6
2

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 5 years have passed since last update.

ROS対応マイコンシミュレータ athrill 颯爽と登場!

Posted at

#概要
前回,ROSを使ってUnityの仮想車両をマイコンシミュレータで制御してみました.

ただ,ここでわかった課題は『シミュレーションが重い,遅い・・』でした.
Unityだけでも結構重いのですが,それに加えてマイコンシミュレータも動かすため,1マシンでシミュレーションするのは限界を感じていました.

そこで,マイコンシミュレータ上で動作させていた組込み向けROSライブラリ(mROSをマイコンシミュレータに組み込んでみたらどうか?というのが今回の記事の内容です.

この成果は,SWEST21でご紹介しますので,もし参加される方いらっしゃいましたら,ぜひインタラクティブセッション/athrill・箱庭のセッションにお立ち寄りください!

#今回の取り組み内容
既存のマイコンシミュレータで,ROSトピックの出版・購読できるようなものはあまり聞いたことがないので,TOPPERS/athrill を改造しました.

具体的には,以下の3点の改造を実施しました.

  • mROSの athrill移植
    • mROSソースを x86用にビルドし直して,ターゲット依存部(RTOSやLWIP)を汎用OSの機能に差し替えるだけ
  • mROS機能の抜き差し機構の追加
    • mROS は athrill のプラグインという位置づけが良いかと思ったので,抜き差しできるようにインタフェースを切りました.
    • athrillのデバイスレジスタへ I/O することで,トピックデータを読み書きができます
  • mROS機能のパラメータ
    • ROSトピックは athrill のパラメータファイルに任意のものを定義できるようにしました.
    • ただし,トピックのデータ型は,std_msgs/String のみとしています.

#スタック構成
よくわからない?と思われる方に向けて,今回実施したことをスタック構成で図解したいと思います.

まず,これまで mROS がどこにいたかというと,組み込みソフトウェアの一部(ミドルウェア)として配置されており,athrillの仮想空間上で動作していました.

image.png

これに対して,今回の取り組みにより,mROSは athrill の内部に組み込まれました.

image.png

#サンプルアプリ
athrill上で動作するベアメタルアプリを以下で公開しました.

https://github.com/tmori/athrill-sample/tree/master/baremetal/dev-sample/dev-mros
※main.c を参照ください.

トピック出版は以下のように行います.

static const char *sample_publish_data = "Hello World!!";

int main(void)
{
	int datalen = strlen(sample_publish_data);
	/*
	 * 送信用バッファのアドレスを athrill のデバイスレジスタ(VCAN_TX_DATA_0)に登録
	 */
	sil_wrw_mem((void*)(VCAN_TX_DATA_0(0)), (uint32)sample_publish_data);
	/*
	 * 送信データ長を athrill のデバイスレジスタ(VCAN_TX_DATA_1)に登録
	 */
	sil_wrw_mem((void*)(VCAN_TX_DATA_1(0)), datalen);
}
void timer_interrupt_handler(void)
{
	/*
	 * 送信フラグレジスタに 1 を書き込むとトピックデータが送信されます
	 */
	sil_wrb_mem((void*)(VCAN_TX_FLAG(0) + 0), 1);
}

トピック購読は以下のように行います.

static char subscribe_buffer0[1024];
int main(void)
{
	/*
	 * 受信用バッファのアドレスを athrill のデバイスレジスタ(VCAN_RX_DATA_0)に登録
	 */
	sil_wrw_mem((void*)(VCAN_RX_DATA_0(0)), (uint32)subscribe_buffer0);
	/*
	 * 受信バッファサイズを athrill のデバイスレジスタ(VCAN_RX_DATA_1)に登録
	 */
	sil_wrw_mem((void*)(VCAN_RX_DATA_1(0)), sizeof(subscribe_buffer0));
}
void timer_interrupt_handler(void)
{
	uint8 is_rcv = 0;
	/*
	 * 受信データの到着判定はVCAN_RX_FLAGの値で判断(0:データなし,1:データあり)
	 */
	is_rcv = sil_reb_mem((void*)(VCAN_RX_FLAG(0)));
	if (is_rcv != 0) {
		test_print("RECV CAN_DATA:");
		test_print(subscribe_buffer0);
		test_print_one("\n");
		sil_wrb_mem((void*)(VCAN_RX_FLAG(0)), 0);
	}
}

出版/購読するトピックデータは,athrillのパラメータ定義ファイル(device_config.txt)で以下のように行います.

DEBUG_FUNC_ENABLE_MROS		1
DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_PUB_NUM	2
DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_PUB_0	CANID_0x100
DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_PUB_1	CANID_0x101
DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_SUB_NUM	2
DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_SUB_0	CANID_0x400
DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_SUB_1	CANID_0x404

以下,各パラメータの説明です.

