Google Cloud Champion Innovators Advent Calendar 2025 の16日目の記事です。ちょうど10のカウントダウン開始!
DevOpsに関する様々な要素が組織やチームのパフォーマンス、従業員のウェルビーイングへ与える影響を研究しているDORAの、最新のレポートであるState of DevOps Report 20251のサマリを紹介したいと思います!
と去年は言っていたのですが、今年は時代に合わせて(?) State of AI-assisted Software Developmentに変わっています。
レポート概要は大きくは変わらないのですが、昨年もフィーチャーされていたAIがどのようにソフトウェア開発に影響を与えているかの考察が増えています。
また、これまで長年続いてきたソフトウェア開発のパフォーマンスに応じて4つのレベルに分けていたものは、新たに7つのチームアーキタイプとなっています。
そしてDORAのように、AIについてもケイパビリティモデルが公表されています!
TL; DR
- State of DevOps Reportは世界最大のDevOpsに関する研究
- AIの活用はほぼユニバーサル (参加者の90%が利用。去年から+14.1%)
- AIは良い側面も悪い側面も増幅する
- Value Stream Management (VSM)がAIの効果を加速する
- Platform Engineeringもユニバーサルになってきている (90%が適用)
- 日本からのサーベイ回答者は1% (他が増えた?もっとみんなで回答して日本の分析もしてもらえるようにしたい。。。!)
DORAの研究方法
研究方法は変わってないので去年の記事を参考にしてみてください。
今年のレポートはサーベイ5,000ぐらい、インタビュー100時間ぐらいが元にされています。
2025レポートのエグゼクサマリ
AIはアダプトするかどうかではなく、どのようにAIから価値を得るかにシフトしています。
AIの活用は高いパフォーマンスのチームではパフォーマンスが強化され、うまくいっていないチームでは機能障害が更に増えているとしています。
組織のシステムが整っているかに依存しており、内部のプラットフォームやワークフローの明確さ、チームのアライメント等があって初めてAIが良い方向に機能する一方で、それらが整っていない場合は局所最適になり以降のプロセスがカオスと化すとしています。
その他の大きな発見は以下の通りです。
- AIの適用は90%の回答者で見られ、80%が生産性が向上したと考えています。一方で30%はAI生成されたコードを信じていないとしていることから検証スキルが重要であると結論付けられています。
- AIの適用はツールだけにとどまらないため、AIのケイパビリティモデルを定義し、7つの軸で評価しています。
- AIの適用はソフトウェアデリバリのスループット向上につながっています(去年と逆)。一方で未だにデリバリの不安定さに貢献しています。
- 7つのチームアーキタイプを特定しており、それぞれが改善するポイントを整理しています。
- VSMの活用により、AIの効果が拡張できるとされています。
- 90%の組織がPlatform Engineeringを適用しており、内部プラットフォームの高いクオリティを実現しています。
AIのインパクトに関しては以下のような効果があると分析されています。
(青は高いほどポジティブ、赤は高いほどネガティブなため、delivery instabilityが高いのがマイナスとされています)
レポートの分析とどのようにレポートを活用すべきか?
AIの適用に関して以下の注意がされています
- AIの適用はツールではなく、組織のシステム(技術や文化)により効果が分かれる
- 広く利用するが検証するtrust but verifyが重要 (workslopを思い浮かべますね)
- 品質の高いプラットフォームが重要
- パフォーマンスに関する7つのチームアーキタイプ (AIは悪い効果も増幅するのでまずは改善?)
