はじめに
日本は2021年時点で高齢化率(65歳以上の高齢者の比率)が28.9%の超高齢化社会のようです。
そして、わたし達の勤める会社も高齢化が緩やかに進んで いると思います。意外と認識するのが難しいのですが、すべての人は生きているだけで年を取りますので、会社の構成員の平均年齢は毎年自動で上がります。
会社の高齢化は、IT業界の人口分布を調べると確認できそうです。
出典 : - IT 人材需給に関する調査 - 調査報告書:みずほ情報総研株式会社
レポートは出てきましたが、分かるような分からないような感じですね。
仕事の役割が変わりそうな年代で再集計してグラフ化してみましょう。
みなさんが仕事をしている周りの人達の年齢層はどのようなものでしょうか?
このグラフに当てはまっているでしょうか?
もしもそうであるとしたら、限界集落化が進行している可能性があります。
限界集落化
限界集落とは、人口の50%以上が65歳以上で、農業用水や森林、道路の維持管理、冠婚葬祭などの共同生活を維持することが限界に近づきつつある集落です。
IT業界においては、道路の維持管理や冠婚葬祭ではなく、以下の工程をできなくなると会社として維持できなくなると言えるでしょう。
- プロジェクトマネジメント
- 要件定義
- 外部設計
- 詳細設計
- 開発(インフラ構築等々含む)
- 試験
20 - 30年程前であれば、一人の人間が上記のすべての工程をできる必要はなかったと思います。
しかし現在では、低予算化に伴い、短納期で少数のメンバーで案件を回さなければならなくなったため、一人の人間の担当範囲がじわじわと増えている様に感じます。
これは 『給与が上がらないのにやらねばならないことが増えている』 状況に見えますが、『アジャイル開発人材』や『即戦力人材』と表現されうやむやになっている様にも感じます。
『高度IT人材』の育成という課題
限界集落化を防ぐためには、若い『高度IT人材』の獲得または育成が必須です。
部落に若い人がいなくなれば、限界集落になってしまうからです。
若い人は高確率でIT未経験なので、高確率で未経験者を『高度IT人材』に育成する必要性があるでしょう。
レポートでも育成の重要性については語られていましたが、DXやAIが使えるドリーミーな先端技術者の育成に焦点が当てられている印象でした。大きく生産性をあげようと思ったら確かにそうなのでしょう。
ただ、現場レベルでは『アジャイル開発』ができる人材、つまりは 『給与は開発者の給与だけれども、責任範囲の機能については、設計から試験まですべて行いセルフマネジメントできる人材』 の育成が必要なように感じます。
なかなか難しい課題です。
低予算、短納期に対応するため、即戦力な人材を求めたり、40代、50代の人間に上流工程を依頼して、その人達に仕事が集中する状況もあるかもしれません。
これは、経験者に頼むことで短期的にはリスクを最小にする判断の結果かと思いますが、それと引き換えに『20代、30代の人間が経験する機会』を失っているため、持続可能性の観点からはリスクの高い判断なのかもしれません。
PMの育成という課題
プロジェクトマネジメントは、プロジェクトメンバーの構成によって最適解が毎回変わるため、難易度がとても高く、適切にマネジメントするためにはかなりの経験が必要な業務かと思います。
また、マネジメント手法も個人差が大きく、自分にあった方法を見つけるのも難しい上に、自分で制御できないことが多く存在する中で、期間内に最適解を探すのはストレスもプレッシャーも大きい業務です。
にも関わらず、「プロジェクトはうまくいく前提」であるため、適切にマネジメントしても評価されず、うまくいかないと非難される傾向があります。
ここを担当してくれる人を探すのも、育成するのも難しい課題と言えるでしょう。
年の差という課題
20代の人間は近い年の先輩がいるような状況で少しずつ経験を積みたいでしょう。
ところが、40代、50代のメンバーとチームを組む機会が多くなっていく可能性が示唆されています。
ここは、そういうもんだと割り切って、いかに『高度IT人材になるか』『高度IT人材を育成するか』とお互い歩みよることが大事そうです。
おわりに
IT 人材需給に関する調査 - 調査報告書:みずほ情報総研株式会社 にある予測通り【未経験の人材】が供給されたとしても、それらの人を全て【高度IT人材】にして活躍してもらうためには、難しい課題をいくつも解決しなければいけないように思えました。
エンジニアとしては『責任範囲の機能については、設計から試験まですべて行いセルフマネジメントできる人材』や『自分の属する会社が限界集落化しないように若手を育成できる人材』になる、というのは生存戦略の一つなのかもしれません。
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