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AWS AIプラクティショナー学習小説『雲の上のAI錬金術師』

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概要: この物語は、AI初心者の主人公がAWSのAIサービスを活用してビジネス課題を解決していく過程を描いています。AWS Certified AI Practitioner (AIF) 資格の主要な学習ポイント(生成AIの概念、Amazon Bedrock、プロンプトエンジニアリング、RAG、セキュリティなど)を網羅しています。


第一章:崩れゆくレガシーと、AIという名の黒船

プロローグ:深夜の会議室

東京、渋谷。IT企業「ネクスト・イノベーション」の会議室には、重苦しい空気が漂っていた。

「来月のリリースまでに、顧客サポートの自動化率を50%上げろ。さもないと、競合に完全にシェアを奪われるぞ」

社長の怒声が響く。入社3年目のプロジェクトマネージャー、カイ(25歳)は冷や汗を拭った。現在のシステムは古いチャットボットで、「少々お待ちください」と繰り返すだけの役立たずだ。

「カイ、君がリーダーだ。今話題の『生成AI』とかいうやつを使えば、すぐできるんだろ?」

無茶振りだ。カイはAWSの基礎(Cloud Practitioner)は持っているが、AIに関しては素人同然。「魔法じゃないんだから……」と心の中でつぶやくことしかできなかった。

エピソード1:謎のメンターと「3つの階層」

途方に暮れてカフェスペースで頭を抱えていると、隣に座っていた女性がパソコンを閉じ、話しかけてきた。
彼女は、社内でも伝説的なクラウドアーキテクト、レイ(年齢不詳)。

「困ってるみたいね、カイ君。社長の無茶振り?」
「レイさん……。生成AIを使えって言われても、何から手をつけていいか。そもそもAIと機械学習(ML)の違いすらあやふやで」

レイは苦笑し、ホワイトボードに向かった。
「いい? AWS AIプラクティショナーの基本中の基本から整理しましょう。AIの世界は、マトリョーシカだと思えばいいわ」

レイは大きな円を描き、その中に中くらいの円、さらに小さな円を描いた。

【レイの講義メモ:AIの階層構造】

  1. AI (人工知能):一番外側の大きな枠。コンピュータに人間のような知能を持たせる技術全般。
  2. ML (機械学習):AIの中にある手法。データからパターンを学習して予測するもの。
  3. DL (深層学習):MLの一種。人間の脳(ニューラルネットワーク)を模倣した複雑な学習。
  4. 生成AI (Generative AI):DLのさらに進化系。既存のデータから新しいコンテンツ(テキスト、画像、コードなど)を作り出す技術。

「社長が求めているのは、一番中心にある生成AIよ。従来のMLは『これは猫ですか?』と判別するもの。生成AIは『猫の絵を描いて』とか『猫についての詩を書いて』に応えるもの。まずはこの違いを肌で理解することね」

エピソード2:巨人の肩に乗る(基盤モデルとBedrock)

「でもレイさん、そんな高性能なAI、うちの弱小開発チームで作れるわけがありません。データサイエンティストもいないのに」

「そこで登場するのが、基盤モデル(Foundation Model / FM)と、それを使うためのサービスAmazon Bedrockよ」

レイはスマホを取り出し、デリバリーアプリを開いて見せた。
「カイ君、美味しいカレーが食べたい時、スパイスをインドから輸入して自分で調合する?」
「いや、お店で頼みますよ」
「でしょ? **基盤モデル(FM)**は、GoogleやAmazon、Anthropicといった超一流のシェフ(AI企業)が、膨大なデータを使って事前に学習させておいた『完成された巨大な脳みそ』のことよ」

レイは続けた。
「そして、その『有名シェフの脳みそ』を、API経由で簡単にレンタルできるAWSのサービスが、Amazon Bedrock。これを使えば、君たちはサーバーを立てる必要も、モデルを一から作る必要もない。ただ『メニュー(プロンプト)』を渡すだけでいいの」

