はじめに
今回は、AWS認定試験でも頻出のテーマ「AWSの移行系サービス」について、目的別に整理してみました。
AWSには多くの移行支援サービスがありますが、何をどの場面で使うのか混乱しやすいですよね。
本記事では、移行フェーズごとにサービスを分類し、それぞれの役割や特徴をまとめてみました。
AWS資格試験の取得を目指している方などの参考になれば幸いです!
全体の分類構成
AWSの移行系サービスは、次の4カテゴリに分類して考えると理解しやすいです。
カテゴリ | 説明 |
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評価・アセスメント系 | 現状把握・評価・移行プラン策定 |
サーバ移行系 | オンプレなどからAWSへサーバを移行 |
データベース移行系 | DBのスキーマ変換やデータ移行 |
進捗管理系 | 移行プロジェクト全体の状況を可視化・統制 |
以下、それぞれのカテゴリごとにサービスを紹介していきます!
評価・アセスメント系サービス
移行前には、現状のIT資産を正しく理解し、コストや依存関係を把握することが重要です。
これらのサービスは、移行の最初のステップである「現状把握と意思決定」を支援します。
サービス名 | 主な用途 |
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①AWS Application Discovery Service (ADS) | オンプレミスのサーバー構成や依存関係を自動収集。移行計画の基礎データを提供します。 |
②Migration Evaluator(旧 TSO Logic) | 現在のIT環境とAWS上でのTCOを比較。コスト最適化やROIを数値で可視化します。 |
③AWS Cloud Adoption Framework (CAF) | 組織のクラウド適応状況を6つの視点から評価・整理するガイドライン。 |
④Migration Readiness Assessment (MRA) | CAFに基づいたチェックリスト形式の診断で、クラウド移行準備レベルを明確にします。 |
①AWS Application Discovery Service(ADS)
用途:移行対象のサーバー構成・依存関係・リソース使用量などの自動収集
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オンプレミスにある物理/仮想サーバーにエージェントをインストールして、CPU使用率、メモリ、プロセス、接続先情報などを収集。
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収集されたデータは、移行対象のアプリやサービスの構成把握、依存関係分析、TCO見積もりに活用される。
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CSV形式でのエクスポートや、Migration Hubとの連携表示も可能。
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大規模データセンターのクラウド移行時に不可欠な情報基盤ツール。
📝 ポイント:
「サーバーが何をしているか」「どのアプリとつながっているか」を“見える化”するサービス。
②Migration Evaluator(旧:TSO Logic)
用途:AWS移行におけるTCO(総所有コスト)試算とビジネスケース作成支援
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現行のIT資産(オンプレサーバ、ライセンス、運用コスト)と、AWSに移行した場合の想定コストを比較。
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レポート形式で「どれくらい安くなるか」「どの構成が最適か」を提案。
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専門チームの支援付きで、詳細なビジネスケースの作成も可能。
📝 ポイント:
「AWSに移行すると本当にコスト削減になるのか?」を数値と根拠で説明できるようになるツール。
③AWS Cloud Adoption Framework(CAF)
用途:組織全体のクラウド導入成熟度を6つの視点から評価するフレームワーク(機能・サービスではなく、移行にあたってのガイドライン)
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ビジネス、人材、運用、セキュリティ、ガバナンス、プラットフォームの6分野でクラウド移行の準備状況を評価。
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「何が準備できていて、どこが不足しているのか」を明確化。
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AWS移行を戦略的・組織的に進めるための「思想的なベースライン」。
📝 ポイント:
技術面だけでなく、組織体制・人材育成・ポリシー整備なども含めた移行準備を整えるガイド。
④Migration Readiness Assessment(MRA)
用途:CAFの考え方に基づいて、組織の移行準備状況を具体的に可視化・診断
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CAFを実践に落とし込んだチェックリスト型の診断ツール。
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各分野における成熟度を「Ad hoc」「Repeatable」「Defined」などの段階で評価。
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移行プロジェクトを開始する前に、「どこから着手すべきか」が明確に。
📝 ポイント:
「実際に今どれくらい移行の準備ができているか?」を診断書のように評価してくれるサービス。
サーバ移行系サービス
オンプレミスや他クラウドで稼働中の仮想・物理サーバーをAWSへ移行するためのサービスです。
サービス名 | 主な用途 |
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⑤AWS Application Migration Service (MGN) | リアルタイムレプリケーションでサーバーをそのままAWSへ移行。GUIで簡単操作。 |
⑥End-of-Support Migration Program for Windows Server (EMP) | サポート切れのWindowsアプリを新OSでも動作するようラッピングして移行します。 |
⑦VM Import/Export | VMwareやHyper-V仮想マシンをEC2としてAWSへインポートできます。 |
⑧AWS Launch Wizard | SAPやSQL Serverなどの複雑なアプリスタックを簡単にAWSで再構築。新規構築にも、移行先整備にも有効。 |
⑤AWS Application Migration Service(MGN)
用途:オンプレや他クラウドからAWSへ、サーバーをそのまま移行(リホスト)
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サーバーにインストールしたエージェントが、ブロックレベルでデータをリアルタイムにレプリケート。
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GUIベースで移行操作可能。テスト/本番カットオーバーもクリック操作で簡単。
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OSやアプリはそのままAWSのEC2上で起動。設定も引き継ぎやすい。
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複数台の一括管理やスケジュール制御にも対応。
📝 ポイント:
AWSが公式に推奨するLift & Shiftツール。「手間なく丸ごと移す」ならこれ一択。
⑥End-of-Support Migration Program for Windows Server(EMP)
