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[Rust] Option メソッド まとめ

Last updated at Posted at 2021-10-15

※ 2023-11-11: 記事を全体的に修整。

Rust で ResultOption を扱う場合、if letmatch を使うよりもメソッドを使用した方が簡潔に書ける場合があります。

変換前の型と変換後の型からメソッドを探せるようにするため、型を基準にまとめた表にしました。

※バージョン 1.73.0 現在、安定化されているメソッドのみ記載。
#[derive] によるトレイト実装メソッドは詳細略。
※ライフタイムは省略。
※基本的に Self 型が含むジェネリクスのトレイト境界は省略。
※特に注記がないものは固有メソッド、トレイト実装メソッドは各概要欄に記載。
self の型が参照で &, &mut が付いている場合でも、Rust の機能であるメソッド呼び出し時の自動参照によって、参照が付いていない型の値も呼ぶことができます

Result に関しては別記事にしました。

参考「[Rust] Result メソッド まとめ - Qiita

0. まとめ

用途別:

  • 生成
    • default
    • from
  • 値を取得
    • is_some
    • is_none
    • is_some_and
    • unwrap_or, unwrap_or_else
    • unwrap_or_default
    • ok_or, ok_or_else
  • 値を取得 (unsafe)
    • unwrap_unchecked
  • 値を取得 (パニックを起こす)
    • unwrap
    • expect
  • 値を取得および値に関数を適用
    • map_or, map_or_else
  • 値に関数を適用
    • map
  • フィルタ
    • filter
  • 値を変更 (変更前の値を取得)
    • take
    • replace
  • 値を変更 (変更後の値の参照を取得)
    • insert
    • get_or_insert, get_or_insert_with
  • 値を結合
    • flatten
  • 値同士を結合
    • and, and_then
    • or, or_else
    • xor
  • タプル
    • zip
    • unzip
  • 参照
    • as_ref, as_deref, as_mut, as_deref_mut
    • as_pin_ref, as_pin_mut
  • 複製
    • copied
    • cloned
    • clone, clone_from
  • イテレータ
    • from_iter
    • into_iter
    • iter, iter_mut
  • たたみ込み
    • sum
    • product
  • 転置
    • transpose

その他、#[derive] による実装トレイト別:

  • Copy
  • PartialEq
    • eq, ne
  • PartialOrd
    • partial_cmp
    • lt, le, gt, ge
  • Eq
  • Ord
    • cmp
    • max, min, clamp
  • Debug
    • fmt
  • Hash
    • hash, hash_slice

参考「Option in std::option - Rust

1. 生成

戻り値 メソッド 概要
Option<T> default デフォルト値 None
(Default トレイト実装メソッド)
引数 戻り値 メソッド 概要
T Option<T> from 引数の型から戻り値の型に変換
※動作は引数 val: T に対して Some(val) と同じ
(From トレイト実装メソッド)
&Option<T> Option<&T> from 引数の型から戻り値の型に変換
※動作は <Option<T>>::as_ref と同じ
(From トレイト実装メソッド)
&mut Option<T> Option<&mut T> from 引数の型から戻り値の型に変換
※動作は <Option<T>>::as_mut と同じ
(From トレイト実装メソッド)

2. 値を取得

※値を取得するメソッドはパニックを起こすものがあります。

2.1. 基本

self 戻り値 メソッド 概要
&Option<T> bool is_some Some かどうか確認する
&Option<T> bool is_none None かどうか確認する
self 引数 戻り値 メソッド 概要
Option<T> impl FnOnce(T) -> bool bool is_some_and Some かつ関数 impl FnOnce(T) -> bool が真を返すかどうか確認する
self 引数 戻り値 メソッド 概要
Option<T> T T unwrap_or Some を取得する
None ならデフォルト値 default: T にする
※動作は unwrap_or_else と同じ
※デフォルト値に関数の戻り値を使う場合は unwrap_or_else で遅延評価することを推奨
Option<T> F: FnOnce() -> T T unwrap_or_else Some を取得する
None なら関数 F の戻り値を取得する
self 戻り値 メソッド 概要
Option<T> T unwrap_or_default Some を取得する
None ならデフォルト値 <T as Default>::default() にする
self 引数 戻り値 メソッド 概要
Option<T> E Result<T, E> ok_or OptionResult に変換する
None なら err: E の値にする
※動作は ok_or_else と同じ
err: E の値に関数の戻り値を使う場合は ok_or_else で遅延評価することを推奨
Option<T> F: FnOnce() -> E Result<T, E> ok_or_else OptionResult に変換する
None なら関数 F の戻り値にする