- VSMのようなシステム志向が重要
パフォーマンス分析
チームのパフォーマンス分析は去年までは5つの軸でElite, High, Medium, Lowの4つに分けられていました。
2025年のレポートでも5つの軸自体は変わっていません。
しかしこれらの5つの軸は結果であるため、何がその結果に紐づいているかの分析を行うために様々な観点でクラスタ分析した結果、影響を及ぼす観点として以下を発見しています。
- チームパフォーマンス
- プロダクトのパフォーマンス
- ソフトウェアデリバリのスループット
- ソフトウェアデリバリの不安定さ
- 個人の有効性
- 価値のある仕事
- 軋轢
- バーンアウト
上記を元に7つのチームアーキタイプに分類されています。
| アーキタイプ名 | 所属する% |
|---|---|
| Foundational challenges | 10% |
| The legacy bottleneck | 11% |
| Constrained by process | 17% |
| High impact, low cadence | 7% |
| Stable and methodical | 15% |
| Pragmatic performers | 20% |
| Harmonious high-achiever | 20% |
また、ソフトウェアデリバリのスループットと不安定性で評価をすると以下のようになっており、これまで通りスピード vs 安定性は神話であり両立可能なもの、と結論づけています。
レポート内ではサーベイ時の質問と回答者の分類、全体における位置づけが確認できるようになっているため、それを元に自分たちのチーム/組織のアーキタイプを判断できます。
立ち位置が分からないと正しい改善方法も分からないため、ぜひ確認しましょう!
AIの適用
開発におけるAIの活用は増えており、medianで2時間程度利用しています。
一方で問題解決やタスクを行う際にAIを即時活用する割合はあまり高くなく、39%は時々しか利用していないと回答しています。
個人の生産性に関しては80%がポジティブな効果があると回答した一方で、40%はわずか(slightly)と回答しており、10%は生産性が下がったと回答しています。
また、コードの品質に関しては59%がポジティブ、30%がニュートラル、10%が品質が下がったと回答しています。
最後にAIへの信頼は70%が信頼寄り(somewhat/a lot/a great deal)と回答した一方で、残りの30%は保留のスタンスを取っています。
AI活用による影響
2025のレポートでは、AIを採用するかの判断軸として依存、信頼、再帰的に使っているかの3つの組み合わせと挙げていて、AI活用の影響が成果に与える影響を分析しています。
この結果を2024のレポートとの比較し以下のような分析をしています。
ポジティブな関係として継続しているもの: これらについては一般論に近くなっていると分析しています。
- 個人の有効性(生産性)の向上
- コードの品質の向上
- チームのパフォーマンスの向上
- 組織のパフォーマンスの向上
なかなか変わらない結果: 変わらない原因として個人が属するシステムやプロセス、文化に起因していると分析しています。
- 軋轢とは無関係
- バーンアウトとは無関係
- ソフトウェアデリバリの安定性の悪化
2024年からのネガティブからポジティブへの変化: AIの適用が進んでいることを示唆すると分析しています。
- 価値のある時間
- ソフトウェアデリバリ
- プロダクトのパフォーマンス
ソフトウェア開発へのAIの適用は過渡期であり特に年々変わっている観点に着目しています。
AIの性能や使いやすさは向上する一方で、組織はAIの活用に適応してきているため、今後も注視が必要です。
(AIを活用するための組織や構造の変革については後述のDORA AI Capabilities Model、The AI mirrorで説明されています。
DORA AI Capabilities Model
これまではAIを誰がどのように利用しているかを分析するだけでしたが、今年からAI活用が効果を最大化するための条件を調べており、その結果をケイパビリティモデルとして公開しています。
AI Capabilities Modelは以下の7つのケイパビリティで定義され、DORAのコアモデルと同様検証、改善されていきます。
過去の研究だけでなくインタビューやSMEからのコメントを元に作られており、パフォーマンスの効果も確認されているため、要注目です!
