前回の記事では、人間を1つのシステムとして捉える「人間システム論」について書きました。今回はその延長線上で、AI時代における仕事の本質がどう変化していくかについて考えていることをまとめます。
協働の最大のボトルネックは「脳」ではなく「インターフェース」
人間同士が協働するとき、最大のボトルネックになっているのは脳そのものではなく、脳と脳をつなぐインターフェースだと考えています。現在、そのインターフェースは主に「言語」です。人間は他者の思考を直接読み取ることができず、テキストや音声を介してしか情報を受け渡せません。
1つの仕事は、次のような流れになっています。
- 相手の情報を受け取る(入力)
- 自分の脳で理解・整理・推論する(処理)
- 結果を言語化する(出力)
- 相手が再びそれを入力する
この「入力」と「出力」の部分が、人間同士の協働における大きな制約になっています。AI同士であれば、内部データ構造やプロトコルを通じて高速に情報交換できますが、人間は文章を読み、意味を理解し、再び文章や音声として表現し直す必要があります。人間が介在する限り、このインターフェースの速度がシステム全体の処理能力を左右してしまいます。
AI時代に求められる能力
AI時代には、この制約がこれまで以上に重要になってくるはずです。求められる能力としては、次のようなものが挙げられます。
- 大量の情報を短時間で正確に読み取る力
- 本質を理解し、不要な情報を捨てる力
- 複雑な内容を構造化して整理する力
- 必要な情報だけを相手に伝わる形で高速に言語化する力
テキストと音声、それぞれの特性
情報の受け渡し方法として、テキストと音声にはそれぞれ異なる特徴があります。
- テキスト:自分の理解速度で読み進めたり、読み飛ばしたり、検索したりできるため情報密度が高く、知識処理には非常に効率的
- 音声:話す速度・聞く速度に制約されるが、近年は音声認識・音声入力の精度が上がっており、「考えながら話す」ことで高速にアウトプットできる場面も増えている
構想段階では音声で発散し、その後AIに文章として整理してもらう、という役割分担も有効だと考えています。
まとめ:競争力は「情報の流れの設計」に移っていく
今後の生産性は、「読む速度」や「タイピング速度」だけでは決まりません。情報を理解し、構造化し、最適な形式で相手へ受け渡す速度によって、大きく左右されるようになっていくはずです。
AIが一瞬で情報を生成できる時代だからこそ、人間には「AIと人、人と人との間で情報を正しく流通させる能力」が競争力になります。知識そのものの価値は相対的に下がり、情報の流れを設計し、ボトルネックを減らす能力が、仕事の量と質を決定する重要な要素になっていくと考えています。
