はじめに
2025年のアドベントカレンダー22日目を担当します、kenji_aです。普段は事業会社でデータサイエンティストをしています。
今年のアドベントカレンダーのテーマが「1年の振り返り」ということで、何を書こうか非常に悩みましたが、技術から離れてデータサイエンティストの資格取得の意義について、自分の実情を踏まえて書いていきたいと思います。
自身の整理も兼ねているので、結論を冒頭に置かず、「なぜそう考えるに至ったのか」という思考過程も含めて書いてみます。
1. なぜ資格の話をするのか
今年を振り返ると、全く資格を取っていないことに気づきました。
これまでは、若手データサイエンティストとして知識を増やしたくて、毎年がむしゃらにデータサイエンス関連やIPAの資格を何かしら取得してきました。
この時は、資格勉強を通して、学習の軸ができ、積み上げている実感も得やすく、日々の学習のモチベーションにもなっていました。
ところが今年は、ひとつも取らないまま年末が近づいています。
理由としては、単純な忙しさもありますし、ライフステージの変化により学習の優先順位が下がった面もあります。ですが、それだけでは説明しきれない感覚が残っています。
たぶん一番大きいのは、LLMの登場とその進化です。
LLMによって、要約も、コードも、調べ物も、短時間で出せるようになりました。
実際、この文章自体もLLMと壁打ちしながら書いています。
一般的な作業だけでなく、分析設計、データクレンジング、EDA、モデリング、検証、解釈、ドキュメンテーション、説明といった、データ分析の一連の作業も、単に軽くなったというより、作業の性質そのものが変わった感覚があります。
すると、資格勉強に対する自分の見え方も変わってきました。
これまで「知識を身につける」ことで得られていた優位性が、LLMによって相対的に小さく見えできました。
もちろん、知識そのものが無駄になったわけではありません。
ただ、「覚えていること」や「すぐ手が動くこと」自体が差別化になりにくくなってきたのは、否定しづらいです。
その結果として、自分の中に資格を取る意義への小さな疑念が生まれたのだと思います。
「頑張って覚えた先に、また別の便利な道具が出てきて上書きされる」——そんな感覚が、少しだけあります。
この感覚が、勉強のモチベーションをじわじわ削っていたのかもしれません。
だからこそ今、あらためて 「LLM時代に資格を取る意義」を整理してみようと思いました。
自分がどこで引っかかっているのかを、言葉にして確かめようと思います。
2. LLM時代のデータサイエンティストはどこへ向かうのか
つい先日、データサイエンティスト協会のスキルチェックリストの改訂もありましたが、ますますデータサイエンティストに求められる役割は、広がってきているように感じています。
LLMいわく、「作る」だけでなく、「運ぶ」「守る」「育てる」の比重が重くなっている、というイメージらしいです。
確かにLLMの普及で、PoCや試作品は以前よりずっと作りやすくなりました。
だからこそ、そこから先——現場に定着させ、継続的に回し、事故を起こさずに改善していく——が相対的に重要になります。
言わずもがな、実務ではモデルの精度だけでは終わりません。
データ基盤、運用、監視、UI、社内ルール、現場の業務設計、責任の所在。こうした要素が絡み合い、「ここから先は別チーム」という境界も曖昧になりがちです。
結果として、職能の“横断”が増え、コミュニケーションの摩擦も増えやすくなります。
さらに、LLMは便利であるほど、前提がズレたままでも、それらしい答えを気持ちよく出せてしまいます。
だからこそ、問いの設計、論点整理、制約条件、リスク、責任範囲といった“土台”を自分の頭で押さえる重要性は、むしろ増していると感じています。
こうした流れを踏まえると、資格の価値もまた、以前と同じ形では語れないはずです。
3. 結論:LLM時代に資格を取る意義は何か?
LLMと壁打ちしてしっくりきた結論は、資格の価値が「知識量の証明」から、次の3つへスライドしてきているということでした。
3.1 意義1:学習の“地図”になる
いまは学ぶべき論点が増えすぎています。
LLMは局所最適、つまり「いま必要そうな答え」を出すのは得意ですが、学習設計(どこから何を埋めるか)は放っておくと偏りがちです。
もちろん学習設計自体もLLMに相談できます。
ただ、だからこそ逆に、自分が納得しやすい道筋だけを採用してしまう危うさもあります。
資格は、学習の順序と範囲を外部化してくれます。
実務で得た断片的な知識を、体系としてつなぎ直すきっかけにもなります。
独学の偏りを抑え、「全体像を見失いにくくする」——それだけでも意義は十分にあると思いました。
3.2 意義2:共通言語になる
職能同士のコミュニケーションが増えるほど、会話のコストが上がります。
用語の定義、前提、典型的な論点が揃っていないだけで、議論は簡単にズレます。
「それって結局どの指標で評価しますか?」
「再現性はどの粒度を想定していますか?」
こうした確認が増えるほど、認識合わせの摩擦は実務のスピードを落とします。
資格勉強で得る用語体系や基本的な型は、チームでの“最低限の共通理解”として機能しやすいです。
LLMで各人が手を動かせるようになるほど、むしろ共通言語の価値は上がるのだと思います。
3.3 意義3:説明責任の入口になる(ガバナンスが“仕事”になる)
生成AI活用が進むほど、品質・偏り・漏えい・安全性など、事故のバリエーションは増えます。
この領域は「LLMが出したからOK」になりにくく、最終的には人が責任を負います。
「なぜこの判断でよいのか」
「何がリスクで、どう抑えているのか」
これを説明できなければ、実装は前に進みません。
だからこそ、ガバナンスやリスクの論点を学ぶ価値は、むしろ上がっていくと感じています。資格は、そのための入口として機能しやすいです。
4. まとめ:資格はゴールではなく手段
LLMの登場によって、「知識量の証明」としての資格の価値は確かに薄れました。
それでも、学習の地図、共通言語、説明責任の入口——この3つの観点では、資格の意義はまだ十分に残ると思います。
ただ、整理してより強く感じたのは、資格はゴールではなく手段だということです。
自分が得たいもの(地図なのか、共通言語なのか、説明責任の担保なのか)に対して、本当に資格が最適な手段なのかは、常に問い続ける必要があります。
現時点の自分としては、資格勉強よりも、何か手を動かして形にし、そこから得た学びを実務に接続していくほうが、合っている気がします。
あとは実業務の深いドメイン知識(ビジネス理解)も身につけたいですね。
そうなると年末年始は、資格勉強ではなく、LLMと一緒に何か作ってたり、実業務の深いドメイン知識の習得に時間を割きたいと思います。
ではでは。
データラーニングギルドとは?
データラーニングギルド は、株式会社データラーニングが運営する、
データサイエンスを中心とした学習者・現役データサイエンティスト・エンジニアのためのコミュニティです。
学びの共有・キャリア形成・横のつながりを大切にし、
勉強会、LT会、技術相談、キャリア支援、案件紹介など、
「データ領域で挑戦したい人を応援する活動」を幅広く行っています。
初心者から実務者まで、誰もが成長できる場づくりを目指しています。