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ITホラー短編:売れないDXとDXレポート2.2

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プロローグ

営業A「弊社DX製品、全然問い合わせがないっすね。」
営業B「経産省のレポートでは、2025年までにDXしないと 『毎年最大12兆円の経済損失が生じる可能性』 があるって言ってるんだからみんなDXするだろ?」
営業A「そっすよねぇ…」

営業A
(…まてよ?…あのレポートが出たのって平成30年だったよな…今はもう令和になってずいぶん経つから新しいレポートが出てるんじゃないのか?)

「これは調査する必要がありそうだな。」
そうつぶやくと営業Aはパソコンに向かってググりはじめた。

デジタル競争の敗者とジレンマ

営業A「クソ…悪い予感が的中したか」
営業Aは経産省のレポートを眺めながらそうつぶやいた。

デジタル競争の敗者.png

出典:経済産業省 D Xレポート2.1(DX レポート 2 追補版)

少し見ない間に『デジタル競争の敗者』にされているじゃあないか。

しかも…

出典:経済産業省 D Xレポート2.1(DX レポート 2 追補版)

  1. 危機感のジレンマ
    目先の業績が好調のため変革に対する危機感がない。投資体力があるうちに変革を進めていくことが重要であるが、危機感が高まったときはすでに業績が不調であり、変革に必要な投資体力を失っている。
  2. 人材育成のジレンマ
    技術が陳腐化するスピードが速く、時間をかけて学んだとしても、習得したときには
    古い技術となっている。即座に新技術を獲得できる人材は引き抜かれてしまう。
  3. ビジネスのジレンマ(ベンダー企業)
    受託型ビジネスを現業とするベンダー企業が、ユーザー企業のデジタル変革を伴走支援する企業へと変革しようとすると、内製化への移行により受託型ビジネスと比べて売上規模が縮小する。また、ベンダー企業がユーザー企業をデジタル企業へ移行する支援を行うことにより、最終的には自分たちが不要になってしまう。

「製品に問題があるのではなく、企業のあり方自体に問題があるという話だろうか…?」

DXフレームワーク

「1営業のオレには、企業のあり方は ヘビィ 過ぎる課題だぜ…」

とりあえず売り方が載ってないか最後まで目を通してみたが、ヘビィな課題に対する 『変革に向けた施策』 があるだけだった。営業のオレにはピンと来ない話ばかりであったが、文中の 『DXフレームワーク』 はしゃべれた方がハッタリがきいてよさそうだと思った。

DXフレームワーク.png

出典:経済産業省 D Xレポート2.1(DX レポート 2 追補版)

D X レポート 2.2

DXレポート2.1から「DX」は気軽に営業ワードで使えない程度の闇の深さを感じたが、製品の売り方のヒントが欲しい。他にすがる物もないので現時点での最新版と思われるD X レポート 2.2も読むことにした。

D X レポート 2.2 では、ありがたいことに最初から具体的なアクションが明示されていた。

出典:経済産業省 D X レポート 2.2(概要)

「デジタル産業への変革に向けた具体的な方向性やアクションを提示」
• 具体的には、企業に向けて以下3点のアクションを提示
✓ デジタルを、省力化・効率化ではなく、収益向上にこそ活用すべきであること
✓ DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけではなく、「行動指針」を示すこと
✓ 個社単独ではDXは困難であるため、経営者自らの「価値観」を外部へ発信し、同じ価値観をもつ同志を集めて、互いに変革を推進する新たな関係を構築すること
• 上述を実現するための仕掛けとして、「デジタル産業宣言」を策定
• さらに、宣言の実効性を高めるうえで、デジタルガバナンス・コードへの組み込みを検討

「…?人類一企業には早すぎたオーバーテクノロジーだというのか…?」
「『省力化・効率化ではなく』という文言は…『RPAでDXっす!』的な営業文句を封じ込めに来ているのか…?」

エピローグ

「モノを売るのにバズワード的に便利だと思ってたDXだが、経産省の思惑は全然別のところにあったんだな。」

自社の製品を売るヒントは見当たらなかったが大きな気づきはあった。

省力化・効率化を達成するだけの製品をユーザー企業に導入させるのは難しいということだ。
省力化・効率化を達成できたとして、余った「労働力」を「利益」に転換する方法を合わせて提示できないのであれば、どんなに使いやすい製品だったとしても実際に利用するユーザーには自分の墓穴を掘れとお願いするようなものだろう。

そう考えると、ユーザー企業やユーザーに何らかの利益をもたらす製品を提案できねばならないのは理解できる。
しかし 『デジタル競争の敗者』 を脱するというのは 『ITオリンピックで勝利』 するといった類の内容にも見える。もう少し一般人にも行動に移せる分かりやすい目標を設定してくれたら不足するであろうIT人材43万人も集められるのかもしれない。

「2025年まであと2年か…」

そうつぶやいて営業Aはパソコンを閉じた。

おまけ1

営業A短編シリーズ

おまけ2

2025年にIT人材が43万人不足するらしいので、学習用の資料をgitで無料公開してます(不定期更新)。
よろしければどうぞ。

エンジニアのためのお仕事問題集

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