はじめに
PYプロデューサーの佐藤です。
前回は電源容量の記事を書きました。
今回は嗅覚についての記事を書こうと思います。
題して、「未来の体験への嗅覚の可能性」(タイトルが仰々しいw)
先日Sonyさんの匂い関連事業を見学に伺ってきたのと、前職でいくつか嗅覚に関するプロトタイプの制作に関わったこともあり、改めて市場などを整理してみたいと思ったためです。
Sonyさんの匂い提示装置は、給排気というかリフレッシュレートがめっちゃ早い…!
そして空間に匂いがこもらないってすごい…!という感想にとどめて、
ご興味のある方はぜひデモ体験のご相談を。
嗅覚のリサーチにあたり、OpenAIのDeep Researchには手を出せなかったので、
GoogleのGemini Deep Researchをつかってみることにしました。
3/13から無料ユーザーにも開放されましたね。
記事を書くにあたり、有料版の1ヶ月無料トライアルしています。
なぜ嗅覚分野の研究は進みづらいのか
みせてもらおうか、Deep Research(ディプリと略してみた)の実力を。
複雑なんですね…受容体の数が全然違う…
嗅覚受容体の個人差があるんですね。僕も鼻が悪いので受容体が欠落しまくっているのでしょう…。
主観的な反応で、標準化されたツールも不足している、
臭気の制御と再現には、時間経過で揮発して濃度が維持できないとか技術的なハードルもある。
そうなんですよね、Transentdanceやっていたときも、判定のための学習データを作ろうとして、一晩とかぶん回しても、温度湿度とか時間経過で測定結果が毎回違うんですよね…。素人に毛が生えた程度では…難しい。
というか、Deep Researchすげぇぇぇぇ (これは課金継続しちゃいそう…)
これ自分でイチから調べてたら、何日かかるんだ…。
匂いセンサーの市場規模とプレーヤーなどを調べるよ
「匂いセンサーのカオスマップつくりたいの!」的なプロンプトで
もうこれもディプリでドーンです。
未開の部分が多いので、ばらつきがありますが、3421億ドル→51兆くらい?グローバルで100兆規模、だいたいあってるか。Sonyの担当者さんもおっしゃってましたが、チャンスありますね。
前職ではアロマビットさんの匂いセンサーを購入して試した後、レボーンさんの匂いセンサーをレンタルで利用していました。どちらもQCM方式を用いており、塗膜に匂い分子が吸着したときの周波数変化を計測して数値データとして匂いを捉えています。 以下のようなイメージです。
出典 https://solution.revorn.co.jp/odorsensor
こんな感じで匂いがセンシングにより数値として取得できます。
この数値データを元に分析や判定をしていくわけですね。
匂いセンシングはムズいよ
匂いのセンシングを前職でやってたとき本当に難しくて、周波数変化のCSVをみても、まずなんの匂い成分が反応しているのかがそもそもわからない…ところからはじめました。
センサー(ハード)だけあっても、ソフトも合わせて活用できないと無理だなと感じて、壁にぶち当たっていたとき、レボーンさんと出会い、いろいろコンサルしてもらい、ようやくプロトタイプにこぎつけることができました。官能評価士による匂いの言語化だったり、ウッディな香りはこのあたりの周波数成分が反応して、フルーティーな香りはこのあたりなど、マッピングしていくことで理解を深めていきました。
検証にあたってもきちんとした給排気設備だったり、検体を密閉できる環境を整えたりせねばいけないのと、匂いそのものが主観的になるので、官能評価士がいないと無理ゲーではなど、参入障壁がかなりあるなと当時を思い出しました。
未来の体験への活用
そろそろタイトルを回収するためにまとめていきます。
以下もディプリより抜粋(Deep Research便利…!)
嗅覚の神経経路は独特です。嗅球から嗅皮質と辺縁系(扁桃体と海馬)への直接的な投射は、視覚、聴覚、触覚が視床を経由するのとは対照的であり、嗅覚を特徴づけるものです 12-14。この直接的な接続は、匂い、感情、記憶の間の強い関連性を説明しています。
嗅覚が五感で唯一、脳に直接接続する。
なぜ匂いによって、過去の記憶が呼び覚まされるのでしょう。それは、脳内での嗅覚の処理経路に関連するとされています。脳には、感情・本能を司る「大脳辺縁系」と、理性的な思考を司る「大脳新皮質」の二つがありますが、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の中で唯一、匂いだけが感情・本能に関わる「大脳辺縁系」に直接伝達されます。また、「大脳辺縁系」には記憶に関連する「海馬」という器官があります。そのため、匂いはリアルな感情を伴った追体験を想起させるきっかけとなるのです。
五感の中で唯一 - JTB総合研究所
プルースト効果って、聞いたことありますよね。
ネトフリの初恋とか(ネタバレ…もうしてもいいですよね)
これはフランスの作家、マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」という本の中で、主人公がマドレーヌの香りに触れ、幼少期を思い出した、という描写から「プルースト効果」として知られている現象です。
五感の中で唯一 - JTB総合研究所
実際にSonyさんのデモを体感して、匂いで体験は拡張されると感じましたし、
感情や本能、そして記憶に訴えかけることは、体験をより強固にすると確信しています。
PARTYが掲げる「未来の体験」にも、嗅覚はきっと活用できるはずです。
市場規模も大きいので、嗅覚関連の技術は引き続きウォッチしていこうと思います。