はじめに
初めまして。
現在はServiceNow関連の仕事をしています、新卒1年目の片桐徹人です。
本記事では、10月22日・23日に東京ビックサイトで開催されたServiceNow World Forum Tokyo 2025にて行われた、ServiceNow Hackathon 2025の決勝戦について、発表されたプロダクトとその所感についてレポートします。
本記事で取り上げるブースやプロダクトに関する記述はあくまで私見です。また、会場で見聞きした情報をもとに執筆していますが、一部誤認や誤りがあるかもしれません。もし訂正や補足があれば、ぜひ遠慮なくお知らせください。
以上を踏まええた上で、お読みいただけると嬉しいです。
ServiceNow Hackathon 2025概要
そもそもハッカソンとは、決められたテーマに沿って短期間で集中的にアイデアを出し合い、新しいサービスやソフトウェアを開発するイベントです。
そして今回のServiceNow Hackathonのテーマは…
Where the world puts AI to work
ServiceNow AI Platformを活用したプロダクトを開発することが今回の条件でした。要はAIを組み込めってことですね。
今回の参加チームは全24チーム(たぶん)、その中から決勝戦に進出したのは、以下の5社でした。
- EY Japan株式会社
- SCSK株式会社
- デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
- 富士通株式会社
- 株式会社Blueship
各プロダクト概要と所感
以下、各チームが構築・発表したプロダクトの概要と個人所感を綴っていきます
EY Japan 「AQUA SIGHT」
EY Japanは、日本の水道インフラにおける老朽化と人手不足という課題に着目し、ServiceNowのCMDB基盤とAI Agentによる作業自動化を組み合わせたプロダクトを発表していました。水道インフラのリスク管理やライフサイクル管理を中心に、新機能のWorkflow Data Fabricによるデータ連携や、FSM(Field Service Management)パッケージを組み合わせたフィールドサービスを実現していました。
AI機能としては、主に以下の2点が紹介されていました。
- 管路の健全性評価や更新優先度の自動算出
- 現場データや過去事例の分析によるナレッジ蓄積・共有
所感
インフラは、社会にとって重要でありながらも管理工数が膨大で、かつ人手不足という課題を持っています。そのような特性に対して、ServiceNowのワークフロー機能とAIによる自動化がぴったりとフィットしたソリューションだと感じました。
また、私がServiceNowの要だと考えているCMDB機能やナレッジ機能との相性もよく、Why ServiceNowという問いに対する答えを明確に感じられるプロダクトでもありました。
あと純粋に発表が上手でした。場慣れを感じましたね。
SCSK 「Bridge AI Care」
SCSKは、企業において介護を担う従業員のエンゲージメント低下という課題に着目し、AI Agentを活用した業務自動化と介護者支援を実するプロダクトを紹介していました。
CSM(Customer Service Management)パッケージを基盤とし、ポータルから起票されたケースのケースタイプに応じた各AI Agentが、そのケースを自動的に担当するというアーキテクチャでした。いわゆる A2A(Agent to Agent)アーキテクチャを活用したプロダクトで、AI Agentによる業務フローの網羅性が他のどの企業よりもしっかりとしていた印象でした。
所感
このプロダクトが介護者の根本的な課題をどこまで解決できるのか、という点がやはり気になりました。
今回のプロダクトで解決できる要素は主に時間的負担です。一方で、介護問題におけるもう一つの見過ごせない要素として心理的負担が挙げられます。
しかし、現在のAIは人間の感情を完全に代替することができないため、そういった心理的課題の解決は困難であるはずです。おそらくこの点は数十年後でも不変な課題でしょう。
人事や教育、医療領域といったヒューマンタッチが不可欠な領域においては、AIがどこまで人の業務を代替できるかを、しっかりと議論する必要があると感じてます。
デロイトトーマツ合同会社 「194.now」
デロイトは、生活困窮者の増加とその支援制度における課題に着目し、AI Agentを用いた生活困窮者支援プラットフォームを紹介していました。
発表では、生活困窮者の支援プロセス全体において、フロー自動化やAI Agentによるケースワーカーの業務支援のデモを行っていました。プロダクト内で実装されていたAIアバターに味があって印象的でした。
デモでは、テキストベースの情報提供のみならず、タスクの自動作成やアサイン、スケジューリング、メール送信といった多様な機能が紹介されていました。更にはAIが会議に参加して進行のアシストを行ったりと、業務フローへのAIの組み込みが徹底されていました。またAIの組み込み方も違和感なく、基調講演で語られていたシームレスなAI活用を体現しているプロダクトでした。まさに、人とAIとの協働といった感じです。
所感
