はじめに
このたび、2025年5月19日〜22日の4日間、現地で「2025 Microsoft Build」に参加してきました。私はエンジニアではありませんが、一般の立場から見た最新技術(特にAI)やエネルギーに関する気づきを、みなさんとシェアできればと思います。よろしくお願いします。
Conversations: Building carbon-aware sustainability solutions
Microsoft Buildの3日目に「Conversations: Building carbon-aware sustainability solutions」に参加しました。少し驚いたのは、参加者が私一人だったことです。そのときは、本当にこのセッションが開催されるのか不安になりました。エンジニアにとって脱炭素への関心が薄いのか、それとも他に理由があるのかもしれません。スタッフの話では、一度キャンセルされた後に再度開催が決まったため、このような結果になったようです。
内容の紹介はこちら
Developers must build carbon-aware systems to improve energy efficiency, reduce costs, and meet sustainability goals. This session will cover Green Software, focusing on creating solutions to lower carbon emissions. Attendees will learn to use developer tools and open source software to measure carbon emissions, and engage with hands-on tools used by Green Software engineers to start building sustainability solutions immediately.
開発者は、エネルギー効率を向上させ、コストを削減し、持続可能性の目標を達成するために、カーボンアウェア(炭素配慮型)なシステムを構築する必要があります。本セッションでは、Green Software(グリーンソフトウェア)に焦点を当て、炭素排出量を削減するためのソリューション作りについて解説します。参加者は、炭素排出量を測定するための開発者向けツールやオープンソースソフトウェアの使い方を学び、Green Softwareのエンジニアが実際に使用しているツールを体験しながら、すぐにサステナビリティソリューションの構築を始めることができます。
Why Azure
セッションの冒頭では、「なぜAzureを使うのか」が紹介され、マイクロソフトの環境への取り組みやAzureによる脱炭素支援について説明がありました。
- 100% renewable energy by 2025
- Water positive by 2030
- Zero-waste certification by 2023
- Net-zero deforestation from new construction
- Carbon optimization in Azure
- Emissions Impact Dashboard
Demand Shifting
この中でソフトウェア開発者も関わることができる部分として、「クラウドサービスの設計」が挙げられました。その中で「Demand Shifting(需要移動)」という言葉が紹介され、私は少し驚きました。
というのも、私の現在の仕事はまさに系統用蓄電池の導入であり、ピーク時に蓄電池から電力を供給し、オフピーク時に充電することでDemand Shiftingを実践し、再エネ活用を促進しています。クラウドサービスの世界でも、こうした考え方が取り入れられているのですね!
Carbon Optimization in Azure
Azureの利用者は、サービスの処理時間や利用リージョンを調整することでコスト削減※ができるだけでなく、再生可能エネルギーの利用比率を高めることで脱炭素にも貢献できます。そして、その成果はグラフで確認できるようになっています。
※Azureを含む主要クラウドサービス(AWS、Google Cloud、Azure)では、「リージョン(地域)」ごとに料金が異なります。
※リージョンを選定する際には、以下の要素を考慮する必要があります。
① パフォーマンス(遅延・速度)
② コスト
③ 法規制・データガバナンス
④ 可用性・耐障害性
⑤ 再エネ・環境配慮
⑥ 特別施策・割引
【具体例】
ユースケース | おすすめリージョン例 |
---|---|
日本国内向けWebサービス | 東日本(Tokyo)、西日本(Osaka) |
AI学習処理・大量演算 | 北欧(Sweden Central) or 米国中部(Iowaなど) → 安価+再エネ多 |
グローバルサービス | 北米(East US, West US)+欧州(Netherlands)+日本 → 分散設計 |
ESGレポート重視の大企業 | 再エネ100%のリージョン(北欧、オランダ、カナダ)優先 |
データ規制が厳しい業種 | 各国国内リージョン(例:日本→東日本・西日本 / 欧州 → ドイツ or フランス) |
参考資料
セッションの最後に登壇者から共有された情報をご紹介します。
✅ GSFニュースレターに登録する:
✅ GSP(Green Software Practitioner)認定を取得する:
✅ 持続可能なソフトウェアエンジニアリングの原則を学ぶ:
✅ Azure カーボンに関するブログを読む:
こちらはMicrosoftが作成した記事ですが、興味がある方はぜひご覧ください。
感想
現在、AI業務の成長に伴いデータセンターの増設が進み、それに伴って電力需要も急速に増加しています。
再エネと系統用蓄電池の併設に加え、世界中にデータセンターを持つグローバル企業が可視化機能を提供することで、ユーザー企業がシステム設計の段階から処理時間や利用リージョンを調整し、再エネ利用比率を高めて脱炭素に貢献できる環境が整いつつあります。
クラウドサービス選定時にはさまざまな要素を考慮する必要がありますが、これからは「再エネの比率」という観点も積極的に取り入れていくのが良いかもしれません。
追記
社内勉強会の後に同僚が共有してくれた記事なのですが、日本国内でまさにデータセンターにおけるDemand Shiftingの実証が行われています!