はじめに
この記事はC3 Advebent Calendar 2023の12日目の記事です。
3Qの試験お疲れさまでした(n敗)。それにしても最近寒いですね。半田ごてが暖かく感じる季節になってきました。
ところで皆さんは3Dプリンター、楽しんでますか?最近はあまり触れていませんが、自分が作ったものが現実に召喚出来るというのは、最高に楽しいことだと思います。
実は、九工大飯塚キャンパスには学生が自由に使って製作を行える「ものづくり工房」という施設があります。3Dプリンターを始めとする様々な設備が整っており、名前の通りものづくりには最適な環境が用意されています。またC3の部室にも3Dプリンターはあります。ただ、使っている人はごく少数ですが...
と言うことで、今日は3Dプリンターについて知っておこう
そもそも3Dプリンターとは?
3Dプリンターとは、3次元のモデルをもとにして現実に物体をつくりだすことができる機械のことを言います。3Dプリンターという同じ括りであってもコンクリートで家を印刷するものから普段使うような小物を印刷するものまでその種類は千差万別です。
3Dプリンターの種類
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フィラメント溶解製法(FFF)
おそらく多くの人が一番初めに想像するのがこの製法だと思います。プラスチックなどのフィラメント材料を溶かし、押し出すことで造形する3Dプリント技術です。平面を造形し、その平面を積み重ねることで立体を作りだします。低価格の物も多く、初心者や手軽にものづくりを楽しみたい方におすすめです。 -
熱溶解積層法(FDM)
先のFFFと同じ技術です。1989年にStratasys社が名前を商標登録したため、この名前を使用できるのは Stratasys社のライセンスを取得済みの3Dプリンターだけでした。しかし、そのFDM技術の特許も2009年に有効期限を迎えFFFが競合他社で開発されました。
つまり、熱溶解製法 (FDM) とフィラメント溶解製法 (FFF)はいわゆる大人の事情によって呼び方が異なるだけであり、本質的な技術は同じものです。 -
光造形(DLP)
おそらく家庭で最も精密に作成できる製法だと思います。フィラメントではなく、レジン液を使用しているためFFF形式などとは少し勝手が異なります。造形はレジン液に露光することでレジンを硬化させ、層を積み重ねていくことで造形していきます。高精度な造形が得意であり、フィギュアなどの細かいパーツなどの造形にも適しています。FFFなどと比較して精度は高いが、機械自体だけでなくレジンや使用する道具なども多く、比較的コストがかかります。液体を使うため後処理が大変であり、初心者や手軽に作りたい方などにはおすすめできません。フィギュアや模型製作など細かな造形をやりたい方には最適であると言えます。
印刷の流れ
1. モデルの用意
印刷するモデルを準備します。設計ソフトCAD(Fusion360など)や3DCG製作用ソフト(Blenderなど)から自作する方法や配布されているモデルや購入して印刷する方法があります。
2.スライサー
スライサーソフトを利用してモデルを印刷用の形式に変換します。この時、サポート材やモデルの印刷設定なども一緒に調整します。使用する3Dプリンターに合ったスライサーソフトをお勧めします。
光造形であれば、レジンが溜まらないようにレジンの逃げ道となる穴やモデルを斜めに傾ける必要があります。
3.印刷の準備
印刷する前に座標の初期化を行ってください。フィラメント溶解製法であればプラットフォームを水平にするレべリングを行い、光造形であればZ軸のゼロ点設定を行います。ずれた状態で印刷を行うと必ず失敗します。下準備が大切になります。
4.印刷
基本的に機械がすべて行てくれるので特にすることはありません。様子見しながら成功祈願をするくらいです。初期化に失敗するとフィラメントやレジンがプラットホームに乗らず暴れ散らかします。だから、初期化する必要があったんですね。また、サポート材が少ない、位置が良くないなどが原因で失敗するので試行錯誤を重ねます。*印刷を続けろ。
5.完成
完成です。対戦ありがとうございました。
※光造形は洗浄、乾燥後、二次硬化が必要になります。
6.片付け
一番のクソゲー、片付けです。フィラメント溶解製法(FFF)であればプリンターに残ったフィラメントのカスを片付けるだけです。光造形の場合は残ったレジンの中から硬化したレジンを取り除き、液体のレジンは再利用します。(レジン液も高価なので...)
