先に結論を書きます。
私はClaude Code Maxの$200/月プランを8ヶ月続けました。累計32万円。使用ログを7カテゴリに分解して、各カテゴリを「RTX 4070 + Qwen 3.6 35B-A3B」で代替できるかを判定したところ、時間換算で約4割はローカルLLMで置き換え可能でした。残り6割は代替不可です。
ちなみに「4割は代替可能だった」と気づくのに32万円かかったので、授業料としてはやや割高です。
「Claude Code Maxは高い」も「安い」も、両方まちがいです。タスク別に見なければ意味がない金額です。この記事では、8ヶ月分の使用ログを月別・カテゴリ別に集計し、どこがローカル代替可能で、どこが代替不可なのかを実測で切り分けます。
なお本記事は、2026年08月から予告されているAnthropicの課金変更(Max従量制化)の前、固定額プラン下での8ヶ月実測です。従量制移行後は同じ使用パターンでも金額が変わる可能性が高いので、その位置づけを最初に置いておきます。
この記事のスコープと、既存記事との差分
同ジャンルで書き分けが必要なので、位置づけを明示します。
- 「RTX 4070でローカルLLMの電気代を24時間計測」: 24時間の累積電気代(円)
- 「ネットにもAPIにも繋がず、ローカルQwen 35Bでコーディングエージェントを動かす」: 完全ローカル運用の構築記
- 「Claude Code・Cursor・Codex、結局どう使い分けるのが正解か」: 3ツール横比較
- 本記事: Claude Code Max単体を8ヶ月、7カテゴリ×月別で分解し、カテゴリごとにローカル代替可否を判定
8ヶ月分の使用ログ(月別 × 7カテゴリ)
私はClaude Codeの session.jsonl と、claude-code-usage --json の日次ダンプを毎晩バックアップしています。そこから8ヶ月分をカテゴリ別に集計しました。カテゴリは以下の7つです。
- コード生成: 新規ファイル/新規関数の実装
- リファクタ: 既存コードの構造変更(挙動を変えない)
- レビュー: 差分読解、バグ指摘、命名レビュー
- 議事録: mtg文字起こしからの要約・アクション抽出
- 翻訳: JA↔EN/PT/ES(記事・READMEの一次翻訳)
- 検索: リポジトリ内・Web検索と要約
- デバッグ: エラーログの分解、根本原因の仮説立て
月別にセッション時間(Claude Codeが動いていた実時間、waitは除く)で並べたのが以下です。単位は分、n=1(私1人の実運用データ)、24時間×5日/週稼働の月あり。
| 月 | コード生成 | リファクタ | レビュー | 議事録 | 翻訳 | 検索 | デバッグ | 合計(h) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025-12 | 1,850 | 720 | 610 | 280 | 340 | 720 | 480 | 83.3 |
| 2026-01 | 2,120 | 810 | 690 | 320 | 380 | 810 | 540 | 95.0 |
| 2026-02 | 1,780 | 690 | 580 | 260 | 320 | 680 | 460 | 79.5 |
| 2026-03 | 2,340 | 890 | 760 | 350 | 420 | 890 | 590 | 104.0 |
| 2026-04 | 2,010 | 780 | 660 | 300 | 360 | 770 | 520 | 90.0 |
| 2026-05 | 2,470 | 950 | 810 | 370 | 450 | 940 | 620 | 110.2 |
| 2026-06 | 2,180 | 840 | 720 | 330 | 400 | 830 | 550 | 97.5 |
| 2026-07 | 2,050 | 790 | 680 | 310 | 380 | 790 | 520 | 92.0 |
| 合計 | 16,800 | 6,470 | 5,510 | 2,520 | 3,050 | 6,430 | 4,280 | 751.5 |
| 割合 | 37.2% | 14.3% | 12.2% | 5.6% | 6.8% | 14.2% | 9.5% | 100% |
$200/月固定なので、$/カテゴリ換算は「$200 × 各カテゴリの時間割合」で近似できます。
コード生成に月$74.4、リファクタに月$28.6、レビューに月$24.4、検索に月$28.4、デバッグに月$19.0、翻訳に月$13.6、議事録に月$11.2。ここが支出の内訳です。
各カテゴリ、ローカルLLMで代替できたか
代替LLMはRTX 4070(12GB VRAM) + Qwen 3.6 35B-A3B(MoE、GGUF Q4_K_M、cpu-moe有効)。beam推論ではなくgreedy、context長は32k(実用範囲)で運用しました。同じプロンプトをローカルとClaude Code Maxの両方で実行し、以下の基準で「代替可」を判定しました。
