はじめに
そろそろ新卒入社の時期なので、新卒だった数十年前の自分に宛てて手紙を書いておこうと思います。
これからITエンジニアとしての人生を歩んでいく新卒エンジニアやメンターの方々に何かのお役に立てれば嬉しいです。
拝啓新卒エンジニアの君へ
ゲームを創る仕事がしたかったけれども、普通のそれなりに大きなIT企業に就職した君へ。
就活でゲーム屋は全部落ちちゃったけど、今ではその方がよかったと思うよ。世間で名前が通っているゲーム屋はいわゆる「パブリッシャー」と呼ばれる会社なので自社で開発していないことも多いし、実際それらの会社の仕事は転職後に下請けとして後でやることになるから安心していいよ。
つよいという誤解とつよさを維持することの難しさ
それなりに大きなIT企業での仕事では、はっきりとは自覚できていないと思うけれども、エンジニアとしてキャリアを築く上で大事なことを学んでるからね。
大学生の頃、先輩が作った場末のソフトハウスでバイトしてて終電を逃してたよね。先輩が2つのキーボードを使い分けてタバコをガンガンふかしながらプログラムを書いているのを見て、漠然とそんなエンジニアになるのかなカッケーと思ったかもしれないけれども、そんな風にはならなかったね。
そんなキャリアを引っ提げて入社した君は、新人研修チョロいと思ってなめてたけど、現場に入っていきなり苦労してたね。当時最先端だった VC6 が全く分からなくて悔しい思いをしながら夜遅くまで勉強していたね。C++ は最高でこれさえ覚えればずっと食ってけるかなって思ったらそんなことはなかったね。
Java が登場したけど、設定が大変だったりパフォーマンスがとても悪くて C++ の敵じゃないと思ったけど、PCの性能が向上してパフォーマンスの問題を解決してしまい Java 全盛の未来がきたからね。その未来がいつまで続くかは分からないけれども。
アセンブラから C や C++ に移行できないエンジニアというのは結構たくさんいたよね。同様に C++ から Java に移行できないエンジニアもたくさん現れたんだよ。メモリを自分で解放できないのが気持ち悪いとかね。幸いにも君の先輩はとても素晴らしい方で時間を見つけては案件で使わないJavaを楽しそうに書いてたんだよね。知的好奇心はなくさないようにしてね。
何が役に立つか分からない
ゲームを作りたかった君は、大学で OpenGL(3Dグラフィックス) を学んだね。普通のIT企業に入ってしまったので全く使わないだろうと思っていたら、ショボいPCでそれなり描画性能を要求されるプロジェクトに配属されて割りと好きに色々書かせてもらったね。自分が所属する社会集団において、他人ができないことをできるということは、それだけチャンスが回ってくる可能性が高くなるということだから、好きなことを色々やっておくのがいいんだろうね。
試験の点数を取るためだけにやっていた行列計算が3Dグラフィックスをやるのに役に立ったりして、高校生の時に使っていた教科書を会社に持っていくようになるんだから面白いよね。
不毛な空中戦と仕様書
学生の頃、趣味やバイトでプログラムを書いてた君は、ワードでの仕様書作成を新鮮な業務とは思いながらも少々無駄に感じていたよね。ソフトウェアはプログラムさえ書けば動くのだから。
君にとってラッキーだったことは、この仕様書作成業務を新卒の時に『普通の仕事ではやるべきこと』として経験できたことだと思うよ。
プロジェクトは様々な立場や職務や価値観の人が携わって運営されているという事実を理解するのにはずいぶん時間がかかるんだ。その後の人生で空中戦(口頭のみのやり取り)からの不毛な言った言わない論争を大量に見ることになるんだけれども、それを回避するためのヒントを手に入れてたんだよ。アウトプットされたドキュメントからは読み取れないかもしれないけれども、いろいろな人と合意を取ったり指示を出したりするのに有効な手段なんだよ。
アンガーマネジメント?
初めてのお客様との打ち合わせで、内容が分からなすぎて寝そうになっていたよね。その時先輩に「資料整理残ってたから、そっちやっておいてよ。」と声をかけられたのを覚えている?打ち合わせ終わった後で「眠かった?(笑)」なんて聞かれて。普通だったら説教されているところだよね。
今では当たり前の様に言われている「アンガーマネジメント」にこんな早い時期に触れることができたのだから、君は相当ラッキーだよ。書籍ではなかなか理解できない兄貴の覚悟が!「言葉」でなく「心」で理解できた!んだよ。
メンターとサーヴァントリーダーシップ
そんな優しい先輩が一度だけ怖い顔をしたことがあったね。
改修案件でスパゲティ気味のソースを引き継いでいた時に、先輩が忙しそうな時にどうしても分からないところを聞いちゃったんだよねぇ。文句一つ言わずに怖い顔してソース読んでくれてたね。お手を煩わせて申し訳ないなとかいろいろなことを思ったよね。
元ソースを書いていたプロジェクトを離れてしまった人に電凸するのは全く申し訳ないと思わなかったけれども。後から分かることだけど、プロジェクトを離れてもなお前のプロジェクトのソースのことを覚えているってとても凄いことだから敬意を持つようにしようね。
これも当時は言語化されてなかったんだけど「サーヴァントリーダーシップ」みたいなことができる「メンター」が先輩だったんだなあと後で分かるからね。
おわりに
新卒エンジニアとメンターの方に向けての実体験混じりの手紙でした。
インターネットの発達で情報が飛び交っていたり、ChatGPTの登場で世間は浮足立ってる気がしますが、自分のペースでひとつひとつ学んだりアウトプットしたりしていくのがよいのかなあと思っています。
追伸
おまけ1 : 新卒向け記事
おまけ2 : 新卒・メンター向け記事
おまけ3 : 営業A短編シリーズ
おまけ4
2030年にIT人材が最大79万人不足するらしいので、学習用の資料をgitで無料公開してます(不定期更新)。
よろしければどうぞ。