用途:サポート切れのWindows OS上のアプリを、再開発せずに新しい環境へ移行
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アプリケーションをEMPパッケージとしてラッピング(DLLなどの依存も含む)。
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最新のWindows Server(サポート対象)上で動作可能にする。
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再設計・再構築・再検証を避けつつ、安全にクラウドへ移行できる。
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AWS内でのコンテナ展開や自動実行も可能。
📝 ポイント:
「アプリは残したいけどOSは古すぎる」 という場面で頼れるレガシー救済ツール。
⑦ VM Import/Export
用途:オンプレミスの仮想マシン(VM)をEC2としてAWSに取り込み/戻す
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VMware・Hyper-Vなどの仮想イメージをS3経由でアップロードし、EC2インスタンスとして起動。
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CLIやAPIを使って操作するため、自動化も可能。
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EC2からのエクスポートもサポート(双方向)。
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小規模、またはPoC(概念実証)移行に向いている。
📝 ポイント:
既存VMをそのままAWSで試したいときのお手軽な手段。
⑧AWS Launch Wizard
用途:SAP・SQL Serverなどのエンタープライズアプリを、GUIでAWSに自動構成
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アプリごとのベストプラクティスに基づき、VPC・EC2・ストレージ構成を自動設計。
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コスト見積もり機能や事前条件チェック付き。
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ステップバイステップで構築できるため、インフラ設計に不安があるユーザーにも最適。
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移行だけでなく、新規構築やテスト環境の展開にも使える。
📝 ポイント:
「アプリを再構築したいけど、手順が不安」という場合に便利なGUIウィザード。
データベース移行系サービス
データベースの移行・変換・レプリケーションを支援するサービスです。
SCTで変換 → DMSで転送という組み合わせが典型的です。システム停止時間を短縮したい場合にも便利。
サービス名 | 主な用途 |
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⑨AWS Database Migration Service (DMS) | DBのデータをAWSへ移行。継続的レプリケーションも可能。異種間移行にも対応。 |
⑩AWS Schema Conversion Tool (SCT) | Oracle → PostgreSQLなどの異種DB間移行時に、スキーマやコードを自動変換。 |
⑨AWS Database Migration Service(DMS)
用途:オンプレミスや他クラウドのデータベースから、AWS上のDB(RDSやAuroraなど)へデータを移行・レプリケーション
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ソースとターゲットを設定するだけで、データを迅速かつ安全に転送。
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同種間(例:MySQL→MySQL)だけでなく、異種間(例:Oracle→Aurora PostgreSQL)にも対応。
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フルロードだけでなく、変更データキャプチャ(CDC)による継続的同期も可能。
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DMSはターゲットDBを自動作成することもでき、柔軟性が高い。
📝 ポイント:
異なるDBエンジン間の移行にも対応し、実運用中の最小ダウンタイム移行を実現できる強力なツール。
⑩AWS Schema Conversion Tool(SCT)
用途:異なるデータベース間での移行時に、スキーマやコード(SQL, ストアドプロシージャなど)を自動変換するツール
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DMSが扱うのは「データ」。SCTは「構造(スキーマ)」の変換を担う。
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GUIで操作可能。互換性の評価レポートや、変換難易度を示すレポートも生成。
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アプリケーションコード(Java, .NETなど)に埋め込まれたSQLの抽出と変換も支援。
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データウェアハウス移行にも対応(Redshiftなど)。
📝 ポイント:
Oracle→PostgreSQLのような異種間DB移行では「SCT → DMS」がセット。スキーマ変換の必需品。
進捗管理系サービス
複数の移行プロジェクトを一元的に可視化・追跡するためのサービスです。
複数のチームやツールが関わる大規模移行でプロジェクト管理の中心ツールとして活躍します。
サービス名 | 主な用途 |
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⑪AWS Migration Hub | MGNやDMSなどの移行ツールと統合。全体の移行進行状況を一元的に管理できます。移行状況のダッシュボード表示も可能。 |
⑪AWS Migration Hub
用途:複数のAWS移行ツールの進行状況を一元的に可視化・管理するためのハブ(統合ビュー)
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AWS Application Migration Service(MGN)や Database Migration Service(DMS)などの移行系サービスと統合。
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収集されたサーバ情報(ADSや手動入力)を基に、「どのサーバ/アプリが今どの段階か」をダッシュボードで表示。
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各アプリケーションごとにステータス・移行経路・使用ツールをひと目で確認可能。
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複数リージョンやチームにまたがる大規模移行プロジェクトでの中央管理に最適。
📝 ポイント:
移行作業が「誰が」「何を」「どこまで」進めているかを可視化する中核ツール。実務でも試験でも重要!
終わりに
AWSの移行サービスは、目的や移行フェーズに応じて使い分けることが重要です。
本記事では、事前準備(評価・アセスメント)から移行、進捗管理まで、各サービスの役割を整理して紹介しました。
AWS認定試験では「どのサービスをいつ使うか」が問われる場面が多いため、
この分類を参考に、場面ごとの適切な選択ができるようになれば、試験対策にも実務にも役立ちます。
試験勉強中の皆さんの参考になれば幸いです!