この記事はレコチョク Advent Calendar 2022の21日目の記事となります。
はじめに
はじめまして、株式会社レコチョク新卒1年目エンジニアの小林です。
10月からNFTを取り扱う部署に配属となり、現在はバックエンドエンジニアとしてAPIを開発しています。
趣味はゲームやアニメで、最近ハマっている曲はTVアニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」作中バンドである結束バンドの「ギターと孤独と蒼い惑星」です。
この記事では、今後さらなる発展が期待されているWeb3.0の世界に踏み出す足がかりとなるように、
Web3.0 の特徴やトレンドであるNFTとメタバースについて説明していきます!
Web3.0とは
Web3.0は2018年ごろから始まった概念であり、ブロックチェーン技術によって実現される**分散型インターネット(P2P方式)**という考え方のことを指します。
インターネットは黎明期から現在に至るまで、Web1.0→Web2.0→Web3.0 と進化してきました。このうちWeb1.0・Web2.0は中央集権型と呼ばれ、特に私たちが現在利用しているWeb2.0はGoogle・Apple・Facebook・Amazonといった巨大なプラットフォーマーを中心として大きく発展しました。
その中でも、上述したGoogle・Apple・Facebook・Amazonは頭文字をとってGAFAと呼ばれます。
いずれの企業も世界規模のプラットフォームを提供しており、インフラとしての役割も担っているなど私達の生活に深く根ざしています。
Web2.0の発展により私たちの生活は非常に豊かになりましたが、その代償として現在はそれらのプラットフォーマーにデータや権限が一極集中している状況です。
このような中央集権化が進んだインターネットでは次のような点が問題視されています。
- プラットフォーマーに個人情報が所有されており、ユーザーの意図しない形で利用されている可能性がある
- プラットフォーマーがサイバー攻撃を受けた際に大量の個人情報が流出する
- データの所有権がユーザーにはない
これらの問題を解決するのが、Web3.0の分散型インターネットと考えられています。
分散型インターネットとは、自分で自分のデータを管理し、GAFAをはじめとするプラットフォーマーを介さずにユーザーがデータやお金のやり取りを行うインターネットのあり方のことです。
分散型インターネットによって、中央集権型の抱える問題を解決することが期待されています。
Web3.0の特徴
Web3.0がこれまでのインターネットとは違うことをなんとなく理解していただけたところで、ここからはWeb3.0の特徴についてまとめていきます。
プラットフォーマーを介さない自由な通信
Web3.0の説明でも触れましたが、Web3.0ではプラットフォーマー、すなわちサーバーを管理する仲介組織を介さずにデータ通信が可能です。
この形式のデータ通信は、Web3.0の根幹技術であるブロックチェーンに利用されているP2Pという通信方式によって実現されます。
P2Pとは「Peer to Peer」の略称であり、peerは「同等の者」「仲間」といった意味を持っています。
P2P方式においては、ネットワークに参加するコンピュータをピア・ノードと呼び、各ピアが同等の役割を持って対等に通信が行われることでお互いにデータや機能を提供し合います。
このP2Pにより、プラットフォーマーでデータ管理をする必要がなくなり、プラットフォーマーを介さないユーザー間での自由な通信が実現されます。
また、データが一箇所に集中していないことにより、「サーバーが攻撃されて一度に大量の情報が流出する」ような情報漏洩のリスクを抑えることができます。
スマートコントラクト
スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で特定の条件を満たすときにあらかじめ設定されたルールに基づいて自動的に取引が実行されるプログラムです。
簡単なイメージとして、自動販売機が挙げられます。
代金の投入とドリンクのボタンを押すことが特定の条件にあたり、それが満たされると取引が成立しドリンクが購入できるというイメージです。
この自動的に処理が実行されるという性質によって、上述のようなプラットフォーマーを必要としないサービスを成立させることができます。
自動で安全に取引ができるスマートコントラクトは、Web3.0 のサービス・システムを構成する上で非常に重要なものとなっています。
改ざんへの耐性
Web3.0を構成するブロックチェーンは、その構造上高い改ざんへの耐性を備えています。
ブロックチェーンは分散型台帳とも呼ばれており、その名の通りに、さまざまな取引の履歴を記録した「ブロック」という台帳を「チェーン」のように繋ぎ合わせた構造となっています。
ブロックには取引の履歴だけでなく、一つ前のブロックの内容を示すハッシュ値というデータが含まれていて、このハッシュ値により改ざん耐性が高くなっています。
1つのブロックの内容が改ざんされた場合、そのブロックのハッシュ値が変更されます。ブロックは直前のブロックのハッシュ値を含むため、改ざんされたブロック以降のすべてのブロックのハッシュ値も変更する必要があります。
この改ざんの困難さから、ブロックチェーンは非常に高いセキュリティを持つとされています。
ゼロダウンタイム
