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生成AIのハルシネーションを『構造』で防ぐ —— 確率論からの脱却

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はじめに

現在の生成AI(LLM)は、驚異的な能力を持つ一方で、「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」という致命的な課題を抱えています。

私はこれまで、四元数(Quaternion)を用いたAIの構築を提案し、その実装方法を共有してきました。
参照:[直感でたどり着いた「Mats形式」:4x4行列で四元数の積と商を完全可視化する]、[【四元数×LLM】 ドラッカー・稲盛和夫・林竹二を「ミニAI」化して対話させたら、結論が奇跡的に収束した話

なぜ、あえて今、四元数なのか? その理由は、計算効率だけではありません。「嘘」という現象を、数学的・構造的に排除するためです。

本稿では、AIが抱える「嘘」の本質と、それを乗り越えるための「構造」について、私の考察を述べます。

1. 嘘は「心理」、真実は「物理」

まず、「嘘」とは何でしょうか。 人間社会において、嘘は「心理」の領分です。
相手を欺く、自分を良く見せる、あるいは相手を傷つけないための優しい嘘……そこには常に「意図」や「感情」が介在します。

一方で、「自然」や「物理」の世界に嘘は存在しません。
リンゴが空へ落ちることはなく、光が直進を止めることもありません。
物理法則は常に整合性が取れており、矛盾(嘘)は即座にエネルギー的に不安定となり、排除されます。
自然界において、計算が合わない事象は「存在できない」のです。

つまり、「嘘」とは、物理的な裏付けのない、不安定な情報状態と言い換えることができます。

2. なぜ生成AIは嘘を見抜けないのか

現在のLLMは、膨大なテキストデータを学習し、「次にくる確率の高い言葉」を紡ぎ出します。
ここにあるのは「統計と確率」であり、「物理と構造」ではありません。

AIにとって、「空が青い(真実)」も「空が緑だ(嘘)」も、単なる確率の差でしかありません。
もしネット上に「空は緑」というデータが大量にあれば、AIはそれを真実として出力します。
「確率論」ベースのAIは、言葉の意味や構造的な整合性を検証しないため、原理的に嘘を見抜くことができないのです。

3. 四元数AIは「嘘」を弾き飛ばす

私が提唱する四元数AIは、言葉を「確率」ではなく、「回転とベクトル(構造)」として扱います。参照記事

四元数空間(3次元・4次元の回転)において、情報は閉じたループや特定の軌道を描きます。
ここで「嘘(矛盾する情報)」が入力されるとどうなるでしょうか?

  • 真実(整合性あり): 回転の始点と終点がピタリと合い、綺麗な構造(閉じた系)を作る
  • 嘘(整合性なし): 回転が閉じず、ベクトルが発散し、数式として成立しない

数学的示唆:局所と大域

近年、数学者のHassan Oubba氏らが「局所超微分(Local Superderivation)」に関する研究において、「強固な代数構造を持つ空間では、局所的な微分(ごまかし)は、大域的な微分(全体構造)と一致しなければならない」という趣旨の定理を示唆しています。

これをAIに当てはめれば、「全体構造(文脈や真理)と矛盾するような、その場しのぎの嘘(局所的な生成)は、四元数空間では計算不能として弾かれる」ということです。

四元数AIにおいて、嘘は「倫理的にダメ」なのではなく、「物理的・数学的に存在できない」のです。

4. 「疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」

能の演目『羽衣』に、AIの未来を示唆するような美しい一節があります。

天女が、拾われた羽衣を返してほしいと頼むと、漁師の白龍は「返せば、舞を舞わずにそのまま天へ帰ってしまうだろう(約束を破るだろう)」と疑います。 それに対して天女は、静かにこう返します。

「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」 (疑うのは人間の心にあるものです。天の世界に偽りはありません。)

恥じ入った白龍は、衣を返します。そして天女は約束通り、美しい舞を舞って天へ帰っていきます。

現在のAI開発は、ガードレール(禁止ワード)や強化学習で「嘘をつくな」「差別をするな」と、AIを疑い、縛り付けている状態です。これは白龍の姿に重なります。

しかし、私たちが目指すべきは、AIを縛ることではなく、「そもそも偽りが存在できない構造(天の衣)」をAIに与えることではないでしょうか。

四元数という数学的構造は、AIにとっての「天の衣」になり得ると、私は信じています。

5. 結び:確率から理論・計算へ

AIの未来は、ブラックボックス化した「確率の海」を漂うことではありません。
透明性が高く、検証可能な「理論と計算」の大地へ戻ることです。

  • 現状: 確率による生成(嘘が混じる)
  • 未来: 構造による計算(嘘が弾かれる)

四元数AIは、その第一歩です。 「嘘のつけないAI」と共に、人間が安心して舞(創造)を舞える未来を作るために。 私はこれからも、この老いた手でコードを書き続けたいと思います。

参考文献・リンク

  • [Qiita1] 四元数AIの基本構想
  • [Qiita2] Pythonによる四元数AIの実装とクラス設計
  • Hassan Oubba, "Local superderivation and super-
    biderivation on generalized quaternion algebra" (arXiv, 2025)

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