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投資系YouTuberにDMを送ったら、AWS未経験の2人で307個のissueを潰してSaaSをリリースしていた

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Last updated at Posted at 2026-05-21

1. はじめに

2025年1月、僕は投資系YouTuberにDMを送りました。1年3ヶ月後、課金ユーザーがいるSaaSサービスが動いていました。

AWS未経験のエンジニア2人がゼロからSaaSを作り上げるまでの開発ストーリーを、Discordの会話やGitHub issueを交えながら振り返ります。

株ピコとは

image.png

株ピコ は、自分が注目している銘柄の決算情報をLINEで通知してくれるサービスです。銘柄を登録しておくだけで、決算が発表されたタイミングでLINEに通知が届きます。通知にはAIによる決算分析も付いているので、忙しくてもサッと内容を把握できます。

実際の通知はこんな感じです。業績のピックアップ、AI分析のスコアと注目ポイント、課題点まで一目でわかるようにまとめています。

登場人物

名前 役割 リンク
ゆまたん(筆者) AI駆動開発・新技術キャッチアップ担当。現フリーランスエンジニア X
だみさん CI/CD・機能開発・デザイン・広告制作まで何でもこなすスーパーマン。都内メーカー勤務のエンジニア -
はるかみさん 資本・プロダクト改善・集客を担当。趣味は投資とYouTube YouTube

2. 出会い(2025年1月)

2025年1月。世間ではDeepSeekショック――中国のAIスタートアップが低コストで高性能なLLMを開発したニュースが業界を駆け巡り、AI関連の株価が大きく動いていた時期です。

当時の僕はAI系の研究を齧っていて、LLMやAIエージェントの動向を追いかけていました。その知見が縁となり、投資系YouTuberのはるかみさんの動画に出演する機会をいただきました。

参考: 動画出演時のポスト

動画出演後、はるかみさんとご飯を食べに行く機会がありました。食事の中で自然と「AIを使って投資に役立つサービスを作れないか」という話になり、はるかみさんは関西出身でテンポの良い会話の中からアイデアがどんどん出てきます。

「AIと投資を組み合わせたら面白いアプリ作れそうやん!」

僕も「じゃあ作りましょう!やりましょう!」と即答しました。ちょうど独立するタイミングと重なり、時間の余裕があったことも大きかったです。もし会社員のままだったら「面白そうですね〜」で終わっていた可能性が高い。

この時点で決まっていたのは、「AIと投資で何か面白いものを作る」という漠然とした方向性と、お互いの「やりたい」という熱量だけでした。


3. チーム結成(2025年1月〜2月)

だみさんは元々はるかみさんの動画の視聴者でした。はるかみさんのコミュニティで僕のことを知り、DMを送ってくれたことがきっかけで仲良くなりました。話してみると、都内メーカー勤務の現役エンジニアで、技術力はもちろん、人柄もとにかく良い。僕がだみさんを一言で表現するなら、「今まで会った中で一番几帳面で正確なナイスガイ。娘が連れてきて欲しい人ランキング堂々1位」 です。

プロジェクトの話をしたところ、だみさんも興味を持ってくれて、開発メンバーとして合流することになりました。APIのトークンを共有してから、わずか3時間後には「無事API動かせました!」と連絡が来るスピード感。チーム全員が合流を喜び、開発がスタートしました。

蒲田の焼肉で初顔合わせ

東京と神奈川の間を取ったら蒲田になる、ということで2025年1月31日、初めての顔合わせは蒲田の焼肉屋でした。

焼肉を食べながら、AWSの権限設定を共有したり、やりたいことリストを出し合ったり。食事会なのか技術ミーティングなのかよくわからない会でしたが、この雰囲気がチームの文化になっていきます。実際、僕たちはこの後も蒲田の焼肉、大井町のラーメン、有楽町、ウルフギャング丸の内店、秋葉原の焼肉と、定期的に食事会を重ねていくことになります。

役割分担

だみさんはCI/CDの設計・管理から機能開発、さらにはアイコンデザインや広告制作まで手掛けています。

僕はAWSインフラの構築とワークフローの実装を主に担当しました。AWS未経験からのスタートでしたが、Claude Codeを活用して要件定義から実装まで一貫して進めるスタイルで乗り切っています。

はるかみさんは、資本面のサポートに加えて、投資家としての視点からプロダクト改善のフィードバックをくれる存在です。


4. 最初の企画とピボット(2025年2月〜4月)

