0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 1 year has passed since last update.

AIに奪われる仕事と奪われない仕事 

Posted at

すでに実用化が進んでいる「AI」ですが、最近では一般的な言葉となりつつありますが、では「AIとは何なのか?」どれくらいの方がご存知でしょうか。今回はAIとは何か、AIの活用など基礎的な話をしていきたいと思います。

AIとは?
昨今、AIが非常に話題になってきましたが、今回は第3次AIブームと言われています。第1次が1950年-1960頃、第2次が1980-1990頃でした。第3次AIブームの大きなきっかけとなったのはディープラーニングです。これは2006年に認知心理学の研究家でもあるジェフリー・ヒントンにより発明されました。今までのAIはルールベース(ルールを登録したもの)や数式による処理が中心でしたが、第3次AIは入力データの中から自ら特徴を判定し、その特徴パターンを学習し結果を出すというものです。初めて人間の様な知能をもったコンピュータの出現、と言われることもあるようです。

過去に私は、第2次AIブームのAIプログラミングを行なった経験があります。新卒で入社した会社で、工場において複数ラインの週間計画を最適化するためAIを使うというものでした。1台1億円のUNIXマシーンを8台並べ、並列処理を行うのです。複数の工場ラインと製造する鉄の諸元(SPEC)に合わせ、最適な製造パターンを算出するというもので、製造コストや納期を考慮すると数十億のパターンから最適解を導き出すAIでした。

この当時の最適化処理は、学生時に習った線形計画法(LP)を多段階で解く感じで、混合線形計画法(MIP)と呼ばれるものでした。今でも検索するといくつかの記事が出てきます。この頃のAI(第2次)と今のAI(第3次)とは全く違います。今のAIは、AI自らが大量のデータを見てチェックすべき特徴を割り出し、そこから判定パターンを作り処理を行ってくれます。

ビッグデータがAIを作る
第3次AIが第2次AIと大きく異なるのは、大量のデータが必要という事です。第2次AIは人間が数式を作り処理を行わせるものでしたが、第3次AIの「ディープラーニング」は大量のデータから自動的に判定ロジックの様なものを生成するため、大量の教師データ(AIに学習させるためのデータ)が必要となります。

例えば、犬の写真判定を行うAIを作るには、犬の写真が大量に必要です。犬以外を犬と判定しないためには、犬に似ており犬ではない写真も大量に必要になります。第2次AIでは、犬であると判定するための条件をコンピュータにインプットしていました。今のAIは、犬の条件はインプットせず「これは犬だ」「これは犬じゃない」という結果のデータを大量に教え込む事で、コンピュータが自ら犬かどうかを判定できるようになります。このため、データの準備自体がAIの精度に大きく影響してくるのです。

そして、この準備するデータによって結果も大きく変わるという事も起こります。とにかく大量且つ様々なデータが必要であり、中途半端なデータからは中途半端なAIしか出来上がりません。人間の考えでは不要と思われるデータも、AIには重要なデータとなるケースもあります。さらに、一度作ったAIエンジンも、日々状況によって最新のデータを読み込ませ、最新の状態に保つ必要があります。AIの利用には、こうした運用を考慮する必要があり、従来型のシステム開発とは違った運用を理解することが肝要です。

AIに奪われる仕事、奪われない仕事
「AIに仕事を奪われてしまうかも」という話題が気になってる方も多いのではないでしょうか?AIの本質を知れば、どの様な範囲でAIは有効で、どの様な範囲でAIが有効でないかを理解できます。これを知っておくことで、将来のキャリアパス検討にも役立つかもしれません。

現代のAIは過去のデータをパターン化し、パターンマッチングにより処理を行います。パターンとして認識しにくい処理は、AIには難しくてできません。つまり、「誰もやった事の無いもの」や「過去に事例がない事」は、できないという事です。文章を作り出したり、新商品を考え出したりといった「アイデアを生み出す仕事」はAIは苦手です。小説を作るAIも開発されてはいますが、過去の小説をベースにつぎはぎ的に作られた小説であり、本当の意味での新作ではありません。

逆にパターン化できるものであれば、そのパターンが膨大な量や複雑な条件であっても、AIは得意です。経理処理や事務処理、建築設計的な処理等の複雑なものも、パターンや条件が定義さえできればコンピュータの処理能力を使って高速処理ができるという事になります。一方、大量の入力データが必要になりますので、データ化しにくい作業や体を使った作業等はAI化しにくいという事です。つまり、AIに奪われない職業は、パターン化できない処理を行う職業といえます。

