プロローグ
うちの開発チームはずっと「1案件=1人(または2人)」で進めるスタイル。
責任者が全て抱えるからこそ 「責任感」 と 「成長」 は得られた。
でも同時に、属人化・負担集中・切り替えの非効率 といった課題があった。
そんなある日、後輩が切り込んできた。
後輩
「先輩、正直…今までのスタイル、きついっす!!一人で抱えすぎですって!」
「俺……スクラムがしたいです!」
先輩
「……おいおい。簡単に言うなよ。
スクラムなんてやったら体制がガラッと変わるし、責任の所在もぼやける。
今まで俺らが積み上げてきた文化に合わないだろ。」
後輩
「それはわかってます。
だから “いきなりスクラム全部” じゃなくていいんです。
まずはスクラムの“価値観”だけでも取り入れたいんです。
- チームで自己管理する
- 一人ひとりがリーダーシップを持つ
- 仲間を尊重する
背中を預け合えるチームなら、今のやり方よりずっと強くなれるはずです!」
先輩
「……なるほどな。
スクラムそのものは無理でも、スクラムの価値観を入れた “チーム開発” ならできそうだ。
よし!やってみるか!」
新チーム始動!
こうして4人の小さなチームが始動。
最初はぎこちなかったが、少しずつ“チームで戦う”空気を作るために、ルールや制度を整えていった。
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横の1on1
上司との1on1だけでなく、メンバー同士でも1on1を実施。
「何をやりたいか」「困っていることは何か」を互いに知り合うことで、横のつながりを強化した。 -
Slackハドルで即集結
詰まったら「ちょっとハドル入りましょう」で即集合。
個人で抱え込まず、すぐにチームで解決する動きが定着した。 -
チーム内レビュー制度
プルリクエストはチーム内で完結。
粒度を小さくするルールを徹底し、差し戻しを減らしてスムーズに回るようにした。 -
定期的な振り返り
隔週単位でKPT形式の振り返りを実施。
技術面だけでなく「チームの雰囲気」や「精神面」の話題も出すようにし、心理的安全性を重視した。
こうして少しずつ、“個人戦”から“チーム戦”へ。
開発チームはまるでスポーツチームのように、互いに声を掛け合い、背中を預け合う関係へと変わっていった。
半年後 ― 振り返りの場面
先輩
「半年やってみてわかった。
相談できるから精神的に楽になったし、
振り返りで改善を積み重ねられるようになった。
横の1on1でお互いの理解も深まったし、
レビューも効率的になったな。」
後輩
「背中で学ぶことも増えましたし、
Slackハドルで『ちょっと集まります?』ってすぐ動けるのは、ほんと強いっす!」
先輩
「でも課題もあるぞ。
責任が分散して “誰かがやってくれるだろう” って甘えが出る。
振り返りもマンネリ化してきたし、
小案件・中案件が続くと切り替えがスムーズにいかない。」
後輩
「確かに…。でも、それなら対策できます!
- 案件ごとに“目を配る担当者”を決める
- 振り返りには外部ゲストを呼んで新しい視点を入れる
どうですか?」
先輩
「……お前、成長したな。
いいだろう。次の案件からそれで行くぞ!」
エピローグ
こうしてチームはまた一歩前へ進む。
個人プレーからチームプレーへ――。
仲間と共に戦う開発が始まった。
まとめ
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従来のスタイルの特徴
- 案件ごとに1〜2人を担当にし、責任者が調整からリリースまで抱える方式
- 「責任感」「成長」は得られた一方で、属人化・負担集中が大きな課題になっていた
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スクラムそのものは導入せず、“価値観(精神)”だけを取り入れた
- チームで自己管理する
- 一人ひとりがリーダーシップを持つ
- 仲間を尊重する
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半年で得られたメリット
- 負担が分散されて精神的に楽になった
- 改善サイクルが回り、スピード感が出た
- メンバー同士の信頼やナレッジ共有が進んだ
仲間と共に走り続ける物語は、まだ続く。