はじめに
2026年3月16日、Meta傘下のManusが Manus My Computer をリリースした。Metaが2025年末に約20億ドル($2 billion超)で買収したManusにとって、買収後初の主要プロダクトとなる。
Manus My Computerは、macOSやWindowsのデスクトップ上で動作するAIエージェントアプリケーションで、ユーザーのターミナルに直接接続してコマンドを実行し、ローカルファイルの操作やアプリケーション制御を自動化する。クラウド完結型のAIエージェントとは異なり、ローカルマシンのリソースを直接活用できる点が特徴である。
この記事では、Manus My Computerのアーキテクチャ、主要機能、料金体系、そして競合プロダクトとの比較を公開情報に基づいて整理する。
この記事で学べること
- Manus My Computerの動作原理とセキュリティモデル
- 開発者向け機能(ターミナル連携、Python/Node.js/Swift対応、ローカルGPU活用)
- クレジット制料金の仕組みとコスト感
- Claude Cowork・OpenClaw・Perplexity Computerとの使い分け
対象読者
- デスクトップAIエージェントの導入を検討しているエンジニア
- ローカル環境でのAI自動化に関心がある開発者
- AIエージェントプラットフォームの比較情報を求めている技術リーダー
TL;DR
- Manus My Computerは ローカルファースト のデスクトップAIエージェントで、ターミナルコマンドの実行・ファイル操作・アプリ制御を自動化する
- すべてのターミナルコマンドに 明示的な承認 が必要なセキュリティモデルを採用し、「Allow Once」と「Always Allow」を選択できる
- 料金はクレジット制で、無料プラン(1,000クレジット+300/日)から月額$200のExtendedプランまで4段階が用意されている
Manus My Computerの背景
Metaによる買収とAIエージェント戦略
Manusは2025年3月に一般公開されたAIエージェントプラットフォームで、複雑なタスクを自律的に実行する能力が注目を集めた。公開直後に200万人超がウェイトリストに登録し、2025年12月時点で年間売上ランレートは1億2,500万ドルを超えていたとBloombergが報じている。
2025年末、MetaはManusを約20億ドル($2 billion超)で買収した。チャットボット中心のAIからエージェント型AIへの転換を見据えた戦略的な動きで、Metaの広告プラットフォームやメッセージングアプリとの統合が進められている。なお、この買収をめぐっては中国当局が輸出規制の観点から調査を行ったことも報じられた。
クラウドからデスクトップへ
従来のManusはクラウド上で動作するAIエージェントだったが、My Computerはこれを ローカルマシンに拡張 する。ユーザーのPCに直接接続し、ターミナル経由でコマンドを実行するアプローチを採用している。
対応プラットフォームは macOS (Apple Silicon)と Windows で、2026年3月16日から利用可能となっている。
アーキテクチャと動作原理
Manus My Computerは、クラウド側のAI処理とローカルマシン上のコマンド実行を組み合わせた ハイブリッドアーキテクチャ で動作する。
┌─────────────────────────────────────────────┐
│ Manus Cloud (AI Processing) │
│ ┌──────────┐ ┌──────────┐ ┌──────────┐ │
│ │ タスク解析 │ │ 計画立案 │ │ コード生成 │ │
│ └──────────┘ └──────────┘ └──────────┘ │
└─────────────────────┬───────────────────────┘
│ コマンド指示
▼
┌─────────────────────────────────────────────┐
│ Manus Desktop App (ローカル) │
│ ┌──────────┐ ┌──────────┐ ┌──────────┐ │
│ │ ターミナル │ │ ファイル │ │ アプリ制御 │ │
│ │ 実行 │ │ 操作 │ │ │ │
│ └──────────┘ └──────────┘ └──────────┘ │
│ │
│ ┌──────────────────────────────────────┐ │
