Python / C# / Excel / Windows電卓で計算結果が異なる理由：複素数演算の仕様と実装のズレを比較して見た

はじめに

数学的には明確な定義があるはずの複素数演算ですが、
実際にPython / C# / Excel / Windows電卓で同じ式を計算すると、
異なる結果が返ってくることがあります。

「同じ数式なのに、なぜ結果が異なるのか？」

という疑問をきっかけに、
複数の環境で複素数計算の比較実験を行いました。

本記事では、その結果と原因をまとめます。

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検証環境

項目	内容
OS	Windows 11
Python	3.14.0
C#	.NET 8.0
Excel	Microsoft 365
Windows電卓	科学関数モード（複素数対応）

※ すべて追加ライブラリ不要。再現可能です。

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Pythonでの計算

ソースコード（calc.py）

import cmath

values = [-1, -5, 1j, 3+4j, -3+2j]

for v in values:
    print(f"value: {v}")
    print(f"  sqrt: {cmath.sqrt(v)}")
    print(f"  log : {cmath.log(v)}")
    print(f"  sin : {cmath.sin(v)}")
    print(f"  cos : {cmath.cos(v)}")
    print("---")
    

実行方法（cmd）

python calc.py

※環境によってはpy calc.pyの場合があります。

出力結果（生ログ）

>python calc.py
value: -1
  sqrt: 1j
  log : 3.141592653589793j
  sin : (-0.8414709848078965+0j)
  cos : (0.5403023058681398+0j)
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value: -5
  sqrt: 2.23606797749979j
  log : (1.6094379124341003+3.141592653589793j)
  sin : (0.9589242746631385+0j)
  cos : (0.28366218546322625-0j)
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value: 1j
  sqrt: (0.7071067811865476+0.7071067811865475j)
  log : 1.5707963267948966j
  sin : 1.1752011936438014j
  cos : (1.5430806348152437-0j)
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value: (3+4j)
  sqrt: (2+1j)
  log : (1.6094379124341003+0.9272952180016122j)
  sin : (3.853738037919377-27.016813258003936j)
  cos : (-27.034945603074224-3.8511533348117775j)
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value: (-3+2j)
  sqrt: (0.5502505227003375+1.8173540210239707j)
  log : (1.2824746787307684+2.5535900500422257j)
  sin : (-0.5309210862485197-3.5905645899857794j)
  cos : (-3.7245455049153224+0.5118225699873845j)

比較結果票（テンプレ）

式	Python	C# (S-Calc)	Excel	一般的な関数電卓（CAS非搭載）
log(-1)	3.141592653589793i	3.1415927i	3.14159265358979i	未対応
sqrt(-5)	2.23606797749979i	2.236068i	1.36975761385226E-16+2.23606797749979i	未対応
sin(i)	1.1752011936438014i	1.1752012i	1.1752011936438i	未対応
cos(3+4i)	(-27.034945603074224-3.8511533348117775i)	-27.0349456-3.8511533i	-27.0349456030742-3.85115333481178i	未対応

※結果のスクリーンショットは巻末に掲載いたします

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なぜ計算結果が変わるのか？

1. 多価関数（Multi-valued Function）

• log(z)やsqrt(z)は数学的には無数の解を持つ
• 計算環境ごとに採用する解（主値）が異なる

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2. 実装仕様の違い

環境	傾向
Python	数学仕様に忠実
Excel	一般利用者向け ＋ 例外処理重視
Windows電卓	実務向け簡易CAS
C#（S-Calc）	ライブラリ仕様 ＋ 独自修正

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3.UIと例外処理の違い

• Excel → #NUM!
• Python → ValueError or cmath返却
• 電卓 → 入力拒否 or 演算可

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まとめ

• 同じ式でも、数学仕様・主値の違い・例外設計によって結果が変わる
• 実装する側は「どの仕様を採用するか」決める必要がある

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補足

今回検証したC#の結果は、自作Windows向け関数電卓ソフト「S-Calc」の
内部演算処理によるものです。
内部ではxFunc.Mathをベースに、一部仕様修正を行っています。

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Excel,S-Calcでの計算結果

Excelでの計算結果

S-Calcでの計算結果