はじめに
議事録、面倒くさくて苦手ですか?
利害関係が異なる多数の出席者が、それぞれの立場からの意見を述べた会議。
明確なゴールを決めて話はじめたはずなのに、どこに向かっているのか着地せず。
そんな会議の内容や次回のアクションアイテムをまとめるのは大変です。また、出席者の立場やパーソナリティを把握してプロジェクトを進行させることを考慮した議事録作成には、メタ・ビジョン(超越視界)1が必要です。
一見雑務っぽくて面倒な議事録作成ですが、プロジェクト全体を把握するための重要なスキルであるメタ・ビジョンを習得するトレーニングであったりします。
今回はAIを使って架空会議の会話を作成してもらい、それをまとめたり考察したりすることでメタ・ビジョンを身につけるトレーニング方法について書きます。
AI会議の作成方法
最近のAIはだいぶ賢く、きちんとキャラ付けをした会話形式の議事録を作成してくれます。
ということで、こちらを参考に登場人物を指定して、架空の進捗会議の議事録を Claude に作成してもらうことにします。
- プロンプト
議事録のまとめや会議の進行の練習をしたいです。
以下の出席者のITプロジェクトの進捗会議の様子を会話形式で作成してください。
(出席者)
- すべて「できます!」と答える開発会社営業A
- 論理的な顧客C
- 現場管理と自分のタスクでいつも高稼働の開発担当D
- 新人の開発担当E
- プロジェクト炎上を確信するも開発内容を把握していない開発責任者F
設計2名x1ヶ月、開発4名x3ヶ月、試験4名x2ヶ月の合計6ヶ月のプロジェクトです。
3ヶ月目の進捗会議で2週間程遅延。そこに対してリカバリープランの提出が必要ですが誰も決定的な対策を持ち合わせていないといった内容でお願いします。
腰巾着Bはテキスト量が増えるだけで意味がなかったので除外したり、顧客Cが派手に騙されると納品まで問題が浮き彫りにならないので論理的な人に置き換えたりしました。
他にも、各自のプロジェクトや業務に合わせて登場人物や会議内容をカスタマイズしてみるとよいと思います。
AI会議例
開発責任者F: 皆さん、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。今日は3ヶ月目の進捗会議です。現在の状況と今後のリカバリープランについて話し合いたいと思います。まずは、開発担当Dさん、現在の進捗状況を教えてください。
開発担当D: はい。現在、予定より2週間ほど遅れています。主な原因は、想定以上に複雑な機能があり、設計段階での見積もりが甘かったことです。現在、できる限りの残業で遅れを取り戻そうとしていますが、厳しい状況です。
顧客C: 2週間の遅れとのことですが、具体的にどの部分が遅れているのでしょうか?また、最終的な納期への影響はどの程度だと考えていますか?
開発担当D: 主にデータベース連携部分と、ユーザー認証システムの実装が遅れています。現状のペースだと、最終納期にも2~3週間の遅れが出る可能性があります。
顧客C: なるほど。その遅れを取り戻すための具体的な対策案はありますか?
開発会社営業A: もちろんです!我々にはリカバリープランがあります。追加の人員を投入して、遅れを取り戻すことができます!
顧客C: 具体的にどのような人員をどのように配置するのでしょうか?また、それによってどの程度遅れを取り戻せると見込んでいますか?
開発会社営業A: はい、できます!ベテラン開発者を2名追加し、遅れている部分に集中的に取り組みます。これにより、1ヶ月以内に遅れを完全に取り戻せると考えています!
開発責任者F: (困惑した表情で)ええと、その追加人員の件は私は聞いていませんが...
顧客C: 追加人員の件は具体的に決まっているのでしょうか?それとも、これから検討するということでしょうか?