- 出力の妥当性: 私が最終採用したコードに対し、ローカル出力の修正コストがClaude Codeの2倍以内
- 待ち時間: 同じ長さの出力で3倍以内(Qwen 35Bで大体40-60 tok/s decode)
- 文脈: 32k tokenで足りるタスク
判定結果です。
コード生成(37.2%): 部分代替
新規ファイルの雛形や、既存パターンの複製、ちょっとしたユーティリティ関数は、ローカルで十分でした。私の実感では、単一ファイル完結・200行以下・既存パターン踏襲のコードは95%が代替可能です。
ダメだったのは以下です。
- 複数ファイルにまたがるリファクタ + テスト追加を1発でやるケース
- ツール(MCP、Playwright、Bash)を跨いだ実装(ローカルは Agent SDK 未対応で連携できず)
- ライブラリの最新仕様に依存する実装(Qwen 3.6 のカット日は2026-03。それ以降のAPIは知らない)
代替可能率は時間ベースで約60%。$/月換算で$44.6が代替可、$29.8がClaude Code必須です。
リファクタ(14.3%): 高代替
「関数抽出・命名変更・型付け追加」レベルのリファクタは、ローカルで98%こなせます。理由は、リファクタは新規発想が要らないからです。既存のコードをパターンに沿って整形するだけなので、Qwen 35Bでもほぼ差が出ませんでした。
代替可能率は約90%。$/月換算で$25.7が代替可。
レビュー(12.2%): 部分代替
差分数百行の意図抽出・命名フィードバックは代替可。ただし、アーキテクチャ判断が絡むレビュー(「この抽象は早すぎる」「この境界はここではない」)はOpus級推論が必要で、ローカルでは論点を外します。
代替可能率は約55%。
議事録(5.6%): 完全代替
mtg文字起こしから要約とアクション抽出は、Qwen 35Bで完璧に代替可能です。私は7ヶ月目からmtg議事録用途を完全にローカル移行しました。Claude Codeでやる合理的な理由がありません。
代替可能率は約100%。$/月換算で$11.2が代替可。
翻訳(6.8%): 完全代替
JA↔EN一次翻訳もローカルで十分でした。専門用語の統一・トーン調整は最終的に人間の手直しが要るのはどちらも同じで、質の差は生じません。
代替可能率は約100%。$/月換算で$13.6が代替可。
検索(14.2%): 代替不可
これがローカル代替の最大の壁です。Claude CodeのWebSearch/WebFetch/context-forge検索は、リアルタイム性 + 大きな文脈での要約力が必要で、ローカル32k contextでは物理的に足りません。
代替可能率は約10%。$/月換算で$25.5がClaude Code必須。
デバッグ(9.5%): 部分代替
kubectl logs や journalctl を人力で貼り付けて仮説を出させる用途はローカルでいけます。ただし、**Bashやgrepを能動的に叩いて原因を追う「エージェント的デバッグ」**は、Agent SDKが必要でローカル不可です。
代替可能率は約40%。
8ヶ月合計 : 代替可能率と実質コスト
上記を合算します。
| カテゴリ | 割合 | 代替可能率 | 代替可時間 | 代替不可時間 |
|---|---|---|---|---|
| コード生成 | 37.2% | 60% | 22.3% | 14.9% |
| リファクタ | 14.3% | 90% | 12.9% | 1.4% |
| レビュー | 12.2% | 55% | 6.7% | 5.5% |
| 議事録 | 5.6% | 100% | 5.6% | 0.0% |
| 翻訳 | 6.8% | 100% | 6.8% | 0.0% |
| 検索 | 14.2% | 10% | 1.4% | 12.8% |
| デバッグ | 9.5% | 40% | 3.8% | 5.7% |
| 合計 | 100% | — | 59.5% | 40.3% |
時間ベースで約4割はローカルLLMに移行可能、6割はClaude Code Max必須。金額に直せば、$200/月のうち$80分はローカル代替候補、$120分は代替不可です。
私はいま、議事録・翻訳・簡易リファクタをローカルに完全移行し、Claude Codeプランを$200/月維持したまま「使いどころを絞る」運用にしました。ムダを削るのではなく、入り口を分ける発想です。
「代替不可な6割」の中身
代替不可な6割の内訳を1文で:
Opus級推論(アーキテクチャ判断)、巨大コンテキスト(数十ファイル同時読解)、ツール協調(MCP/Bash/Playwright を1タスクで束ねる)。
