はじめに
はじめまして。情報系修士一年のkanure24です!
先日統計検定準1級に一発で合格しました。準1の勉強法は既に多く存在するため、この記事では準1の勉強の中でつまづきやすいポイントをまとめました。モチベーションの維持の参考になれば幸いです。
この記事の対象者
・なんとか統計検定準1級を取得したい人
・準1級を受けるか迷っている人
・準1級を勉強中だが心が折れかけている人
この記事を読む必要がない人
・統計を深く理解をしている人
・資格取得に向けた勉強が得意な人
記事の目的
統計検定準1級の勉強法・内容・解説等は、既に先人の方々が残してくれています。そこで、準1を取りたいがモチベーションが続かない...という方に向け、準1級の特性(壁)を知りモチベーション維持を助けることが本記事の目的です。
参考にした記事・書籍
統計準1で検索して出る記事・書籍はほぼ以下にまとまっています。
・統計検定準1級 参考教材・サイトまとめ
私が主に利用したのは、この中でも
・統計学実践ワークブック(必須)
・統計検定 準1級 公式問題集(必須)
・これから学ぶ人向け「統計検定準1級チートシート」
・あつまれ統計の森
の4つです。ワークブックのテキストやチートシートをインプット、ワークブックの例題・公式問題集をアウトプット、あつまれ統計の森を解説書、として使いました。
モチベーション維持の4つの困難
ここから、我々のモチベーション維持の邪魔をする「困難」について説明します。他の資格にも参考になるかもしれませんが、基本的に統計準1級の特性に沿ったものです。ちなみに準1級を受けるメリットはもちろん、統計への深い理解と、資格としてそれを示せる点にあるため、ここでは割愛します。
準1級で直面する困難
- 2級よりも明らかに量が多く、準1級を受けること自体にためらう
- 受けると決意しても、本屋に売っていない事も多い
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いざ始めてみたら、4つの壁に阻まれる
・「量」の壁:改めて「32章」という量の重さに気づく
・「難易度」の壁:次第にわからない部分が増えてくる
・「必要理解量・暗記量」の壁:どこまで理解すればいいか・覚えればいいかが分からなくなる
・「解答」の壁:ワークブックの例題の解答では理解できないことがある
・「全体理解」の壁:先を進めないと理解できないこともある - 過去問(PBT)と現在の形式(CBT)が違う
1. 2級よりも明らかに量が多く、準1級を受けること自体にためらう
こちらに関しては100%気持ちの問題なので、頑張りましょう。自信がない方は先に2級を、別に準1級が必要ない方は受けなくていいでしょう。私は大学で統計について学んでいる身であり、ずっとためらっていましたが、重い腰をあげて勉強し始めました。将来的な必要性を踏まえ、自身で判断しましょう。
2. 受けると決意しても、本屋に売っていない事も多い
これも大した問題ではありません。私の住んでいる場所が田舎だからか 書店で売っていなかったため、ワークブック・過去問両方ともAmazonで買いました。
3. いざ始めてみたら、5つの壁に阻まれる
ここからが本題です。準1を受けるなら誰もが買うであろうこのワークブックは全部で32章あり、各章に例・例題があります(例が無い章もある)。一般的なやり方は「テキストを呼んで理解する→例・例題を解く」だと思いますが、ここに5つの壁が潜んでいます。
「量」の壁
ワークブックはとにかく量が多いです。量が多い割に一文一文の密度が濃いので、永遠にページが進みません。章の中だけでなく、全体において32章もあるというのもネックで、「頑張ったのにまだ3章か...」みたいな気持ちになります。
「難易度」の壁
進めていくと次第に「理解」が難しくなってきます。「理解」には確率・微積・線形などの「数学への理解」と、検定・分布などの「統計への理解」の2つがあり、もちろん両方の理解が必要です。特に「数学への理解」はワークブックを読む中で初めてヤバさに気づくので、「躓きやすい」ポイントだと言えます(もちろん個人差があります)。
「必要理解量・暗記量」の壁
量・難易度の壁と近いですが、公式やその導出等、どこまで覚えればよいかが分かりません。とにかく記述されている内容が多く、定義や〇〇分布、なども大量に出現するため、優先順位を付けずに 「分からないことを全て覚え(理解し)ようとする」と挫折しやすい と思います。
「解答」の壁
これは、解答の解説がかなり省略されている、という意味です。ワークブックは相当の内容を300ページに収めた良書ですが、その分省略されている部分も多いので、ワークブックだけで全てやろうとすると理解に苦しみやすいです(実体験)。
「全体理解」の壁
これもページ数の都合上仕方ないかも知れませんが、2章で数行だけ登場した「ハザード関数」が19章で詳しく説明されたり、31章のベイズ法の理解にはベイズの定理(1章)やベータ分布(6章)が必要だったり、と章を行き来することが多いので、特定の章にフォーカスしすぎずに勉強する必要があります。
4. 過去問(PBT)と現在の形式(CBT)が違う
