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FMSの一般講演で発表してみた(2/2):発表編

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はじめに

 Solid State Drive (SSD)関連の世界的な展示会のひとつにthe Future of Memory and Storage (FMS)があります。今この記事の公開日にイベント開催中です(現地時間8/5から8/7まで)

 前回の記事では、そんなFMSのキーノートや一般講演のスケジュールについて紹介しました。そこで今回は昨年(2024年)の一般講演で私が発表した内容について紹介して供養したいと思います。

 なお、他の発表も含め公開されている発表資料は公式Webサイトからダウンロード可能です(ダウンロードページはこちら)。今年(2025年)の発表資料はイベントからだいたい1か月後ぐらいまでには公開されると思われます。

 私が発表した内容は、CompactFlash Association (CFA)が仕様を策定したCFexpressというカード型リムーバブルメディアの最新仕様説明です。私はCFAの技術ワーキンググループにてCFexpress 4.0の仕様策定に関わらせていただいたこともあり、この内容を選択しました。発表タイトルは"CFexpress 4.0 and its applications in the industrial market"です。後半は営業的な内容が多いので、この記事では前半つまりCFexpressの概要説明をまとめます。

本記事中の図表および写真内の製品に記載されている名称、ロゴ、イラスト、デザインなどは各社や団体が権利を有しています。本記事では読者のCFexpressカードの外形寸法理解を助けることを目的にこれらの製品を引用しています。

まとめ

  • CFexpressとはカード型リムーバブルメディアの規格であり、Type A、B、Cの3種類がある
  • 大きさは、最も小さいType AのサイズがSDカードより一回り小さい程度
    • Type AカードのサイズはNintendo Switchのゲームカードと同じくらい
  • 最新規格CFexpress 4.0はPCIe 4.0に対応し、Type Bカードは物理帯域3.2GB/sを備える
  • 海外での発表時は部屋の照明や聴衆の多寡などに依存しないように準備するのが吉

CFexpressとは

 CFexpressは、PCIe / NVMeをインターフェースとするリムーバブルカードメディアの規格です。現在では、国内メーカーでいえばCanon EOSシリーズ、Nikon Zシリーズ、Panasonic Lumixシリーズ、Sony αシリーズ(アルファベット順)の上位機種など、主にハイエンドスチルカメラやカムコーダーの撮影データ記録用メディアとして使われています。というか現在ではこの用途がほとんどです。

 発表では以下のようなスライドで説明しました。一部だけ見えるカメラは私物です……が実はCFexpressカード対応ではありません。すみません。

CFxpressカードの現在の主たる用途を説明したスライド
図1:CFxpressカードの現在の主たる用途を説明したスライド

 CFexpressの仕様は3つのタイプ(Type A、B、そしてC)を定義しています。物理的なサイズは、Type Aが最も小さく、Type Cが最も大きいです。その大きさにあわせ、サポートするPCIeのレーン数も異なります。Type Aは1レーン、Type Bは2レーン、そしてType Cは4レーンです。つまり、物理的なデータ転送帯域もタイプにより異なります。

表1:CFexpressの種類と物理データ転送帯域と物理的な大きさの比較
CFexpress Type Aカード Type B Type C
PCIeレーン数 1 2 4
CFexpress 2.0 (PCIe 3.0) 物理帯域0.8GB/s 1.6GB/s 3.2GB/s
CFexpress 4.0 (PCIe 4.0) 物理帯域1.6GB/s 3.2GB/s 6.4GB/s
物理的な大きさ

 Type Cカードが備えるPCIeレーン数は4であり、これは市販されているSSDの多くと同じです。つまり性能ポテンシャルはそれらのSSDと同じであると言えます。

 この記事を書いている時点で最も普及している(製品数が多い)のはType Bカードです。Type Aカードを採用しているホスト機器にはSony αシリーズがあります。Type Cカード製品は残念ながらまだ存在しません。

 実際に発表で使用した資料から抜粋した外形寸法比較図が図2です。

CFexpressと他のストレージメディアの外形寸法比較(発表で使用したスライド)
図2:CFexpressと他のストレージメディアの外形寸法比較(発表で使用したスライド)

 おおまかに言えば、CFexpress Type AとType BはSDカードと同じくらいのサイズ、Type Cは結構大きくて長さはM.2 2280より少し短いくらい、というのがわかると思います。

 なお、Nintendo Switch 2の外部ストレージに採用されて俄然注目されているmicroSD Expressカードの外形寸法はmicroSDと同じです。またSD Expressカードの外形寸法はSDカードと同じです。ですので図2ではCFexpressカードと(micro)SD Expressカードとの比較も可能です。

 しかしやはり実物写真のほうがよりわかりやすいと思いますので、図2に登場したストレージいくつかとサイズを比較した写真を以下に示します。自宅で私物を撮影したものなので画質などが残念なのはご了承ください。

