化し続けます。
➄ だからこそ ― AIを先に触った人が主導権を握る
私たちはAIとは違う。
AIに奪われない領域は必ずある。
しかしその前提として必要なのは、
AIの“できる/できない”を知り、
AIを正しく制御する側に回ること。
孫子はこう言いました。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」
AI時代にも通用する普遍の真理です。
➅ 最後に ― AI時代を共に生きる人類として、あなたに伝えたい
AIが進化し切った時、
「様子見していた人」から順番に置いていかれます。
だからこそ私は、エンジニアのみんなに伝えたい。
AIを恐れず、AIに使われず、AIを使いこなす側に回ってほしい
自分の価値をAIとともに最大化してほしい
この変化の時代を、自分の力で切り開いてほしい
私は、この激動の時代をあなたたちと一緒に乗り越えていけると信じています。










