はじめに
この記事はSAP Advent Calendar 2025 の12月14日分の記事として執筆しています。
今年のTechEDでCorsurやVS Codeの拡張機能であるClineなどで使用できるMCPサーバの公開が発表されました。
MCPサーバは既に使用することができるので、今回はSAP OData MCPサーバとClineを使用して、BPの情報をS4から取得してみました。
対象読者
- BTPのグローバルアカウント、サブアカウント、インスタンス作成ができる人
- Git、CF CLIコマンドが実行できる人
- SAPのMCPサーバに興味がある人
環境
- BTP:社内TDD環境(トライアルはAI Coreが使えないため)
- S4 Hana Cloud:社内TDD環境
使用サービス
- Business Application Studio
- SAP AI Core
- Destination Service
全体像
手順
1.グローバルアカウント・サブアカウント・スペースの作成
色々なところで解説されているので、割愛します。
参考までにチュートリアルはこちらです。
2.SAP AI Coreサービスの立ち上げとClineの設定
Clineは拡張機能をインストールしただけでは動かすことができず、個別にAI ベンダーからAPIキーを発行するか、Clineが提供するAIモデルを使用する必要があります。
実はClineはSAP AI Coreサービスとも連携をさせることができるため、今回はSAP AI CoreとClineを連携させたいと思います。
サービスの立ち上げ
サービスキーの作成
※諸事情でインスタンス名を変えています。

サービスキーの以下情報をコピー
Cline側の設定
Clineの設定画面から先ほどのサービスキー情報を入力します。
Clineのインストール方法は割愛します。
このような記事を参考に、インストールしてください。

3.MCPサーバのデプロイ
MCPサーバをCloud Foundryにデプロイします。
今回はこちらのSAPブログを参考にデプロイしています。
デプロイ元のソースコードはこちらを使用します。
プロジェクトのPull
BASに入り、適当なディレクトリに以下MCPサーバのソースコードをダウンロードします。
git clone https://github.com/lemaiwo/btp-sap-odata-to-mcp-server.git
cd btp-sap-odata-to-mcp-server
Cloud Foundryにデプロイ
次に以下コマンドでビルドとデプロイを行います。
npm run build:btp
cf login -a <cf api endpoint of BTP>
npm run deploy:btp
sap-mcp-server-ctc-btp-demoというアプリケーションがデプロイされていれば、デプロイ成功です。

以下のようにインスタンスがクラッシュしている場合は、メモリ割り当てを増やしてください。

デフォルトだと512MBですが、1024MBくらい割り当てると動いてくれます。

Destinationの設定
次に接続先のS4に対してDestinationの設定の設定をします。
デフォルトではSAP_SYSTEMというDestination名で設定することで、MCPサーバ側が設定を読み込んでくれます。
詳細はこちらをご確認ください。

注意
この際に設定する通信ユーザには適切な通信契約を紐づけてください。
すべてのAPIを実行できる権限を設定した場合は、Clineから本来実行させてくないAPIまで実行できてしまいます。
逆に権限が不足している場合は、思ったような返答を得ることができません。
4.ClineとMCPサーバの連携
最後にClineにMCPサーバの接続情報を設定します。
Clineの設定からMCPサーバの設定を開きRemote Serversから以下を設定します。
Add Serviceをクリックすると、以下のようにAuthenticateボタンが現れるので、クリックします。

再度VS Codeを開くか、許可を求める画面がブラウザに表示されるので、Visual Studio Codeを開くをクリックします。

VS Codeに戻ると以下のようなポップアップが表示されるので、Openをクリックします。
私の場合はブラウザ上に認証情報がキャッシュされていたので、特に何も表示されませんでしたが、認証情報のキャッシュがない場合は、SAP IDP認証を求められます。

ここまでで設定は完了です!
実演
では、せっかくなのでClineに簡単な指示を出してみましょう。
プロンプトは以下を使用しました。
## ロール
あなたは優秀なSAP S4 HANA Cloudのコンサルタントです。
## 指示
ビジネスパートナーID`9980000046`の氏名を教えてください。
## 制約
- ビジネスパートナーの情報はMCPサーバ`SAP OData MCPサーバ`を使用して取得してください。
- 氏名の情報が取得できるまで繰り返しMCPサーバに問い合わせを行ってください
指示を出した結果、Clineは以下のようにMCPサーバの利用手順を理解し、必要なAPIの特定から、APIの実行をしてくれました。

幾度かエラーは発生しましたが、最終的には以下のように必要なAPIを特定し、氏名の情報を取得することができました!

まとめ
今回はSAP OData MCPサーバを使用して、BPの情報を取得してみました。
実案件でどのように使用するかは今後の課題ではありますが、S4の実データを使用したエラー解析やS4データを使用したテストデータ作成など、今まで人力で行っていた作業を効率化することができるのではないかと思いました。
ちなみに今回はSAP OData MCPサーバを使用しましたが、他にもSAPナレッジやNoteの情報を取得する専用のMCPサーバなどもあるので、今後はそちらも使っていきたいと思いました。
MCPマーケットでSAPと検索するといくつかMCPサーバが出てきます。