│ │ 承認レイヤー (Allow Once / Always) │ │
│ └──────────────────────────────────────┘ │
└─────────────────────────────────────────────┘
処理の流れは以下のとおりである。
- ユーザーがManusデスクトップアプリで自然言語のタスクを入力
- クラウド側のAIがタスクを分解し、実行計画を立案
- 必要なターミナルコマンドがローカルマシンに送信される
- ユーザーの承認後 にコマンドが実行される
- 実行結果がクラウドに送り返され、次のステップが決定される
セキュリティモデル
公式ドキュメントによると、すべてのターミナルコマンドは実行前にユーザーの明示的な承認を必要とする。承認モードは2種類用意されている。
| モード | 動作 | 推奨場面 |
|---|---|---|
| Allow Once | コマンド1つずつ個別に承認 | 未知のタスク、機密ファイル操作 |
| Always Allow | 信頼済みタスクの自動承認 | 繰り返し実行する定型作業 |
この承認モデルは、Claude Codeの権限制御と類似したアプローチである。ただし、クラウドとローカル間でコマンド指示がやり取りされるため、ネットワーク経由での情報漏洩リスクについては利用者自身がポリシーを検討する必要がある。
主要機能
ファイル管理とターミナル操作
Manus My Computerの中核機能は、ローカルマシンのターミナルを介したファイル操作である。
- ファイルの読み取り・分析・編集: ローカルファイルを直接操作できる
- 一括処理: 数千枚の写真のカテゴリ分類、請求書ファイルの一括リネームなどのバッチ処理
- フォルダ構造の作成・管理: ディレクトリツリーの構築や整理
公式ブログでは、花屋が数千枚の未整理写真をカテゴリ別に自動整理する例や、経理担当者が数百件の請求書ファイルを統一フォーマットにリネームする例が紹介されている。
開発ツール連携
開発者向けの機能として、ローカルにインストールされた開発ツールとの連携がサポートされている。
| ツール/言語 | 対応内容 |
|---|---|
| Python | スクリプト実行、パッケージ管理 |
| Node.js | JavaScriptプロジェクト構築 |
| Swift / Xcode | macOSアプリの作成・パッケージング |
| ターミナル全般 |
pip install、npm run 等の任意のCLIコマンド |
公式ブログでは、ManusがターミナルコマンドのみでmacOS向けリアルタイム翻訳・字幕アプリを構築した事例が紹介されている。コーディングからデバッグまでの全工程をManusが処理したとされる。
ローカルGPU活用
ローカルマシンのGPUリソースにアクセスし、機械学習モデルのトレーニングやLLM推論に利用できる。クラウドGPUの料金を気にせず、手元のハードウェアでML実験を回せる点はエンジニアにとって利点となる。
クラウドサービス統合
ローカル機能に加えて、以下のクラウドサービスとの統合も提供されている。
- Google Calendar
- Gmail
- その他のサードパーティサービス
ローカルファイル操作とクラウドサービスを組み合わせたハイブリッドワークフローが構築可能である。
自動化機能
反復的なタスクを効率化するため、以下の自動化機能が用意されている。
- Projects: 関連タスクをグループ化して管理
- Agents: 特定の目的に特化したエージェントを構成
- Scheduled Tasks: 定期的なローカルルーティンをスケジュール実行
料金体系
Manus My Computerはクレジット制の料金モデルを採用している。クレジットの消費量はタスクの複雑さと必要リソースに応じて変動する。
| プラン | 月額料金 | クレジット | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Free | 無料 | 1,000(初回)+ 300/日 | 基本機能の試用 |
| Standard | $20/月 | 4,000/月 | 個人の定常利用向け |
| Customizable | $40/月 | 8,000/月 | カスタマイズ可能 |
| Extended | $200/月 | 40,000/月 | ヘビーユーザー向け |
年間契約の場合は約17%の割引が適用される。チームプランは$40/メンバー/月(最低2名)から利用可能である。
コストに関する留意点
クレジット制の料金モデルには留意すべき点がある。