イメージですが、生活困窮者への支援は複雑な要因が絡み合っている分野と感じるます。そのため、AIによる業務の完全な代替はまだ困難かなと感じますが、それでもケースワーカーを支援する実装内容は、非常に有益なアプローチだと感じました。
またデロイトのプレゼンテーションを見る都度感じることですが、ビジネスプロセスやサービス要件の網羅性に抜け漏れがない設計で、毎回感銘を受けます。その代わりスライドも相当量なため、発表を追いかけるのに必死になりますが笑
あとEY同様プレゼンテーションが上手でした。大手コンサルファームとしての実力を感じます。
富士通 「AI-Powered Vulnerability Response」
富士通は、ServiceNowのセキュリティ関連パッケージであるVR(Vulnerability Response)に対して、AIによるエンハンスを行ったプロダクトを紹介していました。
CMDBを基盤とした脆弱性検知や修復タスク管理といったVRのベース機能を拡張する形で、AIによる修復タスク対応方法の提案や、定型的な対処をAI Agentが自動対応するといった機能がありました。
所感
私自身、VRの知識が浅いのでこのプロダクトがどのくらいのインパクトを持つのか評価できないのですが、既存のServiceNow製品を強化するという、最も堅実で実現可能性の高いアプローチだと感じました。現時点では提供されていない機能だとしても、今後1,2バージョン先のファミリーリリースでは、標準実装されていそうな印象を受けました。
Blueship 「Groceries Buddy AI」
Blueshipは、ハッカソンでは王道のテーマの一つ(偏見)である、フードロス対策のプロダクトを紹介していました。一番の目玉機能はそのマッチング機能です。食材が余っている人と必要としている人をマッチングさせることで、フードロスを削減するというコンセプトでした。
その他の機能としては、アプリに食材情報を登録して消費期限のリマインドを行う機能や、登録された食材をもとにAIがレシピを提案する機能も紹介していました。
所感
私が大学時代に出会った知人の中で、学食の廃棄食材を学生にマッチングさせてフードロスを削減するプロダクトを実装した人がいたのですが、それに近いアプローチだと感じました。
一方で、ここで個人的な懸念が二点。
1点目は悪用リスクです。ストーカー行為への発展はもちろんのこと、違法取引への利用といった悪用の可能性が高いと感じました。個人間のマッチングサービスである以上、セキュアな実装が必須でしょう。
2点目は需要と供給のバランスについてです。現状では、マッチングや受け渡しまでの手間を考えると供給側のメリットが少なく、実際のマッチングがあまり成立しないんじゃないかなとも思います。ポイント制度や特典など、供給側により明確なメリットがあるような仕組みが不可欠だと感じます。
ただし、スマート冷蔵庫といったIoTデバイスとの連携によっては、より大きな社会的インパクトを生み出し得るサービスだなと感じました。
まとめ
既存サービスを活用したプロダクト開発において、絶対的に重要なことはそのサービスを使う意義があるかという点でしょう。この観点においてEY、デロイト、富士通の3社はServiceNowを利用する意義が他社より明確だったと感じました。
特にEYのプロンプトは、ServiceNowの強みや既存機能とサービスのコンセプトがうまく組み合わさっており、個人的な優勝チームだと感じました。
実際の結果は以下の通りです。
1位 デロイトトーマツ合同会社 「194.now」
2位 EY Japan 「AQUA SIGHT」
3位 SCSK 「Bridge AI Care」
デロイトは昨年度のServiceNow Hackathonでも2位を受賞しており、さすがだなぁという感じです。
その他、特別賞を受賞したチームとそのプロダクト概要です。
| 特別賞 | 企業名 | プロダクト名 | プロダクト概要 |
|---|---|---|---|
| イノベーション賞 | コムチュア株式会社 | kodomotto | 様々な育児・支援情報を提供 |
| Hack for Good賞 | JSOL株式会社 | AIdBridge | JSOLの既存システム「Musute」とAI Agentを連携した物資寄付支援システム |
| Future of Work賞 | Tata Consultancy Services Japan | Skill Bridge | AIを活用したナレッジ整理・プロジェクト可視化・プロジェクトと人材のマッチングを実現するプラットフォーム |
| Future of Work賞 | 日立製作所株式会社 | セキュリティ情報連携型スマートIT資産管理 | 公開されたセキュリティ情報とIT資産をAIが突合、対処が必要な場合にユーザに通知 |
| Where the world puts AI to Work賞 | エクシオ・デジタルソリューションズ株式会社 | RecoRo | ServiceNowとAI Agentを活用、被災者一人一人の不安や悩みに合わせた適切な支援を自己判断、提案するシステム |
最後に
今年度のHackathonには参加できなかったので、来年こそはリベンジしたいと思います!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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