2.2. unsafe メソッド

unsafe メソッドは明確な理由がなければ使わないべきです。

self 戻り値 メソッド 概要
Option<T> T unwrap_unchecked Some を取得する
None なら未定義動作
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定

2.3. パニックを起こすメソッド

※パニックを起こすメソッドは、Rust の内部的なコードやサンプルコード、テストコード等で良く用いられますが、テストコード以外ではなるべく使わないべきです。
expect メソッドは戻り値を得るためだけでなく、テストコード中で「パニックが起きない」ことを確認する目的でも使用されます。

self 戻り値 メソッド 概要
Option<T> T unwrap Some を取得する
None ならパニックを起こす
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定
self 引数 戻り値 メソッド 概要
Option<T> &str T expect Some を取得する
None なら msg: &str の値でパニックを起こす
Some であることを期待する
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定

3. 値を取得および値に関数を適用

self 引数 戻り値 メソッド 概要
Option<T> U,
F: FnOnce(T) -> U
U map_or Some なら関数 F の変換をして取得する
None ならデフォルト値 default: U にする
※動作は map_or_else と同じ
※デフォルト値に関数の戻り値を使う場合は map_or_else で遅延評価することを推奨
Option<T> D: FnOnce() -> U,
F: FnOnce(T) -> U
U map_or_else Some なら関数 F の変換をして取得する
None なら関数 D の戻り値を取得する

4. 値に関数を適用

self 引数 戻り値 メソッド 概要
Option<T> F: FnOnce(T) -> U Option<U> map Some なら関数 F の変換をする

5. フィルタ

self 引数 戻り値 メソッド 概要
Option<T> P: FnOnce(&T) -> bool Option<T> filter Some かつ関数 F の戻り値が true なら Some
Some から None への変換もできる

6. 値を変更

6.1. 変更前の値を取得

self 戻り値 メソッド 概要
&mut Option<T> Option<T> take self の値を <Option<T> as Default>::default() すなわち None に変更し、変更前の値を取得する
replaceNone を指定するのと同じ動作
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定
self 引数 戻り値 メソッド 概要
&mut Option<T> T Option<T> replace self の値を value: T を含む Some に変更し、変更前の値を取得
None を指定すると take と同じ動作
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定

6.2. 変更後の値の参照を取得

self 引数 戻り値 メソッド 概要
&mut Option<T> T &mut T insert self の値を value: T を含む Some に変更し、可変参照を取得
&mut Option<T> T &mut T get_or_insert Some なら可変参照を取得
None なら self の値を value: T を含む Some に変更し、可変参照を取得
※動作は get_or_insert_with と同じ
insert する値に関数の戻り値を使う場合は get_or_insert_with で遅延評価することを推奨
&mut Option<T> F: FnOnce() -> T &mut T get_or_insert_with Some なら可変参照を取得
None なら self の値を関数 F の戻り値を含む Some に変更し、可変参照を取得

7. 値を結合

self 戻り値 メソッド 概要
Option<Option<T>> Option<T> flatten 入れ子になった Option を一段階平らにする
※再帰的に何段階も平らにされるわけでない
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定

8. 値同士を結合

self 引数 戻り値 メソッド 概要
Option<T> Option<U> Option<U> and 両方とも Some なら Some
※動作は and_then と同じ
※引数に関数の戻り値を使う場合は or_else で遅延評価することを推奨
Option<T> F: FnOnce(T) -> Option<U> Option<U> and_then Some なら関数 F の変換をする
Some から None への変換もできる
Option<T> Option<T> Option<T> or どちらかが Some なら Some
※動作は or_else と同じ
※引数に関数の戻り値を使う場合は or_else で遅延評価することを推奨
Option<T> F: FnOnce() -> Option<T> Option<T> or_else None なら関数 F の戻り値にする
None から Some への変換もできる
Option<T> Option<T> Option<T> xor SomeNone またはその逆なら Some にする
Some 同士や None 同士なら None にする