ここまでの壁を乗り越えたならば比較的小さな困難かもしれませんが、過去問と試験方法が違うことは試験前の不安要素になりやすいです。統計準1級は2021年6月までPBT方式(記述+数値回答+選択)で、2023年現在はCBT方式(数値回答+選択)となっています。受けやすさ・合否発表の即時性というメリットがある一方で、「問題の難易度は上がった(部分点がなくなり難易度が上がった)」とも言われています。そして公式の過去問はPBT方式のものしかなく、過去問以外の内容からも出題されるので、過去問のやりこみだけでは安心できないのも一つのネックです。
ソリューション
ここまで準1級における困難を説明しました。タイトルにある「モチベーションの維持」ですが、モチベーションはこれらの困難が積み重なることで減衰していきます。ここまで説明した内容を事前に知ることで、実際に困難に直面した際にも対処しやすくなり、結果的にモチベーションの維持につながれば光栄です。本記事の目的は9割達成しましたが、ここでは各困難への対処法の一例として私が行った方法を紹介します。あくまで参考程度なので、気になる方だけ読んでください。
「量」・「難易度」・「必要理解量・暗記量」・「全体理解」の壁
いきなりですが、この4つの壁においては 1サイクルをいかに早く回すか に帰結します。本来ワークブックはきちんと理解して読み進めていくべきだと思いますが、それでモチベーションが維持できずに途中で諦めてしまったら本末転倒です。
そこで、1サイクルを早く回すために 1サイクルで行う部分を絞る ことをおすすめします。量が多い分早めに1週すれば安心感を得やすいし、どこが難しいかも分かりやすいし、全体理解にも繋がります。具体的には、例題にフォーカスして1サイクルを早く回すことをおすすめします。例題で出題される部分は基本的に重要(出題されやすい)ため、優先して理解・暗記すべき箇所も把握しやすくなります。参考として、私の勉強のタイムスケジュールを紹介します。(ちなみに、元々の計画よりも進まず、1週間ほど遅れてしまいました...)
・7/2:ワークブックをAmazonでポチる
・7/3-7:テキストの「例」だけを解く(あまり効果なし)
・7/8-14:テキストの「例題」を全て解く
・7/15-31:テキストの「例題」を全て解き、間違えたものは次の日以降解けるまで毎日繰り返す
同時進行で「チートシート」の暗記開始、適宜自分で加える
・7/31:過去問をAmazonでポチる
・8/1-8/6:一日一年過去問を解き、間違えたものは次の日以降解けるまで毎日繰り返す
テキストの「例題」をすべて解く+解き直す
ワークブックの本文を全部読みわからない部分を覚える
・8/7:試験当日
正確な勉強時間は数えていませんが、最後の1週間の追い込みもあり100時間くらいだと思います。見れば分かるように、私の作戦は先に例題の解き方を覚えた上で本文を理解するというものです。スポーツやプログラミングで習うより慣れろ、と言われるように解法をマスターした後で(する中で)後から基礎をおさえるという方法です。合格メソッドではないし、賛否両論もあると思いますが、一例として挙げておきます。
「解答」の壁
この壁の乗り越え方は一つ、「とにかく調べること」です。例題・過去問の解説ならあつまれ統計の森やえびかずきさんのQiita記事などを見比べましょう。本文中の理解なら「ノルム 数学」「コレログラム 統計」というようにネットで調べればいくらでも出てきます。「そんなの当たり前じゃん」と思うかも知れませんが、量が多いゆえにワークブックだけにフォーカスしやすいので、準1の勉強過程では 「ワークブックで理解できなかったらすぐ調べる」 クセをつけることをおすすめします。ワークブックはバイブルなので、基本全ての内容が入っていますが、文字数を最大限削っていることを忘れてはいけません(私はワークブックにこだわり、ワークブックだけで理解しようと足掻いたため結構時間を費やしてしまいました)。
おまけ:形式の違いについて
過去問と現在の形式が違うことへの対処法ですが、あくまで過去問ベースで問題ないと個人的には思っています。本番の試験で、体感として半分くらいは過去問や例題の類題で、残りの4割ほどはワークブックのテキストや例があれば解ける(解けなくはない)問題で、1割はワークブックにもない(気がする)問題です。合格点は60点なので、過去問・例題ベースでそこを確実に取り、その上でワークブックを読み込むことで他の部分の得点を狙うのが良いと思います(例題は過去問の設定変更の場合が多いです)。
※問題は人によって違う?ので、あくまで参考に。
まとめ
私自身の得点は100点中67点(確率と確率分布:80%、統計的推測:83%、多変量解析法:28%、種々の応用:85%)で、謎に多変量解析法を大失敗しましたが他で8割をキープしたため何とか合格しました。自分としても理解できたと言うには程遠く、引き続き勉強する必要性を感じています。ですが、あくまで「資格に合格する」という最低限は達成したため、モチベーションの維持に影響しやすい準1ならではの特性について、参考になればと思いお伝えしました。これらの特徴を踏まえ、計画的・持続的に統計検定準1級の勉強をする助けになれたらと思います。