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Microsoft Foundry Agent Service入門 — Build 2026の新機能とエージェント本番運用ガイド

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Last updated at Posted at 2026-06-04

はじめに

2026年6月2〜3日に開催された Microsoft Build 2026 では、AIエージェントを本番環境で運用するための基盤として Microsoft Foundry Agent Service の大型アップデートが発表されました。ホスト型エージェント、A2A(Agent-to-Agent)プロトコル対応、3種類のメモリ、可観測性パイプラインなど、プロトタイプから本番運用への橋渡しとなる機能が一気に揃いました。

この記事では、Build 2026 で公開された Foundry Agent Service の新機能を、公式ブログの公開情報をもとに整理し、開発者がどこから着手すればよいかを解説します。

この記事で学べること

  • Build 2026 で発表された Microsoft Foundry Agent Service の主要新機能の全体像
  • ホスト型エージェント・A2A・メモリ・可観測性それぞれの役割と提供ステータス(GA / プレビュー)
  • Microsoft Agent Framework と Foundry を使った開発の始め方

対象読者

  • AIエージェントを試作段階から本番運用へ移行させたいエンジニア
  • Azure / Microsoft Foundry 上でエージェント基盤を検討しているチーム
  • マルチエージェント・A2A連携の最新動向を把握したい方

前提知識

  • LLM・AIエージェントの基本概念
  • Python での簡単な開発経験
  • MCP(Model Context Protocol)の概要を知っているとより理解しやすい

TL;DR

  • Foundry Agent Service は、フレームワーク非依存のサンドボックス実行環境で、Microsoft Agent Framework・GitHub Copilot SDK・LangGraph などをそのままホストできる。GAは公開情報で「発表から30日以内(〜7月初旬)」とされている。
  • A2A(Incoming A2A) が公開プレビューに。Foundryエージェントをエージェントカードで公開し、組織やフレームワークをまたいだ協調が可能に。
  • メモリ(手続き的 / ユーザー / セッション)と可観測性(OpenTelemetryベースのトレース・評価)、Agent Optimizer が揃い、本番運用のループが閉じた。

Build 2026 と Foundry の位置づけ

Microsoft は Build 2026 で「AIエージェントを新しい働き方の中心に据える」というメッセージを打ち出しました。その開発者向け基盤が Microsoft Foundry です。Foundry は、エージェントを「ビルド(Build)→ デプロイ(Deploy)→ 運用(Operate)」の3層で支える構成になっています。

レイヤー 役割 代表的な要素
Build 構築 Microsoft Agent Framework、Toolboxes、Foundry Toolkit for VS Code
Deploy デプロイ Hosted Agents、Routines、Teams / Microsoft 365 Copilot への発行
Operate 運用 Tracing & Evaluation、Agent Optimizer、Memory

ポイントは、特定のSDKに縛られない**フレームワーク非依存(framework-agnostic)**の設計です。すでに LangGraph や Microsoft Agent Framework で書いたエージェントを、書き直さずにホストできることが強調されています。

新機能の全体像

Build 2026 で発表された Foundry Agent Service 関連の主要アップデートを、提供ステータスとともに整理します。

機能 内容 ステータス(公開情報時点)
Microsoft Agent Framework 安定したオーケストレーション基盤。agent harness・skills・memory・middleware GA
Foundry Toolkit for VS Code ローカルデバッグ・トレース可視化・直接デプロイ GA
Hosted Agents サンドボックス化されたマネージド実行環境 GA予定(〜7月初旬)
Routines エージェントをタイマー / スケジュールで定期実行 公開プレビュー
Incoming A2A Foundryエージェントを A2A エンドポイントとして公開 公開プレビュー
Memory(手続き的/ユーザー/セッション) 実行をまたいだ学習と文脈保持 公開プレビュー
Tracing & Evaluation OpenTelemetry ベースの可観測性 GA予定(6月後半)
Agent Optimizer 本番の失敗を改善案に変える閉ループ最適化 プライベートプレビュー(30日以内に公開プレビュー予定)
Voice Live 音声認識・TTS・割り込み処理を1つのAPIに統合 GA(プロンプトエージェント向け)/ 公開プレビュー(ホスト型向け)

提供ステータス・時期は Microsoft Foundry 公式ブログの発表時点の情報です。最新の正確な提供状況は公式ドキュメントを確認してください。

ホスト型エージェント(Hosted Agents)

Hosted Agents は、専用のコンピュート・メモリ・ファイルシステムを備えたマネージドのサンドボックス実行環境です。エージェントの実行基盤を自前で構築・運用する必要がなくなります。

公式ブログによると、Hosted Agents は以下を特徴としています。

  • フレームワーク非依存: Microsoft Agent Framework・GitHub Copilot SDK・LangGraph などをそのままデプロイ可能
  • 2つの呼び出しプロトコル: ステートフルなやり取り向けの Responses API と、スキーマ非依存のシナリオ向けの Invocations protocol
  • 長時間エージェント対応: OpenClaw や Hermes のような自律エージェントを、永続的な状態とファイルアクセスとともに実行

これにより、「ローカルで動いたエージェントを本番のスケールに乗せる」までの距離が大きく縮まります。

A2A(Agent-to-Agent)公開プレビュー

Incoming A2A は、Foundry上のエージェントを A2A プロトコルのエンドポイントとして公開する機能です。公開プレビューとして提供されます。

仕組みはシンプルです。

  1. Foundryエージェントを A2A エンドポイントとして公開する
  2. 他のエージェントが、そのエージェントの エージェントカード(agent card) を通じて能力を発見する
  3. クラウドやフレームワークの種類を問わず、A2A プロトコル経由で呼び出す

