Anthropic が 2026 年 9 月 1 日に Claude Fable 5.1 と Claude Mythos 5.1 を公開しました。同じ日に出た Claude Code v2.1.257 では、Fable 5.1(claude-fable-5-1)が既定の Fable モデルになっています。
ここで実務上こまるのが、--model fable のような エイリアス指定が実際にどのモデル ID へ解決されるのか、CLI のヘルプにも実行ログにも出てこない点です。運用ルールで「モデルはエイリアスで書く」と決めている場合、世代交代のたびに解決先が黙って変わります。変わったこと自体は望ましいのですが、コンテキスト長も課金単価も一緒に変わる ため、確認手段がないと請求を見るまで気づけません。
この記事では、Claude Code 2.1.258 が入った環境で --output-format json を使い、エイリアスの解決先・コンテキスト長・1 回の実行コストの内訳を実測します。あわせて、Fable 5.1 の目玉であるキャッシュ読み単価の引き下げが、どういう使い方のときに効くのかを実測値から逆算します。
対象読者は、Claude Code や Claude API をチームで運用していて、モデル指定をエイリアスに寄せている、あるいはこれから寄せようとしているエンジニアです。
検証環境
$ claude --version
2.1.258 (Claude Code)
Claude Code 2.1.258 は 2026 年 9 月 1 日リリースで、Fable 5.1 を既定 Fable モデルとして追加した v2.1.257 の直後のパッチです(Claude Code changelog)。
まず --model がどう説明されているかを見ます。
$ claude --help | grep -A 4 -- "--model"
--model <model> Model for the current session. Provide
an alias for the latest model (e.g.
'fable', 'opus', or 'sonnet') or a
model's full name (e.g.
'claude-fable-5').
ヘルプは「エイリアスは最新モデルを指す」と言うだけで、いま何に解決されるかは書いていません。例として挙がっているフルネームが claude-fable-5 である点も、5.1 が出た直後としては紛らわしいところです。
エイリアスの解決先を JSON 出力で確かめる
-p(--print)と --output-format json を組み合わせると、実行結果に加えてモデルごとの使用量メタデータが返ります。これが解決先を確認する一番手軽な方法です。
作業ディレクトリの設定やフックの影響を避けるため、リポジトリ外で実行します。
$ cd /tmp
$ claude -p --model fable --output-format json "Reply with exactly: ok"
返ってきた JSON のうち、modelUsage を抜き出したものが次です(見やすさのため整形しています)。
{
"modelUsage": {
"claude-fable-5-1": {
"inputTokens": 2,
"outputTokens": 4,
"cacheReadInputTokens": 0,
"cacheCreationInputTokens": 34791,
"contextWindow": 1000000,
"maxOutputTokens": 64000,
"canonicalModel": "claude-fable-5-1",
"provider": "firstParty",
"costBasis": "list",
"costUSD": 0.6960400000000001
},
"claude-haiku-4-5-20251001": {
"inputTokens": 897,
"outputTokens": 8,
"contextWindow": 200000,
"costUSD": 0.000937
}
},
"total_cost_usd": 0.6969770000000001,
"result": "ok"
}
ここから確定できることが 3 つあります。
-
fableエイリアスはclaude-fable-5-1に解決される。canonicalModelも同じ値なので、別名の張り替えではなく実体としてこの ID が使われています。 - コンテキストウィンドウは 1,000,000、最大出力は 64,000。 モデル ID と一緒に取得できるので、「1M コンテキストが有効になっているか」を実行のたびに確認できます。
-
1 回の実行に 2 つのモデルが登場する。 本体の
claude-fable-5-1と別にclaude-haiku-4-5-20251001が 897 入力トークン・8 出力トークンぶん動いています。--modelで指定するのは主モデルであり、total_cost_usdは両方の合計です。
--model opus や --model sonnet に置き換えて同じコマンドを流せば、それぞれの解決先が同じ形式で得られます。運用ルールをエイリアス基準にしているなら、この 1 行を CI やセットアップ確認スクリプトに置いておくと、世代交代を検知できます。
1 回の実行コストを分解する
注目すべきは、返答が ok の 4 トークンしかないのに costUSD が $0.696 ある点です。内訳を分解します。
支配的なのは cacheCreationInputTokens の 34,791 トークンです。入力は 2 トークン、キャッシュ読みは 0 なので、この実行はプロンプトキャッシュを 書き込んだだけで一度も読んでいません。単価を実測値から逆算します。
出力ぶん: 4 tok × $50/Mtok = $0.0002
キャッシュ書き込み: $0.69604 − $0.0002 = $0.69584
1トークンあたり: $0.69584 ÷ 34,791 ≒ $0.0000200
≒ $20/Mtok
Fable 5.1 の入力単価は $10/Mtok(公式アナウンス)なので、キャッシュ書き込みはその 2 倍で課金されている計算になります。JSON の cache_creation を見ると、この 34,791 トークンはすべて ephemeral_1h_input_tokens に入っていました。5 分 TTL ではなく 1 時間 TTL のキャッシュとして書かれています。
"cache_creation": {
"ephemeral_5m_input_tokens": 0,
"ephemeral_1h_input_tokens": 34791
}
つまりこの $0.696 は「ok と返させた代金」ではなく、システムプロンプトとツール定義を 1 時間ぶんキャッシュに載せた初期費用 です。一撃で終わるワンショット実行では、この初期費用が回収されないまま捨てられます。