エピソード3:嘘つきなAI(ハルシネーションと責任あるAI)

「じゃあ、すぐにBedrockを使ってチャットボットを作ります!」
立ち上がろうとするカイを、レイが鋭い声で制止した。

「待って。AIは魔法使いだけど、大嘘つきでもあるの」
「えっ?」
「**ハルシネーション(幻覚)**って聞いたことある? 生成AIは、もっともらしい嘘を自信満々に答えることがあるの。顧客サポートで『当社の製品は防水です(本当は違う)』なんて答えたら、会社が潰れるわよ」

カイは青ざめた。
「だからこそ、AWS AIプラクティショナーでは**『責任あるAI (Responsible AI)』**が最重要項目なの。バイアス(偏見)、公平性、そしてセキュリティ。これらを無視してAIを実装するのは、ブレーキのないスポーツカーで公道を走るようなものよ」

レイはニヤリと笑った。
「Amazon Bedrockには、Guardrails for Amazon Bedrockという機能があるわ。これを使えば、AIが不適切な発言をしたり、個人情報を漏らしたりするのを防ぐ『防護柵』を設置できる。……さあ、カイ君。君の最初の仕事は、ただAIを作ることじゃない。『安全な』AIを設計することよ」

【第一章の学習ポイント】

用語 解説
AI > ML > DL > 生成AI 包含関係(マトリョーシカ構造)。生成AIは「新しいデータの作成」に特化。
基盤モデル (FM) 膨大なデータで事前学習された汎用的なモデル。これを利用するのが基本戦略。
Amazon Bedrock API経由で複数の基盤モデルを利用できるフルマネージド型サービス。サーバーレス。
ハルシネーション 生成AIが事実と異なる情報を、もっともらしく生成してしまう現象。
責任あるAI 公平性、安全性などを考慮すること。AWS機能としてGuardrailsがある。

第二章:言葉の魔術と、創造性のチューニング

エピソード1:伝わらない想い(プロンプトの基礎)

翌日、カイは早速 Amazon Bedrock のコンソール画面(プレイグラウンド)に向かっていた。
「よし、まずは挨拶からだ。……『お客様に返信して』っと」

カイが入力すると、AIはこう返してきた。
『はい、どのような返信をすればよろしいでしょうか?……』

「うーん、なんか堅苦しいし、全然役に立たないな……」

背後からレイが現れた。
「カイ君、AIは『空気を読む』ことはできないの。**プロンプト(指示文)**は、ただの会話じゃなくて『プログラミング』だと思いなさい」

レイはカイのキーボードを奪い、カタカタと打ち込んだ。

【レイの修正プロンプト】
役割: あなたはベテランのカスタマーサポート担当「ネクスト君」です。親しみやすく丁寧な口調で。
タスク: 以下の顧客からの問い合わせに対して、謝罪と解決策を提案してください。
コンテキスト: 顧客はログインできずに困っています。
入力: 「パスワードを忘れてログインできないんだけど!」

実行ボタンを押すと、AIは見事に親身な回答を生成した。
「これがプロンプトエンジニアリングよ。明確な指示、役割の付与、文脈の提供。これがAIの性能を100%引き出す鍵になるわ」

エピソード2:例示という名の教育(Few-shot プロンプティング)

「でもレイさん、AIに自社特有の回答ルールを守らせようとしても、たまに無視されるんです」
「そういう時は、『例』を見せるのが一番よ」

レイはホワイトボードに図を描いた。

  • Zero-shot プロンプティング: 例を示さずに、いきなり「これをやって」と頼むこと。
  • Few-shot (One-shot) プロンプティング: **正解の例(入出力のペア)**をいくつか見せてから、本番の問題を出すこと。

「これを**インコンテキスト学習(In-context Learning)**と呼ぶわ。モデル自体を再学習させなくても、プロンプトの中に例を含めるだけで賢くなるの」

