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【自然言語処理】科研費データベースからMeCab-ipadic-neologdとtermextractでキーワードを抽出する

Last updated at Posted at 2020-10-24

科研費申請書を書いている研究者のみなさま、お疲れ様です。
ご存知の通り、過去に採択された研究は科研費データベースに載っています。が、全部見るのはなかなか大変です。
過去の傾向をざっくり把握してみよう! ということで、今回は科研費データベースの研究の概要から自然言語処理でキーワードを抽出してみました。形態素解析パッケージMeCabと専門用語抽出ツールのtermextractを使っています。

環境構築

PythonとJupyter Notebookを使います。

OSなど

  • MacOS Mojave 10.14.5
  • Anaconda 2020.02
  • Python 3.7.6
  • Jupyter Notebook 6.0.3

MeCab

こちらを参考に、形態素解析のためにMeCabとmecab-python3をインストールし、neologdを標準辞書に設定します。
インストールできたらbashで試してみましょう。

標準辞書ipadic(MeCabのデフォルト)

bash
echo "真核生物" | mecab
真	接頭詞,名詞接続,*,*,*,*,真,マ,マ
核	名詞,一般,*,*,*,*,核,カク,カク
生物	名詞,一般,*,*,*,*,生物,セイブツ,セイブツ
EOS

デフォルトのipadicでは「真核生物」が認識されません。

bash
echo "科学研究費補助金" | mecab
科学	名詞,一般,*,*,*,*,科学,カガク,カガク
研究	名詞,サ変接続,*,*,*,*,研究,ケンキュウ,ケンキュー
費	名詞,接尾,一般,*,*,*,費,ヒ,ヒ
補助	名詞,サ変接続,*,*,*,*,補助,ホジョ,ホジョ
金	名詞,接尾,一般,*,*,*,金,キン,キン
EOS

「科学研究費補助金」も認識してくれませんでした。

標準辞書neologd

bash
echo "真核生物" | mecab
真核生物	名詞,固有名詞,一般,*,*,*,真核生物,シンカクセイブツ,シンカクセイブツ
EOS

neologdは「真核生物」を認識してくれました! これならキーワード抽出に少し期待が持てるかな。

bash
echo "科学研究費補助金" | mecab
科学	名詞,一般,*,*,*,*,科学,カガク,カガク
研究	名詞,サ変接続,*,*,*,*,研究,ケンキュウ,ケンキュー
費	名詞,接尾,一般,*,*,*,費,ヒ,ヒ
補助金	名詞,固有名詞,一般,*,*,*,補助金,ホジョキン,ホジョキン
EOS

「科学研究費補助金」は1語として認識してくれないようです。

mecab-python

PythonでMeCabを試してみましょう。テスト用に後述のデータの1文目をお借りしました。

python
import sys
import MeCab
tagger = MeCab.Tagger ("mecabrc")
print(tagger.parse ("真核生物はユニコンタとバイコンタに大別できる。"))
出力結果
真核生物	名詞,固有名詞,一般,*,*,*,真核生物,シンカクセイブツ,シンカクセイブツ
は	助詞,係助詞,*,*,*,*,は,ハ,ワ
ユニコンタ	名詞,固有名詞,一般,*,*,*,ユニコンタ,ユニコンタ,ユニコンタ
と	助詞,並立助詞,*,*,*,*,と,ト,ト
バイコンタ	名詞,固有名詞,一般,*,*,*,バイコンタ,バイコンタ,バイコンタ
に	助詞,格助詞,一般,*,*,*,に,ニ,ニ
大別	名詞,サ変接続,*,*,*,*,大別,タイベツ,タイベツ
できる	動詞,自立,*,*,一段,基本形,できる,デキル,デキル
。	記号,句点,*,*,*,*,。,。,。
EOS

Pythonから形態素解析できました。

termextract

termextractは専門語抽出をしてくれるパッケージです。MeCabの解析結果の形式でデータを渡す必要があります。
こちらを参考にインストールしました。

科研費データベースからcsvデータをダウンロード

いよいよ科研費データを扱っていきます。
当初Pythonでスクレイピングしようかと思ってスクレイピング禁止だーとかいろいろ調べていたのですが、csvでダウンロードできることに気づき、ことなきを得ました。
検索ワード「クラミドモナス」で全件ダウンロードしてみます。
クラミドモナスに馴染みのない人はこちらを見てみてください。

pandasでデータ読み込み・整形

pandasでデータを読み込んで確認します。encodingを指定するのを忘れましたが、エラーが出ずに読み込めました。

python
import pandas as pd
kaken = pd.read_csv('kaken.nii.ac.jp_2020-10-23_22-31-59.csv')

kaken.head() でデータの最初の部分を確認します。NaNが多そうです。
2020-10-24 13.21のイメージ.jpg
kaken.info()でデータ全体を確認します。

