はじめに
こんにちは!エンジニア歴10年の"けるん"です。
私は普段、テックリードとしてさまざまなシステムの開発に携わっています。幸いなことに、数年前から上司や後輩から「けるんさん、つよつよエンジニアですね!」と言われることが多くなってきました。
「つよつよエンジニア」と評価されるようになるまで、私自身も多くの試行錯誤を重ねてきました。本記事では、自身の成長を振り返り、私が実践してきたことを7つの習慣としてまとめてみました。
これからエンジニアとしてキャリアを積みたい方や、技術力で周囲から頼られる存在になりたい方の参考になれば幸いです。
「つよつよエンジニア」の定義
そもそも「つよつよエンジニア」とは、どのようなエンジニアを指すのでしょうか?自身の経験と周囲の「つよつよエンジニア」を観察する中で、私は以下3つの特徴を持つエンジニアを「つよつよエンジニア」と定義しています。
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T字型人材である
「つよつよエンジニア」は、特定の技術領域を深く追求する専門性(縦軸) と、周辺領域や関連技術に関する幅広い知識(横軸) を併せ持つT字型人材です。これにより、自身の専門領域だけでなく、システム全体を俯瞰的に捉え、多角的な視点から効率的にシステム開発を行うことができます。
[図. T字型人材のスキル例]
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高度なトラブルシューティングができる
「つよつよエンジニア」は、システムトラブル発生時に影響範囲の迅速な特定、原因の精密な切り分け、そして実行可能な解決策の提示に至るまで一気通貫して対応できる高度なトラブルシューティング能力を持っています。これにより、システム開発の現場では避けては通れないシステムトラブルに難なく対処することができます。
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他者からも頼られる
所属チーム内だけでなく、他チームや顧客からも技術的な相談や協力を求められることが多いのも「つよつよエンジニア」の特徴です。これは技術力への信頼はもちろんのこと、コミュニケーション能力が高く、他者と円滑に連携しながら業務を進められることを示しています。
エンジニア歴6年前後で、これらのスキルや評価を確立し「つよつよエンジニア」に到達できれば、エンジニアとして良いペースで成長できていると言えるでしょう。将来的に技術力をコアとしたキャリアパス、例えばテックリード、スペシャリスト、さらにマネジメントスキルも併せて習得するとEMやVPoEなどを目指せる可能性もあります。
「つよつよエンジニア」になるための7つの習慣
ここからは、前述の「つよつよエンジニア」の特徴を満たすことにつながった習慣を7つ紹介します。
その1: 技術情報に敏感になり、情報源を使いこなす
常に最新の技術情報にアンテナを張り効率的に情報収集することは、エンジニアとして成長し続けるために不可欠です。具体的には、以下のような情報源を日々チェックし、それぞれの特性を理解して使い分けることが重要です。
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Google Discover
Google DiscoverはGoogleアプリやGoogle Chromeで表示されるおすすめ記事のことです。自分の閲覧傾向を分析して記事が提案されるため、継続利用することで、より自分に必要な情報が優先的に表示されるようになり、効率的な情報収集の好循環に入ることができます。私はここからエンジニア界隈で話題になっているニュースやブログ記事をキャッチすることが多いです。
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X (旧Twitter)
気になる技術トレンドやエンジニアの発信をフォローし、リアルタイムな情報をキャッチします。ただし、Xは情報が玉石混交であるため、情報の信頼性を見極める必要があります。また、タイムラインを眺めていると時間が溶けてしまうこともあるので、隅から隅まで読むのではなくおすすめタブを数分眺めるだけでよいでしょう。自分にとって本当に有益な情報を発信している厳選したアカウントだけ、リスト機能で全ポスト追うようにしています。
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YouTube
こちらもGoogle DiscoverやXと同様に、おすすめ機能でトレンド確認し、厳選したチャンネルだけチャンネル登録します。最新AIサービス系のまとめ動画や、エンジニアマインドを発信しているチャンネルを見て情報収集に役立てます。ただし、視覚的に情報を理解しやすいというメリットがある一方、動画視聴はまとまった時間が必要になるため、時間効率を意識して取捨選択することが重要です。
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Qiita
トレンド上位の記事でタイトル内に知らない単語が出てきていたら、その単語の意味は最低限調べるようにしています。また、タイトルから内容が気になる記事があれば読みます。
「タイトルから内容が推察できる記事」や「自分の専門性を磨きたい領域外の深い記事」までは読みません。
これら情報源は通勤時間や休憩時間などスキマ時間にチェックすると効率的です。全て毎日チェックする必要はなく、各アプリを何気なく開いたとき、技術情報が目に入るようにしておき、気になるワードがあればチェックする癖をつけておくことが大事です。
この習慣はT字型のスキルをバランスよく縦・横へ広げることにつながります。
その2: Webサービスの内部構造を想像する
日頃私生活で利用しているWebサービスを利用する中で、「このサービスは裏側でどんな技術が使われているのだろう?」「どんなアーキテクチャで実現されているのだろう?」と想像力を働かせるようにしましょう。例えば、以下のような疑問を持ったことはありませんか?