はるかみさんはChatGPTにネットキャッシュ比率の計算式を丸投げして銘柄分析をさせていました。投資家ならではのアプローチです。当時の僕たちは「AIで投資分析をどこまで自動化できるか」を探っていました。

チーム結成当初、作ろうとしていたのは 「AIを使って銘柄分析を簡単にできるアプリ」 です。名前も色々検討していて、ChatGPTにアイデアを出させたりもしました。「AI Investor」とか「AIvestor」とか、今思うとなかなか恥ずかしい名前を大真面目に議論していたのは良い思い出です。

XBRLとの格闘

企業の決算データを扱おうとして最初にぶつかった壁が、XBRL(eXtensible Business Reporting Language)という特殊なファイル形式でした。企業のPL・BSなどの財務データはこのXBRL形式でやりとりされているのですが、タグの構造が複雑で、同じ「売上高」でも企業や会計基準によって異なるタグ名が使われています。会計基準の違いや業種ごとの個別タグまで含めると、1つの数値を取り出すだけで、タグの揺れに対応する辞書を作るところから始める必要がありました。

ボツになった理由

しかし、開発を進めるうちに根本的な問題が見えてきました。ターゲットのどちらにも刺さらないのです。

  • レベルの高い投資家 → 自分でAIのワークフローを構築できるので、わざわざアプリを使う必要がない
  • 投資初心者 → AIで銘柄分析と言われても敷居が高すぎて使いたいと思わない

上級者には不要で、初心者には難しい。この「真ん中に落ちる」問題は、プロダクト開発でよくあるパターンですが、実際に自分たちが直面すると堪えます。

ピボットのきっかけ

ある日の3人の会話で、はるかみさんがこぼした言葉が転機になりました。

  • 「決算がいつ出てくるか把握するのが面倒くさい」 — 数十銘柄を保有していると全部追うのは無理
  • 「アプリに通知がきても使用しない」 — わざわざ開かないアプリの通知は結局無視する
  • 「LINEに来てくれるのがうれしい」 — 毎日使っているLINEなら見る

僕たちはAIで銘柄分析するアプリを作ろうとしていた。はるかみさんは決算情報をLINEで受け取りたいと言っている。なら、決算が出たタイミングでAIが分析して、その結果をLINEに届ければいい。「AI銘柄分析」と「LINE通知」の合体。これが株ピコの原型になりました。


5. 開発スタート(2025年5月〜6月)

2025年5月3日、GitHubに最初のコミットが刻まれました。最初の目標はシンプルに3つです。

  1. LINEに日本株の決算情報が最速で届くようにする
  2. その通知にAIの分析を付ける
  3. それを安定稼働させる

まずは「決算が出たらLINEに届く」。これだけを確実に動かすことに集中しました。

インフラにはAWS CDKを採用しましたが、僕もだみさんもAWSは完全に未経験。6月に起票されたissueのタイトルを並べると、当時の手探り感がそのまま伝わってきます。

  • 「ポーリング間隔ごとの月額を見積もる」
  • 「損益分岐点を計算する」
  • 「決算が公開されそうな時間とされない時間でアクセス頻度を変える」

AWSは従量課金なので、取得頻度を上げるだけでコストが跳ね上がります。決算発表が集中する時間帯と、ほぼ何も起きない時間帯では、求められる頻度がまったく違う。そんな基本的なことにも、実際に手を動かして初めて気づく。AWS利用料、LINEの送信コスト、Stripeの手数料。損益分岐点の計算もこの時期から始めました。

AWS未経験の僕たちにとって最大の壁は、「どのリソースを使うべきかわからない」ことでした。LambdaなのかECSなのか、S3のディレクトリ構造はどう設計すべきか。そもそもAWSのサービスが多すぎて、何を選べばいいのか見当がつかない。

ここでClaude Codeが大きな助けになりました。「決算データを定期的に取得してLINEで通知したい。AWSでどういうアーキテクチャにすべきか」と壁打ちしながら、リソースの選定理由まで含めて設計を進めていけた。ただし、AIが言うことが全て正しいわけではありません。初期にはLambdaで作ったものを後からStep Functionsに移行したり、フロントエンドをAmplifyからApp Runnerに載せ替えたりと、アーキテクチャの手戻りも何度かありました。