出力結果
<class 'pandas.core.frame.DataFrame'>
RangeIndex: 528 entries, 0 to 527
Data columns (total 40 columns):
 #   Column            Non-Null Count  Dtype  
---  ------            --------------  -----  
 0   研究課題名             528 non-null    object 
 1   研究課題名 (英文)        269 non-null    object 
 2   研究課題/領域番号         528 non-null    object 
 3   研究期間 (年度)         528 non-null    object 
 4   研究代表者             471 non-null    object 
 5   研究分担者             160 non-null    object 
 6   連携研究者             31 non-null     object 
 7   研究協力者             20 non-null     object 
 8   特別研究員             53 non-null     object 
 9   外国人特別研究員          4 non-null      object 
 10  受入研究者             4 non-null      object 
 11  キーワード             505 non-null    object 
 12  研究分野              380 non-null    object 
 13  審査区分              102 non-null    object 
 14  研究種目              528 non-null    object 
 15  研究機関              528 non-null    object 
 16  応募区分              212 non-null    object 
 17  総配分額              526 non-null    float64
 18  総配分額 (直接経費)       526 non-null    float64
 19  総配分額 (間接経費)       249 non-null    float64
 20  各年度配分額            526 non-null    object 
 21  各年度配分額 (直接経費)     526 non-null    object 
 22  各年度配分額 (間接経費)     526 non-null    object 
 23  現在までの達成度 (区分コード)  46 non-null     float64
 24  現在までの達成度 (区分)     46 non-null     object 
 25  理由                46 non-null     object 
 26  研究開始時の研究の概要       14 non-null     object 
 27  研究概要              323 non-null    object 
 28  研究概要 (英文)         156 non-null    object 
 29  研究成果の概要           85 non-null     object 
 30  研究成果の概要 (英文)      85 non-null     object 
 31  研究実績の概要           84 non-null     object 
 32  現在までの達成度 (段落)     90 non-null     object 
 33  今後の研究の推進方策        94 non-null     object 
 34  次年度の研究費の使用計画      0 non-null      float64
 35  次年度使用額が生じた理由      0 non-null      float64
 36  次年度使用額の使用計画       0 non-null      float64
 37  自由記述の分野           0 non-null      float64
 38  評価記号              3 non-null      object 
 39  備考                0 non-null      float64
dtypes: float64(9), object(31)
memory usage: 165.1+ KB

「研究開始時の研究の概要」「研究概要」「研究成果の概要」「研究実績の概要」に文章が入っていそうです。「キーワード」もありますが、今回はあくまで文章からキーワード抽出したいので、無視します。
おそらく年度ごとに執筆すべき項目が変わった影響で、NaNが多くて文章の入っている行が揃っていません。文章だけデータフレームから出してリストを作ってしまうことにします。

python
column_list = ['研究開始時の研究の概要', '研究概要', '研究成果の概要', '研究実績の概要']
abstracts = []

for column in column_list:
    abstracts.extend(kaken[column].dropna().tolist())

スクリーンショット 2020-10-24 13.36.21.png
形態素解析の準備ができました。このリストの各要素に対して形態素解析をかけていきましょう。

MeCabで形態素解析

こちらを参考に、MeCabで形態素解析した結果の語のリストを返す関数を定義しました。
デフォルトでは名詞・動詞・形容詞のみ抽出し、動詞と形容詞は原型に戻します。

python
tagger = MeCab.Tagger('')
tagger.parse('')

def wakati_text(text, word_class = ['動詞', '形容詞', '名詞']):
    # 分けてノードごとにする
    node = tagger.parseToNode(text)
    terms = []
    
    while node:
        # 単語
        term = node.surface
        
        # 品詞
        pos = node.feature.split(',')[0]

        # もし品詞が条件と一致していたら
        if pos in word_class:
            if pos == '名詞':
                terms.append(term) #文中の形
            else:
                terms.append(node.feature.split(",")[6]) # 原型で入れる

        node = node.next

    return terms

さきほど抽出したデータの一部を使ってテストしてみます。
スクリーンショット 2020-10-24 18.52.39.png
名詞・動詞・形容詞のみ抽出できています。(「9+2構造」は抽出できませんね……)
リストabstracts全体に関数wakati_textを適用して名詞・動詞・形容詞のリストを得ます。

python
wakati_abstracts = []

for abstract in abstracts:
        wakati_abstracts.extend(wakati_text(abstract))