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Cookie同意バナー
最近、多くのサイトでこの通知が表示されるなぁ。何を理由に、何の目的で、何が行われてるのだろう?
[図. Cookie同意バナー例] (引用元: アサヒ飲料HP)
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パスキー認証
Yahooにブラウザ上で指紋認証だけでログインできるようになってる!? 以前は独自アプリ必要だったはず。
この新しい認証方式は、どのように安全性を確保しているのだろう?
[図. パスキー認証フロー] (引用元: Yahoo! JAPAN Tech Blog "FIDO認証&パスキー総復習(認証の仕組みやパスキー登場までの経緯)")
「このような疑問を持つこと」「疑問を持ったらすぐ調べること」を習慣化しましょう。
この習慣はさまざまなシステムのアーキテクチャ設計に関する理解を深めることができ、T字型のスキルの横軸を広げることにつながります。
その3: 隣のチームの成果物から学ぶ
所属チーム以外のチームが作成した設計書、パラメーターシート、コードなどを積極的に読むようにしましょう。例えば、自分がアプリチームに所属している場合でも、インフラチームの成果物を読むといった行動です。
隣のチームの成果物は自分が関わっている案件情報であるため基礎知識があり、さらに一般公開されない上質な資料であるため、学びの宝庫です。
同様に、他チームがベンダからもらった提案資料や説明資料なども活用できます。
他チームや他社の成果物から学ぶことで、自身の知識やスキルの幅を広げ、T字型のスキルの横軸を強化できます。また、担当システム全体の理解度も向上するため、他者から相談を受けた際にも役立ちます。
その4: 担当システムの業界知識を身につける
担当システムに関連する業界知識を身につけることは、要件定義や意思決定の質を大きく向上させます。
例えば、金融業界であれば「法規制への準拠」や「高いセキュリティ基準」、EC業界であれば「カート離脱率の低減」や「在庫管理の効率化」といった特有の課題があります。こうした背景を理解することで、技術的な選択肢をビジネス特性に合わせて最適化できるようになります。より具体的には次の通りです。
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本質的な要件定義ができる
顧客のビジネスモデルや業界特有の課題を理解することで、表面的な要求ではなく、本質的なニーズを捉えた要件定義が行えます。
例えば、小売業界で「売上アップ」という要望があった場合、単純に広告機能を強化するだけでなく、「リピーター率向上」を目指したロイヤリティプログラムや、購入データ分析によるパーソナライズドレコメンド機能を提案できるかもしれません。 -
最適な技術選択ができる
複数の技術的解決策が考えられる場合、業界の慣習や将来性を考慮して、より適切な選択が可能になります。
例えば、医療業界ではリアルタイム性よりもデータの完全性や監査対応が重視されるため、NoSQLではなくRDBMSを選択する、といった判断が求められることがあります。 -
共通言語で円滑なコミュニケーションができる
顧客やビジネスサイドと同じ視点で話せるようになり、意思疎通がスムーズになります。
例えば、ゲーム業界では「DAU(日間アクティブユーザー)」や「ARPU(ユーザーあたりの平均収益)」といった指標が頻繁に議論されます。これらを理解していると、ゲーム運営チームやビジネスサイドとの会話がより具体的かつ建設的になります。
業界知識を身につける手段としては、前述の習慣「その1: 技術情報に敏感になり、情報源を使いこなす」「その3: 隣のチームの成果物から学ぶ」を実践する際に、業界知識という切り口も意識して情報収集するとよいでしょう。
こうしたスキルは顧客からの信頼につながり、「他者からも頼られる存在」に近づきます。