  • DEBUG_FUNC_ENABLE_MROS
  • athrillのROS機能を使う場合は 1 を設定します
  • DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_PUB_NUM
  • 出版するトピック数を定義します.最大で1024個まで定義可能.
  • DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_PUB_<0からの連番値>
  • 出版するトピック名を定義します.DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_PUB_NUMで定義した個分だけ定義します.
  • DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_SUB_NUM
  • 購読するトピック数を定義します.最大で1024個まで定義可能.
  • DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_SUB_<0からの連番値>
  • 購読するトピック名を定義します.DEBUG_FUNC_MROS_TOPIC_SUB_NUMで定義した個分だけ定義します.

#デモ
上記はあくまで単純な動作確認用のサンプルアプリなのですが,前回作成したアプリをこのathrill用に移植したアプリケーションソースを以下に公開しました(RTOS(asp3)上で動作しています).

また,このアプリケーションを使ったデモをお見せします.

mros_athrill_car.gif

なお,前回はこのデモを動画を録画すると,マシンに負荷がかかりすぎて,障害物判定が間に合わなかったのですが,今回は見つけてくれています.

#ROS対応版のathrillのインストール手順
##動作環境
ROS対応版 athrill は,以下の環境で動作します.

  • OS
  • windows 10/WSL(Ubuntu 16.04.5 LTS), Linux(Ubuntu 16.04.5 LTS)
  • 今回は Windows 10/WSLで動作確認しています.
  • ROS
  • kinetic

##athrillのチェックアウト

$ git clone https://github.com/tmori/athrill.git

##athrill-targetのチェックアウト

$ git clone https://github.com/tmori/athrill-target.git

##athrillのビルド

athrill と athrill-targetを以下のフォルダ構成にしてください.

.
├── athrill
└── athrill-target

ビルド実行場所である以下のフォルダに移動してください.

athrill-target/v850e2m/build_linux

以下のコマンドを実行し,ビルドしてください.
※make/gcc は事前にインストールしておいてください.

make clean;make

ビルド成功すると,以下のログが出力されます.

ranlib libmain.a libcui.a libcpu.a libbus.a libmpu.a libdevice.a libloader.a libstd.a libmros.a
gcc -O3 -Wl,--allow-multiple-definition libmain.a libcui.a libcpu.a libbus.a libmpu.a libdevice.a libloader.a libstd.a libmros.a -o athrill2  -lpthread  
/bin/cp athrill2 ../../../athrill/trunk/src/../../bin/linux/
chmod +x ../../../athrill/trunk/src/../../bin/linux/athrill2

##athrillのバイナリパスの設定

作成されたバイナリは,athrillの方のフォルダ内の bin/linux 配下に配置されますので,このパスを .bashrcに登録してください.

$ ls athrill/bin/linux
athrill   athrill_extfunc.sh  athrill-run         athrill_terminal  variable_conflict_check.groovy
athrill2  athrill_remote      athrill-run-remote  geany.sh          variable_conflict_check.sh

以下,設定例です.

export PATH=<athrill配置フォルダパス>/athrill/bin/linux:${PATH}

##インストール確認
任意のフォルダ上で,athrill2と叩いて,以下のメッセージが出力されていれば成功です.


$ athrill2
Usage:athrill -c<core num> -m <memory config file> [OPTION]... <load_file>
 -c                             : set core num. if -c is not set, core num = 2.
 -i                             : execute on the interaction mode. if -i is not set, execute on the background mode.
 -r                             : execute on the remote mode. this option is valid on the interaction mode.
 -t<timeout>                    : set program end time using <timeout> clocks. this option is valid on the background mode.
 -m<memory config file>         : set athrill memory configuration. rom, ram region is configured on your system.
 -d<device config file>         : set device parameter.

#何に使えるか?
えいやっと作ってみましたが,ここで冷静になって,これって何に使えるか考察してみます.
まず,マイコンシミュレータでROSを利用するというだけでしたら mROS だけで十分だと思います.

マイコンシミュレータである athrill が mROS を組み込んだ意義は,実は,仮想デバイスの通信手段が増えるという点にあると考えます.
※とうぜんですが,動作も早くなります.

たとえば,CANデバイスを考えてみましょう.CANデバイスをマイコンシミュレータに組み込んだ場合,その通信路をどうするか?という問題がでてきます.

TCPやUDP,はたまた,本物のCANバスという選択肢がありますが,ここにROS通信という選択肢が出てくるわけです.

ROSであれば,標準でさまざまなコマンドが用意されていますので,扱いが非常に楽です.
CANデータをROSトピックとして購読・出版できるようになりますから,rostopic echo を使えば流れているデータを簡単に参照できます.

また,テストデータを流したい場合は,rostopic pubを使えば好きなデータを流せます.
さらに通信構成は,rqt_graphを使えばこんな風にビジュアライズもしてくれます.

image.png

さらに,自分の宿題である ETロボコン向けシミュレータの取り組みに対しても,性能面・環境面で重要な位置づけとなることでしょう.今後にご期待ください!

6
2
4

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
6
2

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?