競技プログラミングをやっていて、解説によくわからない数式が出てくるということが増えてきたので、高校数学を学んでまとめてみます。
(中学生でも学習する内容はあまり触れません。)
数と式
特定の文字に着目するとき、それ以外の文字は係数として扱います。
例えば、$3a^3b$ で $a$ について着目したとき、
3a^2b = a^2 \times 3b
なので、次数は2,係数は3b です。
降べきの順に整理するというのは、
x^2 + 3x^3 + 5 + 2x
という式があった場合に、
3x^3 + x^2 + 2x + 5
のように左に次数の大きい項を持ってくることをいいます。
次数で降順ソートをするイメージ。
昇べきはこの逆。
指数法則
$m,n$ を正の整数として、
$a^m \times a^n = a^{m + n}$
$(a^m)^n = a^{mn}$
$(ab)^n = a^nb^n$
が成り立つという法則のことです。
また、この法則はさらに拡張することができます。
$a^0, a^{-n}$ を以下のように定義します。
$a^0 = 1$
$a^{-n} = \dfrac{1}{a^n} \ (a \ne 0)$
$a$の指数を1減らすことは、$a$で割るということと考えると自然だと思います。
上の定義を用いると、指数法則が、$m,n$が整数であれば成り立つようになります。
結果的に $(a\ne 0 , b \ne 0, mとn$は整数) という条件のもとに
$a^m \times a^n = a^{m+n}$
$(a^m)^n = a^{mn}$
$(ab)^n = a^nb^n$
$a^m / a^n = a^{m - n}$
$(a/b)^n = a^n / b^n$
が成り立つということがわかります。
2次式の展開の公式
$(x + a)(x + b) = x^2 + (a + b)x + ab$
$(a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2$
$(a - b)^2 = a^2 - 2ab + b^2$
$(a + b)(a - b) = a^2 - b^2$
$(ax + b)(cx + d) = acx^2 + (ad + bc)x + bd$
$(a + b + c)^2 = a^2 + b^2 + c^2 + 2ab + 2bc + 2ca$
3次式の展開の公式
$(a + b)^3 = a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3$
$(a - b)^3 = a^3 - 3a^2b + 3ab^2 - b^3$
$(a + b)(a^2 - ab + b^2) = a^3 + b^3$
$(a - b)(a^2 + ab + b^2) = a^3 - b^3$
$(a + b + c)(a^2 + b^2 + c^2 - ab - bc - ca) = a^3 + b^3 + c^3 - 3abc$
$a^3 + b^3, a^3 - b^3$ の一般化
nが 奇数 のとき、
$a^n + b^n = (a + b)(a^{n-1} - a^{n-2}b + a^{n - 3}b^2 - \dots - ab^{n - 2} + b^{n - 1})$
nが 奇数でも偶数でも
$a^n - b^n = (a - b)(a^{n - 1} + a^{n - 2}b + a^{n - 3}b^2 + \dots + ab^{n -2} + b^{ n - 1})$
証明
等比数列の和の公式により、初項$a$, 公比$r$, 項数$n$の等比数列の和は、
$\dfrac{a(r^n - 1)}{r - 1} = \dfrac{a(1 - r^n)}{1 - r} (r \ne 1)$ となる。
また、負の数の奇数乗はnを奇数とすると次のように表せる。
$(-x)^n = (-1 \times x)^n = (-1)^n \times x^n = -1\times x^n = -x^n$
初項$a^{n - 1}$, 公比$-\frac{b}{a}$, 項数$n$(奇数) のとき、
$a^{n-1} - a^{n-2}b + a^{n - 3}b^2 - \dots - ab^{n - 2} + b^{n - 1} = \dfrac{a^{n - 1}\lbrace 1 - (-\frac{b}{a})^n \rbrace }{1 + \frac{b}{a}}$
分母と分子に$a$をかけて
$\dfrac{a^{n - 1}\lbrace 1 - (-\frac{b}{a})^n \rbrace }{1 + \frac{b}{a}} = \dfrac{a^n\lbrace1 + (\frac{b}{a})^n \rbrace}{a + b} = \dfrac{a^n + b^n}{a + b}$
したがって、$$a^n + b^n = (a + b)(a^{n-1} - a^{n-2}b + a^{n - 3}b^2 - \dots - ab^{n - 2} + b^{n - 1})$$
初項$a^{n - 1}$, 公比$\frac{b}{a}$, 項数$n$ のとき、