ゼロダウンタイムとは、サーバーダウンなどによりシステムが停止している時間が「ゼロ」であることです。
Web2.0以前の中央集権型のインターネットで主流であるクライアント・サーバー方式では、サーバーやネットワークに何らかの障害が発生した場合やサーバーに大きな負荷がかかってしまった場合に、システム全体が停止してしまう可能性があります。
一方で、Web3.0を構成するP2P方式では、同等の役割を持ったピア(コンピュータ)による対等な通信によってシステムが構成されます。そのため、どれか1つのピアが停止してしまった場合でも、それ以外のピアと通信することによってシステムを維持することが可能です。
併せて、P2P方式では各ピアが同様の役割を持つため全てのピアがサーバーになり得ます。これによって容易に負荷を分散することができ、1つのピアに処理が集中してダウンするという事態を防ぐことができます。
プライバシーの保護
ブロックチェーンを利用するサービスはメールアドレスやパスワードなどを登録せずに利用することができます。
その代わりに利用されるのがウォレットです。ウォレットとは、ブロックチェーンでやり取りされる暗号資産などを管理する仮想的な財布のようなものです。そのウォレットはウォレットアドレスによって識別されています。
ウォレットでのサービス利用により個人情報の提供が任意となり、渡したくないデータを渡さずにサービスを利用することができます。
Web3.0領域のトレンド
ここからは、 Web3.0・ブロックチェーンの持つ上記の特徴を利用することによって実現する Web3.0領域のトレンドであるNFTとメタバースについてまとめていきます。
NFT(Non-Fungible Token)
NFTとは、非代替性トークンと呼ばれるデジタルデータのことです。
非代替性とは、別のものと同じ価値として交換できない唯一無二の価値を持つということであり、トークンとは暗号資産のことです。すなわち、NFTとは唯一無二の価値を持つ暗号資産であるといえます。
NFTが登場するまで、デジタルデータはコピーや複製によって同一のものが簡単に量産可能であり、オリジナルのデータに価値を持たせることが困難でした。
その中で登場したNFTは、ブロックチェーン上にデータの鑑定書や所有証明書などの唯一性を証明する情報を記録することで、データ自体は同じであってもそれぞれのデータに固有性を持たせることができます。
そのデータの固有性とブロックチェーンの持つ改ざんへの耐性・複製の困難さによって、デジタルデータはNFTとしてオリジナルの価値を維持することが可能となりました。
価値があるということは資産性があるということであり、NFTは仮想通貨によって世界中で取引されています 。もの自体はデジタルデータのため、容量の都合上実際に取引されるのは鑑定書や所有証明書などのメタ情報となることが多いですが、取引データはブロックチェーンに記載されるため安全に取引可能となっています。
また、NFTにはユーザー間での取引が行われた際に一定の報酬が作成者に還元されるという仕組みがあり、クリエイターの権利を守ることができるようになったことも現在の発展に大きく寄与しています。
現在NFTは世界規模で発展を続けており、さまざまな分野でのNFT化が進んでいます。
以下はその一例です。
NFT ✖️ アート
デジタルアートはNFTの中でも主流のジャンルとなっています。
価格は作品ごとに異なりますが、
Beeple(Mike Winkelmann)というアーティストの「Everydays: the First 5000 Days」という作品は約75億円で落札されたことがあります。
こちらで実際に取引されています。
また、CryptoPunks(クリプトパンク)のような細部のデザインが異なる NFT アートシリーズもあります。
このシリーズは当初は無料で配布されていたものですが、現在ではデザインによって価格は異なりますが約12億円で落札されたものもあります。
CryptoPunksはこちらで実際に取引されています。
NFT ✖️ スポーツ
野球やサッカー、バスケ、相撲など様々な競技でNFTが活用されています。
有名選手のブロマイドや試合中のベストフォトのような画像コンテンツだけでなく、試合のハイライトや名場面・スーパープレーといった動画コンテンツがNFTになっています。
このジャンルでの最大手はNBA TOP SHOTという NBA(アメリカのプロバスケットリーグ)公認のカードゲームです。名選手の写真と名プレーの動画がセットになっているカードが NFT として取引されています。
約 2700 万円で取引されたものもあり、2022年1月にはNBA TOP SHOTの時価総額が10億ドルに達しています。
NFT ✖️ 音楽
音楽領域でもコンテンツのNFT化が進んでいます。
日本のミュージシャンである小室哲哉氏が、オリジナル楽曲やデモ音源などをNFTとして販売しているという事例もあります。
こちらで取引が行われていますが、最低でも50万円となっており非常に高額です。
また、楽曲自体をNFTとして販売するだけではなく、アートやブロマイド、動画などのNFTを販売し、
購入者に対して限定コンテンツや、ライブチケットの先行販売、所有者同士での交流、あるいはアーティストとの交流などが特典として与えられる従来のファンクラブのような形で利用されることもあります。