エピソード3:創造性のダイヤル(推論パラメータ)

「回答が毎回同じで、ロボットっぽいんですよね。もっと人間味のあるランダムな揺らぎが欲しいというか……」
「それなら、推論パラメータをいじりなさい。特に重要なのが**Temperature(温度)**よ」

【レイの技術解説:Temperature】

  • Temperature = 0 (低い): AIは最も確率の高い単語ばかり選ぶ。事実に基づく回答や正確さが求められるタスク向き。
  • Temperature = 1 (高い): AIはあえて確率の低い単語も選ぶ。クリエイティブな文章、アイデア出し向き。

「サポート対応なら、嘘をつかれては困るからTemperatureは低め。逆に、新しい商品名のアイデア出しなら高め。このダイヤル調節が、AI錬金術師の腕の見せ所よ」

エピソード4:適材適所(モデルの選択)

「ところでカイ君、君はずっと『Claude 3 Opus』という超高性能モデルを使ってるけど……それ、お金かかるわよ?」
「えっ!?」

「Amazon Bedrockにはたくさんのモデルがあるの。Amazon製のTitan、Meta製のLlama、AnthropicのClaude、それに画像生成ならStable Diffusion。簡単なメールの返信に天才を使う必要はない。レイテンシー(速度)コスト精度のバランスを見極めるのも重要よ」

【第二章の学習ポイント】

用語 解説
プロンプトエンジニアリング モデルを再学習させずに、入力(プロンプト)を工夫して望ましい出力を得る技術。
Zero-shot / Few-shot 例示なし(Zero)か、例示あり(Few)か。Few-shotの方が精度が高くなる(インコンテキスト学習)。
Temperature (温度) 推論パラメータ。値を低くすると決定的・正確になり、高くすると創造的・ランダムになる。
モデル選択の基準 全てに最高性能のモデルを使うのではなく、タスク、速度、コストを考慮して選ぶ。

第三章:知の図書館と、ベクトル空間の羅針盤

エピソード1:天才の弱点

「できた……完璧だ!」
カイは自信満々に、完成したチャットボットを社長に見せた。しかし社長が『当社の来年度の社内プロジェクトの予算は?』と尋ねると、AIはトンチンカンな回答をした。

「カイ君、これは極秘の社内マニュアルに書いてあることだぞ」
社長は激怒した。AIはインターネットの情報しか知らず、社内のことは何も知らなかったのだ。

エピソード2:暗記か、カンニングか(Fine-tuning vs RAG)

「よし、AIに社内マニュアルを全部『再学習』させよう!」
意気込むカイを、レイが止めた。
「ダメ。それは**ファインチューニング(微調整)ね。今の状況でそれをやるのは、『教科書の内容が変わるたびに、脳外科手術を受ける』**ようなものよ」

【レイの比較講義:知識の教え方】

  1. ファインチューニング (Fine-tuning)
    • 比喩: 受験勉強(暗記)。
    • 仕組み: モデルの重みを書き換える。
    • 使い道: 独自の**「口調」や「スタイル」**を定着させたい時。コストが高い。
  2. RAG (検索拡張生成)
    • 比喩: カンニング(持ち込み可テスト)。
    • 仕組み: 外部の**「参考書(社内データ)」**を参照させる。
    • 使い道: **「最新情報」や「社内固有の事実」**を答えさせたい時。コストが安い。

「社内ルールはコロコロ変わる。なら正解は RAG 一択よ」

エピソード3:言葉を数字に変える魔法(EmbeddingsとベクトルDB)

「でも、膨大なマニュアルからどうやって必要な情報を見つけるんですか?」
「そこで使うのが、**エンベディング(Embeddings / ベクトル化)**よ」

レイは説明した。コンピュータは言葉の意味がわからないため、言葉を「数字の座標(ベクトル)」に変換する。
「意味が似ている文章は、数学的な距離が近くなる。これをベクトルデータベースに保存して、質問と意味が近いページを探し出すの(セマンティック検索)」