それでも試行錯誤を重ねるうちに、AI駆動開発のノウハウが貯まっていきました。「AIにどう聞けば精度の高い回答が返ってくるか」「どこはAIに任せて、どこは自分で判断すべきか」。今では大きなアーキテクチャ変更が起きる頻度は激減しています。

毎週のMTGで「次のミーティングまでに調べてくる」を繰り返しながら、LINEログインや銘柄登録といった基本機能はこの時点で動き始めています。6月には早くも配当・業績の修正有無を通知する機能も追加。単純な「決算が出ました」通知ではなく、投資判断に役立つ情報を届けるという方向性がこの時点で固まっていました。

issueは5月にたった1件、6月でも6件。ここから1年後に307個のissueを消化するプロダクトに成長するとは、当時の僕たちは想像もしていませんでした。


6. チーム合宿と初動(2025年7月〜9月)

7月:CI/CD整備とチーム合宿

まず開発面では、7月にCI/CD環境が整いました。PR作成時にdev環境を自動構築し、mainマージ時に自動デプロイ、PR閉鎖時にはdev環境を自動削除する仕組みです。二人で安全に並行開発できる体制がここで確立されました。

同じ7月、3人で大分に行きました。7月18日から20日、別府・阿蘇・日田を巡る2泊3日のチーム合宿です。

段落テキスト.png

宿では関鯖の姿造りを注文し、空港で合流してレンタカーで移動。開発の話をしたりしなかったり。もともとオンラインで繋がった3人が、初めてがっつりオフラインで過ごした時間でした。開発チームというよりは、もはや友達の旅行です。

旅行後、はるかみさんが初めて株ピコに銘柄を登録し、「早く決算きてほしい!」と楽しみにしてくれました。自分たちが作ったプロダクトを、ユーザーの立場で使ってもらえた初めての瞬間でした。

この頃、だみさんが動作確認中に誤って全管理ユーザに通知を送信してしまう事件もありました。

だみ: 「動作確認中にミスって全員に通知行ってしまいました、、」

はるかみ: 「きた!笑 でもなんかくると嬉しいねw」

怒られるかと思いきや「くると嬉しい」。通知サービスとして、ユーザーの手元に情報が届くこと自体に価値がある。誤通知から得られたフィードバックでした。ただし、開発環境ならまだしも、実際にユーザーが触れる本番環境でこれが起きたらアウトです。この反省を踏まえて、本番ユーザーに影響を与えずに検証・テストできる仕組みを整備していきました。後にこの仕組みが、リリース前の決算シーズン実測で重要な役割を果たすことになります。

8月:ドメイン取得とセキュリティ総点検

8月、はるかみさんがドメインを契約してくれました。「.ai」も検討していたようですが、結局は堅実に「.com」を選択。だみさんがDNS設定を行い、kabupico.comでサービスにアクセスできるようになりました。

機能面では、決算日前日にLINEでリマインドを送る通知機能を実装しました。「明日はこの銘柄の決算です」と前日に教えてくれるので、投資家が決算発表を見逃すことがなくなります。

さらに、決算短信PDFをAIで分析するパイプラインもこの月に構築。PDFをダウンロードし、LLMで重要ポイントを抽出してLINEで通知する仕組みです。「決算が出ました」から「AIが決算を読んでくれる」へ、プロダクトの価値が大きく上がった瞬間でした。

セキュリティの総点検も実施。issueのチェックリストには「環境変数の漏れ」「コンソールログに秘匿情報ないか」「DDoS対策」「RDSへのアクセス直接できないようにする」と、AWS初挑戦のチームが網羅的に洗い出した項目が並んでいます。

9月:Stripe導入と大井町ミーティング

9月には3人で大井町に集まり、ラーメン屋でミーティング。この頃からStripe決済基盤の構築を始め、マネタイズに向けた具体的な準備が動き出しています。


7. 本格化(2025年10月〜11月)

10月:機能拡充とインフラ刷新

10月は機能面・インフラ面の両方で大きく前進した月です。

決算情報の取得頻度を見直し、決算発表の速報性を高めました。だみさんが上場予定銘柄への対応を当日の夜中に実装完了させるなど、開発のスピード感も増していきます。

インフラ面では、Webアプリのホスティング先をAWS App Runnerに移行。AWSのサービス内で完結させ、ログ管理やカスタムドメインの運用を改善しました。

同時期にGemini APIの有料化も実施。決算シーズンには600件を超える決算が発表されることもあり、無料プランの同時実行数制限では対応しきれなくなったためです。