その5: 学んだことを共有する
日頃の業務で得たノウハウや失敗談を共有しましょう。共有の場としては、まず社内勉強会やチーム内勉強会のような小規模な場から始めると良いです。これらを行うことで、以下のメリットがあります。
- 知識整理: テーマ選定、資料作成、発表準備を通して、理解が深まる
- 質疑応答: 参加者からの質問に答えることで、新たな視点や課題に気づく
- フィードバック: 同僚や先輩エンジニアからのフィードバックにより、改善点や今後の学習課題が見つかる
特にチーム内勉強会では、準備に時間をかけるよりも頻度を重視することがおすすめです。例えば、毎週15分程度の短い共有でも十分効果があります。
この習慣は、T字型のスキルの縦軸を伸ばすだけでなく、説明能力向上にもつながります。
その6: コミュニケーション能力を磨く
エンジニアにとって、技術力はもちろん重要ですが、それと同じくらいコミュニケーション能力も重要です。ただし、「面白い話ができる」「話し続けられる」といった能力ではなく、以下のようなスキルが求められます。
- 相手に分かりやすく説明する能力
- 相手の意図を正確に理解する能力
- 相手と建設的な議論を行う能力
- 相手に敬意を払って会話する能力
これらのスキルが重要なのは次の理由によります。
- チームメンバーと円滑に連携できないとプロジェクト成功が難しくなる
- 顧客要望を正確に理解できないと期待に応えるシステム開発ができない
- 他チームとの協力が不足すると組織全体の成果最大化が難しくなる
この習慣は技術的アドバイスや課題解決提案時にも役立ちます。結果として他者から信頼され、「頼られる存在」へ近づくことにつながります。
その7: 与えられたチャンスには積極的に挑戦する
これまで紹介した6つの習慣を実践していると、新しいチャンスが舞い込んでくることも増えるでしょう。例えば、次のようなものです。
- 新技術やミッションクリティカルな要素を持ったチャレンジングな案件
- 顧客の課題解決を支援するコンサルティング要素のある業務
- カンファレンス登壇などの大舞台で情報発信する機会
- 会社を代表しての記事執筆、インタビュー取材
これらは「技術力」と「信頼感」を積み重ねた結果として訪れるものです。このような機会には積極的に挑戦し、自身のさらなる成長につなげましょう。
そのほかに「つよつよエンジニア」になるために行ったこと
こちらは習慣ではなく、数回経験すれば良い内容ですが、飛躍的な成長に繋がった重要な要素であるため追加で紹介させてください。
フルスタックな環境を構築してみる
フロントエンドからバックエンド、インフラまで、一連のシステムを一人で構築してみることは、エンジニアとしての総合力向上に非常に有効です。さらに運用基盤(CI/CDパイプライン、モニタリング)まで意識するとより実践的です。
まずは、フルスタック開発をハンズオン形式で紹介している書籍や動画教材を活用するとよいです。慣れてきたら次のような方法もおすすめです。
- 自分が参画している案件のシステムの簡易版を作成してみる
- AWS構成事例で公開されている構成図を元に、簡易版を作ってみる
このような経験は、T字型のスキルの縦軸と横軸を飛躍的に伸ばすことにつながります。また、構築過程で発生するであろうさまざまなエラーを対処することで、トラブルシューティング能力も向上します。
最後に
以上! 「つよつよエンジニア」になるために私が実践してきた8つの習慣をご紹介しました。
今回ご紹介した習慣は、すぐに効果が出るものではありません。しかし、日々の積み重ねによって、着実にエンジニアとしての基礎力と応用力を高め、「つよつよエンジニア」へと成長できます。
もし本記事が参考になったと感じていただけたら、私のQiitaアカウントとXアカウントのフォローいただけると、つよつよエンジニアの生き様や思考を覗けると思います!
社内のメンバ育成も兼ねて、積極的にナレッジ投稿もしています。