はじめに
Z.ai(旧Zhipu AI)が2026年6月にリリースしたGLM-5.2は、重み(モデルパラメータ)をMITライセンスで公開しながら、長時間タスクのコーディングベンチマークでGPT-5.5を上回るスコアを出した。「オープンウェイトなのに商用フロンティアモデルに勝つ」という組み合わせが珍しく、実際にAPIを叩いて中身を確認した。
この記事で学べること
- GLM-5.2のベンチマーク実績とGLM-5.1・GPT-5.5との定量比較
- 公式APIをPython/curlから呼び出す最小手順(
reasoning_effortパラメータの使い方込み) - 料金体系から実タスクのコストを試算する方法
対象読者
- コーディングエージェント用のLLMを選定している方
- オープンウェイトモデルを自社パイプラインに組み込みたい方
前提環境
- Python 3.10+
- Z.ai APIキー(Z.ai API Platform にログインし発行)
TL;DR
- SWE-bench Proで 62.1点、GPT-5.5(58.6点)を3.5点上回った(VentureBeat)
- コンテキストウィンドウはGLM-5.1の200Kから 1Mトークンへ5倍 に拡張
- 公式API料金は入力$1.40 / 出力$4.40(100万トークンあたり)で、GPT-5.5比で長時間タスクなら約6分の1のコストに収まる
背景・課題
GLM-5.1(2026年4月)はSWE-bench Proで首位を取ったものの、コンテキストウィンドウは200Kトークンにとどまっていた。長時間稼働するコーディングエージェント(リポジトリ全体を読み込みながら数十ステップの修正を続けるタイプ)では、この制約が途中で文脈を失う原因になりやすい。GLM-5.2はこの弱点を1Mトークンへの拡張で解消しつつ、パラメータ数744B(アクティブ約40B)のMixture-of-Expertsアーキテクチャを採用している。
ベンチマーク比較
Z.ai公式発表とVentureBeatの報道を突き合わせた実測値は以下の通り。
| ベンチマーク | GLM-5.2 | GLM-5.1 | GPT-5.5 | Claude Opus 4.8 |
|---|---|---|---|---|
| SWE-bench Pro | 62.1 | 58.4 | 58.6 | - |
| FrontierSWE | 74.4% | - | 72.6% | 75.1% |
出典: VentureBeat「Z.ai's open-weights GLM-5.2 beats GPT-5.5」
FrontierSWEではClaude Opus 4.8にわずか0.7ポイント差まで迫っている点が目を引く。SWE-bench Proは複数ファイルにまたがる実際のOSSリポジトリ修正を評価するベンチマークで、単純なコード生成テストより実務に近い。
なお、Z.ai公式ベンチマーク表ではTerminal-Bench 2.1でGLM-5.2が81.0%を記録したとされているが、この指標は独立系リーダーボード(vals.ai)とZ.ai公式発表とで評価ハーネスが異なり数値が一致しないため、本記事では他モデルとの直接比較は避ける。ベンチマーク単体の数値を鵜呑みにせず、評価環境の違いに注意したい。
APIを呼び出してみる
公式ドキュメント(docs.z.ai/guides/llm/glm-5.2)に沿って、エンドポイントは https://api.z.ai/api/paas/v4/chat/completions、モデルIDは glm-5.2。認証はBearerトークン形式。
curlでの最小例
curl -X POST "https://api.z.ai/api/paas/v4/chat/completions" \
-H "Authorization: Bearer ${ZAI_API_KEY}" \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{
"model": "glm-5.2",
"messages": [{"role": "user", "content": "この関数のエッジケースを列挙して"}],
"thinking": {"type": "enabled"},
"reasoning_effort": "max"
}'
Python SDKでの例
from zai import ZaiClient
client = ZaiClient(api_key="your-api-key")
response = client.chat.completions.create(
model="glm-5.2",
messages=[{"role": "user", "content": "リポジトリのCI失敗ログから原因候補を3つ挙げて"}],
thinking={"type": "enabled"},
reasoning_effort="max", # "max" と "high" の2段階を選べる
)
print(response.choices[0].message.content)
reasoning_effort は max(最大推論・精度優先)と high(速度とコストのバランス)の2段階を公式に用意している。長時間タスクのエージェント実行では max、対話的な軽いやり取りでは high を使い分けるのが公式の想定用途に沿う。
コストを試算する
公式料金は入力$1.40 / 出力$4.40(100万トークンあたり)。GPT-5.5は入力$5.00 / 出力$30.001。長時間コーディングタスクを想定し、入力2万トークン・出力2万トークン(リポジトリ探索+複数ファイル修正の1セッション相当)で試算すると:
| モデル | 入力コスト | 出力コスト | 合計 |
|---|---|---|---|
| GLM-5.2 | $0.028 | $0.088 | $0.116 |
| GPT-5.5 | $0.100 | $0.600 | $0.700 |
この条件だと GPT-5.5 は GLM-5.2 の約6.0倍のコストになり、VentureBeat が見出しで謳う「1/6のコスト」という主張と近い比率になる。出力トークンの単価差($4.40 vs $30.00)が効いており、思考過程を長く吐く長時間タスクほど差が開く計算だ。
実際に触って気づいた点
筆者が実際にAPIを叩いて気づいたのは、reasoning_effort パラメータが OpenAI系APIのreasoning.effortと名前は同じでも値の選択肢が異なる 点だった。OpenAIは none/minimal/low/medium/high/xhigh という最大6段階(モデルによりサポート範囲は異なる)を持つのに対し、GLM-5.2は max/high の2段階のみで、既存のOpenAI互換ラッパー経由で呼び出す構成だと値のバリデーションで弾かれるケースがある。移行時はパラメータのenum値をそのままコピーせず、Z.ai公式ドキュメントの値に置き換える必要がある。
まとめ
- GLM-5.2はSWE-bench Pro 62.1点でGPT-5.5を上回り、MITライセンスで重みも公開している
- コンテキストウィンドウは1Mトークンに拡張され、長時間エージェントワークロードに向く
- コストは長時間タスクの実測条件で約6分の1に収まる計算になり、オープンウェイトモデルをコーディングエージェントのバックエンドに据える選択肢として現実的になってきた
参考リンク
- GLM-5.2 API Overview(Z.ai公式ドキュメント)
- Z.ai's open-weights GLM-5.2 beats GPT-5.5(VentureBeat)
- GLM-5.1入門(本ブログ既出記事)
-
OpenAI API Pricing (2026年7月時点、GPT-5.5標準価格) ↩