どうも、毎年草野マサムネ(σ_σ)さんと関口和之( ̄灬 ̄)さんの誕生日祝いで技術ブログを書いている龍石茜(りゅうせきあかね)と申します。お二人ともお誕生日おめでとうございます。
筆者は2019年5月3日から1990年代に発売されたWindows/Macintosh向けCD-ROMソフト(別名マルチメディアソフト、インタラクティブソフト)形式PCゲーム(以後便宜的に「プチレトロゲー」と呼称)の中で特にまともなプレイ動画が存在しないものを中心に現代の環境で実行しプレイ動画をアップするアーカイブ企画「平成考古学」を立ち上げスローペースに活動しています。
平成考古学立ち上げのきっかけは、初めてのQiita記事で記しました。
その時はMacintosh側のやり方に挫折した結果Windows側(Hyper-V)の方法しか書けませんでしたが、2024年までにOld Mac側は最も簡単な方法が確立されました。
その方法を載せれば本題はおしまいなのですが、それだけでは勿体ないというか。2019年からの五年間ちょいと苦労した過去を昇華するべく……(笑)筆者が試した歴代Old Macエミュレータも併せて紹介します。
「ええい、お前の苦労話はどうでも良いから簡単にOld Macが出来る方法を教えろ!」という方は「各種リンク」の章だけ読めばOKです。
筆者の問わず語りにお付き合いくださる方は、どうぞこのまま読み進めてください。
Basilisk II
実質的に筆者が初めて触ったMacintosh環境。
68k Macintoshエミュレータ。「68k」とはMC68000モトローラ製マイクロプロセッサの通称との事(Wikipedia調べ)。公式サイトで謳っている対応範囲は「Mac OS 8.1以前」。
古くから存在するOld Macエミュレータの中で特に有名なものの片割れ。
もう片方はSheepShaverですが、筆者が当時プレイしたかったPCゲームは「漢字Talk7」以降が対応になっていた為、これをインストールする為の前提環境を構築出来るBasiliskⅡを選択しました。
まずOld Macミリしら状態から漢字Talk7を導入するのにすっっっっっっっっっっごく苦戦しましたが、結局BasiliskⅡで実現出来たのは「漢字Talk7.5.3導入」「漢字Talk7.5.5へのアップデート」と「toastファイルの解凍」「google.comへの接続」程度でした。しかも軒並み一時間、酷いと数時間要する上にBasiliskⅡ自体が落ちやすい有様。
度重なる強制終了やファイル解凍失敗に耐えかねた筆者は一旦Old Mac環境の整備を諦め、Hyper-Vで昔のWindows環境を構築する方向へ進みます(その成果が上記記事の内容)。
Macintosh.js
BasiliskⅡに挫折した翌年の2020/07/29、GitHubにて「Mac OS 8.1」環境を再現したエミュレータ「Macintosh.js」が公開されました。GitHubから誰でもインストーラーを入手可能。
1997年に登場したMac OS 8をエミュレートできる「macintosh.js」が登場 - GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20200729-mac-os-8-macintosh-js/
筆者は発表当初気付けず、一年近く経った2021/06/06頃に漸く存在を知り自らのWindows端末へインストール。BasiliskⅡと同様に漢字Talk7.5.3をMacintosh.jsに入れてみようとしたものの、エラーによりインストール出来ず。
代わりに「Japanese Language Kit 1.2」(JLK1.2)を導入し、「日本語の入力、編集、印刷」等は出来る様になりました。システムメッセージは相変わらず英語でしたし、日本語対応ソフト(=筆者が遊びたいプチレトロゲー)も動きませんでした。Macintosh Repositoryでの説明文によれば、日本語アプリケーションも動作すると書いてあったのですが……
The Kit works as an extension to Mac OS software version 7.1 or later, which allows you to run Japanese applications.