$a^{n - 1} + a^{n - 2}b + a^{n - 3}b^2 + \dots + ab^{n -2} + b^{ n - 1} = \dfrac{a^{n - 1} \lbrace 1 - (\frac{b}{a})^n \rbrace}{1 - \frac{b}{a}}$
分母と分子に$a$をかけて
$\dfrac{a^{n - 1} \lbrace 1 - (\frac{b}{a})^n \rbrace}{1 - \frac{b}{a}} = \dfrac{a^n\lbrace 1 - (\frac{b}{a})^n \rbrace}{a - b} = \dfrac{a^n - b^n}{a -b}$
したがって、$a^n - b^n = (a - b)(a^{n - 1} + a^{n - 2}b + a^{n - 3}b^2 + \dots + ab^{n -2} + b^{ n - 1})$
たすきがけ
$2x^2 - 5x - 3$ の因数分解をたすき掛けでやってみる。
-
下に$x^2$の次数、定数項、$x$の次数を書き入れる
対称式
対称式とは、 どの2つの変数を交換 しても変わらない多項式のことです。
対称式の基本定理 とは、すべての対称式は、基本対称式で一意に表せる というものです。
- 2変数の基本対称式
- x + y
- xy
- 3変数の基本対称式
- x + y + z
- xy + yz + zx
- xyz
1文字の和, 2文字の和, ... となっています。
対称式を因数分解するとき、$(x + 1)$ を因数に含むなら $(y + 1)$ も因数に含まれます。
\displaylines{
x^2 + y^2 = (x + y)^2 - 2xy \\
x^3 + y^3 = (x + y) ^3 - 3xy(x + y) \\
x^n + y^n = (x + y)(x^{n-1}+ y^{n -1}) - xy(x^{n-2} + y^{n-2}) \\
(x + y)^2 - 4xy = (x - y)^2 \\
x^2 + y^2 + z^2 = (x + y + z)^2 -2 (xy + yz + zx) \\
x^3 + y^3 + z^3 = (x + y + z)(x^2 + y^2 + z^2 - xy - yz - zx) + 3xyz
}
対称式の代表的な公式を挙げてみました。
また、$x$ と $\frac{1}{x}$ の対称式というものもあります。
$y = \frac{1}{x}$ とすると、 $xy = 1$ となることを利用しましょう。
交換式
交換式とは、2つの変数を入れ替えると-1倍になる式 のことです。
交換式は、2乗すると対称式 になります。
2変数交換式は、$(x - y)$ を因数にもち、残りは対称式になります。
3変数交換式は、$(x - y)(y - z)(z - x)$ を因数にもち、残りは対称式になります。
絶対値
絶対値とは、数直線上での 原点からの距離 です。
$a$の絶対値は、$|a|$ と表せます。
\begin{equation}
|a| =
\begin{cases}
a & \text{if $0 \leq a$,} \\
-a & \text{if $0 > a$.}
\end{cases}
\end{equation}
また、 $\sqrt{a^2} = |a|, |a| = |-a|, |a| \times |b| = |ab|, \dfrac{|a|}{|b|} = |\dfrac{a}{b}|, |a - b| = |b - a|$ が成り立ちます。
$|a - b|, |b - a|$ は数直線上での $a$ と $b$ の距離であるといえます。
一次不等式
- 移項ができる
- 不等式の両辺に 正の数 をかけたり割ったりできる
- 負の数を両辺に掛けたり割ったりすると、不等号の向きが入れ替わる
という法則があります。
例えば、$|x + 2| \leq 3$ について考えてみましょう。
この問題では、場合分けして考えてみましょう。
(i) $x + 2 \geq 0$ のとき
つまり、$x \geq -2$ のとき
\displaylines{
|x + 2| \leq 3 \\
x + 2 \leq 3 \\
x \leq 1
}
(ii) $x + 2 < 0$ のとき
つまり、 $x < -2$ のとき
\displaylines{
|x + 2| \leq 3 \\
-(x + 2) \leq 3 \\
-x -2 \leq 3 \\
-x \leq 5 \\
x \geq -5
}
(i),(ii) より、 $-5 \leq x \leq 1$ です。
二重根号
$\sqrt{(a + b) + 2\sqrt{ab}} = \sqrt{a} + \sqrt{b}$
$\sqrt{(a + b) - 2\sqrt{ab}} = \sqrt{a} - \sqrt{b}$
が成り立つ。($0 \leq b \leq a$ を意識しておくと良い)
$\sqrt{ab}$ の係数を2にできない場合は、分母分子に $\sqrt{2}$ をかければ良いです。
ちなみに、$a^2 - 4b$ が平方数でないと二重根号は外せません。
($x^2 - ax + b = 0$ の解が2つとも自然数であるか)
その他
分母が多項式な分数を有理化するときは、$(a +b)(a - b) = a^2 - b^2$ を使えば良いです。