- 消費の予測が難しい: 中程度の複雑さのタスク1件で数百クレジット以上を消費するケースが報告されている
- クレジットの繰り越し不可: 月末に余ったクレジットは失効する
- 複雑なタスクのコスト増: 開発タスクなど高負荷な処理では消費量が急増する可能性がある
公開情報に基づく複数のレビューで「数日で数百ドルを消費した」との報告があり、利用量のモニタリングが推奨される。
競合プロダクトとの比較
2026年3月時点で、デスクトップAIエージェント市場には複数のプレイヤーが存在する。それぞれの特徴を整理する。
| 項目 | Manus My Computer | Claude Cowork | OpenClaw | Perplexity Computer |
|---|---|---|---|---|
| 提供元 | Meta (Manus AI) | Anthropic | コミュニティ(OSS) | Perplexity AI |
| 実行環境 | ローカル + クラウド | ローカル + クラウド | ローカル | クラウド |
| 料金 | $20〜$200/月 | $20/月(Pro)〜 | 無料(OSS) | $20/月(Pro)〜 |
| ターミナル操作 | ネイティブ対応 | 対応 | ネイティブ対応 | 非対応 |
| Web操作 | ネイティブ対応 | Chrome拡張(制限あり) | ネイティブ対応 | ネイティブ対応 |
| 開発ツール連携 | Python, Node.js, Swift | Python, Node.js | 任意のCLIツール | 限定的 |
| ローカルGPU | 対応 | 非対応 | 対応 | 非対応 |
| オープンソース | 非公開 | 非公開 | MIT | 非公開 |
使い分けの指針
公開されている比較情報を総合すると、各プロダクトには得意領域がある。
- Manus My Computer: Web操作とローカル操作の両方をバランスよくカバーする。Metaのエコシステム(広告運用、メッセージングアプリ連携)との親和性が高い。ノンプログラマーがWebアプリ構築やデータスクレイピングを行う用途にも適している
- Claude Cowork: ドキュメント作成・Excel・PowerPoint等のナレッジワークに強い。月額$20のProプランから利用でき、ナレッジワーク特化のコストパフォーマンスに定評がある。一方でWeb操作はChrome拡張に依存しており制約がある
- OpenClaw: オープンソースで無料利用可能。ローカル環境の完全な制御を求めるエンジニア向け。Baiduのスマートスピーカー統合など、エコシステムが拡大中
- Perplexity Computer: リサーチ中心のタスクに特化したクラウド型オーケストレーター。ローカルファイル操作は非対応
導入時の注意点
セキュリティ上の考慮事項
- クラウドとローカル間でコマンドやファイル内容がやり取りされるため、機密性の高いファイルを扱う場合はデータの取り扱いポリシーを確認することが推奨される
- 「Always Allow」モードの設定は、信頼済みタスクに限定して使用すべきである
- 企業環境での利用にあたっては、セキュリティチームとの事前協議が望ましい
プラットフォーム要件
- macOS: Apple Silicon(M1以降)が必要
- Windows: 具体的な最低要件は公式ドキュメントを参照のこと
- インターネット接続: クラウドAI処理のため常時必要
クレジット消費の最適化
- 定型タスクはScheduled Tasksとして登録し、手作業の介入を減らす
- 複雑なタスクは事前にステップを分解し、クレジット消費を予測する
- 無料プランの日次300クレジットを活用して、コスト感を把握してからプランを選択する
まとめ
Manus My Computerは、Metaの資金力とManusのAIエージェント技術を組み合わせた ローカルファーストのデスクトップAIエージェント である。ターミナル直結の操作モデル、ローカルGPUの活用、Web操作とのハイブリッド対応といった特徴は、開発者やパワーユーザーにとって魅力的な選択肢となりうる。
一方で、クレジット制料金の予測困難さやクラウド経由のセキュリティリスクは、導入前に評価すべきポイントである。無料プランで動作感とコスト感を確認した上で、利用規模に応じたプランを選択することが推奨される。
デスクトップAIエージェント市場は、Claude Cowork、OpenClaw、Perplexity Computerを含めた競争が激化しており、各プロダクトの得意領域は異なる。自身のユースケースに合わせた選択が重要となる。