A2A は、組織やベンダーをまたいでエージェント同士が協調するためのオープンプロトコルです。Foundry が Incoming A2A に対応したことで、「自社のエージェントを外部のエージェントから安全に呼び出せる」エコシステムへの接続が容易になります。

メモリ:手続き的・ユーザー・セッション

Memory in Foundry Agent Service(公開プレビュー)では、3種類のメモリが利用できます。

メモリ種別 役割
手続き的メモリ(Procedural) 実行をまたいで「業務の進め方(ワークフロー)」を学習する
ユーザーメモリ(User) セッションをまたいでユーザーの好みや設定を保持する
セッションメモリ(Session) 1つの会話の中で文脈を維持する

特に注目されているのが手続き的メモリです。公式ブログによると、手続き的メモリはベンチマーク(Tau-bench)の初期結果で、ほぼベースラインと変わらないコストのまま「成功率が絶対値で +7〜14%」向上したと報告されています。エージェントが繰り返し同じ種類のタスクをこなすほど、過去の実行から学んだ手順を再利用して精度が上がる、という設計です。

Routines と長時間エージェント

Routines(公開プレビュー)は、エージェントをタイマーやスケジュールで定期実行する仕組みです。バックグラウンドの自動化タスク(定期的なレポート生成、監視、バッチ処理など)に向いています。

また、永続的な状態とファイルアクセスを持つ長時間エージェントにも対応しました。これにより、「数分で終わるリクエスト応答」だけでなく、「数時間〜数日かけて自律的に作業を進めるエージェント」も Foundry 上で運用できます。

可観測性:Tracing・Evaluation・Agent Optimizer

本番運用で最も重要なのが「エージェントが何をしているか」を把握できることです。Foundry はここを以下で固めています。

  • Tracing & Evaluation(6月後半にGA予定): すべてのモデル呼び出し・ツール実行・エージェント間ホップを OpenTelemetry ベースのパイプラインで追跡・評価する
  • Agent Optimizer(Build 2026時点ではプライベートプレビュー。30日以内に公開プレビュー予定): 本番で起きた失敗を、ランク付けされたレビュー可能な改善案へと変換する**閉ループ(closed loop)**の最適化

Agent Optimizer は、敵対的テスト(ASSERT)、ガードレール(Agent Control Specification)、ルーブリック採点(Rubric)を組み合わせて、改善案を自動生成すると説明されています。

OpenTelemetry という業界標準に乗せている点が実務的に重要で、既存の監視基盤(可観測性スタック)に統合しやすくなっています。

開発の始め方

実際に手元で始める導線も整理しておきます。Foundry でのエージェント開発の中核は Microsoft Agent Framework(GA)です。Python と .NET に対応しています。

Python パッケージは PyPI で配布されており、次のようにインストールできます。

# すべてのサブパッケージを含むフルインストール
pip install agent-framework

# Foundry連携だけが必要な場合(依存を軽くしたいとき)
pip install agent-framework-foundry

最小構成のエージェントは、ChatAgent を使って次のように記述します(公式ドキュメントのAPIに基づく概念例)。

import asyncio
from agent_framework import ChatAgent

async def main():
    # chat_client にはAzureOpenAIなどのチャットクライアントを渡す
    agent = ChatAgent(
        chat_client=chat_client,
        name="support-agent",
        instructions="ユーザーの問い合わせに丁寧に回答するアシスタントです。",
    )

    # run() は非同期メソッドで、戻り値は AgentRunResponse オブジェクト
    result = await agent.run("Foundry Agent Serviceとは何ですか?")
    print(result.text)  # 応答テキストは .text で取得する

asyncio.run(main())

chat_client に渡す具体的なクライアントの初期化方法や認証は、Microsoft Learn の公式ドキュメントを参照してください。バージョンによってAPIが変わる可能性があります(執筆時点のパッケージは v1.7.0)。

VS Code で開発する場合は、GA となった Foundry Toolkit for VS Code が便利です。エージェントのテンプレート、トレース可視化付きのローカルデバッグ、Foundry Agent Service への直接デプロイがIDE内で完結します。

ツール管理には Toolboxes(公開プレビュー)があり、MCP サポートとエンタープライズデータ接続を一元管理できます。MCP に対応しているため、すでに MCP サーバーを持っている場合はそのまま接続して活用できます。

注意点

  • 提供ステータスと時期は流動的: GA予定やプレビューの時期は発表時点の情報です。本番採用前に必ず公式ドキュメントで最新状況を確認してください。
  • プレビュー機能の本番利用: A2A・メモリ・Agent Optimizer などは公開プレビュー段階です。SLA や仕様変更の可能性を踏まえて検証環境から導入するのが安全です。
  • フレームワーク非依存だが最適化は別: 既存SDKをそのまま載せられる一方で、メモリや可観測性などFoundry固有機能を最大限活かすには連携実装が必要になる場合があります。

まとめ

  • Build 2026 の Microsoft Foundry Agent Service は、エージェントを「ビルド→デプロイ→運用」の3層で支え、プロトタイプから本番運用への橋渡しにフォーカスしている。
  • Hosted Agents(フレームワーク非依存のサンドボックス)、Incoming A2A(組織横断の協調)、3種のメモリOpenTelemetryベースの可観測性Agent Optimizer が揃い、本番運用に必要なループが閉じた。
  • 開発は GA となった Microsoft Agent Frameworkpip install agent-framework)と Foundry Toolkit for VS Code から始められる。
  • 多くの目玉機能はGA予定・公開プレビュー段階のため、提供状況は公式ドキュメントで確認しながら段階的に導入するのが現実的。

エージェント開発が「作って動かす」フェーズから「本番で運用し続ける」フェーズへ移りつつあることを、今回の発表は明確に示しています。

参考リンク

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