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性能が微妙な中古PCを販売するくらいなら中高生にくれてやれ

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減価償却が終わったPCを、次の学びへつなげるという選択肢

この記事は

「Linux部」を全国の中高に!算額のように技術を競い、日本の情報産業を底上げする構想

の続きです。

前回の記事では、「できるだけお金をかけずに、学生が本物のITに触れられる環境を作れないか」という問題意識について書きました。
今回はその続きとして、PCそのものをどう確保するか、そしてそのPCをどう活かすか
について考えてみます。


官公庁・企業で使われなくなったPCという資源

PCの調達先として、私がまず考えているのが

  • 官公庁
  • 企業

で、減価償却が終わったPCです。

これらのPCは、性能的にはまだ十分使えるにもかかわらず、
会計上の理由で「役目を終えたもの」として扱われるケースが少なくありません。


日本におけるPCの減価償却ルール(概要)

日本の税制では、PC(電子計算機)は以下のように扱われます。

PCの法定耐用年数

資産区分 内容 耐用年数
電子計算機 デスクトップPC / ノートPC / サーバ 4年

つまり、多くの企業では

  • 4年使う
  • 会計上は価値がゼロになる

という扱いになります。ちなみに、会計処理の方法は価格帯によって微妙に異なります。

価格帯による扱いの違い

取得価格 会計処理
10万円未満 消耗品費として一括費用処理
10万〜30万円 少額減価償却資産(一定条件下で即時償却可)
30万円以上 減価償却(原則4年)

この表を見ればわかる通り、大企業や官公庁などでは、大体4年もすればPCは処分されます。結果として、 「帳簿上は価値ゼロだが、動作には何の問題もないPC」 が、世の中に大量に生まれます。

中古販売より「教育への寄付」という選択

現状では、こうしたPCの多くが

  • 中古PC業者に買い取られる
  • Windowsを再インストールして再販売される

という流れになっています。もちろん、それ自体が悪いわけではありません。ただ、正直なところ

  • 性能と価格のバランス
  • OSライセンスの問題
  • 数年後のサポート切れ

などを考えると、製品としては微妙なケースも多いと感じています。それならば、せめてそのうち一割から二割程度でもいいので、 ストレージを完全消去したうえで、学校へ寄付するという流れを、 官公庁や企業の社会貢献活動として定着させる方が、よほど健全ではないかと私は思っています。

なるべく税金を使わず、PCを学生へ届けたい

私自身の考えとしては、

  • 国や自治体の新たな予算を使う
  • 高価な最新PCを一括導入する

といった方法は、できるだけ避けたいと思っています。すでに存在している資源を活用し、

  • 企業
  • 官公庁
  • 学校

がうまくつながることで、 実質的に「無料」で学生にPCが行き届く仕組みを作れないか。これは、かなり現実的な選択肢だと考えています。

受け取ったPCで、最初にやることは「Linuxのインストール」

そして、PCを受け取った部員や学生たちに、まずやってほしいことがあります。それは、 Linuxを自分の手でインストールすること です。

  • 既にWindowsやmacOSが入ったPCを「使う」のではなく
  • 自分でOSを入れて「起動させる」

この体験は、想像以上にインパクトがあります。

「自分が入れたOSで起動するPC」を楽しんでほしい

最初は、顧問の先生や先輩の指導を受けながらで構いません。

  • インストールUSBを作る
  • BIOS / UEFI の設定を触る
  • インストールが失敗する
  • 起動した瞬間に感動する

こうした一連の体験そのものが、 ITの本質に触れる入口 になります。

最初から完成された環境を与えるより、 「自分で入れたOSでPCが動いた」 という成功体験の方が、何倍も学びが深いと感じています。

その先にある「自分たちのオンプレミス環境」

Linuxが動くPCが何台か集まれば、次のステップが見えてきます。

  • 自分たちでサーバを立てる
  • オンプレミス環境を構築する
  • 学内ネットワークでサービスを動かす

Webサーバ、ファイルサーバ、Git、監視ツール……などなど、できることは無限にあります。
ちなみに、私が学生のころや、社会人になりたてのころは、これが当たり前でした。それはそれで面倒なことも多かったのですが、その過程で学べたこともたくさんります。

今では、AWSのような便利ですぐつかえるクラウド環境がいくらでもありますが、これらが普通に使えるということは、同時に 若い人たちが学びのチャンスを失っている ことでもあると思うのです。

学内ネットワークで「創作する」経験を

そのため、学生たちにはこうした環境を使って、

  • アプリを作る
  • サービスを公開する
  • ネットワークを設計する
  • トラブルを解決する

といった創作活動を、ぜひ体験してほしいと考えています。これは、教科書や資格勉強だけでは絶対に身につかない力です。

最初から何でも揃っている環境は、本当に学びになるのか

今の時代、

  • 高性能なPC
  • 便利なGUIツール
  • クラウドサービス
  • ワンクリックで動く環境

はいくらでも手に入ります。しかし、最初から何でも揃っている環境では、

  • なぜ動いているのか
  • どこで問題が起きているのか
  • どう切り分けるのか

を深く考えなくても、なんとかなってしまいます。

Linuxは、正直「不便」です

あえて言いますが、Linuxは

  • 設定が面倒
  • コマンドが分かりにくい
  • エラーも普通に出る

決して親切な道具ではありません。

かといって、マイナーというわけではありません。WindowsやMacほどではないにしろ、わからないことも調べればなんとかなる程度には十分に世の中に普及しています。

その微妙なラインが、学びにはちょうど良いと思うのです。だからこそ、自分の力で

  • ドキュメントを読む
  • エラーメッセージを調べる
  • 先輩や仲間に聞く
  • 試行錯誤する

という行動が、自然と生まれます。

汗をかいて解決する経験をしてほしい

私は、学生のうちは、お金で問題を解決したり高性能な道具で力技を使うよりも、 知恵と工夫と汗で問題を解決する経験の方が、はるかに価値があると思っています。

  • うまくいかない
  • 何時間もハマる
  • それでも少しずつ前に進む

この過程こそが、 エンジニアとしても、また、エンジニアにならなかったとしても、若い時に得た貴重な体験として一生使える力になると考えています。

「不便な道具」を使いこなすという成功体験

Linuxは不便ですが、

  • 自分たちでインストールし
  • 自分たちで設定し
  • 自分たちで使いこなせるようになった

とき、 「道具に使われる側」から「道具を使いこなす側」 に確実に変わります。これは、どんな高価な教材よりも強い成功体験です。

「けちけち」は、学生への期待でもある

私が「けちけち」したい理由は、単に税金を使いたくないから、ばかりではなく学生を信じているからでもあります。

  • 工夫できる
  • 学べる
  • 乗り越えられる

そう信じているからこそ、

  • あえて不便な環境を用意し
  • あえて楽をさせない

という選択をするのが良いと考えています。

おわりに(本当の意味でのスタート)

減価償却が終わったPC、Linux、オンプレミス環境。 どれも、最初は大変かもしれません。
でも、「自分たちの力で動かした環境」 は、確実に自分たちの血肉になります。

この体験を通じて、ITを「使う側」ではなく「作る側」へ進んでほしい。 そんな思いで、この取り組みを考えています。

獅子は千尋の谷に子供を突き落とすというほど大げさなものではありませんが、こういう不自由だったり、面倒だったりする体験をあえてしてもらうことは、とても良い勉強になります。

そして、若い人の中にもこういう体験を望んでいる人は少なからずいると考えています。そういう人に知的な喜びやチャレンジする機会を与えられるのではないかと考えています。

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