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加速するデジタルトランスフォーメーションと2025年に訪れるIT人材の「崖」

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IT業界はドッグイヤーと言われる程、技術の変化、進化が早いです。ターゲットとなるデバイスがPCからフューチャーフォンへそしてスマホへ変化したり、サーバー側ではホスト型からオープン型へそしてクラウド型へ。流行り言葉がドンドン出てきて、ドンドン消えていったりしています。SIerやコンサルレイヤーの方々が営業のために新しいテクノロジーワードを沢山出しているのではないかとも言われてます。

そんな中で、テクノロジーのトレンドがとても良くわかるのがガートナー社の「最新テクノロジーのハイプ・サイクル」。テクノロジーワード毎に黎明期、「過度な期待」のピーク期、幻滅機、啓蒙活動期、生産性の安定期にわけてプロットされている図と説明が発表されています。私もこのハイプ・サイクルを参考にしてテクノロジーの採用について検討したりもしますので是非参考にしてみてください。

ただ、テクノロジーが進化しても実は基本的な仕組みは大きく変わりません。本質をきちんと理解しておけばバズワードに惑わされずに適切なジャッジができます。デバイスの変化も画面の大きさが変わっただけであったり、サーバー側も集中型から分散型になり再度集中型へ変化していたりします。プログラム言語も沢山あたらしいものが出てきますが、本質を理解してればすぐに対応する事ができるはずです。

重要なのは、基本的なテクノロジーを理解した上で、視点を新しいものに変える必要があるという事です。PC、フューチャーフォンからスマホになった時にテクノロジーは近くても、利用の仕方が大きく変わってきます。

例えば、料理レシピサービスの場合はスマホ前提で考えた時は動画レシピになりました、地図サービスの場合はGPSを使う事が当たり前になっています。スマホの場合、綺麗な地図が表示される事がよりも、GPSとジャイロによってマップ上に方向を示す矢印が表示される事が求められます。つまり、「場所を見る地図」から「道を示す地図」へ変化させる必要があります。これらと同様にデジタルトランスフォーメーション(DX)では、デジタル化前提で考えていかないと適切なサービス設計が出来ません。今回は、第1稿でも書いたデジタルトランスフォーメーションについて更に詳しく書いていきたいと思います。

■そもそも「デジタルトランスフォーメーション」って何?
「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という内容をスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマンが2004年に提唱しました。日本では、2018年経済産業省が『デジタル・トランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)』を取りまとめた事で言葉として近年に普及してきました。その冒頭では、「DX推進指標」における「DX」の定義 として下記の様に記されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

日本企業のIT化、デジタル化への対応を推進する事が目的となっています。DXは単純なIT化だけではなく、IT化によって商品、サービス、ビジネスモデルを変革させ、組織をも変革させる事が必要であると示されているのです。

■DXレポートとは?
2018年9月に経済産業省が発表した調査結果です。

レポートの中では、

  1. 「顧客視点でどのような価値を創出するか、ビジョンが明確でない 」
  2. 「号令だけでは、経営トップがコミットメントを示したことにならない 」
  3. 「DX による価値創出に向けて、その基盤となる IT システムがどうあるべきか、 認識が十分とは言えない 」

とされてます。デジタル化社会に向けて、各企業の取り組みに課題がある事への政府危機感からこのレポートが作成されている事がよくわかります。

更にDX推進指標の算出方法についても記載されており、DX化していく事が企業の存続に非常に重要であると考えられています。特に2025年までにシステムの刷新をしなければ、それ以降、年間で最大12兆円の経済損失が発生する可能性があるとの報告書は、IT業界だけでなく産業界にも大きな衝撃を与えました。

■2025年の崖
まずは、2020年で20万人のIT人材が不足するとされていますが、2025年で43万人まで拡大するとされています。また、基幹システムの21年以上が2割だったものが、2025年には6割に拡大する事によるリスクに警鐘をならしています。これは、単純にDX化が遅れた事による事業機会損失を脇においたとしても、今のシステムをリニューアルしないと最大12兆円/年の経済損失が起こるという事です。

IT人材不足については、5年後には翻訳AIの向上や、5Gによってリモートワークのハードルが下がる事などにより更にグローバル化が進む事で、日本人以外のIT人材活用も増えてくるでしょう。
これにより、総IT人材の人口は増えるかもしれませんが、そもそもIT業務自体が増え、かつ、グローバル人材にレガシーシステムの開発作業をやってもらえない事も合わせて危機が訪れるという事だと考えられます。

IT人材のグローバル化が進んだ場合、逆に日本人エンジニアの国外流出も本格的に進む可能性も高いと思います。シリコンバレーのエンジニア給与水準は日本の倍以上とも言われてます。色んな可能性の中で間違いなくIT人材は不足していくでしょう。