こちらはレコチョクでも、Nagie LaneやMAGES(純情のアフィリア/ピュアリーモンスター)、i-GET(SAY-LA/HOT DOC CAT/READY TO KISS)など多数取り扱いがあります。是非ご覧になってみてください。
NFT によって、アーティストとファンの距離が近くなり、また新しい音楽の形が生まれてきています。
メタバース(Metaverse)
メタバースとは、超越を意味する「Meta」と世界を意味する「Universe」からの造語であり、ひとことで言うと「仮想空間」のことです。
仮想空間とは、インターネット上に構成される三次元の仮想の空間のことであり、アバターと呼ばれるユーザーの分身で遊んだり、買い物をしたり、仕事のミーティングをしたりといった現実世界と同じように人々と交流することができます。
例えば、月間アクティブユーザー数約1億4000万人の「Minecraft」や全世界での累計販売数が4000万本を突破した「あつまれ どうぶつの森」もメタバースの一種と言えます。
現在は、主にゲームやビジネス、音楽分野での活用が注目されています。
メタバース ✖️ ゲーム
ゲームでは、上述したMinecraftやどうぶつの森がありますが、それ以外でも「フォートナイト」では著名アーティストによるゲーム内でのバーチャルライブが行われました。
他にも、ゲーム内の土地やアイテムをNFT化して売買することでユーザーが収益を得るようなゲームも注目を集めています。
メタバース ✖️ ビジネス
ビジネスでは、バーチャルオフィスという形で活用されています。
Meta が提供する「Meta Horizon Workrooms」や Microsoft が提供する「Mesh for Microsoft Teams」では、アバターを利用して会議や身振り手振りを反映したプレゼンを行うことができます。
メタバース ✖️ 音楽
音楽では、コロナ禍によるライブ自粛の代替としてバーチャルライブが注目されるようになりました。
観客はアバターとして飛び跳ね、デジタルならではの派手な演出によってオフラインとはまた違ったライブが展開されています。
メタバースプラットフォームのDecentralandでは、2022年11月10〜13日に「Metaverse Music Festival」という音楽フェスが開催されました。昨年の開催では、4日間で80組のアーティストと5万人以上の参加者を集めたようです。
また、Clusterや VRChat のように頻繁に音楽ライブイベントが開催されているプラットフォームもあります。
VR(Virtual Reality)との違い
メタバースや仮想空間と聞くとVRを連想する方も多いかと思います。
メタバースは、インターネット上に作られた、ユーザーがアバターとして活動し他のユーザーとコミュニケーションをとることができる「空間」そのものを指します。
一方でVRは、メタバースのような「仮想空間を現実のように感じ取れること」を指します。
メタバース≠VRではありますが、
VRゴーグルのようなVRデバイスと仮想空間を組み合わせることで、仮想空間への没入感をより強く得ることができます。
メタバースの発展性
メタバースは今後更なる発展が期待されている技術です。アメリカのBloombergによると、2020年時点で約5000億ドルだった市場規模は2024年には約8000億ドルにまで拡大すると予想されています。
成長の中心はゲーム分野とされていますが、医療の分野でもメタバースの活用が研究されています。
順天堂大学病院と日本IBMによって開発されているバーチャルホスピタルでは、オンライン診療の発展系として通院の負担軽減やメンタルヘルスの改善が期待されています。
また、健康診断やCT、MRIなどのデータや自身の3Dモデルなどを利用して医療データを持ったアバターを作成することで、メタバース上で人間ドックや健康診断が受けられるようになる研究も進められています。
さいごに
拙い記事でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
私自身まだまだ勉強中のため至らない点もあったかと思いますが、これを機に少しでもWeb3.0に興味を持っていただければ幸いです。
明日のレコチョク Advent Calendar 2022 は22日目【Android】楽曲情報の読み上げがしたい!
です。
お楽しみに!
参考
- Web3.0(Web3)とは?基礎知識や注目されている理由をわかりやすく解説
- ブロックチェーンの根幹をなす P2P ネットワークとは? 非専門エンジニアのための基礎入門
- ブロックチェーンの仕組み
- 【図解】NFTとは?仕組みや始め方・購入方法をわかりやすく初心者向けに解説
- NFTアートとは?仕組みや注目される理由、作り方や販売方法などを解説
- 【NFT×スポーツ】国内外のスポーツにおけるNFT活用事例11選
- 【NFT×音楽】国内外のアーティストによるNFT活用事例15選
- メタバースとは何か?注目される背景やビジネスにもたらす効果を解説
- メタバース、次世代技術プラットフォームの市場規模は 8000 憶ドルに達する可能性
- Meta Horizon Workrooms
- Mesh for Microsoft Teams
- 順天堂大学と IBM、メタバースを用いた医療サービス構築に向けての共同研究を開始
- メタバースとヘルスケアが融合した世界が到来する
- 任天堂 主要タイトル販売実績
この記事はレコチョクのエンジニアブログの記事を転載したものとなります。