AWS特別セッション:深化と進化を支えるAmazon基盤技術の最新動向
本セッションでは、アマゾンのグローバルインフラから最新のクラウド技術まで、基盤技術の深化と進化をテーマに幅広く紹介された。
1. アマゾンのグローバルインフラ
アマゾンはビジネス課題解決のために独自のグローバルネットワークを構築している。高い可用性とパフォーマンスを実現すると同時に、セキュリティを最優先に設計。Madpot、Sonaris、Mithraといった独自の脅威検知・防止技術をAWS全サービスに組み込み、脅威インテリジェンスを継続的に提供している。
2. AWS Nitro SystemとGravitonプロセッサ
AWS Nitro Systemはハードウェアレベルでセキュリティと仮想化を最適化する独自設計の基盤。Graviton4プロセッサに代表されるCPUベースの高性能プロセッサを組み合わせ、暗号化通信による安全性を確保しつつ、パフォーマンスと柔軟性を両立している。
3. 事例紹介:株式会社ドワンゴ(ニコニコ)
2022年4月に開始したオンプレミスからAWSへの全面移行プロジェクトは、2025年3月完了予定。2022年6月のサイバー攻撃時には既にAWSに移行済みのシステムが影響を受けず安定稼働。Amazon Elemental、Security Hub、Shield Advanced、GuardDutyを活用し、KADOKAWAグループ全体のクラウド化を推進。新たにAWS Security Incident Responseを導入している。
4. アマゾンサービスの進化
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EC2:850を超えるインスタンスタイプを展開、多様なワークロードに対応
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AWS Graviton:第1~4世代まで進化し、多くのサービス基盤で採用
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P6インスタンス:従来比2倍のGPU性能を実現
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AIモデル
- スケールアップ用Trainium2(2025年にはTrainium3予定)
- スケールアウト用NeuronLink(複数Trainium2連結によるウルトラサーバ実現)
- 開発コード名「レイニア」
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ストレージ
- S3はBargeアーキテクチャの改良で、ヘッドノードとドライブの分離により耐障害性とスケーラビリティを強化
- マイクロサービスアーキテクチャによる管理の複雑性軽減
- Intelligent-Tieringによるコスト最適化
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データベース
- 関係型からNoSQLまで幅広く対応
5. NTTドコモの活用事例
モバイルネットワークのサービス監視と自動化にAWS Timestream、Amazon Neptuneを利用。Amazon管理Grafanaと連携しリアルタイムモニタリングを実施。デジタルツインによるアラーム状況の可視化と原因分析を可能にし、障害原因特定時間を短縮。データ処理はS3、Glueで行う。成功要因は体系的なデータ管理と泥臭い作業の自動化、アマゾンサポートの連携にある。
6. Auroraとデータベース技術の進化
近年のニーズに応え、高可用性、マルチリージョン対応、低遅延、強い整合性、低コスト、SQL対応を両立。AWS Time Sync Serviceでマイクロ秒単位の時間同期を実現し、Aurora DSQLによりマルチリージョンPostgreSQLの分散処理と高可用性を実装。Oracle Database@AWSはExadataやAutonomous DatabaseサービスとしてAWS上で提供可能。
7. 生成AI関連技術
- Amazon Bedrock:基盤モデルの利用、カスタマイズ、RAG対応。複数企業で導入。
- Amazon Nova:テキスト・コード・映像・文書からの生成対応。テキストベースでの高画質映像編集・生成も可能。
- GenU:オープンソースAIツール。
- AIコンタクトセンター:Amazon Connect、Amazon Q連携。
- Bedrock Agent:社内システム・データソースを活用した多層作業エージェント構築。
- Bedrock Flows、Multi-agent協調機能も紹介。
8. マイクロサービスアーキテクチャと組織文化
機能ごとの小規模サービス群で構成し、小規模開発チームが主体となる運用を実践。ソニーの「ひとりモビリティ」では、多様な知識を活かしマイクロサービスで分離し、スクラムで高速開発を実現している。
9. AI駆動のソフトウェア開発プロセス
計画、コーディング、テスト・セキュリティ、レビュー、運用・保守の一連のライフサイクルを「Amazon Q Developer」が支援。AWS Well-Architectedフレームワークに基づいた開発者支援と専門家サポートを提供する。
10. その他技術紹介
- AWS Transform
- Amazon Elastic VMware Service (EVS)
総括
本セッションは基調講演と重なる部分もあったが、より技術の具体的な部分に踏み込んだ説明があり、パートナー企業の多様な事例を通して現場での活用イメージが得られた。今後のAWS技術の深化と進化を体感できる貴重な機会となった。