はじめに
2026年8月8日の[東北][岩手][JAWS-UGいわて]LT会+生成 AIハンズオン#3で、「Kiro 5兄弟の現在位置を確認してみた」というテーマで登壇しました。本記事はその発表内容の紹介記事です。
内容は 2026年8月上旬時点のスナップショットです。Kiro は月2回以上のペースで動くので、読むタイミングによっては既に変わっているかもしれません。
発表資料のうちKiro Crew構成などについてはなるべく正確にするためソース解析をした結果を記載しています。そのためGitHub上のドキュメントと一部異なる内容になっている箇所があります(例: 概説ドキュメントはツール実行前のチェックを "fail-open" と書いていますが、実装は fail-closed でした)。ドキュメントの修正がソース改修に追いついていないためと思われます
発表資料
なぜこのテーマで発表したのか
私は Kiro CLI(旧 Amazon Q Developer CLI、以降 Q CLI)の推し活(外部登壇)を約1年続けており、今回もその一環です。
ただ今回は、Kiro CLIに特化した内容ではなく Kiro というプロダクト群そのものを扱いました。理由は単純で、形態が増えてきたので改めて整理が必要と感じたからです。
調査を始めた時点では IDE / CLI / Web / Mobile の4兄弟でした。ところが資料を作っている最中の 2026年8月4日に Kiro Crew が発表され、5兄弟に修正しました。
Crewの発表数日前にKiroのXアカウントで 8月4日(火)にKiroの新しい発表がある旨の周知がありました。内容的にはKiro CLI V3.0.0の発表かなと思っていたのですが、Crew が発表され驚きました。登壇の4日前の発表でしたが、調べてみるとCrewが一番おもしろかったので、Crewの説明を多めにした構成に組み替えました。
Kiro雑学:一次情報が AWS のドキュメントに無い
調査の前提として、Kiro には少し変わった事情があります。
Kiro は日本語の「岐路」が語源で、名称にAWSもAmazonも付きません。そのため一次情報は docs.aws.amazon.com ではなく kiro.dev にあります。そして kiro.dev は英語のみです。
日本語でバージョンアップ履歴を追いたい方向けに、私はKiro CLI自身を使ってGitHub上に情報まとめサイトを運用しています。よろしければこちらも参照して頂けると幸いです。
| サイト | URL |
|---|---|
| 猫でもわかるKiro CLI アップデート情報 | https://github.com/kamogashira-sys/q-cli-docs |
| 猫でもわかるKiro IDE アップデート情報 | https://github.com/kamogashira-sys/kiro-ide-docs |
| 猫でもわかるKiro Web アップデート情報 | https://github.com/kamogashira-sys/kiro-web-docs |
結論:5兄弟は「5人並び」ではなく「2+2+1」だった
先に結論です。伝えたかったのは次の3点でした。
- IDEとCLIはもうすぐ機能統合される。 統一エージェントハーネスへの載せ替えが進んでおり、
permissions.yamlという共通装備が入った - WebとMobileは双子のようなもの。別アプリではなく、同一のクラウドセッションを2つのサーフェスから操作している
- Crew の登場で1段高いフェーズに入った。ただしCrewとWebは、実行場所という点で真逆を向いている
5兄弟は横に5人並んでいるのではなく、2+2+1に分かれています。まず生い立ちを押さえたうえで、この3点を順に見ていきます。
「長男〜五男」という序列付けや、「双子」、「預ける/住み込む」といった比喩は公式の表現ではなく私の整理です。
5兄弟を人間に例えると
| 形態 | 人間に例えると | 立ち位置 |
|---|---|---|
| 長男 IDE | 4か月のプレビュー修行を経た本家 | Spec駆動開発の元祖。ローカルでリアルタイム協働 |
| 次男 CLI | 転職して改名した中途入社 | Q CLI の地続きの後継。ターミナル中心・CI/CD組み込み |
| 三男 Web | 名前を変えて再デビュー | ブラウザから仕事を「委任」。PCを閉じても働く |