この3つはローカルLLMがハードで詰みます。VRAM 12GBの制約でcontext 32kが実質限界、Agent SDKもない、tool useの学習も不足。この3領域に月$120を払うかは、個人事業主として「機械にやらせないと1日終わらないタスクがあるか」で決まります。私はある、と判断しました。
具体例で書きます。私が先週やった作業のうち、ローカルでは無理だったのは以下です。
- Next.js 15 App Routerでリンク構造を作り直し、既存の32ファイルからimportパスを一括修正しつつ、テストを通す(context数十万トークン + Bash + npm test の反復)
- MCPサーバーの認証周りの脆弱性チェック(WebSearch でCVE参照 + git blame でregressionを追う複合作業)
- 商用RAGパイプラインのdebug(Playwright でE2E再現 + logs解読 + 修正 + 再度Playwrightで確認までを一連の会話で回す)
この3つはどれも、単一のプロンプト応答では終わりません。ツールを叩いて結果を受けて次を判断する反復が必要で、そこがローカルLLMには構造的に足りていません。Qwen 35B自体は賢いのですが、Agent側の実装が追いついていない、という印象です。
運用切り替えの具体的なワークフロー
「代替可なタスクをローカルに移す」を実務でどう回しているかも書いておきます。
私は Claude Codeを起動する前に、その日のタスクを頭の中で3分類します。
- 議事録・翻訳: 最初からOllama + Qwen 35Bで別ターミナルを開く。Claude Codeは開かない
- リファクタ・単一ファイル生成: まずローカルに投げる。90秒待って出力が微妙なら Claude Code に切替
- 検索・複数ファイル・デバッグ: 最初から Claude Code
この分岐だけで、Claude Code のセッション時間が体感で3割減りました。従量制移行後は、この3割ぶんが直接コスト削減に効く見込みです。
Ollama側のセットアップは、ollama pull qwen2.5:32b-instruct-q4_K_M (Qwen 3.6が来る前は 2.5 を使っていました)一発です。Qwen 3.6 35B-A3Bも今月からOllama公式レジストリで配布が始まり、ollama pull qwen3.6:35b-a3b で入ります。RTX 4070 12GB + cpu-moeで40-60 tok/s decode(私の実測、初回prompt-evalは200 tok/s ぐらい)。
議事録用途はさらに簡単で、私はShortcutで ⌘+⌥+M に「録音ファイルをQwen 35Bに投げて要約」を割り当てています。mtg終了→Shortcut発火→3分待つ→議事録がクリップボードに、というフローです。Claude Codeを開くよりずっと速いです。待ちの3分でコーヒーを淹れているので、節約したClaude Code代の一部は普通に豆代へ化けています。
実測値の注意点と限界
数字は私1人・8ヶ月・1環境の実測です。以下の限界があります。
- セッション時間はwaitを含まない: 手が止まっている時間は除外しています。実際に机の前に座っていた時間はもっと長いです
- 代替可判定は私の主観: 「修正コストが2倍以内」は私の合意基準で、他の人にはもっと厳しくもゆるくもなり得ます
- Qwen 3.6 35B-A3Bのカット日は2026-03: それ以降のAPI・ライブラリ変更は知らないので、その領域は判定が甘くなっている可能性があります
- 私は特に「テスト自動化」「議事録」「翻訳」の比率が高い: フロントエンド専業の人はカテゴリ比率が違うはずで、代替率の絶対値もズレます
数字はあくまで構造の参考として使ってください。カテゴリ別に分解する発想自体は誰にでも移植できます。
08月からのAnthropic課金変更を前に
2026-08 からClaude Code Maxが従量制に近い体系へ変わる予告があります(公式発表待ち)。従量制になると、上のカテゴリのうち**「翻訳」「議事録」のように大量トークンを吐かせがちなタスク**が支出を押し上げる可能性が高いです。
固定額プラン下でこの2カテゴリを流し放題にしていた運用は、従量制移行後にコスト構造が変わるので、今からローカル移行を仕込んでおくのは合理です。私は6月時点でその判断をし、月11時間ぶんの負荷をローカルに逃がしました。
まとめ
- 8ヶ月 × 7カテゴリで見ると、時間換算4割はローカルLLM代替可能
- 代替可能な内訳: リファクタ(90%)、議事録(100%)、翻訳(100%)、コード生成(60%)、レビュー(55%)、デバッグ(40%)
- 代替不可なのは検索(10%代替) と、Opus級推論・巨大コンテキスト・ツール協調の3領域
- 「Claude Code Maxは高い/安い」の議論は無意味、タスク別に見て初めて意味が出る金額
参考: Claude Code運用の書籍
Claude Codeの日次運用フローとタスク分解のコツは、こちらの本にまとめています。

