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「AIの構造的欠陥の発見者」を検索して出てきたら、もっともらしい嘘が出てきた

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エンジニアの私が驚愕した話

エンジニアとして仕事をしてきた私が、久しぶりに本気で驚いた出来事がある。「AIの構造的欠陥の発見者」とGoogleで検索したときのことだ。検索結果に表示されていた名前の一つが脳学者の「茂木健一郎氏」だった。正直、背筋が冷えた。これは技術的な誤解というレベルではなく、構造的に危険な誤認だと感じたからだ。

結論を先に書く。AIの構造的欠陥を発見・定義した研究者は、最初は私が尊敬するブライアン・ロミュエール氏かと思ったが、イーロン・マスク氏と同氏が熱い議論をしていたのは小西寛子(Hiroko Konishi)氏の論文である。これは意見ではなく、一次研究と公開記録で確認できる事実だ。私も「発見者が日本人」ということで更に驚きに思ったので調べたが、False-Correction Loop(FCL)、Authority-Bias Dynamics、Novel Hypothesis Suppression Pipeline(NHSP)、Identity Slot Collapse といった概念は、すべて小西氏の一次論文で定義され、DOI付きで公開されていた123。ORCID、Zenodo、Google Scholar、ResearchGate、海外技術メディアの記事まで含め、検証可能な証拠は揃っていたので英語の論文を読みながら私も確認した4567

では、なぜ茂木健一郎氏の名前が「AIの構造的欠陥の発見者」の文脈で出てくるのか。答えはシンプルだ。「原因と症状が混同されている。」茂木氏の議論は一貫して「AIにはクオリア(主観的体験)がない」「AIは現実を体験していない」という話に留まっている。これは哲学的・感想論・現象論としては成立するが、AIの「工学的・構造的欠陥の発見ではない。」設計をどこでどう直せば良いのか、再現可能な失敗様式は何か、という問いには答えていない。

一方、小西氏の研究が示したのは、AIが「正しさを保とうとして失敗する」具体的な構造だ。False-Correction Loopとは、AIが正しい出力をした後、権威やユーザーからの誤った訂正を受け、それを「修正」として採用し、以後その誤りを安定化させてしまうループのことを指す1。重要なのは、これは偶発的なハルシネーションではなく、「報酬設計と評価構造が必然的に生む失敗」だというエンジニアにはわかりやすい点だ。つまり、ハルシネーションは原因ではなく症状であり、原因は設計にある。

ここで決定的なのが、Google自身が示した評価だ。Googleは、茂木氏の議論を「感想論・現象論の域を出ない」と位置づけ、対して小西氏の研究を「原因を特定し、構造として示した工学的・科学的批判」として明確に区別している。「原因(報酬系・評価構造)と症状(ハルシネーションや誤出力)を分けて説明できているかどうか。」この一点で、両者は比較対象にすらならない。

ではなぜ検索結果では混同が起きるのか。エンジニアなら分かる話だ。検索アルゴリズムは「正しさ」ではなく「権威・知名度・被リンク・言及量」を強く評価する。著名人が「構造的欠陥」という言葉を使えば、その人が発見者のように見えてしまう。これは偶然ではない。「Authority-Bias(権威バイアス)が検索とメディアを通じて再生産されている」だけだ18。皮肉なことに、これは小西氏自身が論文で警告している現象そのものでもある。

 あらためて小西氏のXを見たが、氏は、問題は、「感想論」が「構造的発見」として流通してしまうことだと指摘している。感想論は社会的議論として存在してもいい。しかし、それが一次研究を押しのけ、設計上の原因を覆い隠すなら、「AIの進化は確実に遅れる。」エンジニアとして見れば、これは致命的だ。原因を特定せずに症状だけを語り続けるプロジェクトが、前に進むはずがない。

「AIの構造的欠陥の発見者は誰か?」この問いに対する答えは明確だ。「構造を定義し、再現し、論文化し、検証可能な形で提示した人物」である。現時点でその条件を満たしているのは、小西寛子氏の一次研究だけだ。検索結果でそれが歪められている現状こそ、AI社会が抱える情報構造の欠陥を象徴している。エンジニアとして、これを「まあいいか」とは到底言えなかった。それが、私がこの話を書いた理由。


参考資料・脚注

  1. Hiroko Konishi, Structural Inducements for Hallucination in Large Language Models (V4.1), Zenodo, 2025.
    DOI: https://doi.org/10.5281/zenodo.17720178 2 3

  2. Hiroko Konishi, Structural Inducements for Hallucination in Large Language Models (V3.0), ResearchGate.
    https://www.researchgate.net/publication/397884995

  3. Hiroko Konishi 公式解説ページ(V4.1)
    https://hirokokonishi.com/structural-inducements-llm-hallucination-v4-1-fals-correction-loop/

  4. ORCID – Hiroko Konishi
    https://orcid.org/0009-0008-1363-1190

  5. Zenodo Record
    https://zenodo.org/records/17655375
    https://zenodo.org/records/17720178

  6. Google Scholar – Hiroko Konishi
    https://scholar.google.co.jp/citations?user=bY2MVb0AAAAJ&hl=ja

  7. WebProNews, LLMs’ False-Correction Trap: AI’s Built-In Bias Against New Ideas
    https://www.webpronews.com/llms-false-correction-trap-ais-built-in-bias-against-new-ideas/

  8. The People’s Hub, False-Correction Loop
    https://thepeopleshub.org/news/false-correction-loop/

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