| 四男 Mobile | 三男と同じ職場に通う双子 | Webと同一セッションを操作。開発する道具ではない |
| 五男 Crew | 兄(CLI)を働かせる上位レイヤ | 自分のマシンに常駐。Kiro初のOSS |
Kiro 5兄弟ざっくりまとめ
前提:5兄弟のうち3人は改名または前身持ち
3点の話に入る前に、かるく生い立ちの説明になります。
形態の誕生
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2025-07-14 | Kiro IDE がプレビュー公開(waitlist制・プレビュー中無料) |
| 2025-11-17 | IDE・CLI 同時GA(米国時間。日本時間では11月18日)。CLI は Q CLI からの改名 |
| 2025-12-02 | 「Kiro autonomous agent」プレビュー開始 ← Kiro Web の前身 |
| 2026-05-07 | Kiro Web (Preview) 発表 |
| 2026-06-17 | Kiro Mobile(iOS)発表 |
| 2026-08-04 | Kiro Crew 発表(前身は社内プロジェクト MeshClaw) |
メジャーバージョン
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2026-04-13 | CLI v2.0.0 リリース(Windowsネイティブ対応) |
| 2026-06-25 | IDE 1.0.0 リリース(統一ハーネス系列の最初) |
① IDE と CLI はもうすぐ統合される
IDE と CLI は2026年前半から統一エージェントハーネスへ載せ替えが進んでいます。今回の調査で一番ユーザに影響が大きいと感じたのがここでした。
| 形態 | 旧系列 | 新系列 | 移行のされ方 |
|---|---|---|---|
| CLI | 2.x | 3.0(早期アクセス) |
kiro-cli --v3 で自分からオプトイン |
| IDE | 0.x | 1.0(公開済み) | 自動更新が段階的配信 |
| Web | — | 最初から新系列 | — |
もともと IDE には「AIエージェントとしての自由度が低い(カスタムエージェントが作れない)」という弱みがあり、CLI には「Kiro の名前が付いているのに仕様駆動開発の機能がない」という弱みがありました。CLI v3.0.0 が正式リリースされれば、この非対称がほぼ解消されます。
新しい共通装備 permissions.yaml
新系列の権限設定は permissions.yaml に統一されました(CLI は早期アクセスの kiro-cli --v3 で対応)。
# ~/.kiro/settings/permissions.yaml
rules:
- capability: shell
effect: allow
match:
- git *
- npm *
- capability: fs_write
effect: allow
match:
- src/**
- capability: shell
effect: deny
match:
- "git push"
- "git push *" # ←両方書く!
上記設定例で git push を2行書いているのは、deny が引数なしの形に自動でマッチしないためです。git push * だけでは素の git push が通ってしまいます。
ここだけ覚えて欲しいポイント
優先順位は deny > ask > allow です。緩いルールで厳しいルールを上書きできません。
ルールは、拒否>確認>許可という順序で評価されます。スコープ間に優先順位はなく、どのスコープから発せられたルールであっても、最も制限の厳しいルールが優先されます(拙訳)。
IAM と違うのは、ルールに合致しない操作のデフォルトが拒否ではなく ask(人間に確認)であることです。書き忘れたときの落ちる先が「閉じる」ではなく「人間に聞く」なので、IAM の暗黙 Deny とは思想が異なります。
一番怖いのがpermissions.yaml は新系列でしか効きません。旧系列(IDE 0.x / CLI 2.x)に置いても無視されます。設定したつもりで、実は何も守られていないことになるので注意が必要です。
おまけ:どこかで見た設計では?