AIの考え方 確実な演繹法と予測的な帰納法
確実な演繹法と予測的な帰納法では、考え方が全く違います。AIを使う場合、この考え方の違いを知っておくと役に立つのではないでしょうか。演繹法とは、AならばBであるという前提から結論を導く方法です。例えば、「人間は会話する」、「日本人も会話をするか?」に対して、日本人は人間であるので、「日本人は会話をする」という結論を導きだします。従来のレコメンドシステムなどは、確実な演繹法を用いる場合が多く、入力に対し結果は基本的に同じとなります。

一方、帰納法は、結果ありきで結論を導き出す方法です。Aさんは1月1日にビールを買った。 Aさんは1月2日にビールを買った。 というデータからAさんは1月3日にもビールを買うだろうという具合です。これは予測であり100%ではありませんが、可能性が高いという事です。AIでは、予測的な帰納法となります。大量のデータを読み込ませ学習モデルを構築し、入力されたデータに対して予測結果を出力します。

マーケティングにおいて比較すると、マーケターは演繹的にルールを作成し、年代・性別・職業などからセグメントや分析をします。こうして、30代男性で東京在住のサラリーマンの場合は、車・時計・家等の購買可能性が最も高いであろう結論を出し販促を行います。AIでは、 “30代男性で東京在住のサラリーマン”というセグメントは必要ありません。AIが大量の購買データから自動で購買者の特徴を判定し、あるパターンの人物は車、時計、家等の販促が有効であると結論を出すのです。

AIのパターンと事例
ここからはAIの基本的な仕組みを理解できた上でAIのパターンの話をしたいと思います。

1.情報処理系
商品の在庫予測や売上予測等はAIがとても得意な分野で、来店顧客数、商品毎の売上予測、商品毎の入荷データ等、様々なデータからの最適化もAIが得意とします。IoTによる大量のセンシングデータはスポーツ等幅広い分野でも活用され、処理速度も向上しています。

2.画像映像系
カメラからの2D映像をもとに、AIで物体の領域特定や映像のビットパターンから物体判定を行います。車の自動運転もこの分野と関係し、道路の判定や、障害物をカメラ映像から判定します。動物や植物のカテゴリー判定だけでなく、特定の人物を判定するといった事まで活用されています。

3.文章系
大量の文章データや会話データにより、AIが文章を作成するだけでなく、人間と会話する事もできる様になってきました。AIが小説を作ったり、AIが人間に対してメールやチャット等のテキストベースで営業を行う例もあります。形態素解析をあわせたAIにより、処理精度が向上しています。

4.音声系
音声データもデジタルの世界では、データ化されます。この音声データをAIにより特徴点から文字起こしを行ったり、AI自体が人の声で喋ったりします。先述の文章系AIと組み合わせて、タレントの声で会話するAIも始まっていて、紅白歌合戦に登場したAI美空ひばりは話題になりました。

5.ロボット系
RPAの様な業務処理を自動実行するロボットから、自動運転の様な物体を動かすロボットまで幅広い分野でAIは利用され始めています。

大きくわけて上記の5つのパターンにわかれます。この中でも情報処理系は、かなりコモディティ化してて、amazonやgoogleによりAPIのレベルで利用可能なため、実務で幅広く利用する事ができます。一方、画像映像系、文章系、音声系は、実用レベル的にはまだハードルが高く、利用用途を限定したり、使う側の工夫も必要になると思います。

ロボット系は、IoTの普及で様々なオートメーションが可能になっていますが、複雑さや安全面を考えると普及には時間がかかりそうです。デジタルインプットのものは、精度も利用可能レベルも高く、デジタル化された沢山のセンシングデータにより普及が広まっています。アナログインプットのものは、アナログからデジタルへ変換時の補正処理にゆらぎ大きく、精度のブレが大きいとも言われます。

今後のAI活用
AIはディープラーニングにより大きな進歩を遂げましたが、AIだけではなく、IoT、ドローン、ブロックチェーン、5G、クラウドサービス等の様々なテクノロジーにより加速度的に進化を遂げています。今までは、人による目視にコストや時間がかかっていた場所が、IoTセンサーやドローンによるカメラ撮影で遠隔チェックが可能になったり、クラウドサービスにより急激なトラフィックに耐えられるAIを活用したり、5GによりリアルタイムにAIとのやり取りができる環境になってきました。

これらは今後もますます活用され、産業や農業において、我々が意識しないところで自動化・最適化AIの普及が進んで行くでしょう。エンタメ系AIでは、フェイク動画の様なアバターAIも普及が進みつつあります。これはデジタルヒューマンと言われ、デジタルヒューマンのタレント権利を販売する会社も生まれています。有名タレントが個別に接客をしたり、会話をする事ができます。

AIが日常生活の中に浸透するだけでなく、開発が進む車の自動運転のようにSF映画で見たような技術が実現される日も近いのではと期待します。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?