はじめに
こんにちは!
アイレット株式会社で新卒エンジニアとして働く森田です。
突然ですが、ハッカーって何だかかっこいいですよね!
(業務では、Webアプリのバックエンドを担当しているので、そんな呑気なことは言っていられないのですが)
私はホワイトハッカーが大活躍する『王様達のヴァイキング』という漫画を大学生のときに読んでから、かっこいいなー!と思っています。
そんな私ですが、最近書店でタイトル買いをした『ヴィクトリア朝時代のインターネット』(ハヤカワ文庫NF)という本を読んでいます。
タイトルの時点で面白そうなのですが、想像を超えて面白かったので、簡単に一部内容の紹介と感想を書きます。
個人的にハッキングの始まりに興味があるので、「第7章 暗号、ハッカー、いかさま」を中心に紹介できればと思います。
ちなみに筆者はセキュリティも世界史もミリしらであるため、細かい言葉の使い方で間違っているところがあればご指摘いただけますと幸いです!
ヴィクトリア朝時代のハッキング
まず、そもそも今の意味合いでのコンピュータを媒介としたインターネットがヴィクトリア朝時代(1837~1901)に存在したのかというと、当然ありませんでした。
しかし、そのルーツである「電信」技術はこの時代に急速に発展しました。
電信とは「モールス符号などに代表される符号の通信ないしその通信システムを指」(*1)します。
また、この送受信は電気信号によって行われました。
それまで、長距離の通信では馬や狼煙、腕木通信による情報伝達を行っていましたが、電気による情報伝達方法が開発されたことによって、コミュニケーション速度は格段に向上しました。
さらに、ヴィクトリア朝時代には大陸間でのケーブルの敷設が進み、1871年には上海・長崎・ウラジオストック間が海底ケーブルで結ばれ、電信による通信ができるようになりました。
すなわち、この本におけるインターネットという言葉は多くの場面において「電信技術によって形成された世界規模の情報通信網」を指します。
このように世界中に広まった電信ですが、送信方法のセキュリティ面で懸念がありました
上記画像の通り、ある人にメッセージを送りたい場合、そのメッセージを符号化して送る技術を持ったオペレーターに対して、送信を依頼する必要がありました。
また、符号化されたメッセージは別のオペレーターによって、復号される必要があったため、少なくとも1つのメッセージを送るのに2人の人が自分のメッセージを見ることになります
(1本のケーブルで送れる距離に限界があった時代には更に多くの人がメッセージを見ることになりました。)
そこで、送信中の安全性を確保するためにいくつかの単語を短い文字で表すといった簡単な暗号化が行われるようになりました。
ただ、電信では文字数や単語数ごとに料金を支払う形式だったため、これでは運営会社が儲かりません。
そのため、運営会社は暗号の送信についていくつか制約を設けましたが、すぐにこれを掻い潜る暗号が開発され、以降イタチごっこのようにこのループが続いていくことになります。
暗号化をする者がいれば、それを解読しようとする者もいます。
国家間の通信が行われるようになると、通信の傍受が行われるようにもなりました。
その技術的な蓄積の結果(?)起きたのが、かの有名な「ドレフュス事件」です
ドレフュス事件とは、「1894年10月、第三共和政のフランスで、ユダヤ系のドレフュス大尉がドイツのスパイの嫌疑をかけられ、本人は無罪を訴えたが、軍法会議で有罪となり、無期流刑となった」事件のことです。
ドレフュスがスパイ活動を行っていないことを証明するために、イタリアの軍人・パニザルディが暗号を用いて国外に情報を送信しましたが、この暗号が複雑すぎたが故に完全な解読が出来ず、パニザルディは暗号を再送する羽目になりました。
しかし、暗号再送の依頼を送る際にスパイ工作によって、メッセージが書き換えられたことで、パニザルディの暗号は誤って解読され、ついにドレフュスの無罪が証明されることはありませんでした。
(*1)Wikipedia「電信」より引用
感想
現代の暗号化技術はヴィクトリア朝時代とは比べものにならないくらい高度化しています。
私も業務の中で文字列のハッシュ化を行うことがありますが、ハッシュ化された文字列は何がどうなってこうなっているのか全くわかりません。
そんな中、この本を読んで暗号化技術も段階を踏んで進化してきたことが分かり、少し安心しました!
ヴィクトリア朝時代から1歩ずつステップアップして現代の暗号を解読してやろう!という気持ちにはなりませんが、暗号化の手法については頭に入れておきたいと思いました。
また、ハッキング以外の部分で興味深かったのは「海底ケーブルの敷設」の話です。
1800年代半ばにドーバー海峡に海底ケーブルが敷設され、通信に成功したというのは中々衝撃的でした
そのわずか15年後には大西洋を横断する形で海底ケーブルが敷設され、ヨーロッパ大陸とアメリカ大陸とで通信が可能になったというのも、人類の技術の発展スピードに驚かされました。
筆者の頭の中では1850~60年というのは、ドラマの『仁 -JIN-』のイメージで、髷を結ったサムライたちが斬り合っている印象でした。
そんな時代にまさか海底ケーブルを引こうなどと考える人がいたことに驚きました。なんというかフロンティア精神に脱帽です。
この本を読んでいて、このレベルでダイナミックな挑戦ができる時代はもう来ないのだろうなーと思いましたが、
よくよく考えてみると、技術的な文脈では生成AIがどこまで伸びるかはまだ未知数ですし、物理的な文脈では宇宙という広大なフィールドが残っています。
(個人的に竹林組の宇宙エレベーター建設構想にはめちゃくちゃ期待しています!)
私がその開発に携わることになるかどうかはまだ分かりませんが、現代もヴィクトリア朝時代と同様に広大なフロンティアが残されていると感じました。
太古のインターネットを知りたい人、ヴィクトリア朝時代にロマンを感じてみたい人、現代の可能性を再認識したい人は是非読んでみてください!!!!