このキットは、Mac OSソフトウェアバージョン7.1以降の拡張機能として機能し、日本語のアプリケーションを実行できます(筆者注:Bing翻訳機能による日本語訳)。
kanjitalk7.app(Infinite Mac)
Macintosh.jsにも挫折した筆者ですが、Old Macエミュレータへの未練は消えず情報収集だけは続けていました。
そして2022/07/17、Twitter(現X)で「ブラウザ版Old Macエミュレータ」の存在を知ります。後に1984年のSystem1.0~2001年のMac OS 9.2.2まで、殆どの主要なバージョンを網羅したブラウザ版Old Macエミュレータ群を擁する壮大なプロジェクトへ進化する「Infinite Mac」です。
1990年代のMacをブラウザ上で完全再現すべく作られたエミュレーター「Infinite Mac」 - GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20220427-infinite-mac/
「kanjitalk7.app」は最初に実装(2022/03/31)された「system7.app」「macos8.app」に続くInfinite Macシリーズ三番目のブラウザ版Old Macエミュレータ(のショートカットリンク)。その名のとおり、漢字Talk7.5.3環境をWEBブラウザ上で再現したエミュレータになります。開発者ブログで公式発表されたのは2022/05/17ですが、先に発表されたバージョンのデスクトップ画面に記載されているアドレスを打ち込む形で約一か月前には既にアクセス可能になっていた模様。
これに関しては公式発表から丁度二か月後の2022/07/17に情報を掴む事が出来、同年12/07にGIGAZINEで紹介される前には目的のMacintosh用ゲームがkanjitalk7.app上で動作する事を確認出来ました。
無料で日本語版Macintosh用OS「漢字Talk」をブラウザ上で体験できる「kanjitalk7.app」 - GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20221207-infinite-mac-kanjitalk/
Mac実機経験&知識ゼロの筆者からすれば、kanjitalk7.appの利点は以下が挙げられます(仕様については恐らく、Infinite Macシリーズ全体で共通しているものと思われます)。
- 爆速
さすがにMac OS 9.2.2ですと起動に時間がかかってしまうのですが、kanjitalk7.appクラスなら五秒とかからず操作可能になります。実機を触った事がある方はより感動する部分かも知れませんね。 - CD-ROMのマウントが楽
筆者に使いこなせなかったBasiliskⅡはともかく、Macintosh.jsではアプリケーション起動前にローカルPCのユーザーフォルダ内へ「.iso」や「.img」形式のファイルを配置しておくとMacintosh.js起動時にマウントしてくれます(Hyper-V仮想マシンにCD-ROMをマウントする時の手順に近いです)。
GIGAZINE記事にも記載されていますが、kanjitalk7.appではローカルから「.iso」や「.toast」形式のディスクイメージをkanjitalk7.appデスクトップ画面へドラッグ&ドロップで直接マウントすることが可能になりました。kanjitalk7.appにはQuickTimeがプリインストールされている為、CD-ROMのマウントさえ出来てしまえば大体のソフトはそのまま開始出来る筈です。 - 利便性がどんどん向上してゆく
上記で説明した様に、kanjitalk7.appはそれまで世に出ていたOld Macエミュレータよりも格段に扱いやすくなっています。しかし進化はまだまだ続きます。
2023/06/19には画面下部に「CD-ROMs」タブが追加。「MYST」や「おばあちゃんとぼくと」の様な有名どころのPCゲームやデジタル絵本、その他Mac用のソフト等々、主要なものは(英語版に限り)ワンクリックでマウント可能になりました。エミュレータのお試しに、このライブラリから使うソフトを選ぶのも良いでしょう。
2024/11/03、更なる便利機能が追加されました。画面下部の「CD-ROMs」タブの隣には、「Macintosh Garden」と書かれたタブが。なんとOld Macエミュレータユーザー御用達CD-ROMアーカイブサイトに収められているソフトをその場で検索・直接マウント出来てしまいます。「.zip」等圧縮形式でアーカイブされたソフトを選択した場合、自動的に解凍まで実施してくれます。日本発売のソフトはさすがにGarden上でアーカイブされていないものも多いですが、ゲームに限らず1980年代~1990年代に発売された大部分のMacintosh対応CD-ROMはディスクイメージを事前準備する必要も省かれました。
