LoginSignup
22
14

More than 3 years have passed since last update.

【SQLのパフォーマンス検証】結合のコスト、インデックスの効果

Last updated at Posted at 2020-06-26

達人に学ぶDB設計 | 正規化と非正規化、インデックスについて

前回こちらの記事で、DB設計の正規化とパフォーマンスのトレードオフについて、学習しました。その中で、結合処理のコストの高さや、インデックスによる性能改善が触れられていて、実際にどのくらいの違いがあるのか、知りたくなりました。

そこで、記事で扱った処理について、3つの場合に分けて、処理時間を比較してみました。

  1. そのまま結合を使った場合
  2. テーブルに集計データを持たせて、結合せずに済むようにした場合
  3. インデックスを利用しつつ、結合を使った場合

素人の実験ですので、おかしな部分がありましたら、コメントでご教授ください。

結果

結果を先に述べてしまうと、そのまま結合した時に比べて、結合を使わない場合は、 約19倍 、インデックスを利用した場合は、 約10倍 早くなりました。

検証方法

環境

MySQL 5.7

MySQL Workbench 8.0

MySQL Workbenchは、SQLクエリを実行して処理時間を計測したり、インデックスが使われているかをGUIで確認できる開発ツールです。

検証データ

1対多の関連を持つ「受注(orders)」テーブルと「受注明細(line_items)」テーブルを用意しました。

受注(orders)テーブル

id
受注ID
order_date
受注日
customer_name
注文者名義
1 2020-06-26 岡野 徹
2 2020-06-26 浜田 健一
3 2020-06-26 石井 恵子
4 2020-06-26 若山 みどり
100000 2023-03-22 庄野 弘一

受注明細(line_items)テーブル

id
受注明細ID
order_id
受注ID
serial_number
受注明細連番
item_name
商品名
1 1 1 マカロン
2 1 2 紅茶
3 1 3 オリーブオイル
4 2 1 チョコ詰め合わせ
5 2 2 紅茶
6 2 3 日本茶
299998 100000 1 牛肉
299999 100000 2 鍋セット
300000 100000 3

※赤字が主キー

簡単にするため、次のようにして大規模データを持たせました。

  • ordersテーブル:毎日100人の顧客が注文(1000日分、計10万レコード)

  • line_itemsテーブル:1回の注文で3つの商品が注文される(計30万レコード)

これらのテーブルを使って、「受注日ごとに何個の商品が注文されているかを調べる」という処理を考えます。

1. そのまま結合した場合

最初に、インデックスを作成せずに、結合を使って処理する場合のSQLクエリが以下のようになります。

SELECT orders.order_date,
       COUNT(*) AS item_count
FROM orders INNER JOIN line_items
                  ON orders.id = line_items.order_id
GROUP BY orders.order_date
LIMIT 100;

2つのテーブルを内部結合して、受注日(order_date)ごとに集計した結果を100件取得します。

結果

order_date
受注日
item_count
商品数
2020-06-26 300
2020-06-27 300
2020-06-28 300
2020-06-29 300
2020-10-03 300

上のように、「毎日300個の商品が注文されている」という結果が得られます。

処理時間

この時、10回同じ処理をして、かかった時間の平均を求めると、 404ms でした。

この処理が頻繁に行われることを想定した場合、やや遅いのかなと思いました。

2. 集計データを持たせた場合

結合を使わずに処理するために、予め集計した「商品数(item_count)」カラムを、ordersテーブルに追加します。

受注(orders)テーブル

id
受注ID
order_date
受注日
customer_name
注文者名義
item_count
商品数
1 2020-06-26 岡野 徹 300
2 2020-06-26 浜田 健一 300
3 2020-06-26 石井 恵子 300
4 2020-06-26 若山 みどり 300
100000 2023-03-22 庄野 弘一 300

上のテーブル構成は、前回の書籍からの引用ですが、非正規化の例としてそのまま集計データを追加しています。

改めて見ると、一人一人が300個注文しているように見えるので、本来は商品数テーブルとして分けた方が良さそうです。

このテーブルから、受注日ごとの商品数を得るSQLクエリは以下のようになります。

SELECT DISTINCT order_date,
       item_count
FROM orders
LIMIT 100;

DISTINCTで、重複する受注日を1つにまとめています。これで、1の時と同じように毎日300個の注文があるという結果が得られます。

処理時間

この処理の10回の平均時間は、 20.8ms でした。そのまま結合した場合(404ms)に比べて、 約19倍 も速くなっています。

実際に比較してみることで、結合処理のコストの高さが実感できました。ただ、集計データを持たせると、更新の処理が複雑になるということも、意識しておく必要があります。

3. インデックスを利用した場合

1の結合を使った処理において、必要なカラムにインデックスを作成することで、処理を高速化させます。

再掲
SELECT orders.order_date,
       COUNT(*) AS item_count
FROM orders INNER JOIN line_items
                  ON orders.id = line_items.order_id
GROUP BY orders.order_date
LIMIT 100;

インデックスを作成するにあたって、次のことを考慮しました。

  • インデックスは、基本的に1つのテーブルに対して1つが使われる
  • WHERE句やORDER_BY句、GROUP_BY句、または結合条件に使用されているカラムに作成する

そこで、2つのテーブルの次のカラムにインデックスを追加しました。

  • ordersテーブル:GROUP_BYで使用されている、「order_date」カラム
  • line_itemsテーブル:結合条件で使用されている「order_id」カラム

処理時間

最初に結合条件の「order_id」カラムにだけインデックスを追加しましたが、処理平均時間は、418msで、効果がありませんでした。

次に「order_date」カラムにもインデックスを追加すると、10回の処理平均時間は 40.7ms になりました。

1と全く同じSQLですが、インデックスを作成するだけで 約10倍 も高速になるということが分かりました。条件次第だとは思いますが、適切に改善できれば、結合処理も十分実用に耐えるのではないかと思います。

MySQL Workbench の使用感

脇道に逸れますが、MySQL Workbenchを利用すると、SQLクエリ実行時にインデックスが使われているか、重い処理はどこかが視覚的に分かり、便利でした。

下の画像は、左がインデックス作成前、右がインデックス作成後の、結合を含むSQLクエリを表した図です。

インデックス図.jpg

色がついている部分は、赤いほど高コストで、青い(緑)ほど低コストということを表しています。

右を見ると、2つのインデックスが使われていて、わずかですが、GROPU_BYの処理の色が変わっていることが確認できます。

結合条件を絞り込むことで、もっと改善することができるのではないかと思います。

参考:[MySQL Workbench] VISUAL EXPLAIN でインデックスの挙動を確認する

DBMSによる結合処理の違い

実例で学ぶ、JOIN (NLJ) が遅くなる理屈と対処法

こちらの記事から、結合処理には次の3種類があることを知りました。

  1. Nested Loop Join
  2. Hash Join
  3. Merge Join

このうち、OracleとPostgreSQLには3つとも実装されていて、MySQLでは「Nested Loop Join」だけが実装されているということです。

RDBMSの、そのような細かな違いも把握しておきたいと思いました。

参考:PostgreSQLの実行計画の処理

参考:MySQL 8.0 Reference Manual

おわりに

実際に大規模データを作って実験してみることで、処理の仕方やインデックスの有無によるパフォーマンスの違いを実感することができました。

実験は1→3→2の順番で行ったのですが、3で2つ目のインデックスを追加した時に、あまりの処理時間の速さに、目を疑ってしまいました 笑。

適切なカラムに貼れば、たったそれだけでこんなにも違いが出るのだと分かり、インデックスはDB設計で必須のものだと改めて感じました。

22
14
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
22
14