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Instanaで実現するSREのベストプラクティス 第1章 SREとInstanaの基本

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執筆者:小畑 啓、監修:山﨑政憲

はじめに

本記事では、SREとInstanaについて解説していきます。
InstanaとSREやオブザーバビリティの関係性について理解を深めたいと思い、調査することにしました。
InstanaやSRE領域に関心がある方の参考になれば幸いです。

1.1 SREとは何か

SREの概要

SRE(Site Reliability Engineering)は、Googleが提唱したシステム運用とソフトウェアエンジニアリングを融合させたアプローチです。

SREの目的は、システムやサービスにおいて適切なレベルの信頼性を持続的に達成しながら運用の自動化と効率化を進めることにあります。
従来のシステム運用では、開発チームが新しい機能を実装して、運用チームがそれを管理・維持するという分業が一般的でした。しかし、この方法では以下のような課題が生じます。

・開発と運用の対立:開発チームは新機能のリリースを優先し、運用チームは安定性を重視するため、リリースの頻度やシステム変更が制約される。
・運用負荷の増大:システムの規模が拡大するにつれ、手動対応が増えて運用コストが上昇する。
・障害対応の遅れ:監視やアラートの仕組みが整っていないと、問題が発生しても迅速に解決できない。

これらの課題を解決するために人手の運用作業を積極的に自動化して、運用業務の信頼性と継続性を向上させるという考え方を導入しました。

SREの基本原則

1. SLA・SLO・SLI

SREの概念を理解する上で、SLA・SLO・SLI は密接に関連しています。
SLOとSLIを定義することで、サービスの信頼性目標を明確にして、測定可能な形で管理することが可能になります。また、SLO違反が発生した場合のアラートや対応の基準となります。

・SLI(Service Level Indicator):サービスレベルを測定するための具体的な指標(例:可用性、レイテンシ、エラー率)
・SLO(Service Level Objective):SLIに基づいて達成したいサービスレベルの目標値(例:可用性を99.9%以上にする)
・SLA(Service Level Agreement):SLOが達成できなかった場合にユーザーに対して何らかの補償などを約束する法的な契約

SLAについては主にビジネスサイドの担当者が判断・決定するケースが多く、SRE担当者は主にSLO・SLIの策定を担当します。

2. エラーバジェット

SREは信頼性とイノベーションの両方を支えるためにエラーバジェットという考え方を採用しています。エラーバジェットは、サービスの信頼性がどの程度損なわれても許容できるかを示す指標です。

SREでは、許容範囲内のエラーをエラーバジェットとして管理し、これを超えない範囲で新機能のリリースや変更を進めます。

3. 自動化と効率化

SREの基本的な考え方は運用作業の自動化です。手作業で行う監視やデプロイをできる限りコード化して、運用の負荷を削減します。
これにより、SREエンジニアは単純なオペレーションではなく、システムの信頼性向上に集中できます。

4. オブザーバビリティ

信頼性を確保するためには、システムの状態を詳細に観測することが不可欠です。オブザーバビリティとは、システムの内部状態を外部から把握できる能力を指し、以下の要素で構成されます。

・メトリクス(Metrics):定期的にグループ化あるいは収集された測定値の集合
・ログ(Logs):システムの動作記録
・トレース(Traces):マイクロサービス間もしくは異なるコンポーネント間におけるイベントやトランザクションの連携の記録

5. インシデント対応とポストモーテム

SREでは、インシデントが発生した際の対応手順を明確にして、復旧後には必ずポストモーテムを行います。障害の原因分析と再発防止策を文書化して、組織全体で共有します。
ポストモーテムの徹底的な文書化や全員でのレビューにより、チームは失敗から学び、業務品質や製品の信頼性を向上できます。

SRE導入のメリット

SREを導入することで、以下のメリットが得られます。

・システムの信頼性向上:可観測性やSLO管理により、問題の早期発見と対策が可能
・運用負荷の削減:自動化により、エンジニアの手作業を大幅に削減
・迅速なインシデント対応:エラーバジェットとポストモーテムにより、適切な運用と改善が可能
・開発速度の向上:信頼性とリリースのバランスを取り、新機能を迅速に展開できる

1.2 Instanaとは:可観測性ツールの基礎

Instanaの概要

InstanaはIBMが提供するオブザーバビリティツールで、リアルタイムでシステムの状態を把握し、異常検知やパフォーマンス分析を行うための強力なツールです。

Instanaの主な特徴

Instanaの主な特徴は下記の通りです。
・問題をリアルタイムで把握可能
・システムのボトルネックを特定
・最小限の設定で導入が可能

InstanaがSREに貢献する領域

以下の内容について各章で解説します。
・リアルタイム監視:システム全体の状態をリアルタイムで把握(第2章)
・動的ベースライン設定:異常検知を自動化し、適切なアラートを送信(第2章)
・トレース分析:リクエストごとの処理フローを可視化し、ボトルネックを特定(第3章)
・インシデント管理の効率化:障害発生時に根本原因を迅速に特定(第3章)
・SLO/エラーバジェットの管理:目標達成を支える許容範囲を定め、信頼性と開発速度のバランスを取る(第4章)
・パフォーマンス最適化:システムのボトルネックを定量的に分析し、改善を促進(第6章)

1.3 SREとInstanaの相性の良さ

Instanaは、サーバーの構成やシステム間のデータ連携を自動で検出し、リアルタイムで可視化します。これにより、複雑なサービスの依存関係を手動で把握する必要がなくなります。

さらに、機械学習を活用してインフラの状態やアプリケーショントレース、各種メトリクスを分析し、異常を検知します。
これらの機能は、SREエンジニアがシステムの信頼性を維持し、障害の予兆を早期に発見するのに役立ちます。

InstanaはSREのニーズに応える強力なツールであり、システムのオブザーバビリティと信頼性の向上に大いに貢献します。

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