あくまでも個人の感想ですが、権限宣言・hooks・カスタムエージェントの作りが、業界のデファクトに寄せてきたように見えました。
| 仕組み | Kiro 新系列(IDE 1.0 / CLI 3.0) | 他のAIエージェント(例: Claude Code) |
|---|---|---|
| 権限の宣言 |
permissions.yaml(allow / ask / deny) |
settings の permissions(allow / ask / deny) |
| フックの発火点 | PreToolUse / PostToolUse / UserPromptSubmit / SessionStart / Stop | 同じ |
| フックでブロック | 終了コード2で実行をブロック | 同じ |
| エージェント定義 | Markdown + YAMLフロントマター | 同じ |
Kiro の hooks 仕様はかなり特殊だと感じていたので、これは素直にうれしい変化です。
② Web と Mobile は双子のようなもの
四男 Mobile は「スマホで開発する道具」ではありません。公式は Mobile を「Kiro エージェントのセッションを管理するためのモバイルサーフェス」、IDE / CLI を「デスクトップやコマンドラインで使う開発ツール」と書いて明確に区別しています(拙訳)。
Web で始めたセッション・モデル設定・接続リポジトリ・エージェントのコンテキストがそのまま iOS に同期されるので、実体は同じセッションを2つの窓から見ている関係です。私が「双子」と呼んでいるのはこの意味です。
ただし Mobile は iOS のみ・TestFlight の招待制・Pro以上の有料プラン限定なので、試せる人はかなり限られます。
③ Crew で1段高いフェーズへ。ただし Web とは真逆
五男 Crew は、IDE / CLI / Web と横並びの兄弟ではありませんでした。kiro-cli を ACP(Agent Client Protocol)経由で駆動する上位レイヤです。docs には agent.provider が acp の only provider と明記されています。兄を働かせる弟、という構造です。
常駐だからできること
Crew の本質は「常駐」です。IDE / CLI / Web がセッション単位で完結するのに対し、Crew は Gateway が常駐して記憶・lessons・skills・cron を全セッションで共有します。
具体的には、会話から記憶を自動生成し、文書やURLを知識庫(FTS5+ベクトル)に取り込みます。訂正やタスクの失敗は lessons.jsonl に永続化され、以降の挙動が変わります。繰り返し現れるパターンは再利用可能な skill になり、閲覧も編集もできます。cron / webhook / heartbeat でスケジュール実行でき、ジョブ登録は自然言語で可能です。サブエージェントを並列でバックグラウンド実行させて「3案を並列調査して1つ推薦して」もできます。Gateway 自体は systemd / launchd / Docker / リモート+SSH で電源を入れっぱなしで動かせます。
さらに App Kit と App Store でサードパーティ拡張が載る設計になっており、ローンチ時点で DevFleets(ワークツリー管理)・Task Runner(長時間タスク)・Issue Radar(Issue と PR のトリアージ)が同梱されています。
出自が個人プロジェクトだった
Crew の前身はAmazon社内の個人プロジェクトMeshClawです。公式ブログによると、発起人は著者の3人。OpenClaw に触発されつつ、社内開発のセキュリティ要件を満たすものが無かったので自作した、とのことです。
Web と Crew は実行場所が真逆
同じ Kiro なのに、この2つは向いている方向が逆でした。
| Kiro Web(三男) | Kiro Crew(五男) | |
|---|---|---|
| 実行場所 | AWS のサンドボックスの中 | 自分の Mac / PC / EC2 の中 |
| コードと実行 | AWS 側 | 自分の手元 |
| 開発者の位置 | ブラウザ / iOS から委任 | チャット等から指示 |
| 感覚 | 仕事を預ける | 常駐して住み込む |
| 公開形態 | OSSではない | Apache 2.0 の OSS(別リポジトリ) |
| 利用条件 | Pro 以上の有料プラン | 本体は無料(OSS)。ただし Kiroアカウントとプランが必要で、推論は IDE / CLI と同じクレジットを消費する |
まとめ:Kiroに「サ終」の影は無し
- IDE と CLI はもうすぐ機能統合されます。CLI v3.0.0 が正式リリースされれば、ほぼ機能差なく開発できます
- Web と Mobile は双子のようなもの。同一のクラウドセッションを共有しています
- Crew の登場で1段高いフェーズへ。「セッション単位」から「常駐して記憶を持つ」に進みました
4兄弟だと思って調べていたら発表4日前に5兄弟になり、公式ドキュメントすら追いついていない。この勢いを見るかぎり、少なくとも「サービス終了」を心配する段階ではありません。
最後に
Kiro紹介記事のお決まりの文言で締めさせて頂きます。Kiro5兄弟はできる子です。
参考リンク
- Kiro 公式サイト: https://kiro.dev/
- Kiro Crew の紹介(AWS日本語ブログ / 原文の公式翻訳): https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/introducing-kiro-crew/
- Kiro Crew リポジトリ(Apache 2.0): https://github.com/kirodotdev/KiroCrew
- Kiro の一般提供開始(AWS日本語ブログ): https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/general-availability/
- Kiro の語源の話(AWS日本語ブログ): https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/kiroweeeeeeek-in-japan-day-11-finding-your-way-with-kiro/
- Amazon Q Developer CLI からの移行: https://kiro.dev/docs/cli/migrating-from-q/
- 権限設定(横断ページ): https://kiro.dev/docs/permissions/