エピソード4:知識の基地(Knowledge Bases for Amazon Bedrock)

「難しそうです……」
「だからAWSを使うのよ。Knowledge Bases for Amazon Bedrock という機能を見て」

  1. データソース: S3バケット(PDF置き場)を指定。
  2. 埋め込みモデル: Amazon Titan Embeddings を選択。
  3. ベクトルストア: OpenSearch Serverless(自動作成)を選択。

「これだけで、データの取り込みから検索、RAGの実装までフルマネージドでやってくれるわ」

【第三章の学習ポイント】

用語 解説
RAG (検索拡張生成) 外部データを参照して回答させる。**「最新情報」「社内データ」**に最適。モデル自体は学習しない。
ファインチューニング モデルを追加学習させること。**「スタイル、口調」**の模倣に最適。
エンベディング テキストを数値ベクトルに変換し、意味的な類似性で検索(セマンティック検索)できるようにする技術。
Knowledge Bases for Amazon Bedrock RAGを簡単に実装するためのフルマネージド機能。

最終章:見えない盾と、未来への羅針盤

エピソード1:そのデータ、誰のもの?(セキュリティとプライバシー)

「カイ君、チャットボットの評判は上々ね。でも、社員が機密情報を入力しているわ」
レイが警告した。「もしこのデータが学習に使われたら……」
カイは焦ったが、レイは落ち着いて言った。

「安心して。Amazon Bedrockは、デフォルトでは顧客のデータを基盤モデルの学習には使わない。これが鉄の掟よ」

【レイのセキュリティ講義】

  • データの主権: データはAWSリージョン内に留まり、学習には使われない。
  • 暗号化: 保存データは AWS KMS で暗号化、転送中はTLSで暗号化。
  • 責任共有モデル: AWSはクラウド「の」セキュリティを守るが、クラウド「内の」設定はユーザーの責任。

エピソード2:透明なブラックボックス(AIサービスカード)

「AIがどうやってその答えを出したのか、説明責任が問われます」
「そこで**『AIサービスカード』**よ。これはAIの成分表示表。モデルの得意・不得意、学習データ、バイアスの可能性などが記載されているわ。これを確認するのがプロの流儀よ」

エピソード3:請求書の衝撃(コスト管理とスループット)

一ヶ月後、高額な請求書が届き、カイは悲鳴を上げた。
「あら、オンデマンドモードのままだったのね」

【レイのコスト講義:料金モデル】

  1. オンデマンド (On-Demand): 使った分だけ払う。テストや変動する負荷向き。
  2. プロビジョンドスループット (Provisioned Throughput): 処理能力を期間契約で確保する。安定した高負荷や、応答速度の保証が必要な本番運用向き。

「君の会社規模で毎日使うなら、プロビジョンドスループットを検討しなさい」

エピソード4:エピローグ・AI錬金術師

数ヶ月後、カイは Agents for Amazon Bedrock を使い、チャットボットが「会議室予約」などのタスクも実行できるシステムを作り上げていた。
カイはレイに感謝を伝えた。「AIは魔法ではなく、道具ですね」

レイは微笑んだ。
「その通り。君はもう立派なAWS AIプラクティショナーよ。さあ、次はどんな未来を創る?」

【最終章の学習ポイント】

用語 解説
データのプライバシー 「顧客データは学習に使われない」。Amazon Bedrockの重要ポリシー。
AIサービスカード モデルの意図、制限、リスクなどを記載した透明性レポート(責任あるAI)。
オンデマンド vs プロビジョンド 変動負荷=オンデマンド。安定高負荷・速度保証=プロビジョンドスループット。
Agents for Amazon Bedrock AIが外部APIを呼び出して**「タスク(アクション)」を実行**するための機能。
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