キャッシュ読み 75% 引き下げが効く場面
Fable 5.1 でキャッシュ読みは $0.25/Mtok になりました。公式アナウンスは「75% の引き下げ」と書いており、引き下げ前は $1.00/Mtok だった計算になります(この $1.00 は 75% という記述からの逆算で、公式が数値として明記しているのは引き下げ後の $0.25 です)。この差が効くかどうかは、同じキャッシュを何回読むか で決まります。
先ほどの 34,791 トークンを 1 時間のあいだに N 回読み直す場合の追加コストを並べます。
| キャッシュ読み回数 | 引き下げ前相当($1.00/Mtok) | Fable 5.1($0.25/Mtok) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 1 回 | $0.0348 | $0.0087 | $0.0261 |
| 10 回 | $0.348 | $0.087 | $0.261 |
| 50 回 | $1.740 | $0.435 | $1.305 |
| 200 回 | $6.958 | $1.740 | $5.219 |
書き込みの $0.696 は据え置きなので、読みの累計が書き込みの初期費用に追いつく回数 は単価で変わります。引き下げ前の $1.00/Mtok なら 20 回($0.6958)、引き下げ後の $0.25/Mtok なら 80 回($0.6958)です。損益分岐が 4 倍先へ動いた、と言い換えられます。
この形から言えることは単純です。1 回で終わるスクリプト実行では 75% 引き下げの恩恵はほぼ受け取れません。恩恵が出るのは、同じシステムプロンプトとツール定義を抱えたまま何十ターンも回すエージェント的な使い方、あるいはスケジュール実行で 1 時間以内に何度も起動する使い方です。公式が「典型的なワークロードで約 25%、エージェント的な作業では最大約 45% のコスト削減」と幅を持たせているのは、この読み回数の差がそのまま出るためだと読めます。
逆に言えば、ワンショットの claude -p を大量に並べる構成はキャッシュ書き込み料を毎回払い直している ことになります。回数が多いなら、セッションを維持して読み側に寄せる構成を検討する価値があります。
effort の既定値に注意する
Claude Code 2.1.258 の --effort は 5 段階です。
$ claude --help | grep -A 1 -- "--effort"
--effort <level> Effort level for the current session
(low, medium, high, xhigh, max)
公式アナウンスによれば、Fable 5.1 の既定 effort は Claude Code では High、Claude Cowork と Claude.ai では Medium です。同じモデル ID を指定していても、入口が変わると既定の思考量が変わります。コストを比較するときは、モデルだけでなく effort を揃えないと同じ条件になりません。
v2.1.257 では /effort に現在のセッションだけへ適用する s が追加されており、/model と同じ操作感で一時的に段階を落とせます。ワンショット実行で --effort low を明示しておくと、上の初期費用の話とは別に出力側の変動を抑えられます。
Fable 5.1 と Mythos 5.1 の関係
名前が 2 つ出たので整理しておきます。公式アナウンスによれば、この 2 つは 同じ基盤モデルで、適用されるセーフガードの強度だけが違います。
| Fable 5.1 | Mythos 5.1 | |
|---|---|---|
| 提供範囲 | 一般提供 | 審査を通った組織のみ(米国) |
| サイバーセキュリティ | ペネトレーションテスト・エクスプロイト生成・バイナリベースの脆弱性スキャンの依頼は Opus 系へ誘導 | Cyber Verification Program が緩和セーフガードを提供(公式時点では対象が Opus / Sonnet 系で、Mythos 系への拡大は今後の予定) |
| バイオ | 研究開発クエリは Opus 系へ誘導 | Life Sciences Verification Program 経由で研究利用可 |
一般の開発者が API やエイリアスで触れるのは Fable 5.1 だけです。--model fable で Mythos 5.1 に解決されることはありません。
ベンチマークも公式値が公開されています。Fable 5 からの伸びが大きいのは、ターミナル操作を伴う長時間タスク系です。
| ベンチマーク | Fable 5.1 | Fable 5 | Opus 5 |
|---|---|---|---|
| Terminal-Bench 4.0 | 55.8% | 42.0% | 52.3% |
| Terminal-Bench-Science 0.1 | 52.6% | 24.7% | 29.0% |
| CursorBench 3.2.0 | 73.4% | 70.5% | 70.0% |
| AutomationBench | 31.4% | 17.1% | 26.9% |
Terminal-Bench-Science が 24.7% から 52.6% へ倍以上になっている点が目を引きます。ターミナルを使い続ける長い作業ほど差が出るという、キャッシュ読みの話と同じ方向の性質です。
まとめ
-
--model fableの解決先は、claude -p --model fable --output-format jsonのmodelUsageで確認できます。2026 年 9 月 2 日時点の Claude Code 2.1.258 ではclaude-fable-5-1(コンテキスト 1,000,000・最大出力 64,000)でした。 - 一撃実行のコストはキャッシュ書き込みが支配します。実測では 34,791 トークンの書き込みで $0.696、逆算で $20/Mtok 相当(入力単価 $10/Mtok の 2 倍)でした。
- キャッシュ読み $0.25/Mtok の恩恵は読み回数に比例します。実測条件では、読みの累計が書き込みの初期費用に並ぶのが 80 回(引き下げ前なら 20 回)でした。ワンショット実行を並べる構成では受け取れません。
- Fable 5.1 の既定 effort は入口ごとに違います(Claude Code は High)。コスト比較のときは effort を揃えます。
- Mythos 5.1 は同じ基盤モデルのセーフガード緩和版で、審査を通った組織向けです。エイリアス経由で触れることはありません。
エイリアス運用は世代交代に自動追随できる一方、追随した瞬間に単価とコンテキスト長が変わります。JSON 出力での解決先確認を、セットアップ手順か CI のどこかに 1 行入れておくのが現実的な落とし所です。