- 明瞭なAIのスタンスとそのコミュニケーション
- 健全なデータエコシステム
- AIがアクセス可能な内部データ
- 強いバージョン管理のプラクティス
- 小さなバッチでの作業
- ユーザ中心志向
- 高い品質の内部プラットフォーム
ケイパビリティのインパクトは以下のようになっています。
これらに基づいた実践的なアドバイスとして以下を挙げています。
- AIポリシの明確化と共有
- データを戦略的なアセットとして取り扱う
- AIを内部のコンテキストにつなげる
- AIに関するセーフティネットを取り入れて強化する
- タスクの単位を小さくする
- プロダクトの戦略にユーザのニーズを中心にする
- 内部のプラットフォームに投資する
明瞭なAIのスタンスとそのコミュニケーション
AIアシストの開発ツールに対する期待値や何が許容されるかに関して、組織のポジションを包括的かつ認識できているかを指し、4つで構成されます。
- 仕事でのAI活用が期待されているか
- 組織がAIの実験をサポートするか
- どのAIツールが許可されているかが明確か
- AIポリシが直接適用可能か
健全なデータエコシステム
組織内部のデータの総合的な品質を指し、3つで構成されます。
- 内部のデータソースの総合的な品質
- 内部データソースへのアクセシビリティ
- 内部のデータソースのサイロ/分割具合
AIがアクセス可能な内部データ
AIが組織内部のデータやシステムに接続できているかを指し、4つで構成されます。
- AIツールが会社内部の情報にアクセスできていると感じるか
- AIツールが会社内部の情報をコンテキストとして使ったレスポンスになっていると感じるか
- AIツールのプロンプトに会社の内部情報を入力した頻度
- AIツールを利用して会社内部の情報を取得した頻度
強いバージョン管理のプラクティス
長い間ソフトウェア開発でも高いパフォーマンスチームの基礎とされてきた強いバージョン管理ですが、コード生成の量と速度が増えるAIにおいては更に重要な要素となります。
適した頻度のコミット/バージョン管理は、ロールバックできるといった心理的安全性や検証観点時の変更量のコントロールにも寄与すると考えられています。
小さなバッチでの作業
前述のバージョン管理に続いて、小さなバッチでの作業も長い間DORAのケイパビリティとして使われていて、チームが変更を小さい単位に分けて高速にテストや検証できる状態を指し、3つで構成されます。
- 主要なアプリケーションやサービスの直近のコミットで変更された行数
- 一つのリリースやデプロイメントに含まれる変更の数
- 開発者がアサインされたタスクを終えるのにかかる時間
ユーザ中心志向
ユーザ中心志向も同じく過去のイテレーションでも含まれていた項目で、主要なアプリケーションやサービスでチームがエンドユーザのエクスペリエンスを考える度合いを指します。
これは3つで構成されます。
- ユーザのバリューを作成することがチームのフォーカスであること
- ユーザのエクスペリエンスの優先度が最上位
- ユーザ志向であることがビジネスの成功の鍵
高い品質の内部プラットフォーム
内部プラットフォームの品質の利点は過去のDORAのサーベイでもフォーカスされていたポイントで、プラットフォームとは複数のアプリケーションやサービスで共有されるケイパビリティと定義しています。
スコアは1つですが、12個の質問(主にプラットフォームがどのようにアプリケーション開発を支援し、想定通りの動きをするか、といった質問)で構成されます。
プラットフォームエンジニアリング
2024年のレポートでプラットフォームエンジニアリングの分析が始まり、当時は組織のパフォーマンスや生産性向上のトレードオフとしてソフトウェアデリバリの安定性とスループットが低下するとされていました。
今年のレポートではプラットフォームとはツールの集合ではなく、パフォーマンスやウェルビーイング、変革的な技術を資本化することに影響を及ぼす総体的な経験であると分析されました。
重要な発見として以下が挙げられています。
- プラットフォームの適用は90%
- 専任のプラットフォームチームのモデルが支配的で76%
- 高い品質のプラットフォームは相乗効果で組織のパフォーマンス、生産性、チームのウェルビーイングを向上する
- プラットフォームはリスク管理、スピード向上と実験を増加する代わりにソフトウェアデリバリの安定性を若干悪化させる
2024も提言されていましたが、内部の開発者向けプラットフォームではユーザ志向が重要とされています。
2025年はプラットフォームの時代として以下が必要とされています。
- ユーザの総体的な経験を重要視する
- プラットフォームをAIの基礎とする
- プラットフォームを利用してリスクアペタイトをキャリブレーションする
Value Stream Management
2025から取り上げられた新しいトピックです!
