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SREノススメ

Last updated at Posted at 2025-05-02

📘 Site Reliability Engineering 第1章 要約:「SREとは何か?」徹底解説


✅ この章の目的:なぜ「SRE」という職種が生まれたのか?

クラウド時代のサービス運用において、可用性・拡張性・スピードのすべてを満たすのは非常に困難です。
従来の「運用チーム(Ops)」と「開発チーム(Dev)」の役割分担では、以下のような対立が起こりがちでした:

Dev(開発)側の関心 Ops(運用)側の関心
新機能の高速投入 サービスの安定運用
ユーザーニーズへの対応 障害を起こさないこと
リリースの柔軟性 手順・手続きの厳格さ

このような摩擦を解消するために、Googleが考案したのが SRE(Site Reliability Engineering) です。

SREは「運用をソフトウェアエンジニアリングで解決する」という明確な思想を持ち、単なる“運用の自動化”を超えた信頼性のエンジニアリングとして機能します。


🧠 SREの基本哲学:「運用はバグである」

GoogleにおけるSREの起点は、「運用が手作業に依存している状態は、ソフトウェア的に解決されていないバグと見なす」という思想です。

つまり、SREの目的は以下のように定義できます:

「再現性がなく、人手に依存し、頻繁に発生する作業や障害は、必ず自動化または構造的に解消すべきである」

これにより、SREは以下のようなミッションを担います:

  • 手動対応の排除(例:runbook対応の自動化)
  • インフラのコード化(IaC)
  • 監視・リカバリの自動化
  • リリース管理の自動化(CI/CD)

🔁 SREとDevOpsの違いは?

SREとDevOpsはよく混同されがちですが、DevOpsはカルチャー(文化)、**SREは実装(エンジニアリング手法)**と捉えるのが適切です。

観点 DevOps SRE
性質 原則・文化・ムーブメント 実装ガイドライン・職種
中心思想 DevとOpsの協調 運用はソフトウェアで解決
実践方法 柔軟に各社に委ねられる Google流の具体的な手法に従う

SREは、DevOpsの理念を“Google流に実践するための型”として確立されたものとも言えます。


📏 SREの特徴的な概念:「エラーバジェット(Error Budget)」

SREの中でも特に重要な概念が「エラーバジェット」です。

これは、「100%の可用性は必要ない(むしろ非現実的)」という前提に立ち、“失敗を許容する枠”をあらかじめ設ける手法です。

たとえば:

  • SLO:可用性 99.9% → 許容される障害時間は 月に約43分
  • エラーバジェット:残りの 0.1% = ダウンしてもよい時間

エラーバジェットの概念図

image.png

✅ エラーバジェットの活用方法:

  • バジェットが 残っていれば → 積極的なリリース・機能開発を許可
  • バジェットを 超えたら → リリースを停止し、信頼性回復を優先

これにより、開発スピードと信頼性のバランスを合理的に管理できます。


🧰 SREの具体的な業務例

SREの職務は運用業務だけでなく、開発・自動化・改善活動に多岐に渡ります。

業務カテゴリ 具体例
運用自動化 冗長構成、障害検知ツールの実装、自動フェイルオーバー設計
信頼性向上 SLO/SLI設計、可観測性強化(Logging/Monitoring/Tracing)
Toil削減 毎日の定型作業の自動化、バッチやジョブの再設計
インシデント対応 障害時の迅速な検出・復旧・原因分析と振り返り(ポストモーテム)
リリース管理 カナリアリリース、ブルーグリーンデプロイ、リリース判定

📊 なぜSREが組織に必要なのか?

SREは、以下のような課題を抱える組織にこそ必要とされます:

  • リリースのたびに運用チームが疲弊している
  • システムは拡大したが、信頼性の担保が追いついていない
  • 障害発生時の初動が属人化しており、ナレッジも蓄積されない
  • モニタリングは入れているが、アラートが多すぎて逆に放置されている

SREはこれらを構造的に解決するための手段であり、単なる「運用代行チーム」ではありません。


💡 チームに取り入れるための第一歩

まずは、以下のようなアクションからSRE的な思想を取り入れてみるとよいでしょう:

  1. Toil(価値を生まない繰り返し作業)の洗い出し
  2. SLOとSLIを仮でもよいので定義し、信頼性を“測定可能”にする
  3. 障害が発生したときに「自動で検知・通知されていたか?」をチェック
  4. Postmortem(インシデント振り返り)の文化を始める
  5. 自動化できそうな領域(監視設定、定型手順など)を一つずつ着手

🔚 まとめ

SREとは、「運用の品質と効率性をソフトウェアで高める」という、ソフトウェアエンジニアによる運用手法の再定義です。

単に「運用が得意なエンジニア」ではなく、信頼性というビジネス価値を支える存在として、プロダクト開発と一体になって活動します。

本章を通じて押さえるべきキーメッセージは次の3つです:

  • ✅ 運用はコードで管理・自動化すべき
  • ✅ 信頼性は100%でなく「ちょうど良い」ラインを見極める
  • ✅ 開発と運用は対立ではなく、エラーバジェットで協調する

次章(第2章)では、SREが扱う「信頼性をどう測るか(SLO/SLI/SLA)」の定量的アプローチについて掘り下げていきます。

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