CFexpressカードと他のストレージとの外形寸法比較写真(1)
図3:CFexpressカードと他のストレージとの外形寸法比較写真(1)

 図3は左から、microSDカード、CFexpress Type Aカード、SDカード、CFexpress Type Cカード(モックアップ)、M.2 2280 SSD、です。写真中のCFexpress Type Cカードは、仕様で定められた外形寸法から3Dモデルをおこして3Dプリンタで作成したモックアップです。Type Bカードは手元になく省略しました。

 こうしてみるとmicroSDカードの小ささが際立ちます。あとType Cカードの大きさもよくわかります。

 カードの厚さを比較したものが次の写真です(図3と別の場所と別の比較品で撮影しました)。

CFexpressカードと他のストレージとの外形寸法比較写真(2)
図4:CFexpressカードと他のストレージとの外形寸法比較写真(2)

 図4も左から、microSDカード、CFexpress Type Aカード、SDカード、CFexpress Type Cカード(モックアップ)、M.2 2280 SSD、です。SDカードやmicroSDカードと比較するとCFexpressカードのほうが厚いです。というかmicroSDカードがとても薄いんですよね。

 また、図3や図4とは異なるカード型ストレージメディアとサイズを比較した写真が図5です。全て私物です。

CFexpressカードと他のストレージとの外形寸法比較写真(3)
図5:CFexpressカードと他のストレージとの外形寸法比較写真(3)

 Nintendo Switch用ソフトのカートリッジとCFexpress Type Aカードのサイズがほとんど同じ(Switch用ソフトのカートリッジのほうが一回り大きい)というのは新たな発見でした。取り回しのしやすさで考えるとDS(3DSなど含む)用ソフトカートリッジのサイズのほうが良い気もするのですが。その小ささのため、夜間に屋外の照明が少ない場所で落とすと発見が難しくなることは間違いないので注意か対策が必要です。

CFexpress 4.0の特徴

 CFexpressの最新仕様はバージョン4.0です。一つ前のバージョンは2.0なのでそのままバージョン番号を増やすと3.0になりますが、対応するPCIeのリビジョンと合わせる形で4.0となりました。

 CFexpress 4.0の最大の特徴はその「PCIe 4.0対応」です。PCIeのレーン数が2であるType Bカードは3.2GB/sという物理的帯域を備えます。もちろん実際にはこの帯域をフルに使えるわけではありませんが、ポテンシャルが倍になることは大きな進化です。

 加えて、先日CFAはVideo Performance Guarantee (VPG) Profile 5を発表しました。このVPG Profile 5では、CFexpress 4.0カード向けに800MB/sと1,600MB/sの書き込み性能保証の仕組みを策定しました。VPG Profile 5の認定を受けたカードをVPG Profile 5が定める方法で使うことで、前記の書き込み性能保証を実現する仕組みです。この書き込み性能保証は、長時間の連写や高解像度での動画撮影を特徴とするイメージング機器に好適です。すでにこれらの書き込み性能保証を実現した製品も発売されています。

 CFexpressカードはM.2 SSDとは異なりケースに覆われていますので、保守を含めて交換を前提とした運用を行う機器向けの高速リムーバブルメディアとして好適と言えます。

発表での小ネタ

 前回の記事で説明しましたが、私の発表が割り当てられたセッションは最終日の最後の時間で聴講者が両手で数えられるくらいしかいませんでした。私の発表ネタはFMSの主たるマーケットとこの手のリムーバブルメディアが合致しないため人気はないだろうと予想していたのですが、同じセッションに割り当てられていたMicronの発表(PCIe 6.0対応SSDの話)はかわいそうでした。

 また、発表した部屋の中が暗すぎて、聴衆に見ていただくために持参したCFexpressカードの実物(モックアップ含む)がとても見にくい環境でした。部屋やセッションチェアの意向により明るさが異なるのだと思うのですが、部屋が明るいかどうかに依存する発表構成にするのは避けたほうが良さそうだと反省しました。

 セッション終了後、参加者に「Type Cカードのモックアップを見せてくれ」と言われて渡したらとても面白そうに眺めてくれたことが唯一の救いでした……

おわりに

 今回の記事では、FMSの紹介の2回目として、昨年(2024年)のイベントで私が発表した内容をご紹介しました。

 FMSの一般講演では、流行のネタ(近年ではAI)はもちろん、市場動向などのマーケティング色の濃い内容から、思い切り製品を紹介する内容、標準化団体による仕様および仕様策定状況の説明、そして誤り訂正(ECC)やNANDフラッシュメモリやメモリコントローラに関する技術的にディープな内容まで幅広いトピックが扱われます。

 FMSでは特に近年はデータセンター向けやエンタープライズ向けの話題が多く市場的に偏りが見られますので、それを踏まえたうえで発表内容をチェックしていただくと良いかと思います。

ライセンス表記

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この記事はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。

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