レジン液の入っていたパッドは無水エタノールなどで洗浄します。廃液は排水溝に流さず、地方自治体の定める処理方法に従って処分を行ってください。
完走した感想
フィラメント溶解製法(FFF)はモデルと3Dプリンターは低価格、フィラメントも低価格で実現できるコスパ最強の製法です。導入コストもランニングコストも低いです。店長のおすすめです。
逆に、光造形(DLP)はコストが莫大です。3Dプリンターは高価で清掃が難しい、レジンも高価で取り扱いが難しい、さらに保管が難しい。洗浄用無水エタノールも高価で大量消費する。レジンが皮膚についた場合はかぶれる可能性があるのでゴム手袋が推奨されています。光造形(DLP)は時間もお金も手間もかかる製造法であり、初期コストもランニングコストも比較的高いです。ブルジョワしか出来ません。コスパ最悪です。しかし、光造形(DLP)とフィラメント溶解製法(FFF)では確実に精度の違いがあり、細かい造形をするにはこの方法をとるしかありません。
おまけ1 モデル作成ソフト
モデルを作る際におすすめなソフトは目的によって変わります。
CADの種類
CADは設計を目的にしているソフトなので正確な寸法で印刷が可能になります。CADとしては以下のようなものがあります。
特にTinkerCADとFusion360はAutoDesk社の学生ライセンスで無償で利用できるのでおすすめです。また、Fusion360は設計から製造までを行えるかなり優秀なソフトなので興味がある方は是非。
3DCG製作ソフト
キャラデザインなどを目的にしているソフトなのでフィギュアのモデル製作などを比較的簡単に行えます。ソフトとしては以下のようなものがあります。
Blenderは無償で利用でき、ゲーム制作のモデル作成に活用されています。
おまけ2 自宅で3Dプリント始めるなら
まずはフィラメント溶解製法(FFF)の3Dプリンターをお勧めします。セールなどが定期的に開催されているのでそのタイミングで買うのが一番良いと思います。SK本舗やAmazonなどで販売されています。SK本舗は保障などが手厚いので少し不安のある人はこちらで購入するのをお勧めします。またFusion360の勉強でお勧めの本はFusion 360 マスターズガイド ベーシック編 改訂第2版です。
光造形を始めたい方
レジンを使う他と比べて特殊な印刷方法となっています。他の印刷方法ではあまり気にされないレジンの温度や日光の有無などが干渉します。モデルにレジンが溜まったりなど設計の段階でひと手間が必要になります。失敗した場合はパッドの底でレジンが固まったりなど片付けが大変になります。レジンパッドに穴が開いて液漏れが起きた場合、3Dプリンターの故障は避けられないなどリスクも高いです。しかし、某南極探検隊募集のように自身の満足感には計り知れないものがあります。自身の3Dプリンターライフも飛躍的に上昇します。
レジンは基本無水エタノールで洗浄しますが、水洗いレジンと言う水で洗浄できるタイプもあるのでお勧めです。
3Dプリンター選びでは自分の作りたいモデルの大きさと相談して決めることをおすすめします。私は「大は小を兼ねる」ということで大きなサイズのものを購入しました(1敗)。しかし、片付けは大きい分余計に手間と時間がかかってしまう。本体も大きく、収納するには邪魔などの欠点が存在します。また、レジンが溜まらない様にモデルを斜めに印刷することが多いので、必要以上のスペックで宝の持ち腐れとなってしまっています。フィギュアや模型であれば分割して印刷することも可能なので小さいサイズの3Dプリンターも選択肢から外さずに慎重に選んでいただきたいです。
6.おわりに
印刷が一回で成功することはほとんどの場合ありません。また、エラーを吐いてくれないので自力で原因を探す必要があります。しかし、そこが醍醐味であり、成功した時の達成感は限界突破して脳が溶けます。一度成功してしまえばそのモデルの次回以降の印刷は成功しやすくなります。また、経験値として他の印刷物にも対応しやすくなります。便利な小物なども簡単に作れてしまいます。
新たな3Dプリンターライフに溢れんばかりの呪いと祝福を!
明日はHHayaoさんの「Tailscaleで誰でも簡単リモートアクセス」です。お楽しみに!