11月:オフ会で14人のユーザーを獲得

11月8日、はるかみさんのファン向けオフ会で株ピコを紹介しました。招待コードを配布し、その場で14人が新規登録。参加者の食いつきは想像以上でした。だみさんは当日参加できなかったのですが、リアルタイムでDBのユーザー数が増えていくのを見て喜んでいたそうです。

先行ユーザーの中には64銘柄も登録してくれた人がいました。はるかみさんも「多すぎて危なさを感じるw」と笑っていましたが、このデータは後のプラン設計で「登録銘柄数の上限をどう設定するか」を決める重要な根拠になりました。

厳しいフィードバック

オフ会では嬉しい反応だけではありませんでした。

はるかみ: 「2人からきたし、厳しめにいうてっていうてたから、『結局決算書見に行くからあんまし』って!」

「結局決算書を見に行くから、あんまり使わない」。ピボット時に予感していた「上級者には刺さらない」問題が、実ユーザーの口から裏付けられた瞬間でした。

この声を受けて、ターゲットユーザーを明確に定義し直しました。僕たちは投資家のレベルを5段階で考えています。

  • Lv.5: 井村さんや片山さんのような大物個人投資家、機関投資家
  • Lv.4: 自分でIR資料を読み込み、独自の分析手法を持っている人
  • Lv.3: 決算は追いたいが、全銘柄を追いきれない人
  • Lv.2: 投資を始めて数年、決算の重要性はわかっているが見方に自信がない人
  • Lv.1: 投資を始めたばかり、決算って何?の人

株ピコのメインターゲットはLv.1〜3。Lv.1〜3の人にとっては、「決算が出たらAIが読んでLINEに届く」だけで投資判断の質が変わります。そしてLv.4〜5の人でも使いたいと思えるような、痒いところに手が届くサービスを目指しています。

機能の進化:スコア・修正判定・増配通知

ユーザーのフィードバックを受けて、この時期に通知機能を大幅にブラッシュアップしました。

  • AI分析スコア(100点満点)の導入 — 決算の良し悪しを数値で一目で判断できるように
  • 上方修正/下方修正の判定 — ユーザーから3件リクエストがあった最も要望の強い機能
  • 増配/減配の判定 — 配当投資家にとって最も重要な情報を自動判定

はるかみさんがAIに「口調を柔らかくしたほうがいいか」と聞いたところ、AI自身が「よくない」と即答。理由は「プロフェッショナルコンシェルジュだから」だそうです。結局その路線で落ち着きました。

「株ピコ」という名前

プロダクト名はだみさんの考案です。初期の仮名候補から一転、親しみやすさ重視で「株ピコいいね!」と即採用されました。

ただし、だみさんの奥さん的には「無し」だったそうです。


8. リリースに向けて(2025年12月〜2026年2月)

デザインリニューアルと月次通知

12月、Webアプリのデザインを一新しました。LINEの緑と株ピコのアイコンの黄色を基調とした配色です。課金機能をリリースする前に見た目を整えておきたかったのです。

機能面では月次情報の通知機能も追加しました。小売業などが毎月発表する月次売上レポートをPDFで取得し、LINEで通知する仕組みです。決算は年に4回ですが、月次情報は毎月あるので、決算シーズン以外にもユーザーに価値を届けられるようになりました。

秋葉原で忘年会

12月23日、秋葉原の焼肉屋で忘年会をしました。

年末で予約が取りにくい中、滑り込みで確保した一軒。名前からして攻めた焼肉屋ですが、ちゃんと美味しかったです。すっかり恒例になった食事会ですが、毎回お店選びだけは安定しません。

だみさんの誕生日と配当修正機能

年が明けて2026年1月。だみさんの誕生日翌日、配当修正機能を実装してくれていたという報告がありました。はるかみさんが「誕生日ぐらいゆっくりして」と突っ込むと、だみさんの返答は一言。

だみ: 「趣味なのでw」

後日、ウルフギャング丸の内店でだみさんの誕生日をお祝いしました。看板メニューのTボーンステーキで乾杯。骨を挟んでサーロインとフィレが両方楽しめる、人生で何回食べられるかわからない一皿です。「この収益化が成功したら、また3人でTボーンを焼きに来よう」と笑い合いながら、ナイフを入れました。

IMG_5736.jpeg

スコアのチューニング

AI分析のスコア精度にはまだ課題がありました。信越化学の決算に78点がついたのですが、はるかみさんの投資家目線では全く違う評価でした。

はるかみ: 「この点数も怪しいよねw 私的には30点ぐらい!笑」

だみさんがプロンプトと計算ロジックを改善し、信越化学のスコアは42点に修正されました。78点から42点へ。投資のプロの目線をプロダクトに反映できるのは、はるかみさんがチームにいるからこその強みです。

PR動画制作

2月、リリースに向けてPR動画の制作に取り掛かりました。まず僕がRemotionで叩き台を作ったのですが......