開発担当D: すみません、追加人員の件は私も初耳です。現状の開発チームは全員フル稼働状態なので、新しいメンバーが入ってもすぐに戦力にはならないと思います。むしろ、引き継ぎややり取りで更に時間を取られる可能性があります。
新人開発担当E: あの、提案してもいいでしょうか。私たちの作業プロセスを見直し、効率化できる部分があるかもしれません。例えば、デイリーのスタンドアップミーティングを導入して、問題点を早期に発見し解決することで、少しでも遅れを取り戻せるかもしれません。
開発責任者F: それは良いアイデアですね。ただ、それだけで2週間の遅れを取り戻せるかは...
顧客C: 新人の方からの提案は興味深いですね。他に考えられる対策はありますか?例えば、機能の優先順位を見直し、重要度の低いものを後回しにするなどの案は検討されていますか?
開発担当D: その案は検討に値すると思います。ただ、機能の優先順位変更は全体の設計にも影響を与える可能性があるので、慎重に検討する必要があります。
開発会社営業A: 大丈夫です!どのような変更でも対応できます!顧客様のご要望に柔軟に対応いたします!
顧客C: 分かりました。では、次回の会議までに以下の点について具体的な案を出していただけますか?
- 現在の遅れの詳細な原因分析
- 作業プロセスの効率化案
- 機能の優先順位の見直し案
- それらを踏まえた具体的なリカバリープラン
これらの情報を基に、プロジェクトの今後について判断したいと思います。
開発責任者F: はい、承知いたしました。次回までに具体的な案をまとめてご提示いたします。
開発会社営業A: もちろんです!素晴らしい案をご用意いたします!
顧客C: では、次回の会議で詳細を確認させていただきます。本日はありがとうございました。
なかなか香ばしい会議内容が出力されました。すごいですね、AI。
トレーニング方法
現実にこのような状況であると怒号が飛び交ったりしてトレーニングどころではないのですが、架空の会議なのでトレーニングに利用できます。よかったです。本当に。
トレーニング方法ですが、メンター、メンティのスキルに応じて色々あるかと思います。
- それぞれで議事録を作成。出来上がった議事録を元にディスカッション
- ロールプレイ。開発担当DやEのつもりでアクションプランの提示
- フリーディスカッション。問題点や課題の抽出。会議外のアクションも含む
下に行くほどメンティ側が主体的に考えることが増えます。
メンターがいつもプロジェクト管理の時に考慮していることをただの知識としてではなく、より具体的に「こういう時はこうする」みたいな形で伝え、徐々に自分で考えてもらうことの量を増やせるとよいかと思います。
問題点や課題の抽出や進めるためにどうすべきかに主眼をおいて考えていくとよさそうです。
クリティカルなポイントがメンティー一人でも見えるようになってきたら、AIと壁打ちトレーニングもできると思います。
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まとめ例
開発期間1ヶ月の2ヶ月目で2週間(x4人 = 2人月)の遅れ。
残り1ヶ月(4人月作業)中に対し新しい人員を投入して2人月の遅延を取り戻すのは現実的ではない。
デイリーミーティングや作業プロセスの見直しも視野には入れるが抜本的対策が必要。 -
リカバリープラン例
開発物を段階的リリースとし、開発担当者は来月以降も開発を継続し、開発と試験を並行して実施。
試験期間に向けて単価の安い試験担当者を追加で手配。試験担当者であればキャッチアップの工数も少ない。 -
次回に向けて例
データベース連携とユーザー認証の実装は工数がかかる前提での見積もりをする。
営業にも理解をしてもらい、顧客に工数がかかることを納得してもらえるようにする。
まとめ
問題プロジェクトを経験して生存することで、生存するためのノウハウというものが身についたりしますが、できることなら痛みなくそういったノウハウを身につけられたらよいなと思っています。
同じ会議に出て、同じ会話をしても『見えている物の量』によって入る経験値が大きく異なります。同じ時間を費やして同じ作業をするのならば、できるだけ多くの経験値が入るように作業できるとタイパがよいと思います。
メタビジョントレーニングが、物の見方や概念などを身に着ける一助となり、会議やプロジェクトのゴールに向けてのポジション取りや行動を考えられるようになれば幸いです。
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サッカー漫画ブルーロックより。ここでは会議フィールド全体を反射的に読む能力。 ↩