お願い
本記事の内容に誤りや改善点がございましたら、コメント等でご指摘いただけますと幸いです。
なお、本記事は個人の学習記録として作成したものです。業務でご利用の際は、公式ドキュメントもあせてご確認ください。
1. はじめに
本記事は「DockerとDocker Compose入門:概念・仕組み・メリット編」と題し、
Dockerおよびdocker‑composeの基本的な仕組みや用途、他の仮想化技術との違い、得られるメリットを解説します。
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対象読者:
プログラミング経験はあるが、Dockerは未使用という方 -
ゴール:
- Docker/docker‑composeがどんな役割を果たすのかを知る
- 仮想マシン型との違いやコンテナ技術の利点を知る
- 開発・本番環境でなぜDockerが選ばれるのかを知る
実際の環境構築手順(Windows 11+Docker Desktop、Spring Boot+MySQLのセットアップ)は、 「Docker(Docker Compose)基礎解説(windowsのWSLを使用した環境構築編)」にて詳しく紹介しています。
こちらもあわせてご覧ください。
2. Dockerとは?
Dockerとは、アプリケーションとその実行環境をひとまとめにした「コンテナ」という単位で管理・実行できる、軽量な仮想化技術です。
このコンテナは、アプリが動作するのに必要なOSやライブラリ、設定などをすべてパッケージ化しており、どこでも同じ環境を再現できます。
例えば、開発者のPCで動くものが、そのまま本番環境や別のマシン上でも同じように動作するため、「環境による不具合」を大幅に減らすことができます。
Dockerの裏側では、ホストOSのカーネルを共有しながらプロセスを隔離することで、仮想マシンよりも軽量かつ高速に環境を構築できます。
3. ほかの仮想化技術との違い
前提
OS(Operating System)
以下の2つが合わさってできています
- カーネル(Kernel)
- 周辺部分(≒ディストリビューション)
仮想化技術
大きく分けて3つあります。
- ベアメタル型(Type‑1 ハイパーバイザー) (※1)
- ホスト型(Type‑2 ハイパーバイザー)
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コンテナ型
(※1): ベアメタルとは、OSやソフトウェアなどが一切インストールされていない、空の状態のHDD、物理サーバーのこと
仮想化技術の違いについて
ホスト型、ハイパーバイザー型の仮想化技術は、物理的なハードウェア上に仮想的なハードウェアを置いて、ゲストOS(カーネル+周辺部分)を動かしているイメージです。
別のハードウェアを作り出しているようなものなので、入れるOSに特に制限はありません。
これに対して、コンテナ型(Docker)はコンテナ上にはOSの周辺部分を入れているだけで、カーネルはホストOSのものを使用します。
そしてOSはLinuxを使用するという制限があります。 (※2)
これにより、軽量ながらもそれぞれのコンテナで、独立したディストリビューションやアプリケーションを使用できる環境を作り出しています。
(※2): ホストOSがWindows環境では、WSLという仮想化技術を使用してLinux上にコンテナを作成します。
詳細はこちらDocker Desktopの準備
図解
仮想化技術の比較表
| 項目 | ベアメタル型(Type‑1 ハイパーバイザー) | ホスト型(Type‑2 ハイパーバイザー) | コンテナ型(Dockerなど) |
|---|---|---|---|
| 実行形態 | ベアメタル上で直接動作 | ホストOS上のアプリケーションとして動作 | ホストOS上のプロセスとして動作(軽量) |
| 代表的なツール | VMware ESXi、Microsoft Hyper‑V Server | VirtualBox、VMware Workstation | Docker、Podman |
| ホストOSの必要性 | 不要 | 必要(ホストOSが止まるとゲストも停止) | 必要(ホストOSが止まるとコンテナも停止) |
| ゲストOSの必要性 | 必要(フルOSを含む) | 必要(フルOSを含む) | 不要(ホストと同一種類のカーネル共有) |
| 起動速度 | 遅い | 遅い | 非常に速い |
| パフォーマンス | ネイティブに近い | やや低下 | 高い(オーバーヘッドが小さい) |
| リソース消費 | 多い(VMごとにOSが必要) | 多い(VMごとにOSが必要) | 少ない(プロセス単位での分離) |