9. タプル

self 引数 戻り値 メソッド 概要
Option<T> Option<T> Option<(T, U)> zip 両方とも Some ならタプルの Some
self 戻り値 メソッド 概要
Option<(T, U)> (Option<T>, Option<U>) unzip タプルの OptionOption のタプルにする

10. 参照

self 戻り値 メソッド 概要
&Option<T> Option<&T> as_ref T を参照にする
&Option<T> Option<&<T as Deref>::Target> as_deref T を参照にし、さらに deref する
&mut Option<T> Option<&mut T> as_mut T を可変参照にする
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定
&mut Option<T> Option<&mut <T as Deref>::Target> as_deref_mut T を可変参照にし、さらに deref_mut する
(※ DerefMutDeref のサブトレイトで、deref_mut の戻り値の型は <T as Deref>::Target で正しいです。<T as DerefMut>::Target ではありません)
self 戻り値 メソッド 概要
Pin<&Option<T>> Option<Pin<&T>> as_pin_ref T を参照にする
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定
Pin<&mut Option<T>> Option<Pin<&mut T>> as_pin_mut T を可変参照にする
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定

11. 複製

11.1. Some

self 戻り値 メソッド 概要
Option<&T> Option<T> copied T を複製 (コピー) する
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定
Option<&T> Option<T> cloned T を複製 (クローン) する
Option<&mut T> Option<T> copied T を複製 (コピー) する
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定
Option<&mut T> Option<T> cloned T を複製 (クローン) する

11.2. Some および None

self 戻り値 メソッド 概要
&Option<T> Option<T> clone self を複製 (クローン) する
(Clone トレイト実装メソッド)
self 引数 戻り値 メソッド 概要
&mut Option<T> &Option<T> () clone_from selfsource: &Option<T> を複製 (クローン) する
(Clone トレイト実装メソッド)

12. イテレータ

引数 戻り値 メソッド 概要
I: IntoIterator<Item = Option<A>> Option<V>
where V: FromIterator<A>
from_iter イテレータに変換可能な型 (イテレータ型も含む) から Option 型に変換する
ただし、戻り値の Some が持つ値はイテレータから変換可能な型でなければならない
(FromIterator トレイト実装メソッド)
self 戻り値 メソッド 概要
Option<T> IntoIter<T> into_iter イテレータに変換する
type Item = T;
(IntoIterator トレイト実装メソッド)
&Option<T> Iter<T> into_iter 参照のイテレータに変換する
type Item = &T;
※動作は <Option<T>>::iter と同じ
(IntoIterator トレイト実装メソッド)
&mut Option<T> IterMut<T> into_iter 可変参照のイテレータに変換する
type Item = &mut T;
※動作は <Option<T>>::iter_mut と同じ
(IntoIterator トレイト実装メソッド)
self 戻り値 メソッド 概要
&Option<T> Iter<T> iter 参照のイテレータに変換する
type Item = &T;
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定
&mut Option<T> IterMut<T> iter_mut 可変参照のイテレータに変換する
type Item = &mut T;

13. たたみ込み

引数 戻り値 メソッド 概要
I: Iterator<Item = Option<U>> Option<T>
where T: Sum<U>
sum イテレータの全要素が Some ならそれらを加算した値を Some で取得する
ただし、戻り値の Some が持つ値はイテレータの要素を加算した結果の型でなければならない
None が要素に含まれていたら None を返す
イテレータが空の場合、T 型によって異なるが、基本的には Some(0) 等が返り、None にならない
(Sum トレイト実装メソッド)
I: Iterator<Item = Option<U>> Option<T>
where T: Product<U>
product イテレータの全要素が Some ならそれらを乗算した値を Some で取得する
ただし、戻り値の Some が持つ値はイテレータの要素を乗算した結果の型でなければならない
None が要素に含まれていたら None を返す
イテレータが空の場合、T 型によって異なるが、基本的には Some(1) 等が返り、None にならない
(Product トレイト実装メソッド)

14. 転置

self 戻り値 メソッド 概要
Option<Result<T, E>> Result<Option<T>, E> transpose OptionResult を入れ替える
Some(Ok(_)) -> Ok(Some(_)),
Some(Err(_)) -> Err(_),
None -> Ok(None)
※バージョン 1.73.0 現在、const として扱う機能は不安定
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