更に基幹システムは本当に古いものが沢山残っています。なぜ古いものが残っているのでしょうか?これは仕方のない流れです。WindowsOSがバージョンアップで新OS発売の時に、新OSの敵は、前バージョンのWindowsOSだと言われてました。企業にとっては何かコストメリットが無いとシステムを新しくする事を承認するのは非常に難しい問題です。同じ様な問題から、短納期で作られシステムや、立ち上げ時には見えていなかったモノが色々と見えてきた事により継ぎ接ぎとなったシステムにより、改修コストや運用コストが大きいシステムがあります。

我々の業界では、これを「技術的負債」と呼びます。技術的負債は負債を定量的に説明するのがとても難しく、説明できたとしても非常に時間がかかります。数字で完璧に説明するという事が、とても難しい部分は経営の中でも沢山あります。その数字説明を待っていたのでは、スピードで負けてしまいます。

冒頭のIT人材不足とシステム老朽化の情報だけでは、自社システムへの影響度合いを具体的に数値する事は出来ません。リスクの数値化も難しいです。すなわち経営者のシステム、ITへの理解が必要になってくるという事です。寒気がしたら風邪かなと思い暖かくして風邪予防をする様に、定量化されなくても、自社のシステムは危険だからリプレイスをしておこうと思えるITセンスが必要となるのです。

■DXへの対応方法
1.体制作り
DX推進にあたって先ずは組織作りが重要です。一気に全社レベルの組織にするのではなく、基本的にはプロジェクトチームを組成するのが良いです。大きな変革を行う時には成功事例が重要ですので最初は動きやすい小さな組織の方が成功しやすいからです。DXには、早くて強い意思決定が必要です。そのためプロジェクトチームは社長や役員直轄にすべきです。よく責任を与えるのに権限を与えない組織がありますが、権限と責任は対になって初めて有効に機能します。プロジェクトチームには、権限と責任をしっかり与える事も重要です。

2.外部アドバイザーの利用
社内の人材だけでは、DX化へのノウハウ不足の可能性が高いと思われます。トップダウンでDX対応への指示を出した所でどこから初めて良いのかわからない事が多いです。ここは専門家を外部から召集して戦略を作った方が良いと思います。IT業界は非常に速度も早く難易度が高くなってきてます。自社だけで完結するのではなく、弊社の様なIT企業からノウハウを吸収するのが成功の鍵となります。

3.先ずはPoC(実証実験)から
大きなスコープでDX化を推進しようとすると上手くは行かないでしょう。最初は、小さな範囲からPoC(Proof of concept)を行い、少しずつ広げていくことをオススメします。ただ、PoC貧乏という言葉もあり、PoC自体が目標になったり、現実的ではないPoCを見極める事も大事です。すぐにものを作るのではなく、机上にて設計してみる事も大事です。Googleの「Google日本語入力」は20%ルールから作られました。業務時間の20%を好きな研究開発に使って良いというルールです。この「Google日本語入力」の開発では、最初の数ヶ月はコードを書くことなくディスカッションがメインだっと聞きます。PoCで失敗が続いてるという企業は、最初にしっかりと設計してみる事をオススメします。

4.DXへの考え方
外部アドバイザーを利用してDXを推進するにしても、経営層がDXの考え方を理解してないと上手くいきません。丸投げ状態では成功できないという事です。現状に縛られる事なく未来や現状で最適な形へ商品、サービス、ビジネスモデル、組織を変える事が必要なためです。

VUCA(ブーカ)時代のOODA(ウーダ)ループという言葉があります。VUCAは、それぞれVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字で、昨今の不安定なビジネス状況を意味します。

そして、OODAループはObserve(観察)、Orient (情勢への適応)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字です。不安定なビジネス状況の中で世の中をしっかりと把握して、意思決定、行動する事。そしてこれをループさせる事が重要です。そのため外部からアドバイザーが来たとしても、業界の専門家である経営者が世の中・業界から観察し意思決定する必要があります。

その上で、例えるならば先述したスマホ地図アプリの様に、現状に縛られる事なく、本質的な利用のされ方について考えていく事が必要です。技術、機能をメインに考えてサービス設計するのではなく、利用者視点にたった上で必要な技術や機能を利用していく。この点においては外部アドバイザーの知見が役に立つでしょう。

DXは、企業規模に関わらずどの企業も進めていくべき課題となっています。そして、2020年はDXを加速していく企業が増加していくでしょう。それと同時に、今後の働き方も変化が予想されます。全てのビジネスパーソンにとって、知識や対応を今から理解しておく必要があります。

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