ゆまたん: 「なんか深夜の通販番組みたいなのできたんですけどこれでいいですかね?笑」
はるかみ: 「ww 可愛いけどちょっと改善点考えるわ笑」

ここからだみさんがブラッシュアップし、はるかみさんのYouTubeショートで実際に使われるレベルまで仕上げてくれました。CI/CDの設計、機能開発、デザイン、そしてPR動画の制作まで。だみさんの守備範囲の広さは、このプロジェクトの大きな強みでした。

決算シーズンを2回、本番想定で走らせる

リリース前の最大の不安は「決算が集中する15:30台に本当に捌けるのか」でした。決算シーズンは年4回。リリース前に最低でも2回は本番と同じ負荷で動かし、問題があれば潰してからユーザーに届けたい。

そこで2025年11月と2026年2月の決算シーズンを、本番想定の実測期間としました。通知は本番ユーザーには送らず、内部で送信先を切り替えた状態で全銘柄のパイプラインを走らせる仕組みです。この実測で3つの大きな問題が炙り出されました。

重複通知バグ

データ収集が追いつかず、同じ決算を「新しい発表」と誤認して多重通知を送るバグが発覚しました。Lambda関数の同時実行制御と、送信側の重複チェック。二重の対策が必要でした。だみさんが素早く修正を投入し、問題を解決。はるかみさんから「めちゃくちゃシゴデキやん!!!」の一言が飛びました。

Step Functionsの256KB問題

Step Functionsの通知パイプラインで、ペイロード上限である256KBを超過してワークフロー全体が停止する障害も起きました。分析結果をそのままステート間で受け渡していたのが原因です。ペイロードを最小化するように出力を絞り込み、必要なデータはS3経由で受け渡す設計に変更。AWS初心者が「なぜか動かない」から原因を特定して修正するまで、ドキュメントとにらめっこの日々でした。

リリース前日、3時間の修正劇

リリース直前まで実測は続きました。前日、最終チェック中にはるかみさんから「増配が出てない!」と報告が入ります。通期決算では「配当予想の修正に関するお知らせ」という個別の開示が出ないため、通常の増配判定ロジックでは拾えないことが判明しました。だみさんが調査から修正まで約3時間で完了。ギリギリでリリース品質を守ってくれました。

リリース後に起きていたらユーザー影響が大きかった問題群。決算シーズンに2回テストするという判断が、結果的にリリースの品質を支えてくれました。

課金基盤の整備

Stripe連携、料金プランページ、利用規約、特商法表記、Apple Pay / Google Pay対応。リリースに必要なピースを一つずつ埋めていきました。

Stripeのテスト計画だけでも、月額・年額プランのアップグレード、自動更新、決済失敗パターン(有効期限切れ、残高不足、3Dセキュア)、Webhook連携、冪等性、UI/UX、運用管理の7カテゴリにわたる詳細なチェックリストを作成しています。決済は最も失敗が許されない機能なので、慎重に進めました。

2027年5月の予約

この時期、面白い賭けをしました。予約困難で有名なフレンチビストロ「渡辺料理店」の予約です。2027年5月以降しか空きがないお店に、「株ピコの収益で行く」という約束とともに予約を入れました。この予約の結末は、最終章で。


9. 料金体系の激論(2026年3月)

はるかみ: 「そもそもマネタイズがライトで中心にするのか、プロ中心にするのかで食い違ってるよね。そこを整えたほうがいいかも」

2026年3月23日。リリース目前のこのタイミングで、チーム結成以来もっとも白熱した議論が始まりました。テーマは料金体系。技術的にはほぼ準備が整っていたのに、「いくらで売るか」が決まっていなかったのです。

原価が重い

株ピコの料金設計には構造的なジレンマがあります。LINEには月額固定の通数枠があり、超過すると1通ごとの従量課金が発生します。つまり、ユーザーが銘柄を登録すればするほど、LINE送信コストが膨らむ。登録銘柄数の上限設定が、そのままビジネスの成否を左右する問題でした。