| 分離性・セキュリティ | 非常に高い | 高い | 中程度(カーネル共有による制限あり) |
| 主な用途 | 大規模プロダクション環境 | テスト・開発環境 | マイクロサービス、CI/CD、開発・テスト |
4. Dockerの特徴と利点
Dockerの魅力は何と言っても、簡単に、すばやく、正確に開発環境を構築・共有できることです。
以下のような利点があります:
✅ 影響範囲の隔離
コンテナはそれぞれ独立したプロセス空間やファイルシステムを持ち、ホスト環境や他のコンテナとは分離されています。
これにより、あるコンテナの不具合が他に波及しにくくなるため、安全性と保守性が向上します。
この「分離性」こそが、仮想化と比較した際のコンテナの本質的な強みの一つです。
✅ 環境構築が一瞬
Dockerfileやdocker-compose.ymlを使えば、ターミナルでコマンド一つ実行するだけで、面倒な依存関係のセットアップがすぐ終わります。
✅ OSやマシンに依存しない
コンテナ内にすべての実行環境が入っているため、「Windowsでは動くけどMacでは動かない」といったトラブルが起きにくくなります。
✅ 開発から本番まで同じ環境を再現
コンテナは「同じ設定」「同じソフトウェアバージョン」を保つため、開発時と本番環境で挙動が違うといった問題が起きにくくなります。
✅ 配布が簡単(GitHub、DockerHubと相性抜群)
Dockerは、DockerFileというコンテナを作成する際の指示書、設計書にあたるファイルをもとにビルドを行い、実際にコンテナを起動できるパッケージとなるDocker imageを作成します。
コードをGitHubに、Docker imageをDockerHubに公開すれば、誰でも同じ環境を再現できます。
「このリポジトリをcloneして、docker-compose up すればOK」といったシンプルな導入が可能になり、チーム開発や技術共有もスムーズになります。
GitHubと連携してCI/CDにも組み込みやすいです。
私が特に気に入っているのは、環境構築の手軽さです。
これまでのように「ミドルウェア、OSの種類、バージョンを確認して、管理者権限に切り替えて、設定ファイルを編集して、初期化スクリプトを実行して…」といった複雑な手順は不要になります。
Dockerfileを書いてビルドするだけで、必要な環境がすぐに再現できるのは本当に便利です。
さらに、環境構築が簡単になることで、気軽に初期化ができるようになるのも大きな利点です。
「初期化したいけど構築が面倒だから、つぎはぎでなんとか動かしている…」という状態、心当たりありませんか?
Dockerを使えば、いつでもクリーンな状態に戻せるので、壊れるのを恐れずに安心して試行錯誤できます。
5. Docker Composeとは?
毎回コンテナごとに dockerコマンドで個別に起動、操作するのは非常に手間です。
コンテナ間のネットワーク設定や環境変数の連携も複雑になりがちです。
そこで、Docker Composeを使用します。
docker-composeとは、複数のDockerコンテナを一括で定義・起動・管理できるツールです。
アプリケーション、DB、webサーバーのように複数のサービスを連携させる場合に非常に便利です。
6. windows環境構築をしよう
Windows 11では、Docker Desktopをインストールすることで簡単にDocker環境を構築できます。
詳細は下記の記事をご確認ください。
Docker(Docker Compose)基礎解説(windowsのWSLを使用した環境構築編)
7. まとめと今後の展望
本記事では、Dockerの基本概念から、それらが従来の仮想化技術とどのように異なり、どんなメリットを持っているのかを解説しました。
Dockerの魅力は、開発から本番まで「同じ環境」を手軽に再現できる点です。これにより、チーム内での環境差異によるトラブルを大幅に削減し、開発効率を飛躍的に高めることができます。
docker-composeを使えば、複数のコンテナ(サービス)をまとめて管理・構築できるため、より実践的なシステム開発にも対応できます。
今後は、Kubernetesなどのオーケストレーションツールの使い方、CI/CDの自動化、テスト環境の作成、ステージングや本番環境へのデプロイなど、より実戦的な使い方も紹介していきたいと思います。
Dockerは単なる開発補助ツールではなく、現代のソフトウェア開発・運用のインフラ基盤の一つです。
ぜひ本記事を出発点に、さらに一歩踏み込んだ活用へとつなげていただけますと幸いです。
