はじめに:Suno v6の結果があまりパッとしない
2026年9月9日、Sunoの新モデル v6 がリリースされました。
リリースされたその日に聴いて、「6はちょっと…」と思いました。5.5のほうがよかったなあ、と。
しかも v5.5 にはもう戻れません。モデルの選択肢は v6 だけになりました。
具体的に微妙だと感じたのは、次の4点です(詳しくは次の章で書きます)。
- 音がこもり気味
- バンド系のドラムが弱い
- ノリが出ない
- 指示が素直に通らない
この記事で試した曲は、次の2曲です。
| 曲 | 言語 | ジャンル |
|---|---|---|
| Late Night Deploy | 日本語 | パーティーラップ(4MCのマイクリレー) |
| Proof of Recurrence | 英語 | プログレッシブロック(女性ボーカル) |
上の2曲は、日本語の歌詞と英語の歌詞を自分で書いて生成したオリジナル曲です。歌詞はどちらも深夜のノリで書いたものなので、あまり深掘りしないでください(笑)
1. v6の何が良くないのか
音がこもり気味
音がこもっているというか、使っている音源が少し後退したように感じました。DAWのよくできたシミュレート音源のような印象です。海外ユーザーの反応を見ても、「muffled(こもっている)」「soulless(魂がない)」といった似たような感想が上がっていて、「忠実さは上がったが、生気が落ちた」という受け止め方が目立ちました。
バンド系のドラムが弱い
いちばん大きな不満がこれでした。スネアが弱く、フィルのない単調な8ビートになりがちで、そこだけが貧弱に聞こえます。スネアがバンドから浮いていて、生の感じがまったくありません。ここは 5.5 と比べて明らかな差だと感じました。
ギターやピアノは、ドラムほどの劣化は感じません。ただ、演奏が機械的なアルペジオや単純な速弾きのようなものに寄る場面が増えた印象はあります。打ち込み前提のダンス系なら問題はありません。目立って弱いのは、生ドラムを前提にしたバンド・ロック系です。
ノリが出ない
悪くはないのですが、どうにもおとなしく感じました。v6 の出力には、グルーヴ感が出ていません。ラップものでは、後半に行くほどお経のように単調になっていきます。5.5 はそのあたりがうまかったと感じます。
指示が素直に通らない
v6-wild(v6の自由度が高い派生モード)では、テンポ指定やダミ声指定が無視されました(Late Night Deploy)。声質やテンポを指定しても、そのとおりに出ないことがあります。
補足:大人の事情
ただ、v6 を一方的に「劣化」と切り捨てるのは少しかわいそうでもあります。
Suno は 2024年6月に大手レコード会社(Universal・Sony・Warner)から著作権侵害で訴えられていました。その後 Warner とは和解してライセンス契約を結び、v6 は Warner・BMG・Believe からライセンスを受けた楽曲で学習した、新しいモデルです。Suno 自身も「v6 は旧モデルの学習に使ったデータでは学習していない」と説明しています(TechCrunch、Boston.com)。つまり v6 は、訴訟問題に対処した「対応版」という側面を持っています。
Suno の説明を前提にすると、学習データをライセンス済みのものに絞った分、データの規模や多様性が減り、それが「こもっている」「無難になった」という変化につながっているのではないか、という見立てが出回っています(Musicman など)。あくまで推測ですが、筋は通っていると思います。
なお、Universal と Sony は 2026年9月18日に、この v6 を対象にして改めて Suno を提訴しています(Boston.com)。大人の事情はまだ続いています。
2. v5.5の良かったところ
何も言わなくても、いい感じにしてくれた。 これに尽きます。
Late Night Deploy の v5.5 版は、スタイル欄に「マイクリレー」とは一言も書いていません。multiple male vocalists と、歌詞側の役割タグ([Verse 1: MC1 - モノリス・マスター] など)だけで、MC同士の掛け合いが一発で出てきました。
こうした結果がぱっと出てきたのは、改めてすごいことだったと感じます。BGMのグルーヴ感とラップのノリの良さは、5.5 ではばちっと出ていました。
Proof of Recurrence の v5.5 版も同じで、スタイルは5語だけ、2本生成したうちの1本がそのまま気に入った出来でした。
3. v6での試行錯誤
Late Night Deploy(日本語)
| 試したこと | 良かった点 | 悪かった点 |
|---|---|---|
| 同じスタイルのまま再生成 | 手軽 | 毎回同じ傾向で、おとなしい |