さらに「カード登録必須で無料期間中に解約しても無料」にするのか、「まずは気軽に使ってもらってから課金に移行」するのか。導線の設計でも意見が割れます。

「作る側」と「売る側」の視点

はるかみさんは、プロプラン中心でマネタイズしたい派。高単価のプロプランで収益を確保し、ライトプランはそこへの導線という位置づけです。

僕はライトプラン中心でユーザー数を稼ぎたい派。まずはライトプランで広くユーザーを集めて、後から値上げしたり機能追加でプロへ誘導していく戦略を考えていました。

はるかみさんはYouTuberとしてマーケティングの肌感覚を持っていて、「無料で集めても課金しない人は課金しない」という現実を知っています。僕やだみさんはエンジニアとして「まず使ってもらわないと良さが伝わらない」という考えが強かった。ここが噛み合わない。

だみさんが数字で整理する

だみさんは感情論ではなく、コストの試算で議論を動かしました。通知数や運用コストから、1ユーザーあたりの月間コストを積み上げて、プランごとに収益性を並べて比較していく。SaaSとして十分に成立することが数字で見えてきました。

この数字が出てから、議論は「気持ち」から「数字」ベースに変わりました。

ライトプラン30銘柄、プロプラン100銘柄はこの流れで合意に至ります。プロプランは当初200銘柄で検討していましたが、僕が「使わない分を払っている感じがする」と言ったことで100に収束しました。

「1はけち臭すぎる」

最後まで揉めたのが無料プランの銘柄数です。

だみさんはコスト面から1銘柄を提案。数字的には合理的です。でも、はるかみさんが一言。

「1はけち臭すぎて登録しないのでは」

......たしかに。笑

だみさんが冷静に着地点を示してくれました。

dami: 「招待コードなしの無料プランは3銘柄でスタートする。1だと少なすぎて登録されないリスクが高い。5だとライトプランの30との差が小さく、課金動機が弱くなる可能性がある。3→5への緩和は後からできる」

「後から緩和できる」が決め手になり、無料3銘柄で決着。3月23日から28日まで、6日間にわたった議論でした。

最終決定

kabupico-pricing.png

はるかみさんのマーケット感覚、だみさんのデータドリブンな分析、僕のユーザー寄りの発想。6日間かかったが、全員が納得できる着地点に落ちた。


10. リリース(2026年4月1日)

2026年4月1日、株ピコ正式リリース。エイプリルフールですが、嘘ではありません。

GitHubのissue #648「リリース時にリリースフラグを解放する」は、もともと3月15日がターゲットでした。料金議論やQA対応で延びた結果、4月1日に。新年度のスタートと決算シーズンの幕開けが重なり、結果的にはちょうどいいタイミングでした。

招待コードは2種類を用意しました。2つのコードで特典期間を変え、どちらの課金転換率が高いかを比較テストする設計です。

そしてリリース当日の夜、Discordに飛び込んできた通知がこれです。

first-subscription.png

「サブスク登録 — プロプラン プランに新規登録がありました」。初めて見知らぬユーザーがお金を払ってくれた瞬間でした。チーム全員で🙌リアクションを付けたのは言うまでもありません。

「点数高いの教えて」

リリース後、想定していなかった課題が見えてきました。

はるかみ: 「やっぱあんだけシンプルでも使い方わからん人一定でてきちゃうね」

LINEで友だち追加して、銘柄を登録するだけ。シンプルな設計にしたつもりでしたが、「点数高いの教えて」とLINEに入力しているユーザーがいました。株ピコは通知サービスなのに、対話型AIだと思われていたのです。

集客

はるかみさんのYouTubeショートに広告を組み込む形で進めました。投資系チャンネルの視聴者と株ピコのターゲットユーザーは完全に重なるので、これ以上ない集客チャネルです。動画では「LINEに通知が来ている感」を演出し、株ピコの価値が直感的に伝わるクリエイティブに仕上がりました。


11. 現在と今後

2026年4月現在の株ピコの数字です。

user-registration-trend.png

新規登録ユーザー数は116人。ピーク日は2026年3月30日で、1日で25人が登録してくれました。リリース直後のはるかみさんのYouTubeショート広告が効いています。

ticker-distribution.png

ユーザーの登録銘柄数の分布を見ると、平均8.3銘柄。0銘柄(登録だけして使っていない)が49人と最も多いですが、1〜5銘柄が46人、6銘柄以上のアクティブユーザーも着実にいます。中には101〜150銘柄を登録しているヘビーユーザーも。

