はじめに
ITエンジニアの仕事ってなんでしょう?
パソコンに向かってカタカタプログラムを書くことかと思われがちですが、それは作業のほんの一部であり、それ以外の作業が大半を占めています。
顧客がほしいのは「プロダクト」であり「プログラム」ではないからです。
プログラムのこともプロダクトのことも全く分からない顧客が、ビジネスや業務視点で「こんなことをしたら儲かるな」とか「こんなことをしたらコストを下げられるな」とか考えたものを形にしていくのが「プロジェクト」であり、ITエンジニアの仕事です。
プロジェクトを進める上で重要なスキル
以下の X のポストが分かりやすいので引用します。
プロジェクトには立場や知識や利害関係が異なる多くの人が関わります。
例えば、営業の人は、プログラムは全く分かりませんが開発案件を取ってきたりプロダクトを売ったりしなければいけません。
そうすると、営業Aが『すべて「できます!」』と答えてしまうことも理解できます。
一方で、開発責任者は、やっぱりプログラムは全く分かりませんが1、開発メンバーのハンドリングがどのくらい大変なのかはざっくり分かっています。その上で開発案件はほしいです。
そうすると、プロSES事業の開発責任者Fがプロジェクト炎上の覚悟をしつつも黙って話を聞くというスタンスを取るのも分かります。
議事録を書いている開発担当Eは、初歩的なプログラムしか分からず、工数やスケジュールを考えてパニくっているかもしれませんし、営業Aの言葉は引っ込められないのでワークアラウンドを考えた挙げ句に「技術的には可能」と書くかもしれません。
開発担当Dは、やっぱりプログラムが全く分からない未経験エンジニアで全く議論についていけないけれども、その場のおかしな空気だけは察知して半笑いをしているかもしれません。
そんな感じ(?)で、プロジェクトを進める上では「プログラミングスキル」よりも「コミュニケーションスキル」が大事になってきます。
営業Aが『すべて「できます!」』と答えた 要件全てを予算内で作り切り障害なしを保証できるスキル があれば技術的には可能かもしれませんが、現実的には難しいと思います。
ビジネスや業務視点では、本当に必要なものを必要なタイミングでリリースできることが大事です。
それを適切に着地させるためには「立場や知識や利害関係が異なるプロジェクトメンバーとコミュニケーションを取ること」が重要になってきます。
逆に言うと、コミュニケーションスキルがないとプロジェクトに参画することはできません。
作業員として指示に従いプログラムを製造することはできますが、変えのきく人材枠になってしまうので、給与や単価は上がりませんし、下にメンバーを抱えるなどもできません。
コミュニケーションスキルと1on1
ということで、全ITエンジニアが身につけるべきスキルはコミュニケーションスキルとして話を進めます。
SESのBP面談でも、スキル要件に色々書いて募集しても、最終的には「コミュニケーションがとれて自走できる人」を求める傾向が年々強まっているように思います。2
一方で「コミュ力がないから、なんとかして」と言ってなんとかなった話を聞いたことはありません。
伝え方だったり話し方だったりの本3が山程出ていますが、本を読むだけではコミュニケーション力が上がることはないです。
「コミュニケーション力」は楽しく会話する力ではなく、「コミュニケーション(伝達)」という単語の通り相手に伝わったかどうかが評価軸だからです。誰かに話してフィードバックをもらわないとカイゼンが難しいので、本を読むだけではなく実践もする必要があります。
ということで、ようやくタイトルの 1on1 の登場です。もっと会話しようという企画です。
1on1というと相手のキャリアのことを考えたり離職されないようにウォッチしたりを1対1で会話するという高尚な目的で実施されるも、以下のような理由で定着しない印象です。
- 話すことがない
- キャリアのことなど考えていない
- 漫然と会話しても得られるものがない
ネタに困らない1on1
「課題図書を用意して会話をする1on1」を提案してみたいと思います。
実施要項は以下となります。
- 事前に15分程度読んでメモ書きを作成してもらう
- そのメモ書きを元にプレゼンをしてもらう
- プレゼンに対してフィードバック、議論
ポイントは「事前に15分読み書き」があることです。
15分読み書きを継続することで基礎的な日本語力が向上します。また、議論の対象が明確なためポイントを絞って会話ができます。
課題図書は、業務を行う上で共通認識として持てるとよいものにしておくといいでしょう。
「当然やるよね」って暗黙に思っていることをすり合わせすることもできますし、メンター側も勉強する時間が確保できるのでお互い勉強になると思います。
軌道に乗ってきたら、相手との会話の中で次の課題図書を決めていけるのがよいでしょう。
(課題図書例)
おわりに
「コミュニケーションがとれて自走できる人」 になるのはとても大変です。
「コミュニケーションが取れない人」枠にカテゴライズされてしまうと、コミュニケーションを取ってもらえなくなり、そのことに気づく機会、カイゼンをする機会がなくなります。
年令が上がれば上がる程、「あの人はそういう人」と判断されるまでが早くなり、年令の割に重要な仕事を任されることもなくなります。また、そのような経歴をたどると、職務経歴書の時点で「重要な仕事はできない人」と判断されたり、カイゼンできる機会が二次関数的に減っていきます。
みんなでプロジェクトのゴールに向かってコミュニケーションを取って仲良く仕事ができる世界になったらよいなとは思うところです。
おまけ
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個人差があります。 ↩
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それって、わたしの感想です。 ↩
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