| スタイルを整理して寄せる(パーティーラップ → グルーヴ系ヒップホップ) | 試しやすい | 狙ったパーティー感が出ない。プロンプトが無視されているのか、そもそも該当するパラメーターが存在しないのかは不明 |
| ダーク寄りに振り、ミックスの指示も作り込む(ボーカルの位置、除外指定など、ネットで見た「こもり対策」) | 指示どおりの方向には動く | トラップ寄りになって方向がずれる。勢いは乗らない |
| v5.5 の曲を元にカバー生成 | グルーヴはかなり近い | 出力結果の破綻(曲の途中からいきなりまた曲が始まる) |
| 声質・スラップベース・マイナーキーを指定して新規生成 | 情緒が出て、グルーヴ感が出た | 後半はお経のような単調な感じになる |
| バースごとにラップのフローを割り振る(4. の v6 版) | 後半の単調化を狙って対策できる | 指定がとにかく長くなる |
Proof of Recurrence(英語)
| 試したこと | 良かった点 | 悪かった点 |
|---|---|---|
| 何も変えずに再生成 | 曲としては成立する | 原曲とはまったく別物になる |
| v5.5 の曲を元にカバー生成 | 原曲に沿っていて変なところがない | v5.5 の焼き増しであって、v6 の成果とは言いにくい |
ドラムを直接指定(power drums、[Drum Fill]、ゲートリバーブなど) |
ゲートリバーブ指定はドラムの音が良くなった |
power drums はドラムだけがバンドから浮く |
| 女性ボーカルを歌詞側のタグで指定 | 女声になった | スタイル欄だけでは効かないことがある |
年代を一言足す(2000s alternative rock production など) |
ドラムがまともになる | 年代によって曲調も引っ張られる |
| 気に入った v6 版を元にカバーし、サビだけ強化(4. の v6 版) | 雰囲気を保ったままサビが盛り上がる | 指定の記載が長くなる |
2曲を比べた印象では、英語歌詞の曲のほうが、プロンプトの指定が結果に反映されやすく感じました。ドラムの弱さ以外は、指定したことがわりと素直に効きます。日本語歌詞の曲は、狙った結果を出すまでにかなりの回数を試す必要がありました(次の章の試行回数は英語のほうが多くなっていますが、英語の40本には 5. で書く年代ごとの比較実験の分が含まれます)。
4. V5.5とV6の出力結果
試行回数は、Sunoのライブラリに残っている本数です(1回の生成で2本出ます。消した分は含みません)。
Late Night Deploy(日本語)
| v5.5 | v6 | |
|---|---|---|
| 曲名 | Late Night Deploy (v5.5) | Late Night Deploy (v6) |
| 聴く | ▶ v5.5版(2026-08-15) | ▶ v6版(2026-09-29) |
| 試行回数 | 3本 | 17本 |
| 長さ | 242秒 | 246秒 |
| スタイル | Upbeat J-pop hip-hop, party rap, high energy, funky brass, scratch, multiple male vocalists, fast tempo, catchy melodic chorus, anime opening style, 125 BPM |
2000s Japanese hip hop, minor key, dark cool uptempo posse cut, high energy, groovy slap bass line under the rap verses, punchy minor-key brass riffs, funky guitar cutting, dynamic rap flows that change every verse, varied cadence and pitch, melodic rap hooks, flow switches, not monotone, mic relay between four distinct male MCs, only MC3 has a raspy husky voice, anthemic sing-along chorus, gang vocals, DJ scratch, 130 BPM |
| 作り方 | 普通に生成 | 新規生成(バースごとにフローを指定) |
| 歌詞タグ |
[Verse 1: MC1 - モノリス・マスター](役名だけ) |
[Verse 1: MC1 - clean clear mid-range male voice, no rasp, steady groove flow](声質とフローを書く) |
サビは両方とも同じ歌詞です。
ココロオドル要塞! 手元の基地で Bounce!
理屈じゃないさ ロマン駆動で Dance!