名詞・動詞・形容詞のリストができました。
スクリーンショット 2020-10-24 18.57.10.png

可視化

リストwakati_abstractsの要素を数え、数が多い方から50位まで棒グラフにしてみます。

python
import collections
import matplotlib.pyplot as plt
import matplotlib as mpl

words, counts = zip(*collections.Counter(wakati_abstracts).most_common())

mpl.rcParams['font.family'] = 'Noto Sans JP Regular'
plt.figure(figsize=[12, 6])
plt.bar(words[0:50], counts[0:50])
plt.xticks(rotation =90)
plt.ylabel('freq')
plt.savefig('kaken_bar.png', dpi=200, bbox_inches="tight")

kaken_bar.png
ストップワード除去をしなかったため、「する」「こと」「れる」「いる」「的」などが上位に来ています。
検索ワードである「クラミドモナス」のほか、「遺伝子」「光」「細胞」「鞭毛」「タンパク質」「ダイニン」など、クラミドモナス関係者なら見覚えのある単語が並んでいます。
動詞と形容詞はいらなかったのでは? と思われる結果になっています。

名詞のみの抽出

上記と同様の手順で名詞のみを抽出してみました。
関数wakati_abstractの第2引数を['名詞']とするだけです。

python
noun_abstracts = []

for abstract in abstracts:
        noun_abstracts.extend(wakati_text(abstract, ['名詞']))

途中のコードは上と同じなので省略して、可視化の結果を示します。
kaken_bar_noun.png
「こと」が1位に来ていたり、数字の「1」「2」「3」が入っているのが気になりますが、先ほどよりも若干キーワードっぽい結果になっています。

termextractを使った専門用語抽出

次に、termextractを使って専門用語を抽出してみます。
こちらを参考に、形態素解析方式をやってみました。

データ整形

termextractの入力形式はMeCabの形態素解析の出力結果です。
リストabstractsをMeCabで解析し、各要素の解析結果を連結して改行で区切った形式にします。

python
# mecabの形式で渡す
mecab_abstracts = []

for abstract in abstracts:
        mecab_abstracts.append(tagger.parse(abstract))

input_text = '/n'.join(mecab_abstracts)

スクリーンショット 2020-10-24 19.17.59.png

termextractで解析

コードはほぼ全面的にこちらのものです。

python
import termextract.mecab
import termextract.core

word_list = []
value_list = []

frequency = termextract.mecab.cmp_noun_dict(input_text)
LR = termextract.core.score_lr(frequency,
         ignore_words=termextract.mecab.IGNORE_WORDS,
         lr_mode=1, average_rate=1
     )
term_imp = termextract.core.term_importance(frequency, LR)

# 重要度が高い順に並べ替えて出力
data_collection = collections.Counter(term_imp)
for cmp_noun, value in data_collection.most_common():
    word = termextract.core.modify_agglutinative_lang(cmp_noun)
    word_list.append(word)
    value_list.append(value)
    print(word, value, sep="\t")

スクリーンショット 2020-10-24 19.22.03.png
スコアが何を意味しているのかはよく理解していませんが、それらしき語が表示されています。
これも可視化してみます。

可視化

コードは上と同じなので省略します。
kaken_bar_termextract.png
「光化学系II」「形質転換体」「鞭毛運動」「遺伝子群」など、よりそれらしい単語がとれています。
「クラミドモナス」と「緑藻クラミドモナス」、「ダイニン」と「軸糸ダイニン」が異なる項目になっているのは、まあしかたないですかね。

まとめ

科研費データベースの検索結果からキーワード抽出しました。MeCabで形態素解析のみした結果より、termextractの方がよりキーワードらしい単語抽出ができました。

おまけ:GiNZA

ついでにGiNZAの固有表現抽出も試してみました。

python
import spacy
from spacy import displacy

nlp = spacy.load('ja_ginza')
doc = nlp(abstracts[0]) 

#固有表現抽出の結果の描画
displacy.render(doc, style="ent", jupyter=True)

スクリーンショット 2020-10-24 20.21.44.png

固有表現じゃないのでしかたないですが、「ユニコンタ」「バイコンタ」「繊毛」「クラミドモナス」など、とってほしい表現がとれてないですね。そしてやっぱり「9+2構造」はとれない。

参考

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