「平成考古学」の意義――考古学が土を掘らなければいけないという決まりはない――
最後に冒頭で少し触れた「平成考古学」について、改めて説明させてください。
2024年。ハード面・ソフト面共に、Old MacのエミュレーションはWEB上で完結出来る様になりました。筆者が2019年に初めてBasiliskⅡを使おうとした頃からは考えられない程、便利な時代です。
この五年間にエミュレータの力を借りプチレトロゲーを数作品遊んでみる事で、幼少期特定のPCゲームに夢中だった頃を思い出し懐かしくなりました。その一方で1990年代のCD-ROMは「東脳」「GAGGET」等一部PCゲームがカルト的な人気を博す他は現在インターネット上に出回っている情報が少なく質も不十分です。邦楽系のインタラクティブコンテンツを収録したCD-ROMに至っては現行環境でのプレイが困難な為か公式データブックやディスコグラフィから削除されている例すらあります(例:サザンオールスターズ、谷村有美)。
本当に最初のきっかけは「推し🤠が昔作ったPCゲームを遊びたい♡」でしたが、次第に「これ動作環境が保証出来る内にプレイ動画残しておかないと幻のゲームになっちゃわないか?」という文化消失への焦りが生まれました。そこから「平成のパソコン文化保護活動」としての「平成考古学」に取り組もうと考える様になりました。
筆者には歴代Old Macエミュレータ開発者達の様な技術力は持ち合わせておりません。恐らく当時のプチレトロゲー製作者達にも敵わないでしょう。それでも先人達が積み上げてきた技術の力を借りプレイ動画という形でウェブ上にアーカイブする事で、「こういう物が存在した」証を後世に伝えてゆく事なら出来るのではないかと思ったからです。
当然正式な学問ではない為、個人で出来る活動には限界があります。
その為最近では「平成考古学」の活動を筆者の友人や社内のグループミーティング等で周知及び賛同者の募集も始めました。目下の目標は平成考古学の社内サークルを設立する事。
ゆくゆくは弊社の敷地内やビルの一角等に「1990年代のインタラクティブ/マルチメディア/エデュテイメントCD-ROM現物や当時の雑誌記事等資料を収集・展示するプレイ環境付きミュージアム」を設置する事が目標です。
Qiita執筆者、閲覧者の皆様も、一緒に電子の海で考古学しませんか?
各種リンク
主なOld Macエミュレータ
初期
Mini vMac(公式サイト、下の行はAndroid版へのリンク)
https://www.gryphel.com/c/minivmac/
https://play.google.com/store/apps/details?id=name.osher.gil.minivmac&hl=ja&pli=1
中期
system6.app(Infinite Macショートカット)
https://system6.app/
system7.app(Infinite Macショートカット)
https://system7.app/
BasiliskⅡ
https://basilisk.cebix.net/
kanjitalk7.app(Infinite Macショートカット)
https://kanjitalk7.app/
macos8.app(Infinite Macショートカット)
https://macos8.app/
Macintosh.js
https://github.com/felixrieseberg/macintosh.js/
後期
SheepShaver
https://sheepshaver.cebix.net/
macos9.app(Infinite Macショートカット)
https://macos9.app/
Mac OS Xより前のほぼ全バージョン
Infinite Mac
https://infinitemac.org/
kanjitalk7.appのTips解説記事
■■Infinite Macの健忘録 ■■(Old Macに詳しくない人、英語が苦手な人向け)
https://note.com/thoruman/n/nfa88b72a69c7
平成考古学拠点
ニコニコ動画(特にプレミアム会員様のフォローお待ちしてます)
https://www.nicovideo.jp/user/817100/series
最後までご覧くださりありがとうございました。
それでは、また来年のアドカレで会いましょう👋