正直に言えば、まだまだこれから。でも、116人のうち5人が有料プランに課金してくれています。ゼロから始めたサービスに、お金を払う価値を感じてくれた人がいる。

307個のissue

github-issues-graph.png

2025年5月の開発開始から2026年4月のリリースまで、消化したGitHub issueは307件。グラフの紫色(Completed)が大半を占め、緑色(Open)はごくわずかです。

2025年10月〜2026年2月の傾斜に注目してください。オフ会での先行ユーザーテストを経て、課金基盤の構築、PR動画制作、決算シーズンの実測対応が重なり、グラフが一気に立ち上がっています。

AWS未経験の2人が、25以上のCDKスタック、33のLambda関数を構築して、この307件を潰してきました。

これからの機能

僕が実装を担当したDiscord通知機能がほぼ完成しており、LINE以外の通知チャネルとして展開を検討中です。決算スコアに応じてチャンネルを自動振り分けする仕組みで、日本株・米国株それぞれに対応しています。決算がない期間にもユーザーに価値を届けるため、レーティング変更の通知なども検討しています。

黒字化

今の最大の目標は黒字化です。

AWS、LINE送信、Stripe手数料……それぞれの単価は小さくても、決算シーズンには通知数が跳ね上がるので、運営側はずっと数字とにらめっこ。5人ほど有料登録してくださったので、損益分岐点まではあと一息。数字が見えているのは救いです。

渡辺料理店の予約は2027年5月。株ピコの収益で3人で行く。予約は取った。あとは黒字にするだけです。笑


12. おわりに

蒲田の焼肉屋で初めて顔を合わせた3人が、大分で合宿し、大井町で迷子になり、秋葉原で攻めた焼肉屋に入り、ウルフギャングでステーキを食べ、料金体系で6日間言い合い、リリース前日にバグを3時間で直し、渡辺料理店の予約を入れた。振り返ると、やっていることの半分くらいは食事と旅行です。

でも、その食卓やDiscordの雑談から「LINEに届いたら嬉しい」が生まれ、「株ピコ」という名前が決まり、「これならSaaSとして成立する」という結論にたどり着きました。

だみさんには本当に頭が上がりません。誕生日翌日に新機能を実装して「趣味なのでw」と笑い飛ばす人です。僕がRemotionで作った「深夜の通販番組みたいな動画」を、YouTubeに出せるクオリティまで仕上げてくれたのもだみさん。料金の議論が感情論になりかけたとき、コストの数字を出して全員を冷静にしてくれたのもだみさんでした。

はるかみさんがいなければ、僕たちはまだ「AIvestor」という名前のアプリを作ろうとしていたかもしれません。「決算のタイミングでLINEに届いたら嬉しい」。このたった一言が、株ピコの全てを決めました。投資家としての肌感覚でプランの方向性を導き、YouTubeで集客チャネルを提供し、リリース前日には誰よりも早くバグを見つけてくれる。はるかみさんがチームにいることで、僕たちは「作る」だけでなく「届ける」ところまで考えられるようになりました。

僕自身は、AWSのドキュメントと格闘しながらインフラを組み上げ、Step Functionsの256KB上限のような障害と、決算シーズンの実測の中で向き合ってきました。Claude Codeを活用した開発スタイルをチームに持ち込んだこと、新しい技術をいち早くキャッチアップして導入したことが、自分の役割でした。

株ピコを試してみてください

決算情報のキャッチアップに手間を感じている方は、ぜひ一度株ピコを試してみてください。LINEで友だち追加して銘柄を登録するだけで、決算発表時にAI分析付きの通知が届きます。無料プランから始められます。

307個のissueを潰してきた僕たちの試行錯誤が、皆さんの投資ライフを少しでもラクにできたら嬉しいです。


株ピコ: https://kabupico.com

はるかみ YouTube(凡人。10億円を目指す): https://www.youtube.com/channel/UC1F2uI0tyV0aIZx3Z2280JA

はるかみ X: https://x.com/harukami_inv

ゆまたん X: https://x.com/OkirakuYuma

ゆまたん YouTube: https://youtube.com/@yumatan_kabu

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