鳴り止まないクーラーファン 止まらないタイピング
終わらない Session 響く Architecture!
v5.5 はスタイル10項目で済みました。v6 で同じところまで行くには、18項目を書く必要がありました。v6 では、言ったことしか出てきません。 5.5 は黙っていても良い感じにしてくれるモデル、v6 は「言ったとおりにやる」モデルだと感じました。
Proof of Recurrence(英語)
| v5.5 | v6 | |
|---|---|---|
| 曲名 | Proof of Recurrence type-θ | Proof of Recurrence type-ε+ |
| 聴く | ▶ type-θ(2026-08-12) | ▶ type-ε+(2026-09-25) |
| 試行回数 | 2本 | 40本 |
| 長さ | 303秒 | 277秒 |
| スタイル | Progressive Rock, Female Vocal, Intellectual Lyrics, Building Tension, Defiant Chorus |
左と同じ5語 + 2010s modern rock production, explosive anthemic chorus, big dynamic lift into the chorus(除外: male vocals) |
| 作り方 | 普通に生成 | v6 版の type-ε(2010s 指定)をカバー元にして、サビだけ強化 |
| 歌詞タグ | [Chorus] |
[Chorus: female vocal, explosive, anthemic, full band] |
サビの歌詞は両方とも同じです。
Can I prove that I’m still me
On a stage that resets endlessly?
v5.5 は5語のスタイルと2本の生成で済みました。v6 では40本の試行の末に、年代の指定とサビの強化を足した版にたどり着きました。年代指定の効果は、次の章で説明します。
5. V6は年代をプロンプト指定することで改善傾向
試行錯誤の中で、効果を感じたのがこれでした。ドラムを直接指定した結果は 3. の表のとおりで、音量や迫力の指定ではドラムだけが浮きました。それとは別に、スタイル欄の最後に年代を一言足すだけで、ドラムを一切指定していないのに改善することが分かりました。
試した曲は Proof of Recurrence です。元の5語(Progressive Rock, Female Vocal, Intellectual Lyrics, Building Tension, Defiant Chorus)に、年代を表す語を足しています。
| 足した語 | 評価 | ドラム | 特徴 |
|---|---|---|---|
1970s rock production |
○ | ○ | 当時の様式で、ドラムが少しチープでも気にならない |
1980s rock production |
○ | ○ | テクノっぽいドラムとシンセで、この時代にありそうな音 |
1990s alternative rock production |
◎ | ◎ | ダークで、いい意味で粗い |
2000s alternative rock production |
◎ | ◎ | メロディック |
2010s modern rock production |
○ | - | 原曲の雰囲気を継承している |
評価は筆者の主観です。◎=聴いた瞬間に当たりだと感じた年代、○=良い、-=ドラムについて特に印象なし
v6 は、どの年代を指定してもその時代の様式をそれらしく再現しつつ、録音の質は今のものにして鳴らしてくれます。70年代を指定しても、当時の録音のチープさまでは再現されず、音の質は今のものです。
使い分けの目安としては、メロディを立てたいなら00年代、いい意味で粗さを出したいなら90年代、という印象です。4. の v6 版は、評価の高かった90年代・00年代ではなく、原曲の雰囲気の継承を優先して 2010s 版を元にしています。
ただし、根拠は1曲・各年代2本ずつ・自分の耳だけ(ブラインドではありません)です。ほかの曲やジャンルでも効くかは分かりません。四つ打ちのクラブ系なら、そもそもドラムの弱さは気になりません。
まとめ:v6は「やり方次第、でも結構大変・・」
v6 も、プロンプトを調整すればけっこういい感じのものが出ます。ただ、そこにたどり着くまでには試行錯誤が必要でした。やってみて効いたのは、次の3点です。
- v6 は「言わないと出ない」。曲の主役(楽器・声質)を名指しする
- 指示を盛りすぎると、かえって離れていく。足りない要素を1個ずつ足し、足しすぎたら戻す
- バンド系のドラムには、年代を一言(
1990s/2000s alternative rock production)足すと効いた
v6 はリリースされたばかりのモデルで、Suno はこれまでも数か月おきにモデルを更新してきました。ドラムやグルーヴ感の部分は、今後のバージョンアップでの改善に期待したいと思います。
※ この記事の評価は、あくまで筆者本人の感想です。