背景として、組織はイノベーションを早くするプレッシャーにさらされており、AIやプロセス自動化、プラットフォーム活用により、これまでよりも相当早いペースで物事を進めています。
しかし、それらが実は価値を届けておらず、より早くチームをバーンアウトし、複雑性を追加しているのではないか、という心配があります。
これまでのDORAの研究から高いパフォーマンスの組織は新しいツールに適応するだけでなく、価値を提供することに長けており、より良くなること自体により良くなっていくケイパビリティが高いことが分かっています。
2025年のレポートではバリューストリームを明確にして管理できる能力がキーとなると考えられています。
Value Stream Management (VSM) とは
VSMはアイディアから顧客までのタスクのフローを可視化して改善するプラクティスです。
一般的にソフトウェアのリリースサイクルを考えると、プロセス内で複雑な詳細が出てくるため、ビッグピクチャを捉えるのが難しくなります。
VSMはチームがプロダクトのディスカバリ、デザイン、開発、テスト、デプロイメント、オペレーションと行った全てのプロセスを詳細に共有の場で図示することによって、隠れていたパターンが明確化されます。
サンプルは以下のようになります。
改善のポイントは個別最適ではなく、全体のフローの最適化になります。
DORAで継続して提言されていることですが継続的な改善と、それを実践する文化が重要です。
また、全体最適が重要と述べましたが、優れた技術を基盤にすることが重要であり、さらにそれは洗練された設計の内部のプラットフォームによって支援されます。
The AI mirror
AIが組織の本当のケイパビリティを反映して増幅することが分析されています。
これは2024年の分析で仕事を加速するためのAIがなぜソフトウェアデリバリのスループットと安定性を悪化させたのか、という議論から深堀りすることになりました。
2025年は2024年と異なり、ソフトウェアデリバリのスループットはプラスに転じた一方で、安定性は引き続き悪いインパクトがあるとされています。
2025年の分析で定義されたDORA AIケイパビリティモデルより、ツールやスキルではなく、AIが活用される環境に影響されることが分かっています。
組織は個の集まりではなく、システムである
組織は個の集合ではなく、お互いに依存関係を持ったネットワークのようなもの、という考えが前提になっています。
これにより、全体(組織)の一部を改善しても他への影響は悪化する可能性があり、本質的な改善を実現するためには全体を見て最適化する必要があるとしています。
これはアジャイルやDevOpsで組織構造を変革したのと同様で、AIの活用に関しても構造上の変革が必要になるとしており、VSMの分析と整合しています。
Augmenting and Evolving
AIの価値を最大限活用するためには増強と進化の2つのパスがあり、両方とも必要とされています。
また、両方に共通していることとして、戦略的かつ実践的にAIを適用することで、ソフトウェアがビルド、デリバリ、セキュアになるプロセスの触媒となります。
増強の例:
- コードレビューとハンドオフ
- インテグレーションとデプロイメントパイプライン
- データインフラ
- セキュリティとプライバシのプロトコル
- 変更管理と文化へのアラインメント
進化の例:
- AIネイティブなデリバリパイプライン
- AIネイティブなデータシステム
- AIネイティブなセキュリティ
- AIネイティブなコラボレーションモデル
AI変革の実践的なステップ
組織がAI変革の努力を早く始めれば始めるほど、既存のプロセスの影響を受けずにAIのためのシステムが構築できるため好ましいとされています。
始めのステップはVSMを利用して現在のワークフローを調べ、調整のコストや遅延、リワークが頻発している箇所がAIツールによる加速を阻害しているかを調べることが重要とされています。
また、VSMの活動ではエグゼクティブのスポンサシップが重要とされており、インサイトは内部から来るべきとしています。
組織は小さく変更を始め、目的に投資し、複数のロールにまたがってアカウンタビリティをもたせることで徐々に実現できるとしています。
サマリ
今年のレポートでは以下が新しく紹介、分析されています。
また、去年に引き続きプラットフォームエンジニアリングの重要性やシステム志向の重要性も説明されています。
- ソフトウェアデリバリのパフォーマンス (4つのプロファイル->7のチームアーキタイプ)
- DORA AIケイパビリティモデル
- Value Stream Management
チームアーキタイプもAIケイパビリティモデルも、 まずは自分たちの立ち位置を把握しないことには改善できません ("If you can't measure it, you can't improve it") 。
まずは立ち位置を把握し、また来年の研究結果までに世の中の全てのチームが良い改善サイクルに乗っていることを祈ります!
※ 文章中の図は全てDORA 2025からの引用です。





